バックエンド対策及び再処理技術に係る研究開発 8-6 泥火山現象の形成メカニズムの解明を目指して -上幌延泥火山噴出物の起源の解明- 4.0 (a) 1.0 ⛶ෆᒙ ቑᖠᒙ ⩚ᖠᒙ ภῡᒙ⩌ ୖᖠᘏἾⅆᒣ 3.0 TiO2 (%)0.5 K2O 2.0 (%) 1.0 泥質堆積物 0.0 0.0 0 ↑ 地下水と気泡ガスの湧出 地下水と 地下 水と気泡ガスの湧出 の湧出 5 10 Al2O(%) 3 15 20 20 40 60 SiO(%) 2 80 100 図 8-15 上幌延泥火山の泥質堆積物(●)と本地域の各地層(●,●,●,○) の化学組成(K2O,Al2O3,TiO2,SiO2) (b) (Miyakawa, K. et al., G3, vol.14, no.12, 2013, p.4980-4988., より一部加筆して転載) 基礎試 「天北」 基礎試錐 (c)深度(GL. -m) 声問層 幌延断層 幌延深地層研 幌延深地層研究センター N (d) 輝沸石 0 石英 オパール CT 稚内層 1000 斜長石 2000 スメクタイト 輝沸石 増幌層 上幌延泥火山 (N45 2’ E141 56’ (N45˚2’ 3”E141˚56’ 50” ) イライト 曲渕層 黄鉄鉱 断層 大曲 3000 石膏 羽幌層 松尾背斜 → 函淵層群 蝦夷層群 55km km 沖積層 更別層 稚内層 増幌層 勇知層 宗谷挟炭層 断層 伏在断層 推定断層 (Miyakawa, K. et al., G3, vol.14, no.12, 2013, p.49804988., より一部加筆して転載) 4000 菱鉄鉱 緑泥石 5000 0 声問層 背斜 向斜 図 8-14 (a)上幌延泥火山の泥質堆積物の産状と 地下水及び気泡ガスの湧出(b)本調査地域の表層 地質図 方解石 10 20 0 2 4 6 8 10 XRD 相対ピーク強度 図 8-16 (c)輝沸石の深度分布 (基礎試錐 「天北」の報告より) (d)上幌延泥 火山の泥質堆積物に含まれる鉱物 (Miyakawa, K. et al., G3, vol.14, no.12, 2013, p.4980-4988., より一部加筆して転載) XRD 相対ピーク強度= (試料のピーク強度/石英標準試料のピーク強度)×100 上幌延泥火山の表層には増幌層が分布(オレンジ色) 近年、地下空間の利用,防災,温室効果ガスなどの観 点から、泥火山の応用地球科学的研究が着目されていま す。泥火山とは、一般に地下で高い間隙水圧を持つ地下 水やガスが泥を伴って地表に噴出して生じた地形的高ま りなどの変形地形のことをいい、泥火山を形成するこの プロセスのことを泥火山現象と呼びます。 高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性の検討とし て、地質環境の長期安定性を評価する必要があります。 これに関する研究開発課題としては、異常間隙水圧と泥 火山現象との関連性を明らかにし、それに基づいて泥火 山現象の発生し得る地質条件を絞り込み、泥火山現象が 発生した場合の影響範囲などを明らかにすることが挙げ られます。しかしながら、我が国の陸域における泥火山 については、北海道の新冠泥火山,新潟県の松代泥火山 のわずか 2 例しかなく、更なる事例の蓄積が必要です。 そこで、北海道幌延町の上幌延地域において泥火山の可 能性が報告されている泥質堆積物(図 8-14)を対象に、 その起源の解明を行いました。以降、これを「上幌延泥 火山」と呼びます。 泥質堆積物の化学組成を調べ、既存の大深度ボーリン グ調査(基礎試錐「天北」 、図 8-14 (b) )から得られて いる本調査地域に分布する各地層を構成する主要な岩石 の化学組成の報告値と比較を行いました (図 8-15) 。そ の結果、上幌延泥火山で見られる泥質堆積物は、表層の 増幌層を含め、羽幌層,函淵層群の混合物と推定され ました。また、泥質堆積物に含まれる鉱物を X 線回折 分析 (XRD) によって調べ、基礎試錐「天北」の報告結 果と比較を行いました (図 8-16) 。結果、本地域では函 淵層群にしか見られない特徴的な鉱物である輝沸石とい う粘土鉱物 (図 8-16 (c) ) が、泥質堆積物に含まれること が分かりました (図 8-16 (d) ) 。上幌延泥火山の表層には 増幌層が分布しているため、図 8-16 (c) を参考に上幌延 泥火山における函淵層群の深度分布を推定すると、地下 約 2.2 ∼ 2.4 km になります。以上の結果から、上幌延泥火 山に見られる泥質堆積物は、 少なくとも地下約 2.2 ∼ 2.4 km にある函淵層群から地表へと周囲の岩石を巻き込みなが ら噴出した物であることが分かりました。 これまでの研究によって、上幌延泥火山において地下 深部からの物質移動が生じていたことは明らかになりまし たが、今後は、泥火山現象を生じさせる要因や、泥火山 現象の寿命あるいは、活動周期などを明らかにしていく必 要があり、この課題の解決に向かって取り組んでいます。 ●参考文献 Miyakawa, K., Tokiwa, T. et al., The Origin of Muddy Sand Sediments Associated with Mud Volcanism in the Horonobe Area of Northern Hokkaido, Japan, Geochemistry Geophysics Geosystems, vol.14, no.12, 2013, p.4980-4988. 原子力機構の研究開発成果 2014 101
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