日本およびニュージーランドの火山灰土における撥水性特性の評価

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第47回(平成26年度)研究発表会 論集
プレゼンテーション発表アブストラクト №114
日本およびニュージーランドの火山灰土における撥水性特性の評価
(株)建設技術研究所
1.はじめに
黒
田
卓
也
撥水性試験には Morality of ethanol droplet(以下 MED)
土壌の撥水性は、浸透能の減少や土壌侵食等の諸問題と
試験を用いた。MED 試験では 5 秒間で液滴が土壌中に浸透
密接に関連する特性として、日本をはじめとして世界各地
するときのエタノール溶液の表面張力(N/m)を撥水性の指
で研究・報告がなされている。
標(WR)とし、水の表面張力との差分 0.072-WR(N/m)を撥水
土壌の撥水性は、一般に乾燥した条件で強く、湿潤な条
性の度合いとして表した。さらに、撥水性の度合いを視覚
件では低下または消失するが、初期水分量の増加により、
的に表現するため、接触角(Contact angle, 以下 CA)に変
撥水性が強まる水分域を持つ土壌も存在する。また撥水性
換したものを参考として併記した。また、土壌水分特性曲
は、一般に土壌の有機物量の影響を受け、有機物量を表す
線の測定においては、pF=0-2 では吸引法を、pF=2-4 では
指標である全炭素量が増加すれば強まる傾向にある(図-1)
。 加圧法を、pF>4 では、試料を水分調整した後、水ポテン
この撥水性の水分依存性は、土の撥水性特性曲線で表わさ
シャルメーター(WP4-T, DecagonDevices, Inc.)を用いて
れ、全炭素量によって異なる傾向を示すことが示唆されて
土壌水分ポテンシャルを測定した。
いる。このように、撥水性の発現は、土壌水分と有機物の
相互作用であり、撥水性特性曲線ならびにこれを支配する
3.実験結果
撥水性パラメータの予測が難しいのが現状である。
本実験で得られた、水分量と撥水性強度の関係を撥水性
そこで本研究では、同じ環太平洋造山帯に属する地域と
特性曲線撥水性特性曲線を図-2 に示す。WR 強度 と含水率
して、日本および同種の研究が進められているニュージー
との関係から WR は自然含水比から土壌が乾燥していくに
ランドの火山灰土壌の撥水性特性曲線を比較すると共に、
従って発現し(θnon-WR)、最大値を示した後(θWR-max)、
全炭素量と水分量が土壌の撥水性に与える影響を評価した。 緩やかに減少していく傾向が見られた。
2.試料および実験方法
土粒子を疎水性有機物粒子が
覆うことにより撥水性が発現
実験に用いた試料は、福島県、栃木県およびニュージー
ランドで採取した火山灰土である。試験項目は物理化学特
性および撥水性評価とし、全て 2mm ふるいを通過した試料
を用いた(表-1)。撥水性試験における初期水分量の調整
は、蒸留水を噴霧することによる加湿、または 60℃に設定
土粒子
土粒子
疎水性
有機物粒子
した乾燥炉での乾燥により行った。
図-1 有機物による土粒子のコーティングと撥水性の発現
表-1 試料の特性
Site
Fukushima
Land-use
Soil order*
Forested
Andosols
Japan
Tochigi
Ngahinapouri
New Zealand
Waihora
Whatawhata
Forested
Andosols
depth
(cm)
0~5
5~10
10~15
13~24
0-5
5-34
34-70
70-90
0~5
5~10
10~20
0~5
Pasture
Andosols
5~10
10~20
Pasture(High fertility)
0~12
Cambisol
Pasture(Low fertility)
0~12
*FAO soil classification
Pasture
Andosols
Horizon
A
A
B1
B2
A
A2
A3top
A3bottom
2AB
A
A
B
Ap
Ap
Ap-Bs
A
A
Soil
texture**
Sandy loam
Clay loam
Loam
Sandy loam
Sandy clay
Sandy clay loam
Sandy clay
Sandy clay loam
Sandy clay loam
Sandy loam
Sandy loam
Sandy clay loam
Sandy clay loam
Sandy loam
Sandy clay loam
Light clay
Light clay
** ISSS standard
- 1 -
ρd
ρs
Clay
Silt
Sand
(gcm -3)
(gcm -3)
(%)
(%)
(%)
0.56
0.56
0.56
0.56
0.40
0.40
0.45
0.45
0.45
1.03
1.03
1.03
0.72
0.78
0.79
1.0
0.9
2.45
2.51
2.55
2.62
2.15
2.36
2.39
2.43
2.51
2.16
2.44
2.50
2.12
2.34
2.19
2.36
2.17
10.8
19.1
14.8
13.5
27.2
19.6
27.6
24.0
15.5
11.2
10.2
15.2
15.3
10.1
17.8
34.3
29.6
14.8
27.0
29.2
17.7
14.9
12.0
14.8
16.9
18.5
12.9
7.4
6.5
10.8
9.8
5.6
40.9
21.9
72.3
53.8
56.0
82.3
57.8
68.4
57.6
69.1
66.0
76.0
82.4
84.8
73.9
80.1
76.6
24.8
48.5
SSA
(m 2 g-1 )
87.3
95.0
130.3
90.5
51.2
32.5
10.5
9.3
87.4
pH
4.4
4.6
4.6
4.5
4.7
4.8
4.3
4.7
4.9
6.0
6.2
5.9
5.3
5.5
5.3
4.6
4.5
(mS/cm)
SOC
(%)
SON
(%)
C/N
Li
(%)
0.180
0.076
0.047
0.032
0.280
0.290
0.217
0.230
0.167
0.160
0.078
0.048
0.077
0.031
0.050
0.121
0.164
9.2
4.9
3.3
2.6
21.0
15.6
14.7
12.6
5.7
8.7
3.7
2.2
12.1
5.6
1.4
4.7
9.2
0.6
0.3
0.3
0.3
1.2
0.8
0.7
0.6
0.8
0.6
0.4
0.4
0.6
0.5
0.1
0.5
1.2
14.8
15.3
10.5
8.4
17.8
20.1
21.6
21.8
7.0
15.3
9.4
9.8
20.9
12.3
10.0
8.9
7.9
25.8
19.1
15.1
13.3
46.1
33.0
34.1
30.8
22.0
22.9
17.0
15.1
20.6
13.6
9.6
13.7
27.6
EC
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第47回(平成26年度)研究発表会 論集
プレゼンテーション発表アブストラクト №114
4.考察
(1)全炭素量と撥水性パラメータの相関性
本研究で得られた結果および、参考データとして福島県
1)
、愛知県 2)、デンマークの砂質土 3)から得られた撥水性特
性曲線を元に、撥水性パラメータの一つである曲線で囲ま
water repellency as a function of matric potential and
water content. Vadose Zone J., 9, 719-730.
3) de Jonge, L.W., O. H. Jacobsen, and P. Moldrup. 1999.
Soil waterrepellency: Effects of water content,
temperature, and particle size, Soil Sci. Soc. Am. J.,
63, 437-442
0.05
められた(図-3)。これは、全炭素量が増加するにつれ、撥
0.04
水性の発現水分域が増加したものと考えられる。しかし、
栃木県と Ngahinapouri の試料は、この相関性に当てはまら
なかった。この理由として、撥水性に寄与するのは、質量
0.072‐WR (Nm‐1)
れた面積 SWR と全炭素量を比較した結果、強い相関関係が認
あたりの全炭素量だけでなく、土粒子表面を被覆する炭素
θWR‐max
Fukushima,JP
0.03
Tochigi, JP
0.02
0.01
θnon‐WR
SWR
Waihora,NZ
Whatawhata,NZ
0
0
量(単位面積当たりの炭素被覆度)が関係するのではない
かと考えた。
0.1
0.2
0.3
初期水分量,θ (m3m‐3)
0.4
0.5
図-2 撥水性特性曲線および撥水性パラメータ
(2)撥水性特性曲線予測における従来手法の再現性向上
撥水性特性曲線に全炭素量と水分量が与える影響を、既
往の予測式を用いて確認した。撥水性特性曲線の予測には、
全炭素量から予測した傾きと切片を用いて、フィッティン
グ式(Two Region Water Repellency (TRWR) model
2)
)に当
てはめる方法で、実測値と比較した(図-4)。その結果、撥
水性パラメータが相関性に当てはまらなかった栃木県およ
図-3 撥水性パラメータと全炭素量の比較
な開きが認められた。その理由として、土粒子の炭素被覆
CA
( ゚)
0.072‐WR
(Nm‐1)
117
0.05
110
0.04
104
0.03
当てはまらなかった試料においても良好なフィッティング
99
0.02
が得られた。
Predicted
Predicted
予測値
(SOC)
(全炭素量)
(SOC)
94
0.01
Predicted
Predicted
予測値
(SOC/Area)
(炭素被覆度)
(SOC/Area)
90
90
117
0.05
00
0.05
00
0.05
110
0.04
日本およびニュージーランドの火山灰土壌を用いて、撥
104
0.03
水性特性を比較し、撥水性パラメータに水分量と全炭素量
99
0.02
が与える影響を考察した。地域や深さによって異なる撥水
94
0.01
性特性曲線および撥水性の各パラメータは、全炭素量であ
90
90
117
00
0.05
00
0.05
る程度説明することが確認されたが、一部試料では当ては
110
0.04
まらなかった。しかし、単位面積当たりの炭素被覆度を用
104
0.03
フィッティング
Fitted
99
0.02
Predicted
予測値
(SOC)
(全炭素量)
94
0.01
Predicted
予測値
(SOC/Area)
(炭素被覆度)
90
90
117
00
0.05
00
0.05
0.05
110
0.04
104
0.03
フィッティング
Fitted
99
0.02
Predicted
予測値
(SOC)
(全炭素量)
94
0.01
Predicted
予測値
(SOC/Area)
(炭素被覆度)
90
0
度の影響が考えられたため、単位面積当たりの炭素被覆度
から撥水性特性曲線を再度予測した結果、質量あたりの全
炭素量での予測と比較して、撥水性パラメータが相関性に
5.結論
いることによって、当てはまらなかった試料も含め、撥水
性特性曲線の再現性の向上を図ることができた。
6.参考文献
1) Kawamoto, K., P. Moldrup, T. Komatsu, L. W. de Jonge,
M. Oda. 2007. Water Repellency of aggregate size
fractions of a volcanic ash soil. Soil Sci. Soc. Am. J.,
71, 1658-1666
2) Karunarathna, A.K., P. Moldrup, K. Kawamoto, L. W.
de Jonge, T. Komatsu. 2010. Two-region model for soil
- 2 -
:文献 1)~3)
全炭素量,
び Ngahinapouri の試料(図-3)で、予測値と実測値に大き
Fukushima 0‐5cm SOC=9.2%
Measured
Measured
実測値
フィッティング
Fitted
Fitted
Tochigi 0‐5cm SOC=21.0%
Measured
実測値
フィッティング
Fitted
Predicted
予測値
(SOC)
(全炭素量)
Predicted
予測値
(SOC/Area)
(炭素被覆度)
Ngahinapouri 0‐5cm SOC=8.7%
Measured
実測値
Waihora 5‐10cm SOC=5.6%
Measured
実測値
0
1
2
3
4
5
pF(=log(‐ψ[cmH2O]))
060
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
初期水分量, 3m‐3)
Volumetric water content, θ(m
図-4 TRWR modelを用いたフィッティング図