その他の取組み 経営管理上の工夫、複合化(他作目との組合せ) 山形市 水稲作付面積 22ha 効率経営 法人 30 【要約】 転作の作業受託組織から発展し、平成25年4月に法人設立を機に、水稲の作付け を開始した集落営農法人である。地域の転作を一手に引き受け、2年3作体系で 大豆、麦、そばを作付けし、園芸作物を導入、農産加工事業にも取り組んでい る。これらの地域資源を活かしながら、顧客を増やすため、地産地消運動や交流 事業を実施し、水田全体をフル活用した集落ぐるみの複合経営を行っている。 【背景・具体的データ】 1 法人の構成員等 理事5名、組合員246名、従業員11名 2 平成26年度経営面積 水稲22ha、大豆36ha、麦22ha、そば38ha、園芸作物9ha、農産加工 (H25年度水稲8ha) 3 経営管理上の工夫 ・農地の集積を図り、機械の利用効率を高め、機械費は米の生産費の10.9%、 12,541円/10aと低い(H24農水省統計15ha以上 支払利子・地代算入生産費に 占める農機具費の割合22.3%、20,635円/10a)。(トラクター4台は、転作部門と 共有。コンバインは4条刈り(高速)1台。田植機6条植え1台。) ・平成25年の法人の米の製造原価は10,980円/俵で、26年産米の概算金が下落し たことから、26年産米は、通年で直接消費者に玄米で販売するため、冷蔵庫 を新設した。さらに、消費者の利便性を考え、精米の直接販売に取り組むた め、来年度に精米施設の整備を計画している。 ・顧客を増やすため、えだまめのもぎ取り(参加者延べ2,000人)やそば祭り (参加者400人)等の消費者との交流会を年数回開催し、法人のブランド名で 米を含めた農産物、商品の販売を行っている。 ・農業の担い手の高齢化等により、水稲作付面積は年々増加の傾向にあること から、品種構成や栽培管理体制の見直し作業を行っている。 【特記事項】 ・水稲部門の売上高割合は全部門の26%。(H25年) 1 効率経営 31 複合化(他との組合せ)、協力関係の構築(共同、連携、組織化) 山形市 水稲作付面積 20.2ha 法人 【要約】 平成22年に4名の生産者が、担い手のいない都市近郊の農地を集積して設立した 農業生産法人である。規模拡大を図る稲作部門と育苗施設を利用した園芸部門に 新たに取組み、都市近郊における稲作の新たな営農モデルとなっている。また、 平成24年以降に増加した水田については、育苗施設を要しない鉄コーティング直 播栽培を導入しており、今後も、必要最小限の投資に抑え作業の効率化を図りな がら、規模拡大を進める予定である。 【背景・具体的データ】 1.法人の構成 取締役4名、社員1名、季節雇用2名 2.平成26年度経営面積等 項目 面積(ha) 備考 主食用米 14.2 はえぬき10.8ha※、つや姫3.4ha 備蓄米 3.0 はえぬき 加工用米 3.0 はえぬき 中玉トマト 0.1 水稲育苗後の施設活用 刈取り作業受託 3.0 育苗受託 2,500枚 ※ はえぬきのうち4.2haは直播栽培 3.経営管理上の工夫(※H24農水省統計:「経営規模:15ha以上」参照) ・平成25年の10a当たりの農機具費等(自動車費含む)は、21,550円で全国平 均※(22,832円/10a)の94%である。本法人は新たな農機具を導入せずに平 成28年までに28haまで規模拡大する予定で、その場合の当該費用は14,210 円/10aを見込んでおり7,340円/10aのコスト削減が可能となる。 ・直播、田植えにかかる労働時間(時間/10a)は1.72時間で全国平均※(2.03 時間/10a)の85%であり、経営全体で63時間の労力節減となっている。 【特記事項】 ・全部門売上高27,347千円、うち水稲部門売上高割合96%(H25年) ・メンバー各自は、法人とは別に施設園芸を営んで、所得向上を図っている。 ・当該法人をモデルとし、近隣地域の若手農業者が新たな法人を立ち上げ、地 域営農の担い手として活動している。 2 効率経営 32 その他の取組み 経営管理上の工夫、複合化 河北町 水稲作付面積 33.0ha 法人 【要約】 担い手の減少、高齢化という現況を打開すべく、平成25年3月設立された集落 営農法人。水稲低コスト化の取組みについては、JAが集落営農組合・農業法 人を対象とする資材購入奨励措置および大型規格品への切替購入を行ってい る。 【背景・具体的データ】 1 生産コスト削減方策 (1)水稲指定、基肥・育苗培土の集落営農組合(農業法人)への奨励措置 〔指定肥料〕水稲基肥 20kg/袋当たり ①集落営農一括予約(価格値引) △40円/袋 ②満車拠点直行取引奨励(価格値引) △80円/袋 (パレット500袋以上満車による、拠点場所(JA支所)でフォークリフト荷降ろし) ③拠点より自己引取り奨励(価格還元) △80円/袋 (荷降ろし拠点からの自己取引) (2)大型規格品への切り替え 〔指定培土〕JAさがえ西村山オリジナル培土 20kg/袋 → 500kg/フレコンバッグ 〔農薬〕(育苗箱施用剤、初中期一発除草剤) 1kg/袋 → 10kg/袋 2 コスト削減効果 → 10a当たり1,136円の削減 肥料費(基肥一発) 諸材料費(培土) 農薬(育苗箱施用剤) 〃 (除草剤) 7,988円 2,450円 3,000円 3,287円 → → → → 7,538円/10a (△450円) 2,272円/10a (△178円) 2,886円/10a (△114円) 2,893円/10a (△394円) (△1,136円/10a) 3 今後の取組み (1)農業機械の整理、合理化 現在、構成員所有機械を賃借しているが更新は行わず、今後導入は法 人所有とし整理統合。大型化・効率化及び償却費の圧縮を図る。 (2)直播栽培の拡大 現在、試験的に鉄コーティング播種約90a実施。 育苗資材や労働コス ト 軽減効果に手応えを感じ、5年後を目標に5haまで拡大予定。 【特記事項】 3 その他の取組み(複合化、協力関係の構築 ブロックローテーションによる地域農業を支える作業受託 村山市 水稲作付面積(構成員の個別経営面積)100ha 大豆の特定作業受託面積 70ha 法人 効率経営 33 【要約】 ・T営農生産組合は、米の生産調整、地域の水利関連設備の改修工事を契機に、 「T地区集団転作組合」を設立し、大豆の集団転作、ブロックローテーション の取り組みを開始。 ・平成19年度には、これまで作業を中心的に担ってきた農業者18名が、品目 横断的経営安定対策に対応するため「T営農生産組合」を設立。 ・平成21年度に法人化を図り、大豆の集団転作・特定作業受託を請け負う。 ・大規模稲作に高収益な果樹(おうとう)、施設園芸(メロン、花卉)、畜産等を組 み合わせて地域水田農業を支えている。 【背景・具体的データ】 〈活動内容〉 1. T地区の大豆栽培の特定作業受託を担い、大豆の集団転作による地域の水 田営農システムの基幹的な役割を果たす。 2. 平成24年度の大豆栽培面積は78.9ha、平成25年度は66.7ha、 平成26年度は70.6ha。 3. 当組合の設立により、機械管理、オペレーター出役調整、作業スケジュー ル管理が集約化され、機械の効率的運用、適期作業の実施が図られた。 4. 省力・高品質多収安定生産技術の導入に必要なブームスプレーヤーや不耕 起直播機等の円滑な導入がなされた(農業経営基盤強化準備金制度を活用)。 5. 梅雨期実施される大豆の中耕・培土や除草剤散布等の作業は、水稲の作 溝・中干し作業やおうとうの収穫期に重なり労働競合が発生する場合が多い が、近年は「不耕起狭畦密植栽培」を導入し、更なる省力化を図っている。 (不耕起狭畦密植栽培の導入効果) (1)省力効果(耕起作業時間+中耕・培土作業時間) 慣行栽培 5.0時間/10a 不耕起狭畦密植栽培 3.5時間/10a (慣行対比30%の省力化、省力化した時 間は高収益部門等へ振り向け) (2)増収効果 慣行栽培 120㎏/10a 不耕起狭畦密植栽培 150㎏/10a(慣行対比25%の増加) 【特記事項】 4 その他の取組み 経営管理上の工夫、複合化(他作目との組合せ)、 中山間地域での工夫、協力関係の構築(共同、連携、組織化)等 金山町 水稲作付面積 28ha 法人 効率経営 34 【要約】 複合部門として、園芸(ねぎ1.5ha)と農産加工を導入した。 ねぎについては、市場出荷及び全国チェーンのラーメン店への契約販売を行っ ている。 農産加工については、県「農林水産業創意工夫プロジェクト支援事業」を活用 し、農産加工所を設置、冬期間に漬物の製造販売を行っている。また、自家産の 米粉とねぎ、小豆を利用したたこ焼きとたい焼きを、年間通して製造販売してい る。 【背景・具体的データ】 就農後、水稲の経営規模を拡大してきたが、米価の低迷により経営の多角化が 必要だったことと、周年農業の確立を目指したことから、園芸作物と農産加工を 導入した。 ・ねぎについては、1.5haで約37,500kgを生産している。半分が市場出荷、半分 (B品等)を全国チェーンのラーメン店へ契約販売している。 ・農産加工部門の漬物加工では漬物2~3種を製造している。直売組織に入ってお り、組織を経由してスーパーで販売している。 米粉加工では自家産の米を外部委託して粉にし、利用している。店舗を設けて 常時販売する他、県内外のイベントに出展し販売している。 【特記事項】 特になし 5 効率経営 その他の取組み 経営管理上の工夫等 高畠町 水稲 2.5ha+果樹 一戸一法人 35 【要約】 事例の経営者は、水稲においては機械利用組合を組織し、農業機械の共同利用、 ライスセンターを活用することで農業機械の個人所有を出来る限り抑え、経費の低 減を図っている。 なお、労働力は、両親の高齢化により専従者が実質1名であるため、経営の効 率を高めることを目標としている。 【背景・具体的データ】 1 事例の生産者は、水稲の耕作者が入り組んでいるため規模拡大が難しいこと からぶどう栽培への転換を図ることになった。そのため、平成2年に13名で 機械利用組合を設立し作業を委託している。 <経営概況> 水稲 2.5ha (機械利用組合に委託、本人は オペレーターとして従事) 果樹(ぶどう)0.8ha 施設栽培の実施 2 現在、機械利用組合は18戸の農家が共同で行っており、補助事業等を活用 用しながら機械を導入、農業機械関係の経費を削減している。米生産費調査と の比較では 農機具償却費で約30%の節減効果がみられる。 (耕起~刈取 20~30ha) <主な農業機械等> ・トラクター 75・45PS(クローラ型) 20PS(中古)×1台 ・田植え機(乗用) 8条×1台、歩行用×1台 ・コンバイン 4条×2台 3 米は特別栽培米でJAに出荷している。現在、機械利用組合の法人化を目指 している。 【特記事項】 6 効率経営 36 その他の取組み(中山間) 小国町 水稲作付面積 10ha 個人 【要約】 中山間地である小国町は水稲の平均収量が西置賜地域の他市町の 8~9 割で、 条件不利地である。 事例農業者は耐雪ハウスで受託も含めた 3,600 枚を育苗しており、健全な苗を 育成することで生産の安定を図るほか、有機質肥料を中心とした施肥設計を行 っており、収量、品質ともに町でも上位のレベルにある。耐雪ハウスは育苗後 に野菜(メロン、アスパラ菜等)を周年で栽培して有効に活用している。 高い収量を望めない分、作業効率の向上を目指しており、自宅より概ね1km以 内の距離で、基盤整備された条件の良い水田を集積している。品種は倒伏の少 ないはえぬきが約半数を占め、他にひとめぼれ、コシヒカリを組み合わせて、 作業のピークを分散している。 【背景・具体的データ】 水田は自宅より概ね1km以内の距離にあり、基盤整備された条件の良い水田を 集積している。出荷先は大部分がJAである。小国町産はえぬきは外食店から 引き合いがあり、JAで卸業者を通して販売している。 単位当たり収量 平成25年 平成24年 事例農家 576kg 543kg 町平均 516kg 514kg 耐雪ハウスに園芸作物を作付した複合経営をしており、花きはJA、野菜は スーパー、直売所、保育所、老人ホーム、学校給食などを販売先としている。 4月 5月 6月 7月 8月 ① 育苗 メロン ( 324 ㎡ ) ② 育苗 メロン ( 324 ㎡ ) ③ トマト → ( 324 ㎡ ) ④ 野菜苗、花苗 ( 162 ㎡ ) ⑤ 野菜苗 → ( 194 ㎡ ) ⑥ 花苗 → ( 194 ㎡ ) ⑦ 育苗 ストック育苗 ( 162 ㎡ ) ⑧ 花き ( 162 ㎡ ) 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月 アスパラ菜 アスパラ菜 アスパラ菜、ほうれんそう ストック 野菜苗 花苗 ストック ほうれんそう 小松菜 ストック ほうれんそう 小松菜 野菜 野菜 【特記事項】 事例農家の地域は「農地・水保全管理支払交付金」の交付対象となっており (協定面積約180ha)、その交付金を有効活用して地域の農地やその周辺の荒廃 防止に努めている。 7 効率経営 コスト低減、付加価値化、協力関係の構築(組織化) 庄内町 水稲作付面積 68ha 法人 37 【要約】 町内でも比較的規模の大きい認定農業者8人が平成10年に設立した農業生産法人 で、主に米の収穫作業から乾燥調製、販売までを共同化して生産コストの削減を 図るとともに、米を原料とした加工品の製造・販売することで従業員を通年雇用 し、付加価値の高い農業経営を実践している。 また、各構成員は、指定された栽培基準に基づいて生産した米を系統出荷より も高い価格で法人に買い取ってもらうとともに、精米や加工作業等の従事内容に 応じて法人から給与・報酬を得ることで、安定した農業経営を実現している。 【背景・具体的データ】 収穫作業については、法人所有の2台のコンバイン(6条刈)で約90haを刈取り することで、10a当たりの刈取り経費を5,000円(員外は9,500円)まで抑えてい る。また、乾燥調製施設(70ha規模)は補助事業を活用して建設したものである が、60㎏当たりの経費は約1,000円(員外は1,500円)に抑えている。 特別栽培により生産された米はオリジナルブランドで販売しており、販売先は 業務用(飲食店・旅館等)が5割、米穀店や卸売業者向けが3割、個人顧客向けが2 割となっている。平成25年産の主食用米の平均販売単価は玄米60㎏当たり約18,000 円(10a当たり約18万円)で、このうち構成員に支払われる米代金は同約14,000円 (10a当たり約14万円)となっている。 自社で生産する米の加工品の年間売上高は、まだ約2,500万円であるが、原材料 となる新規需要米の仕入高(構成員より仕入)は、加工品売上の10%以下であ り、付加価値率の非常に高い部門となっている。この商品は販売開始以来、毎年 売上を伸ばしているが、この法人では既に新商品の開発にも取り組んでいる。 【特記事項】 8
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