rず " J - 地質調査所報告第 2 8 4号 , p . 1 7 3 3,2 0 0 0 Rep t .Geo l .S u r v .J a p a n,N o .2 8 4 葛根田花闘岩周辺の接触変成作用:自由エネルギー最小化法化学平衡計算に基づく解析 竹野直人 1 ・村岡洋文 1 ・佐脇貴幸 1 ・佐々木宗建1 Contactmetamorphismaroundt h eKakkondag r a n i t e : Analysesbasedonf r e eenergyminimizationmethod 一 By NaotoTAKENO¥ HirofumiMURAOKA1,TakayukiSAWAKl1 andMunetakeSASAKl1 A b s t r a c t : TheKakkondag r a n i t e,l o c a t e di nt h eKakkondag e o t h e r m a la r e a,S h i z u k u i s h itown , l w a t ep r e f e c t u r e ,i so n eo ft h ey o u n g e s tg r a n i t e 旨i nt h ewo r 1 d .I tc a u s e dc o n t a c tmetamorphismon t h es u r r o u n d i n gr o c k s .Thep r e s e n td e e pg e o t h e r m a lsystemcanbet h o u g h ta sr e t r o g r a d i n gr e c e n t , weexaminedt h es t a b i 1 i t yr e l a t i o n c o n t a c tmetamorphism.Usingf r e ee n e r g ym i n i m i z a t i o nmethod o fmetamorphicm i n e r a l si ns y s t e m sc h e m i c a l l ye q u i v a l e n tt of i v er o c ks a m p l e so b t a i n e dfromw e l l, WD-1a,d r i l l e dbyt h eNewEnergyandl n d u s t r i a lTechnologyDevelopmentO r g a n i z a t i o n .Wet r i e d t oc o n s t r u c tathermodynamicframeworkont h i smetamorphism.R e l a t i o no ft h eo b s e r v e di s o g r a d s canbet h e r m o d y n a m i c a l l ye x p l a i n e dandt h e2 0 0C t e m p e r a t u r ed e c r e a s efrom仕l et h e r m a lpeak e s t i m a t e dfromt h ei s o g t a d swerecon c 1 u d e d . 0 っと考えられている(加藤ほか, 1 9 9 3;蟹沢ほか, 1 9 9 4 ) .. 要 旨 国のプロジェクト(深部地熱資源調査)として新エネル ギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) により掘削され 岩手県雫石町にある葛根田地熱地帯には,世界で最も た WD-1a坑(第 1図)は,この花商岩体を深度 2860m 若い花闘岩のーっと考えられている潜頭性の花闘岩葛根 で捕らえ,深度 3700mの坑底付近での最高温度として 5 0 0Cを 超 え る 温 度 が 推 定 さ れ た (Muraokae ta l ., 回花闘岩が存在している.この花闘岩は,接触変成作用 0 を周囲の地層に及ぽしており,現在の深部地熱は,温度 の降下した現世の接触変成作用と考えることができる. 本研究は深部地熱資源調査プロジェクトとして新エネル ギー・産業技術総合開発機構により掘削された WD-1a坑 から採取した 5個の岩芯試料の全岩化学組成と化学的に 等価な系について自由エネルギー最小化法化学平衡計算 を用いて鉱物の安定関係について検討し,この地域の接 触変成作用について熱力学的なフレームワークを与える ことを試みた.その結果観察されるアイソグラッドの関 係をほぽ説明するとともにアイソグラッドから推定され 0 0C温度が下っていることが る過去のピーク温度から約 2 0 明かとなった. 1000m 」一一...J.一一-' 1 . はじめに 第 l図 葛根回地熱地帯及び深部調査井 WD-laの位置. F i g .1 L o q l i t yo fKakkondag e o t h e r m a la r e aa n dd e e p g巴o t h e r m a lr e s o u r c e ss u r v e ywe l 1W D-la. 岩手県雫石町にある葛根田花闘岩は,地熱探査で見い だされた潜頭性の花崩岩で,世界で最も若い花闘岩のー 1 K e y w o r d s : Kakkondag r a n i t e ,c o n t a c tm e t a m o r p h i s m , i s o g r a d ,f r e ee n e r g ym i n i m i z a t i o n ,d e e pg e o t h e r m a l e n e r g y,t h e r m o d y n a m i cs i m u l a t i o n 地殻熱部 ( G e o t h e r m a lR e s e a r c hD e p a r t m e n t ,G S J ) 円 - 地質調査所報告(第2 8 4号) 1 9 9 8 ) . この花開岩は接触変成作用を周囲の第三系及び先 加藤・佐藤, 1 9 9 5 ) . 第三系の地層に及ぼしており,温度が降下しつつある現 世の接触変成作用として,変成鉱物について多くの記載 3 . 実験の概要と用いた試料 がなされている(例えば,加藤・佐藤 ( 1 9 9 5 ),Muraoka e ta l .( 1 9 9 8 ),D oie ta l .( 19 9 8 ) ) . この地域の深部地熱 自由エネルギー最小化法化学平衡計算は,系が化学平 資源の熱源に時代的に直接つながると考えられる接触変 衡状態にあるときその自由エネルギーが最小になること 成作用を解明することは,熱源の熱履歴を明かにするこ を利用して,化学平衡状態にある相の種類と量を計算に とでもあり,深部地熱資源の評価にとって重要であると より求めるものである.自由エネルギーとして G ibbs自 由エネルギーを採用すれば,温度と圧力が一定の時の化 考えられる. 学平衡状態を求めることができ, H elmhortz自由エネル 今回の研究は,自由エネルギー最小化法を用いて,接 触変成作用について化学平衡論的に検討を行ったもので ギーを採用すれば,温度と体積が一定の時の化学平衡状 ある.現実の変成作用はさまざまな程度に平衡からはず 態を求めることができる.本研究では,変成作用の解析 れていると考えられるが,このような計算を行うことは, に通常扱かわれるパラメータ温度,圧力について化学平 接触変成作用に熱力学的なフレームワークを与えること 衡状態を求めるため系の熱力学的ポテンシャルとして であり,非平衡的な産状が実際にあったとしても,その Gibbs自由エネルギーを選び,それを最小とすることにす 解釈にある種の制約条件を課すことが期待できる.また る. 平衡論的に解釈可能な部分については,さまざまな定量 系の状態は,一般的に,系の組成が特定の相の組成に 的な予測につなげることができるであろう.本研究で用 一致するような特異点にないかぎり,換言すれば縮退し いた手法及び開発されたプログラムは,接触変成作用を た系でないかぎり,系の組成と温度,圧力を与えれば, 伴うことが多いであろうと考えられる深部地熱系におい 一意的に相の種類と量が決まることになる.我々が扱お て広く適用できる手法であると考えられる. うとしている問題では,系とは岩石と流体(水とガスか らなる)を合わせたものを指し,相とはこの系を構成し ている,鉱物相と流体相を指している.系の組成とは岩 2 . 地質及び地熱の概要 石と流体を合せた組成であり,系の組成を決めた段階で, 本地域は,地表に新第三系山津田層の泥岩が分布し, 系は物質的に閉じること,すなわち閉鎖系として計算上 山津田層の下部から深度 2660mに向けて,滝の上温泉 扱われる(ただし孤立系ではない).すなわち,系の組成 層,国見峠層,生保内層が分布する.上部では,主とし を与えて温度,圧力を変えると,それに応じて化学反応 て泥質岩とデイサイト質凝灰岩が不規則に厚さを変えて が起こり鉱物の種類と量が変わるが,その際熱は出入り 出現し,下部では主として泥質岩と安山岩質凝灰岩が不 するが系全体の化学組成は一定に保たれていると言うこ 規則に厚さを変えて出現する. 2 6 6 0m から 2860mまで とである.これの直接的なアナロジーは水熱合成実験で は9 先第三系の砂岩,泥岩,安山岩質凝灰岩等が出現す ある.水熱合成実験では,金管に試料と水溶液を封入し る (Muraokae ta l .,1 9 9 8 ) . 深度 2860mから深部では, て(ここで閉鎖系となる)炉の中に入れて高温と高圧を 葛根回花闘岩が出現する.この花闘岩は,潜頭性の花闘 かけ,ある時間が経過した後にこれを急冷して内容物を 岩で, WD-1坑以前の企業井でも確認されている(土井 取り出してどういう鉱物ができたか調べる.これを自由 ほか, 1 9 9 0 ) . この花闘岩は,坑井においてそれより上に エネルギー最小化法により計算により実験しようとする ある先第三系及び第三系の地層に接触変成作用を及ぽし ものである. ここで注意すべきことは,計算実験が水熱合成実験を ている.この接触変成作用は花崩岩体に近づくほど高変 成度となっており,黒雲母アイソグラッド,董青石アイ 駆逐してしまうことは決してないことである.むしろ, ソグラッド,カミングトナイトアイソグラッド,紅柱石 水熱合成実験と計算実験は車の両輪の関係にあると言え アイソグラッドが認められている(加藤・佐藤, 1 9 9 5 ; - る.なぜなら計算実験は,良くコントロールされた水熱 Muraoka e ta , . l1 9 9 8;D oi e ta l .,1 9 9 8 ) . これらのア 合成実験結果をその熱力学データの基礎としているから イソグラッドは,坑井掘削の際に花商岩着岩深度の推定 である.一方計算実験のメリットは,ひとことで言えば に利用されている(加藤ほか, 1 9 9 3 ),当地域では東北電 今回利用したようなプログラムを一度作成すれば実際の 力(株),臼本重化学工業(株)及び東北地熱エネノレギー 水熱合成実験にかかる時間とコストを削減することがで (株)により葛根田 l号地熱発電所 ( 5 0MW)及び葛根回 きることである. 2号地熱発電所 ( 3 0MW) が運転されており,浅部貯留 本研究では,岩石が水の過剰に存在する一定圧力条件 層及び深部貯留層から発電用の蒸気が採取されている. 下で 3 0 0Cから 7 0 0Cまで lCずつ温度を上げていくとき 深部地熱貯留層は,この花商岩体のまわりに発達するフ にどのように鉱物組み合わせが変化するかを 5個の岩芯 ラクチャーであると考えられている(加藤ほか, 1 993; 試料について計算実験で調べてみた.もし温度を上げる 0 0 O 06 葛根回花商岩周辺の接触変成作用(竹野 ほか) ごとに内容物を取り出してみる実際の水熱合成実験であ については過剰に存在するものと仮定し 5 0モル与えた. るならば単純に見積っておよそ 2000回の実験に相当する この仮想的な岩石(第 2表)について, Gibbs自由エネノレ ことになり,計算実験ならではこそ実行できる実験と言 ギー最小化法による化学平衡計算を行って,安定な鉱物 える. 計算に利用した岩芯はスポットコアで深部地熱調査井 組合せと,予想される化学反応について調べた.圧力は WD-1aより採取されたものから次の 5箇所を選び化学分 ( 0 . 5kbar) を仮定し,その他のものは 1 0 0MPa( 1kbar) 析を実施した(第 1表).すなわち,深度 1447.90m, を仮定した.温度は, 300Cから 700Cまで lCずつ上げ 1696.20m,2276.55m,2688.20m,2843.20m である. 7 こ. 最も浅い試料である 1447.90mのものについて 50MPa 0 0 O 反応は Na-K-Ca-Mg-Fe-Al-Si-H-O系で表現され, 次に岩石について簡単な記載を記す.深度 1447.90mの 試料は凝灰岩で,アルバイト双晶を持つ長石が緑簾石化 利用したデータは次のとおりである.鉱物は Hollandand またはセリサイト化し,基質には緑泥石,緑簾石が出現 19 9 0 ) を用い,同データセットで利用できる鉱 Powell ( している.深度 1696.20m の試料は凝灰岩で,斜長石は 物はすべて安定関係の検討を行った.固溶体鉱物はすべ セリサイトに交代され,基質には,多結晶質で不規則な て理想固溶体として扱った.その結果 4 8純鉱物種, 23固 形状の石英が目立つ.黄鉄鉱,硬石膏,石英脈が認めら 溶体鉱物種が検討対象となった.水のブガシチーは れる.2276.55m の試料は凝灰岩で,斜長石結晶片にはセ SUPERFLUID (Belonoshko e t a l .,1 9 9 2 ) を用いて リサイトと緑泥石が出現し,基質には 0.02-0.05mmの SaulandWagner ( 1 9 8 9 ) をフガシチー係数表にして利 褐緑色の黒雲母が出現する.磁鉄鉱が普遍的に産し,黄 用した.ガス種は, H20,H2,O2である.計算には, 鉄鉱はまれである.深度 2688.20m の試料は凝灰岩で, SOLGASMIX(Eriksson,1 9 7 5 )の手法に従った自由エ 黒雲母は変成鉱物として基質に多量に出現し,多結晶質 ネルギー最小化法で化学平衡を求める自作のプログラム の石英,組み合った蔽鉄鉱と黄鉄鉱,斜長石が産する. FLASK-SGを用いた.計算方法及びこのプログラムの概 深度 2843.20m の試料は凝灰岩で,カリ長石,黒雲母, 要は付録に記した. 白雲母,董青石,紅柱石,石英からなり,一部にコラン ダムを含む.これらの岩芯の化学組成を 20mごとに採取 4 . 計算結果及び反応 したスライムの化学組成と合わせて第 2図に示す.この 図から,実験に用いた岩芯の化学組成は,スライムの化 計算結果を第 3図一第 7図に示す.これらの図は,囲み 学組成範囲をほぼ覆い,その鉱物組成の変動を見ること 図中の鉱物の変化の著しい右側 2 0mole%の部分を拡大し により,本坑井に出現し得る鉱物について熱力学的に予 て示しである.ただし,次に記す温度範闘では計算は収 測することが可能となる. 束せず,解が得られなかった.すなわち W D1-1447.90の 実験は以上の岩石と等価な化学組成を持つ系を想定す 524-528C,455-457C,360-362C,W D1-1696.20の る. この時 Ti02,MnO,P20S などの少量の成分は無視 5 4 0,5 41 'C,W D12276.55の 540-542C,3 8 8 3 9 1C, し,その他の主成分についてモノレ数に直した.ただし水 W D1-2843.20の 5 4 2C,5 3 8,539C,5 3 3,5 3 4C,4 7 3 0 0 0 0 0 0 第 1表数値実験に使用した岩芯の化学組成. 分析は三菱マテリアル(株)総合研究所による. Table1 Chemicalc o m p o s i t i o no fc o r esamplesu s e df o rn u m e r i c a lexperimen t . A n a l y s i s :M i t s u b i s h iM a t e r i a lC o .ResearchCente r . c o m p o n e n t s( w t % ) W D l 1 4 4 7 . 9 0 8 i 02 5 8 . 8 1 5 . 6 A l z 03 0 . 7 5 Ti02 4 . 2 5 F e203 FeO 3 . 0 7 MnO 0 . 2 0 MgO 4 . 1 8 CaO 4 . 9 7 3 . 7 1 Na 20 K20 0 . 2 3 白 。1 3 P20S 3 . 1 0 H20+ H200 . 7 9 CO2 0 . 1 4 S 0 . 1 0 803 0 . 0 1 凶l To 1 0 0 . 0 WD11 6 9 6 . 2 0 5 8 . 6 1 4 . 3 0 . 8 1 4 . 0 2 3 . 9 8 0. 48 6 . 3 8 0 . 8 8 3 . 3 3 0 . 6 0 0 . 1 2 4. 42 0 . 7 2 0 . 1 6 1 .8 2 0 . 1 9 1 0 0 . 8 WD12 2 7 6 . 5 5 5 3 . 6 1 9 . 9 0 . 6 4 4. 40 3 . 5 2 0 . 2 7 4 . 5 9 4 . 2 3 4 . 5 2 1 . 12 0 . 0 8 1 .9 7 0 . 5 9 0 . 1 1 0 . 0 7 0 . 0 9 9 9 . 7 -19~ WD 1 四2 6 8 8 . 2 0 5 4 . 7 1 9 . 2 0 . 6 8 4 . 0 3 3 . 0 9 0 . 3 8 6 . 0 8 1 .4 4 4 . 45 1 .5 8 0 . 1 3 1 .7 7 0 . 6 3 0 . 1 2 1 .5 0 0 . 0 2 9 9 . 8 WD12 8 4 3 . 2 0 7 0 . 6 1 6 . 0 0 . 3 2 1 .3 3 1 .3 9 0 . 1 0 1 .4 3 2 ; 0 8 1 .3 8 3 . 6 8 0 . 0 7 1 .0 9 46 0. 0 . 0 5 0 . 0 1 0 . 0 1 1 0 0 . 0 崎 0 0 地質調査所報告(第2 8 4号) l l u s i t e < 5 0 0m 5 0 0t o1 0 0 0 + 1000to1 5 0 0 x1 5 0 0t o2 0 0 0 女 2 0 0 0t o2 5 0 0 2 5 0 0t o3 0 0 0 o3 0 0 0t o3 5 0 0 マ 3 5 0 0 < 口 ム 。 ¥ ロ 口 ‘ W D 12 8 4 3 . 2 0 。 日 ロ 聞 正 A n o r t h i t e I I tC o r d i e r i t e E p i d o t e ヴ / ロ ヘ + 官 l W D 1 1 4 4 7 . 9 0叩 G A n n i t e P h l o g o p i t e T a l c C u m m i n g t o n i t e • cC a l c i t e " . . D i o p s i d e W o l l a s t o n i t e 5 5 A W f 2 D 1 1 6 9 6 . -F T r e m o l i t e 第 2図 WD-la井から採取されたカツティングス及び計算に用いた岩芯試料の化学組成. F i g .2 Chemicalcompositiono fc u t t i n g sfromWD-laandcoresamplesusedf o rc a l c u l a t i o n . 第 2表計算に用いた仮想、系の化学組成. Table2 S t a r t i n gchemicalcompositiono fv i r t u a lsystemf o rc a l c u l a t i o n . 巴n t s( m o l e ) WD11 4 4 7 . 9 0 WD11 6 9 6 . 2 0 WD1 2 2 7 6 . 5 5 WD12 6 8 8 . 2 0 W D1 2 8 4 3 . 2 0 compon 0 . 9 1 0 4 0 . 9 7 5 3 0 . 8 9 2 1 Si02 0 . 9 7 8 6 1 . 17 5 0 0 . 1 8 8 3 A12 03 0 . 1 5 3 0 0 . 1 4 0 3 0 . 1 9 5 2 0 . 1 5 6 9 0 . 0 2 5 2 0 . 0 0 8 3 0 . 0 2 6 6 0 . 0 2 5 2 0 . 0 2 7 6 Fe203 0 . 0 4 9 0 0 . 0 4 3 0 0 . 0 1 9 3 FeO 0 . 0 4 2 7 0 . 0 5 . 5 4 0 . 1 5 0 9 0 . 0 3 5 5 0 . 1 1 3 9 MgO 0 . 1 0 3 7 0 . 1 5 8 3 0 . 0 2 5 7 0 . 0 3 7 1 0 . 0 8 8 6 0 . 0 7 5 4 CaO 0 . 0 1 5 7 0 . 0 7 1 8 0 . 0 2 2 3 0 . 0 5 9 9 0 . 0 7 2 9 Na 0 0 . 0 5 3 7 2 0 . 0 3 9 1 0 . 0 1 1 9 0 . 0 1 6 8 K20 0 . 0 0 2 4 0 . 0 0 6 4 5 0 . 0 5 0 . 0 5 0 . 0 H20 5 0 . 0 5 0 . 0 475Cである.図中解の得られなかった温度の所の線は, m の試料では, 300Cで斜長石,白雲母,緑泥石,赤鉄鉱 その上下の解が得られた温度の結果を直接結んで、ある. が出現し,温度の上昇に伴い紅柱石,蓋青石,黒雲母, 0 0 カミングトナイト,サニディンが出現する.W Dl-2276_55 なお以下の記述では,混乱しない限り固溶体鉱物の端 成分鉱物で代表して,その回溶体鉱物全体を指すことと m の試料では, 300Cで WDl-1447.90mの試料と似た傾 する.例えば,童青石鉄董青石間溶体のことを単に董脊 Dl 向を示すが,トレモライトと滑石が認められない .W 石と呼ぶ. -2688.20m の試料では, WDl-1696 2 mと似た傾向を示 0 固 す. W Dl-2843.20m の試料では, 300T付近では W Dl- WDl-1447_90mの試料では, 300Cで石英,曹長石成 0 分に富む斜長石,緑簾石,白雲母,緑泥石,赤鉄鉱が出 2276_55m と似ているが,黒雲母が限られた温度範囲で出 現し,温度が上昇するにつれ,曹長石成分は減少し,緑 現し,カミングトナイトが出現せず,紅柱石が高温部で 簾石も減少する.白雲母に代わってカリ長石,サニデイ 出現する@鉱物の消長をもたらしている反応式を図の右 ンが出現しさらに黒雲母,再びサニディンが出現する. に示し,その鉱物の略号を第 3表に,反応の一覧を第 4表 撮泥石は減少し, トレモライト, ~骨石,董青石,カミン に示す. グトナイトが温度の上昇とともに出現する.WDl-1696_20 -20- 葛根回花商岩周辺の接触変成作用(竹野 ほか) W D 1 1 4 4 7 . 9 m 7 0 0 7 0 0 ωト 。﹄コ#伺﹄@且に﹄ 6 0 0 300 1岱竺Cum叫 H20( 1 4 ) 匡+ 7 P h t 2 4 0 0 M o l ef r a c t i o n (0 ・ 3 C u m+4Qtz+4H 2 0 一 一 ( 1 1) 同+ 1 6 H 2 0'^' n円c a n c + 3 C ーヲ9Õ~~ê'hl"~ ( 8 ) Ql 』ー コ 日 伺 包 5∞ 0 . . E O ト 1 5 T 1 c + 6 A n + 1 2 H 2 0( 4 ) 3D蕊市川C h l . . . . . P r e s e n t T . 0 . 8 0 . 8 2 0 . 8 4 0 . 8 6 0 . 8 8 0 . 9 0 . 9 2 0 . 9 4 0 . 9 6 0 . 9 8 Molef r a c t i o n 第 3図 WDl1 4 4 7 . 9 0 の計算結果. 右上に小さく見える全体図のうち 80%以上の部分を拡大して示す. Fig.3 ResultsofW Dl-1447.9 0 . Portionabove 80%ofinsetfigureisenlarged WD1・1 6 9 6 . 2 m 7 0 0 町 旧 n c a e M nu nU 犯 hud 内 U1 U t l﹄ 4 M a g n e t i t e 6 0 0 “ (O)22EEEβ 7 0 0 (0 ・2250aεω ( 1 2 ) ︽ U 0 5 ( 6 ) ト O i z + P g H e m a t i t e 4 0 0 3 0 0 0 . 8 0 . 8 2 0 . 8 4 0 . 8 6 0 . 8 8 0 . 9 0 . 9 2 0 . 9 4 0 . 9 6 0 . 9 8 Molef r a c t i o n 第 4図 WDl1 6 9 6 . 2 0 の計算結果. 右上に小さく見える全体図のうち 80%以上の部分を盤大して示す. Fig.4 ResultsofW Dl-1696.2 0 . Portionabove 80%ofinsetfigureisenlarged -21- 地 質 調 査 所 報 & Eコ ( 第2 8 4号) WD1-2276. 55m Molef r a d i o n )ω (0 ・ a ε 由ト ﹂コ芯﹄o ! 7 l } 1 ( 0 . 8 0 . 8 2 0 . 8 4 0 . 8 6 0 . 8 8 0 . 9 0 . 9 2 0 . 9 4 0 . 9 6 0 . 9 8 M o l ef r a c t i o n 第 5図 WDl2 2 7 6 . 5 5 の計算結果. 右上に小さく見える全体図のうち 80%以上の部分を拡大して示す. F i g .5 R e s u l t so fWDl-2276.5 5. P o r t i o nabove80%o fi n s e tf i g u r ei se n l a r g e d. WD1-2688. 2m 700 600 3 0 1 O Molef r a c t i o n n u (0・)@﹂コお﹂由己EOト ( 9 ) ( 6 ) ~P時ntT 0 . 8 0 . 8 2 0 . 8 4 0 . 8 6 0 . 8 8 0 . 9 0 . 9 2 0 . 9 4 0 . 9 6 0 . 9 8 M o l ef r a c t i o n 第 6図 WDl2 6 8 8 . 2 0 の計算結果. 右上に小さく見える全体図のうち 80%以上の部分を拡大して示す. F i g .6 R e s u l t so fWDl-2688.2 0 . P o r t i o nabove80%o fi n s e tf i g u r ei se n l a r g e d . -22- 一一蕊: + M s And+Kls+H20 ( 1 3 ) コ ﹂ n u ( 7 ) E 由ト 伺﹄φ巳 H ~~~.+8~~8~20 (10) 恒+ 2 P h l+ 6 Ms 1 5 Q I (0 ・) O ﹂ .h-何 CVA ﹄h白円由主目。一∞ ・圃 ⑦ ↑ m o ω m Mmw﹄ 明 ωt的コ一何万C︿ ︽ 。日亡。一℃﹄O Q 。==kAF三o£C BZCOHOSEε コO 。一のト ∞ ω z v o EE--Eω日一﹀00的コE --E E 0 0白 ︼ ﹂ 一 。 日 一 ωと﹂ω一ち﹂00 ∞ 一 ω t v o 主一 oEO﹄ト 2500由 コ 三 。 ﹂ Oε 2 -一 官 。 判 。 一 宮 ω﹄仏 C055εε コO ω立的コ一句℃C︿ 百 ﹀﹄ ω ωωao - OEQ E ---Eo ・・ -ωOU-au ・ ・ ・ ・ ・ 旧 O O O N 0 0N ( E ) £ 立 のQ ム (寸凶寸-マ) (NωSFEE-PE-eNF} ・ F F } {ohzw Fv口E.0N凶- 0 0旧 -23- ωZCC 0 0 0円 酬 白主一凹 ( 吉 。 凹 の 寸@ w目 苧 F} (NS・ R5 ﹀﹀du凶-円乙 wp@ @ h N N I F凸豆一円寸凶 dp)ι 凶 凶寸 前 一( 一 , =) (oohZZFDEN E- . -Zqu ( h o円 丙 ) I I 。 ﹂ 日 { 司m w町 四 } C 百 一 線 対 ⋮ 一 銭 誠 一 二 M E - - 2033 三 守一 {omE215E-B ← 時 ' " ' Molef r a c t i o n 0 3 0 1 園 周 円 FCM﹄由甲山由日一的コ一SC︿ 田 εコ0 F R N F h F F C V C 白山川町gE055Z 寸 O F . 0 a∞d c E 円。寸由=﹄由一色﹄on薗 M﹄寸的寸口一団ト) ( 寸C ∞ 富 ∞ ぎ = 寸 主 三 戸 こ } 丙 内 目 川 ( 否 。 お 刷 N ‘ 口 主 z 一 自叩 2 s@2 ι F 5 部刊量一昨日一豆町ル 語一 { O N 何時 weωF d 旦 ‘ ω )225ω ♀ε (0 ・ 0 0由 } (oohv q F, F口 ﹀ ﹀ 凶 ∞ 田 守F o o h ) 一 0 . 9 8 0. 96 0 . 9 4 0 . 9 2 0 . 9 0. 8 8 0. 86 0. 84 0 . 8 2 0. 8 ほか) 葛板田花樹岩周辺の接触変成作用(竹野 WD1・2 8 4 3 . 2 m 5H20 ( 1 ) M o l ef r a c t i o n 第 7図 WD1 2 8 4 3 . 2 0 の計算結果. 右上に小さく見える全体図のうち 80%以上の部分を拡大して示す. F i g .7 R e s u l t so fWDl-2843.2 0 . P o r t i o nabove80%o fi n s e tf i g u r ei se n l a r g e d. 第 8図 計算から予測される変成鉱物の出現と WD-l坑で実際に観察される変成鉱物の比較及びアイソグラッド温度の推定. 括弧内には,出現または消滅温度とその反応式番号及び岩芯番号(出現または消滅のいずれか一方)が示される. F i g .8 Comparisono fp r e d i c t e dando b s e r v e dmetamorphicm i n e r a lp a r a g e n e s i sande s t i m a t i o no fi s o g r a dt e m p e r a t u r e. Temperatureo fa p p e a r a n c eo rd i s s a p p e a r a n c eandr e a c t i o nnumberw i t hac o r enumbera r eshowni np a r e n t h e s e s . ・ ・ ・ ・ ・ ・ 町 地 質 調 査 所 報 告 ( 第 284号) 第 3表鉱物の略号, 鉱物名及び化学式. 1a r t d 計算に用いた式量はこの化学式に基づく (Hol andPowel 1( 1 9 9 0 ) に従う). 第 4表反応式一覧. Fe-Mg系固溶体鉱物が関与する反応で同じ形の式で 表現されるものは M g端成分の場合のみ示した. Table4 L is to fchemicalr e a c t i o n s . T a b l e '3 A b b r e v i a t i o n .o fminerals, mineralname, andchem i C a lf o r m u l a . Formulaweightusedi n 'ca1 c u l a t i o ni sbasedon 1andandPowel 1( 1 9 9 0 ) . ) t h i sformula( a f t e rHol a b b r e v i a t i o n s Ab An And C h l Crd Cum C z o Ep Hem K f s Ms Mも Pg P h l Q t z T l c τ k m i n e r a l s も e a l b i a n o r もh i 七e a n d a l u s i t e c 1 i n o c h l o r e もe c o r d i e r i c u m m i n g t o n i t e c l i n o z o i s i t e e p i d o t e h e m a t i t e K f e l d s p 位 旬 m u s c o v i m乱 . g n e t i t e p a r a g o n i 旬 p h l o g o p i 七 e q u 紅色z t a l G 色r e m o l i t e OnlyMg-endmemberr e a c t i o n sa r eshownf o rt h e r e a c t i o n swhichi n v o l v eFe-Mgs o l i ds o l u t i o nmine r a l si nas i m i l a rf o r m u l a t i o n . f o r m u l a N a [ A l S i g ] O s C a [ A I S i ] O s 2 2 A l S i Os 2 Mg ( M g A l ) S i M l S i ] 01O( O H ) s 4 Mg [ A I S i ] 0 1 S 2 4 s M g 2 M g g ( M g 2 ) S i 4 [ S i 4 ] 0 2 2 ( O H ) 2 哩A IA 1 aS i 01 O H ) Ca a 2( C a 2 F e A h S i g 0 1 2 ( O H ) F e 2 0 a K [ Al S i a ] O s K ( A I ) S i [ S i A l ] 0 1 o ( O H ) a 2 2 e 04 FeF 2 N a (A l ) a ) S i [ S i A l ] 0 1 0 ( O H 2 2 KMg(Mg ) S i [ S i A l ] 0叫OHh 2 2 S i 0 2 叫OH) a Mg MgSi [ S i ] 0 2 2 2 C a aMg (Mg ) S 弘[ S i ] 02 a 2 4 2(OHh Qtz+Ep+Ms 7Qz+6 C z o+C h l 2Chl+5K 色+苛 Tr+6 C h l 3 Q Q t z+3 ~+~ 町 8+O . 5 H e m+2An+1 .5H 0 2 ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) -( 4 ) 官 +1 0 A n+6H 0 2 5 P h l+2An+1 0 Q t z+4H2 0 1 5 T l c+6 An+1 2H 0 2 W A~+~+~O 1 1 Q t z+2 C h l+8And 8K 色 +3 C h l 2 9 Q t z+6 C h l 2 Q t z+Ms+C h l 1 5 Q t z+2 P h l+6M 日 7 T l c 5 7 Q t z+14Ch 1 Qtz+Ms 2 4 Q t z+7 P h l 5 C r d+8H2 0 5 P h l+3Ms+9 Q t z+4H 0 2 8 T l c+3 C r d十 16H 0 2 P h l+C r d+4H 0 2 3Crd+8K お +8H 0 2 3Cum+4Qtz 十 4H~0 8Cum+7 C r d+4 8 日2 0 And+K 色 +H 0 2 7 K f s+3Cum+4H 0 2 ( 6 ) ( 7 ) ( 8 ) ( 9 ) ( 1 0 ) ( 1 1 ) ( 1 2 ) ( 1 3 ) ( 1 4 ) れるものではなく,岩石の組成により異なるいくつかの 5 . 考察 反応が一つのアイソグラッドとして認識される可能性が これらの反応の多くは自由度が 2以上の連続反応であ るが,図の上では,徐々に鉱物が減少して,新しい鉱物 あることが分かる. 次に少し細かく見てみよう.緑簾石はすべて反応( 1 )に が増えていく反応と比較的シャープに鉱物が消滅して, 1 )の反応が 新しい鉱物が出現する反応がある.第 4表の ( より 380Cから 400Cの間で消失している.緑泥石は岩石 8 ),( 9 ),( 1 2 )で消失し,その温度 の組成により,反応(7), ( 前者のタイプであるほかは後者のタイプであり,連続反 応であっても鉱物組み合わせが急変するものが多いこと 範囲は, 476Cから 539Cにまたがっている.白雲母は反 9 ),帥で消失し,その温度範囲は, ' 5 2 0 . Cから 566C 応式( が分かる.このことはこの地域の接触変成作用のアイソ グラッドが明瞭であることの一つの理由であろう. である. トレモライトは一つの試料でしか出現ーしないが,反応 各試料の鉱物組成の変化から,鉱物の出現し始める温 度及び消滅する温度とその反応式をまとめたのが第 8図 ( 2 )で出現し,反応(4)で消滅している.この間出現してい 0 0 0 0 0 で,計算により予測される結果と実際に WD-1坑で観測 る温度は, 363Cから 453Cである. 3 ) ,( 7 ) , ( 9 )で出現し,反応(1 0 ), で消滅 黒雲母は反応( された鉱物の出現深度を比較して示した.予測される結 果には,ある変成鉱物が出現または消滅する温度とその 消滅する温度は 532Cから 618Cまでにわたる.このよう 反応式番号を岩芯試料ごとに示した.実際の坑井ではカ ミングトナイトと直閃石がほぽ同じ深度で出現している に黒雲母は当地域の変成鉱物の中で最も出現と消滅の温 度が岩石の組成に依存してばらつく鉱物であることが分 が,計算ではカミングトナイトしか出現していない.こ かる.このことは,黒雲母アイソグラッドは「渉む」傾 向があり,その解釈に際し岩石の全岩組成効果に注意を 0 0 ω "Cから 521 "Cまでにわたり, する.出現し始める温度は 397 れは,本来ならカミングトナイトが直閃石より Caを広い 範囲の組成で固溶するのに対し計算で扱っているカミン ψ 0 0 払わないといけないことが分かる. 4 ) 滑石は一つの試料でしか計算上出現しないが,反応( グトナイトは熱力学データの理由で Caを固溶する扱いに なっていないため実質的にカミングトナイトと直閃石が で出現し,反応仙で消滅する.鉱物が出現している温度 同じ組成で同質多形の関係になってしまい,天然に較べ て直閃石が出現しにくくなっているものと思われる. 範囲は 454Cから 512Cである.この鉱物は,加藤・佐藤 ( 1 9 9 5 ) に産出が報告されているものの当地域の変成鉱物 この点を除くと計算により予測される鉱物の出現順序 と実際の出現順序はこれまであまり注意を払われていな かった滑石の出現まで含めて驚くほど良く一致している ことが分かる.また反応式まで検討すると,当地域にお けるアイソグラッドの多くは,一つの反応式により表さ としてあまり注意を払われていないように見えるが, W D -1坑でも深度 2100mから 2760mにかけて産出している 0 0 (Muraoka e ta l .,1998). あまり注意を払われず,一見 奇異に見えるこの変成鉱物の出現が熱力学的には合理的 なものであることを,今回の計算は示している. -24- 葛根回花商岩周辺の接触変成作用(竹野 ほか) 6 ) 董青石は反応( ( 8 ),( 9 ),側で出現し,その温度範囲 ヲ は 493Cから 532Cである.そして,計算の上限温度であ 500 600 o~ 0 0 る 700Cまで出現している.この変成鉱物は多様な反応で 0 出現するわりには,その温度範囲は狭くアイソグラッド の全岩組成依存性が比較的小さいと言える. カミングトナイトは反応( 1 1 ), 但 ) , ( 1 4 )で出現し,その温 1, 000 度範囲は 529Cから 618Cである.そして計算の上限温度 0 0 である 700Cまで出現している. 紅柱石は,パラゴナイトの関与する反応( 5 )で 480C付近 0 5 2 E で出現する場合と,反応( 1 3 )で 566Cで出現する場合がある. 0 ? l i f i e dl p r e s e n t t e m p e r a t u r e p r o f i l e 町 0 M e t a m o r p h i c p e a k t e m p e r a t u r e He p r of Bよ ψ , o o o パラゴナイトについては,当地域で出現していると言う 報告はなく,計算上の暇庇である可能性もある.パラゴ ナイトの量は,白雲母に固溶できる量よりもはるかに多 心実際の岩石で Naがどの相に分配されているのかを今 3, 000 後っきとめる必要がある.このようにパラゴナイトを伴 う反応には疑問があるので,第 8図には反応仰のみ示し た. このようにマクロには,計算と天然の産状は調和的で 3, 800 第 9図 プイソグラッドから推定される過去のピーク温度と現 在の検層温度との比較. B:黒雲母アイソグラッド, C 童青石アイソグラッド, Cu: カミングトナイトアイソグラッド, A 紅柱石アイソグラッド. 現在の地温プロファイルは Muraokae ta l .( 1 9 9 8 ) による. F i g . 9 Comparison o f peak m巴tamorphict e m p e r a t u r e e s t i m a t e dfromi s o g r a dandp r e s e n tt e m p e r a t u r ep r o f i l e . B :b i o t i t ei s o g r a d,C :c o r d i e r i t ei s o g r a d,C u : cummin g t o n i t ei s o g r a d,A :a n d a l u s i t ei s o g r a d .P r e s e n tt e m p e r a t u r ep r o f i l ei sa f t 巴rM uraokae ta l .( 1 9 9 8 ) . あるので,第 8図の下部に,黒雲母アイソグラッド,董 青石アイソグラッド,カミングトナイト(直閃石)アイ ソグラッド,紅柱石アイソグラッドを特徴づける鉱物の 出現する反応式番号とその中での最低温度をまとめた. 黒雲母アイソグラッド,童青石アイソグラッド,カミン グトナイト(直閃石)アイソグラツド,紅柱石アイソグ “ ラッドの最低温度は 397C,493C,529C,566Cとなり, 0 0 0 0 このアイソグラッドの深度と温度の関係を現在の地温プ ロファイルに重ねて示したのが第 9図である.これによ ると現在の地温が深度 2800m付近で少くとも 200C降下 0 6 . まとめ していることが推定される. Sasakie ta l .( 19 9 8 )は , WD-1坑の変成作用から推 自由エネルギー最小化法を用いて, WD-l坑から採取 定した過去の温度プロファイルとして,榎並(19 9 7 )を された 5個の岩芯試料についで,その鉱物組成の変化を 引用している.本研究の結果はこれに比べて黒雲母アイ 温度の関数として調べた.圧力は, 1447.90mについては ソグラッドは, 100C近く高く,童青石アイソグラッドは 9 500barとし,それ以外については 1000barを仮定し,水 5 0C近く低く,紅柱石アイソグラッドは, 6 0C近く低い. は過剰に存在するものとした.温度は 300Cから 700Cま この違いは,仮定している圧力の違いのほか,榎並 ( 1 9 9 7 ) でとした.この結果実際の産状と調和的な変成鉱物の出 0 0 0 0 0 が天然の観察から帰納した結果を用いているのに対し, 現順序を得た.自由度が 2以上の反応である連続反応の 本研究は,実験データから演揮した結果を提示している 多くは,シャープな鉱物変化を示し,当地域のアイソグ と言う違いを反映したものであろう.帰納した結果には ラッドが明瞭なものである一つの理由であると考えられ その地質学的解釈上の不確実性が避けられない一方,我々 る.また多くのアイソグラッドは一つの反応ではなく, の手法には,熱力学データ及び固i 容体モデルの不十分さ 全岩組成により異なる複数の反応である可能性があるこ があり,これらがこのような不一致をもたらしているも とが示された.またこれら複数の反応は比較的近い温度 のと考えられる. 範囲で起こるものが多く,これが当地域のアイソグラッ このように今回の計算は接触変成作用のマクロな理解 ドが明瞭なものである第 2の理由であると考えられる. と解釈上の留意点について,客観的な基準を与えること しかしながら,これらのアイソグラッドの中で黒雲母は が分かつたが,上記したような不十分さの改善及び,固 最も全岩組成依存性が大きしその解釈には注意が必要 i 容体組成にまで立ち入った実際の産状との比較, CO2等の であることが示された.当地域の変成鉱物としてあまり ガス組成の影響,酸化還元状態の影響など今後さらに取 、注意されていなかった滑石の出現は熱力学的に合理的な ものであることが示された.黒雲母アイソグラッド,董 り組むべきテーマが残されている. 青石アイソグラッド,カミングトナイト(直閃石)アイ -25 地質調査所報告(第2 8 4号) ソグラッド,紅柱石アイソグラッドを特徴づける鉱物の 蟹樺聡史・土井宣夫・加藤修・石川賢一 ( 1 9 9 4 ) 出現する最低温度は各々 3 9 7C,493T,5 2 9C,566T が 岩手県,葛根田地熱地域に伏在する第四紀葛根 得られ,これによると現在の地温が深度 2800m付近で少 回花崩岩.岩鉱, 8 9,3 9 0 4 0 7 . 0 0 加藤修・土井宣夫・村松容ー(19 9 3 ) 岩手県葛根 くとも 2 0 0C降下していることが推定された. 0 田地熱地域における新期花商岩類と地熱貯留層. 謝辞 地熱学会誌, 1 5,4 1 5 7 . 新エネルギー・産業技術総合開発機構及びニュー 加 藤 修 ・ 佐 藤 浩 ( 19 9 5 ) 第四紀花商岩をターゲ サンシャイン計画推進本部には研究推進上さまざまな便 宜を図っていただきました.ここに記して謝意を表しま ツトにした葛根田地熱地域の深部貯留層開発に す. ついて.資源地質, 4 5,1 3 1 1 4 4, M e t r o p o l i s,N .,R o s e n b l u t h,A .W.,R o s e n b l u t h ,M. N .,andT e l l e r , A .H. ( 1 9 5 3 )E q u a t i o no fs t a t e c a l c u l a t i o n sbyf a s tc o m p u t i n gm a c h i n e s .] o u r . 1 ,1 0 8 7 1 0 9 2 . C h e m .P h y s .,2 Muraoka,H .,U c h i d a,T . , S a s a d a,M.,Y a g i,M., Akaku,K . , S a s a k i,M.,Yasukawa,K . ,M iyaza k i,S .,D o i,N .,S a i t o,S .,S a t o,K.a n dTanaka,S . ( 19 9 8 ) Deepg e o t h e r m a lr e s o u r c e ss u r v e yp r o m: i g n e o u ,s metamporphic andh y d r o t h e r g r a malp r o c e s s e si naw e l le n c o u n t e r i n g5 0 0C a t ,Kakkonda ,J a p a n .G e o t h e r m i c s , 3 7 2 9m d e p t h 2 7 ,5 0 7 5 3 4 . S a s a k i,M F u j i m o t o,K . , S awaki,T .,Tsukamoto, H .,Muraoka,H .,S a s a d a,M.,O h t a n i,T .,Y a g i, M.,Kurasawa,M.,D o i,N .,Kato,0 .,K a s a i,K . , Komatsu , R .a ndMuramatsu , Y .( 1 9 9 8 )C h a r a c t e r i z a t i o no fam a g m a t i c / m e t e o r i ct r a n s i t i o n z o n ea tt h e Kakkonda g e o t h e r m a ls y s t e m , n o r t h e a s tJ a p a n .P r o c e e d i 増 S0 1t h e9 t hI n t e r n a ゆo s i u mo nM i 匂t e r -R o c kI n t e r a c t i o n t i o n a lS Y 1 WRI-9/Taupo/New Z e a l a n d( A r e h a r t ,G .B . andH u l s t o n ,J .R .e d よ4 8 3 4 8 6 . S a u l,A .a n dWagner ,W. ( 1 9 8 9 )A f u n d a m e n t a l e q u a t i o nofwaterc o v e r i n gt h er a n g ef r o m出 e m e l t i n gl i n et o1 2 7 3K a tp r e s s u r e su pt o 2 5, 0 0 0MP A .f i 仰に P h y s .C h e m .R e fD a t a ,1 8, 1 5 3 7 1 5 6 3 . Saxena,S .K.andE r i k s s o n ,G .( 1 9 8 3 )T h e o r e t i a l c o m p u t a t i o no fm i n e r a la s s e m b l a g e si np y r o l i t e andl h e r z o l i t e .] o u r .P e t r o l .,2 4 ,5 3 8 5 5 5 . Saxena, S .K.E r i k s s o n , G .( 1 9 8 5 )A n h y d r o u sp h a s e e q u i 1 i b r i ai ne a r t h ' su p p e rm a n t l e .] o u r .P e t r o l 2 6 ,3 7 8 3 9 0 . Wood ,J .A .a nd H a s h i m o t o,A .( 1 9 9 3 )M i n e r a l e q u i 1 i b r i u mi nf r a c t i o n a ln e b u l a rs y s t e m s .Ge o -c h i m .C o s m o c h i m .A c t a ,5 7 ,2 3 7 7 2 3 8 8 . 文 献 B e l o n o s h k o,A .B . ,S h i,P .andSaxena,S .K. ( 1 9 9 2 ) SUPERFLUID:A FORTRAN-77programf o r c a l c u l a t i o no fG i b b sf r e ee n e r g yandvolumeo f C-H-O'-N-S-Arm i x t u r e s .C o m p u t e r s& Ge o s c z e n D ι s ,1 8 ,1 2 6 7 1 2 6 9 . 土井宣夫・加藤修・村松容ー(19 9 0 ) 岩手県葛根 司 田地熱地域における新期花闘岩類と先第三系内 0 貯留層について.日本地熱学会平成 2年度学術 講演会講演要旨, 6 . D o i,N .,Kato,0 .,I k e u c h i,K . , Komatsu ,R . ,M i y a z a .,Akaku ,K.a ndU c h i d a,T. ( 1 9 9 8 )G e n e k i,S s i so ft h ep l u t o n i c h y d r o t h e r m a ls y s t e ma r o u n d q u a r t e r τ m r yg r a n i t ei nt h eKakkondag e o t h e r mals y s t e m,J a p a n .Ge o t h e r m i c s ,2 7,6 6 3 6 9 0 . 榎並正樹 ( 1 9 9 7 ) 葛根田地熱地帯と接触変成作用. 地球惑星科学合同学会要旨(名古屋大会), D4 2 0 6,2 5 5 . E r i k s s o n ,G .( 1 9 7 5 )Thermodynamics t u d i e so fh i g h l I . SOLGASMIX ,a t e m p e r a t u r ee q u i l i b r i a .X c o m p u t e rprogramf o rc a l c u l a t i o no fe q u i 1 i b r i u m h e m i c a c o m p o s i t i o ni nm u l t i p h a s es y s t e m s .C ,8 ,1 0 0 1 0 3 . S c r i p t a E r i k s s o n ,G .andHack,K. ( 19 9 0 ) ChemSage-A c o m p u t e rprogramf o rt h ec a l c u l a t i o no fc o m p l e xc h e r n i c a le q u i 1 i b r i a .M e t a l l u r g i c a lt r a n s .B, 2 1 B , 1 0 1 3 1 0 2 3 . Ho l 1a nd ,J .T B .a n dPowe , 1 lR .( 19 9 0 ) Ane n l a r g e d and u p d a t e di n t e m a l 1 yc o n s i s t e n tt h e r modynamicd a t a s e tw i t hu n c e r t a i n t i e sandc o r r e l a t i o n s :t h es y s t e mKzO-Na z O-CaO一MgO -MnO-FeO-F e 2 0 3-A1 z03-Ti02-SiOz-C H2-O2・ JM e t a m o r t h i cGe o l8 ,8 9 1 2 4 . Ho l 1a nd ,T.J .B .a ndPowe , 1 lR .( 19 9 8 ) Ani n t e r na l 1 yc o n s i s t e n t仕l e r m o d y n a m i cd a t as e tf o r p h a s e so fp e t r o l o g i c a li n t e r e s t .JM e t a m o r t h i c Ge o l1 6 ,3 0 9 3 4 3 . 勺 岨 司 リ リ (受付:1 9 9 9年 9月1 7日;受理:2 0 0 0年 6月2 6日) リ nhu ワ ム ︼ 葛根回花樹岩周辺の接触変成作用(竹野 ほか) 付金量: 自由エネルギー最小化法化学平衡計算プログラム FLASK-SG 相 lは気相で ml種のガスを含む.相 2から相 l+qは L ま じめに 固溶体鉱物で各固溶体は mp種の端成分を含む.相 1+ 多成分系での化学平衡の計算は,反応生成物の予測を q+1から相 1十 q+sまでは純鉱物とする.このような添 行うためにさまざまな分野で行われている.地球惑星科 字を用いて次のように化学量を表示する.時zは相 ρの端 S a x 学の分野では,高温高圧な地殻内での反応の予測 ( 成分 t のモ 1レ数とし,純鉱物の場合は叫Iのように端成分 r i k s s o n 9 8 3 ),高温低圧な惑星関空間 e n aandE 9 8 5,1 ,1 9 9 3 ) などに での反応の予測 (Wooda ndHashimoto,1 O P iは相 ρ中の端成分 1の が一つの相と言う表記をする .g 純粋標準状態での G i b b s自由エネルギー.a piJ は相 ρ中の 利用されている.このような計算にはコンビュータが利 端成分 iが含む成分 jの化学量論数である. 副 用され,インハウスで利用される汎用のコードも知られ 以上を用いて ( 1 ) 式は気相,固溶体鉱物,純鉱物の和と ている(例えば, E r i k s s o nandHack,1 9 9 0 ) . 本研究で して次のように書換えられる. 利用した多成分系化学平衡計算ソフトウェア FLASK-SG 長 会 nli[長 叫i+lnP+ln(奇)J+ a s )の ( F L u i dr e A c t i o nS i m u l a t i o nK i tf o rS o l i dandG 2 2叫{会叫 作成に際し次のようないくつかの新しい試みを取り入れ た. z十 1.安定相の選択にモンテカルロ法を採用した. L P l 長 2 . 国溶体の安定の判定基準を明確にした. 3 . プログラムをオブジェクト指向で作成した. 今回作成したプログラムは,データとして,地球惑星 物質を第一の対象としており説明の述語も鉱物等の用語 を用いているが,さまざまな化学物質のデータを利用す ることで,化学工学的な利用も可能である.なお,この プログラムは, h o . j p / G S ]/FTP/g0442/ t t p : / / w w w . a i s t .g より手に入れることができる. ~;)J+ l n ( ( 2 ) ここで N;=~ nli ( 3 ) 地ニ ~nPi ( 4 ) P は圧力 , c t i及び γP iは,それぞれガス iのフガシチ ー係数及び固溶体 ρの端成分 1の活動度係数である. 2 . 基礎方程式 系の組成を次式で与える. 安定な相をどのようにして探索するかについては後述 1 2 S 2 M M = b J するとして,ここでは,そのような相が見つかったとし ( j=1,2 ,…, て,どのように化学平衡値を計算で求めるかについて述 l ) ( 5 ) べる.FLASK-SGは系の化学平衡を一定の温度圧力下で 求める.このような場合化学平衡は系の G i b b s自由エネ ルギーが最小の状態として実現される.系の G i b b s自由 b j は成分 jの系全体での和である.結局求めるべきは, 5 )の下で式( 2 ) 束縛条件( で与えられる G を最小にする n p iで エネルギーの最小状態を求めるために当プログラムは, ある.そこで,束縛条件( 5 ) 付き最小値問題をラグランジ SOLGASMIXの方法 ( E r i k s s o n,1 9 7 5 ) を用いている. 系の G i b b s自由エネルギーは次のように書ける. ュの未定乗数法を用いて束縛条件の無い式に変える. フ T l n a ; ) g i(gOaR i=L n G = Ln; グランジュアンを次のように導入する. Z L J n pサ 長剖I ( I ) L= O i,αzはそれぞれ化学種 iについてのモノレ数, n i,g i,g 単位モル当りの G i b b s自由エネノレギー,純粋状態の単位 そして モル当りの G i b b s自由エネルギー及び活動度係数である. o n p i 噌 - 気相 1相を含み,q種類の固溶体鉱物, s種類の純鉱物よ v ( 7 ) 5 ) π jは成分 jの化学ポテンシャルである.結局方程式( りなるものとする.添字の使い方を便宜上次のようにす る. 。 I L T は絶対温度,Rは気体定数である.ここで,系は必ず ( 6 ) 及び(7)が解くべき式で,(7)式は具体的に次のように書き -27- 地 質 調 査 幸 良 所 so 二 仁1 2 8 4号) ( 第 同式と倒式を用いて n l iと n p iを( 5 ) 式から消去して次式 換えられる. を得る. (気相) 22山吉[(長一 1)~ a YPi]苦I L u m p l i j -。 nc 6十 附 h (ff)争 α 告 +l P0 i n ? ) - =~~ω川i ( 8 ) ここで 山 ) ここで ) ハu,u ( l : l i Nl= n j ypJ+b - =l :αp仰 山 ( 1 8 ) rpu nHU (ρ=2 , mp) ,…, 1+qandi=1 ,・ ρ ( ニ lUH ( ' J ¥九 ) 十 ,…, 1 q 2 b ここで )nuu (q, 立互い 1nYi Y P i l P l~ι+ln( RT )'U.,I 科 z二 仙 l : ρ ( ニ1) d ψP i二 Y P i [ ) ( RT ) 会 +ln(壱 ) 十 日 十 h -y n (判 n Y p i+1 0 +l 勾 伽= ¥品 / 自 μ l ( 叫 。 (固溶体鉱物) Np= n p i と置いた. 7 ),回, (14)及び~(16)式となる . Y 結局必要な式は U P iを近似 (非固溶体鉱物) 告》 GP 戸 値として以上の方程式を解いて改良解町内勾を求めるこ とを繰返してー(イテレーション),収束したところで解と ( =l+q+ oρ , l )倒 同 十s する. ここで未知数の数は化学種のモル数仰が ml十m2十,…,十 mp十S 個,そして化学ポテンシャル πJが J個である.対 3 . 安定関係の判定 8 ) 1 0 ) 式が ml個 式が m2十,…,+ するに,方程式の数は ( , ( mp個 , ω式が 5 )式が S 個そして ( 選択した相に関して上述の方法で自由エネルギーが最 J個となり,解くべき方 小となる解が得られたとして,それが真に系の中で安定 程式の数と未知数の数が一致する. ( 次に以上の式を Y P iρ ニ であるかを確認する必要がある.収束した解の中に負の ,…, 1十q十S と i= 1 =1,…, 質量となるものがある場合がある.このような場合の相 mp) の点、でテイラー展開して 2次以上の項を無視するこ の選択は誤りであるので棄却されなければならない.次 とで次式を得る. にすべての質量が正であっても,選択外の相に安定なも 8 ) 式は まず ( のが無いことを確かめる必要がある.これは求めた化学 = y l L G I U 刊] ポテンシャルを利用することで判定できる. n ( 釦 [ 長 十 同 十 断1 ρが固溶体を作らない鉱物の場合,不安定条件は, 兵 l n ( =Y [ 一 P i 苧 )] ¥;) ' IRム T 叩+ J taPi+ 1咋 叫 J RT Pi Y 四 ) を各端成分 tについて求めて, ~XPi <1 となり,同様に出)式の両辺を 1から mpについて加えて次 式を得る. h z G D U 二 号2 ) ト[会+lnYPi+1怜 J z ) 5 1 ( 司 j dHH XIH 7 l " j (9L A剖 H 7 l " expj~l ( 1 0 ) 式は ρ ム ロ Zjap0ーの ・11 ( ~Yli[会叫 ;+1坤叫世)J 二 HYlzG 場 知4 Aイe る. の る あ で 鉱 体 溶 伽酒 > l b 3 となり,任) 式の両辺を 1から聞について加えて次式を得 π一 カ ー 旧 ) ? μ 同D l i N 1 n l iyi + 2 ' y i 司 。 が不安定条件となる.選択した相以外がすべてこのよ うな条件を満たす時,真に安定な解が得られたことにな 。 札 る.ではほかに安定な鉱物が存在することが分かつた時, 。 。 葛根田花筒岩周辺の接触変成作用(竹野 ほか) どのようにしたら安定な鉱物を正しく選択することがで ならば今回の系の自由エネルギー G即日と前回の系の自由 きるであろうか.このことについて次に記す. エネノレギー G世間を比較する .Gnow <Gprevであるならば, 無条件にターゲット鉱物を新たなベース鉱物とする.こ 4 . 安定鉱物の探索 のベース鉱物を用いて,乱数を用いて鉱物を取捨選択し e t r o p o l i sのモンテ 安定鉱物の探索アルゴリズムには M て次のターゲット鉱物を決める.ただし,この場合も化 カノレロ法 ( M e t o p o l i se ta l 1 9 5 3 ) を用いている.すな 学平衡計算でより安定な鉱物が分かつているので,拾う わち基になる鉱物組合せ(ベース鉱物と呼ぶ)に乱数を 鉱物はより安定な鉱物集合から選ぶ、ことにする. リ 用いて鉱物を取捨選択することで新たな鉱物組合せ(タ 3 ) もし ーゲット鉱物と呼ぶ)を作り,このターゲット鉱物につ Gnow> Gp聞であるならば,次の値を計算す る. 7 ' lO W - Gprev RT hM G 1 ' A山 H eXD - データに与えた相をまず最初のベース鉱物とし,これを n ( , , いて化学平衡計算を行う.当プログラムはコシトローノレ ターゲット鉱物とする.ターゲット鉱物に対して化学平 この値を Oから 1までの乱数と比較して,より大きけ 衡計算を行うと,その結果は次のいずれかである. れば 2 ) と同じ扱いをする.より小さければ,ベース鉱物 1 . 解が得られない.これはイテレーションの上限に は変更せず,再度乱数を用いて鉱物を取捨選択して次の 達しても収束しない場合と,途中または初めから非 ターゲット鉱物を決定する.先程の化学平衡計算によっ 正則になってしまう場合がある. てより安定な鉱物が分かつているので,拾う鉱物はより 2 . 解は得られるが負の質量を持つ. 3 . 解は得られすべての質量は正であるが,ほかに安 安定な鉱物集合から選ぶことにする. 以上のようにして決められたターゲット鉱物に化学平 衡計算を行い,上記の 1から 3の場合に従ってベース鉱 定な鉱物が存在する. 物及びターゲット鉱物を変えることを繰返すことにより 解は得られすべての質量は正で,かつほかに安定 4 最終的に 4に到達する.このアルゴリズムを第 1 0図に示 な鉱物が存在しない. す. l及び 2の場合は,ベース鉱物から捨てる鉱物数とほ かから拾う鉱物数を乱数で決める.捨てる鉱物数は,気 5 . プログラムの概要 相を残す大きさを最大とし,拾う鉱物数は,相律で許容 される大きさを最大とする.取捨する鉱物数を決めたな コーデイング言語は C十+を用いた.熱力学データを基 ら,次にどの鉱物を捨てて,どの鉱物を拾うかを乱数で 底クラスとし,個々の系を派生クラスとした.系は相を 決める.拾う鉱物は場合 3を経てなければ,系の許容す 記述する構造体 p h a s eと系の変数,すなわち温度,圧力, る最大の鉱物集合から選ぶ、が,もし 3を経た後ならば, 化学ポテンシャル,系の G i b b s自由エネルギー等から構 3で判定された安定鉱物集合から選択することになる.こ 成され,構造体 p h a s eは端成分化学種を記述する構造体 のようにしてターゲット鉱物を選定するが,この段階で s p e c i e sからなる.構造体 s p e c i e sは,標準状態純物質の G i b b s自由エネルギー,化学量論数,モル数,活動度係数 はベース鉱物は変えない.ターゲット鉱物について化学 平衡計算を行う.結果がもし 1または 2であった場合に またはフガシチー係数などからなる.系からターゲット は,前回と同じベース鉱物から再度同様な手順で乱数を 鉱物のみを抜き出した系(ここではターゲット系と呼ぶ) 用いて新たなターゲ、ツト鉱物を選び化学平衡計算を行う. を派生クラスとし, 基礎方程式」の節で示した計算をす これを繰返して 4の場合になれば終りであるが,大概は るメソッド e r i k( E r i k s s o nに因む)を定義した.クラス" 3の場合になる.この場合,系の自由エネルギーを求める. 3の場合は系の自由エネルギーは次の 3通りのいずれかで 判定をするメソッド c h e c k _ e q u i l i b r i u mが定義されている. ある. 「安定鉱物の探索J の節で記した方法に従って系からタ} r 系"に対しては, r 安定関係の判定Jの節で記した計算と ゲット系を作成する部分はいくつかの間数により実現し 1 ) 計算を開始して最初に自由エネルギーが求まった た.クラス"系"には,系の状態を細かくプリントする 場合. この時はターゲット鉱物を新たなペース鉱物とす ためのメソッド dumpが定義されており,開発中の系の る.このベース鉱物を用いて,先程と同様に乱数を用い ふるまいについて細かく検討することが容易になってい て鉱物を取捨選択して次のターゲット鉱物を決める.た る. クラス"系"に対して e q u i l i b r i u mと言うメソッドを定 だし,先程の化学平衡計算でより安定な鉱物が既に分か っているので,拾う鉱物はより安定な鉱物集合から選ぶ 義して,系に対する加熱・冷却操作を容易に行ったり, ことにする. クラス"系"に対する加算(混合)・減算(フうクショネー 2 ) ション)を定義したりして,より柔軟にシミュレーショ この回以前に系の自由エネノレギーが求まっている 日可 U 地質調査所報告(第2 8 4号) S t ぽt b a s em i n e r a l s 一 >t a r g e tm i n e r a l s s t a b l em i n e r a l s a v a i l a b l e ? End sameb a s em i n e r a l s 1 0図安定相選択のアルゴリズム. F i g .1 0A l g o r i t h mo fs e l e c t i o no fs t a b l ep h a s e s. 第 qJ 葛根回花嵐岩周辺の接触変成作用(竹野 ン行うことが可能である. ほか) H o l l a n dandP o w e l l( 1 9 9 8 ) には今後対応したい.固溶 最後にいくつか細い点について記す.現在扱える成分 体はすべて理想固溶体として扱われている.非理想性が は , C-H-O-Si-AI-Ti-Fe-Mn-Mg-Ca-Na-Kの 1 2成 定式化されていれば,これをプログラムに組込むことは 分で,化学種は第 5表に示すとおりである.与えるべき 容易である.気体については,理想気体モデル,理想、混 コントロールデータは系の温度,圧力及び系のバルク化 合 モ デ ル ま た は SUPERFLUID ( B e l o n o s h k oe ta l ., 学組成で,系のバルク化学組成は,相の化学式とモノレ数 1 9 9 2 ) を利用することができる. の組で与える.通常は S i02,Na20,A1203等の酸化物で 場合により容易に解が得られないことがあるが,この . 5モノレ, CaAlSi20s 与えるのが便利であるが,CaSi03 0 ような場合は大概,初期値の設定が悪く解が収束しない 0 . 8モル CaC03 0 . 2モノレと言うような与え方も可能であ ために安定な鉱物組合せが見落されているのである.こ る.与えるモノレ数は,最も大きいものが数モルから数十 のような場合は計算の実行を中断して,再度実行すると モノレ程度になるように規格化するのが望ましい.原則と 良い場合がある.これは初期値の設定の一部に乱数を用 して,ここで与えた相が最初のベース拡物とされること いているため,初期値の設定がうまくいく可能性に期待 は既に記したとおりである(第 5表にのっていない化学 するのである.これでうまくいかない場合はソースコ」 式で与えた場合はバルク化学組成には反映されるが,相 ド中の初期値設定のパラメータに手を加えて再コンパイ としてベース鉱物には入れられないl.熱力学データとし ルするしか方法がない.この点は今後改良が必要な点か てH o l l a n dand P o w e l l( 19 9 0 ) を使用している.なお もしれない -31- 地質調査所報告(第2 8 4号) 第 5表 FLASK-SG で扱うことのできる化学種. 砥線で区切られる複数鉱物は,それらが固溶体鉱物として扱われることを示す. HollandandPowell (1990) の鉱物名 及び化学式に従う .Vは空席を示す.計算機打ち出しのままのため下付き添字は字下げしてないことに注意. Table5 Listofchemicalspeciesavailablei nFLASK-SG. .MineralnameandchemicalformulaareafterHolland Mineralsbetweenbrokenl i n e sformas o l i dsolutionmineral i t e .Suffixi ntheformulai snotsubscriptedduetoacomputeroutpu t . andPowell (1990). V indicatesvacants epidote Ca2FeA12Si3012( O H ) C02 C02 H2 H2 diopside CH4 CH4 hedenbergite CO CO C2 02 44 cdσD ・可- 円U ー aa solid-solutionminerals-- nuau nunu 円 , hn4 Ca2AIA12Si3012( O H ) H20 pu clinozoisi 七e H20 gbe MF gas spec~es-- 一ーーーーー"ーー一ーーーーー enstati 七e MgMg(Si2)06 ferrosirite FeFe(Si2)06 forsterite Mg2Si04 Ca3A12Si3012 fayalite Fe2Si04 andradite Ca3Fe2Si3012 annite KFe(Fe2)Si2(SiAl)010(OH)2 phlogop工七 e KMg(Mg2)Si2(SiAl)010(OH)2 eastnite KMg(MgAl)Si2(A12)010(OH)2 Fe-田 七hophylli 七e siderophyllite KFe(FeAl)Si2(A12)010(OH)2 clinochlore Mg4(MgA 工)Si2(AlSi)010(OH)8 Fe-cordierite daphnite Fe4(FeAl)Si2(AlSi)日10(OH)8 amesite Fe-釘 nesite Mg4(A12)Si2(A12)010(OH)8 Fe4(A12)Si2(A12)010(口H)8 talc Mg2MgSi2(Si2)口10(OH)2 Fe-talc Fe2FeSi2(Si2)010(OH)2 Tschermaks_talc Mg2AlSi2(SiAl)010(OH)2 Fe-Tschermaks_talc Fe2AlSi2(SiAl)010(OH)2 P ・且 VNa2Mg3(A12)Si4(Si4)022(OH)2 e 阻 C u 句 e o‘a 可 ム 担句 Mg3A12Si3012 grossular eh pyrope σ白 円r Fe3A12Si3012 C i u g a- almandine VNa2Fe3(A12)Si4(S工4)022(OH)2 hophyllite VMg2Mg3(Mg2)Si4(Si4)022(OH)2 む1 七 --ーーーーー VFe2Fe3(Fe2)Si4(Si4)022(OH)2 ω - ーーーーー回一ー町四ーー一“ーーー Mg2(A14Si5)018 cordierite Fe2(A14Si5)口18 -ーーーーーーーー一ーーーー一ーーーーーーーーー一ー-ー dolomite CaMg(C03)2 Fe-dQlomi七e CaFe(C03)2 4 内4 44 )﹀ I ロu u u nunu nunU ・ 可 η4 鳴 . 、 cdno 4n4 円 1ム 司 ム AnAA σue Mupr ee 円4 4n4 円 )) 円 4 にU R u nunu --41 D C凶 n AAaua vue 11 MF ・-目 +u+U 工 目l ロu 口u nunu dd 1 00 U や + u 1-1oo rr oo F- hh cc g e MF (( l - p p rr aa pupu MF (( 66 hh -- σ e 。 ーーーーーーーーーーーーーー】ーー山ーーーーーーーーー Mg-staurolite Mg4Al18Si7.5048H4 tremolite VCa2Mg3(Mg2)Si4(Si4)022( O H )2 Fe-staurolite Fe4A118Si7.5048H4 Fe-tremolite VCa2Fe3(Fe2)Si4(Si4)022(OH)2 -ーーーーーーーー--ーーーーーーーーーーーーーーー一一 VMg2Mg3(Mg2)Si4(Si4)022(OH)2 cummingtonite VFe2Fe3(Fe2)Si4(Si4)022(OH)2 hornblende VCa2Mg3(MgAl)Si4(Sエ3Al)022(口H )2 grunerite Fe-hornblende VCa2Fe3(FeAl)Si4(Si3Al)022(OH)2 s 七o ichiometricminerals-一ーーー NaFe(Si2)06 EUEq KV(A12)Si2(SiAl)010(OH)2 m10r a g u a c.T C edat raa 出回位同 uscovite m eet r t t1eu r e --・ 十 a 且 e 1 u ‘e 司 nE ・ acmi七e 血 Ca2(Si2Mg)07 KV(FeAl)Si2(Si2)010(OH)2 spinel MgA1204 ulvospinel Fe(FeTi)04 hercynite FeA1204 chrysotile Mg3Si205(OH)4 equilibrium_a 工bite Na(AlSi3)08 coesite Si02 anorthite Ca(A12Si2)08 corundum A1203 deerite Fe12Fe6Si12040(OH)10 Al2Si05 CaC03 z ー ム aA Fb nU ) 口 urkqM 1 n4 ・ 、 ノ qu 円 U ・可ム n U 1ム nu MUFU e n e o r z 晶 udd Si02 v d p s a k 可目- R M -32- +LUFM-u -bFVC KV(Mg Al)Si2(Si2)010(OH)2 u-- celadonite Fe-celadoni七e 葛根田花商岩周辺の接触変成作用(竹野 ほか) 第 5表 つ づ き Table5 continu 巴d Pbca-diopside CaMg(Si2)06 vesuvianite Ca19Mg(MgA17)A14Si18069(日H)9 diaspore AIOOH wollaston工te CaSi03 diamond C zoisite Ca2AIA12Si3012(OH) edenite NaCa2Mg3(Mg2)Si4(Si3Al)022(OH)2 K2 日 C2/c-ensta 七i te MgMg(Si2)口 6 gehlenite Ca2( A 工2Si)07 graphite C hema 七i te Fe203 ilmenite FeTi口3 iron Fe jadeite NaAl(Si2)06 kalsilite K(AlSi)04 equilibrium_K-feldspar K(AlSi3)08 kyanite A12Si05 lawsoni 七e CaA12Si207( O H )2H20 leucite K(AlSi2)06 lime CaO margarite CaV(A12)Si2(A12)010(OH)2 magnesite MgC03 且g anosite ma MnO meionite Ca4C03.(Si6A16)024 merwinite Ca3MgSi208 Mg-Tschermaks_pyroxene MgAl(SiAl)06 Na20 monticelli七e CaMgSi04 magnesioriebecki七七 e VNa2Mg3(A12)Si4(Si4)022(OH)2 magnetite FeFe204 Na-phlogopite NaMg(Mg2)Si2(SiAl)010(OH)2 nepheline Na(AlSi)日4 paragonite NaV(A12)Si2(SiAl)010(OH)2 pargasite NaCa2Mg3(MgAl)Si4(Si2Al 2 )022(OH)2 periclase MgO prehnite Ca2AlSi2(SiAl)010( O H )2 pseudo-wollastonite CaSi03 pumpellyite Ca4A14(MgAl)Si6021(OH)7 七e pyroxmangi MnSi03 pyrophyllite A12Si4010(OH)2 alpha quartz Si02 rhodochrosite MnC03 rhodoni七e MnSi03 rankinite Ca3Si207 rutile Ti02 sanidine K(AlSi3)08 siderite FeC03 sillimanite A12Si05 sphene CaTiSi05 明 spurri七e Ca4Si208CaC03 七e phro土te Mn2Si04 tilleyite Ca3Si207(CaC03)2 -33- K20 Na20
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