平成 26年度研究紹介 新しい光学的手法による非破壊計測技術の開発 1. はじめに 高品質で高価な果物の生産や販売を行うには、生育途中や収穫後の糖度管理が重要となります。 こうした糖度管理に大型のライン選果装置や携帯型糖度計が使われていますが、これまでの測定 装置は何百種類もの波長の光で計測する必要があり、消費電力が多いハロゲンランプと分光器を 備えた複雑な装置構成となり高価なものでした。そのため、生産者や小売店などからより安価で 使い易い糖度計の開発が望まれていました。 2. 内容 こ れ ま で に 、 図 1 に 示 す 新 た な 光 学 的 手 法 に よ る 非 破 壊 計 測 手 法 ( TFDRS : Three-Fiber-Based Diffuse Reflectance Spectroscopy)を開発しました。新たな物理量と して相対吸光度比γを用いることにより、被検体による散乱や夾雑物による吸収、さらには温度 の影響を排除して数種類のみの波長の光で糖度等の組成を計測することができます。 しかしながら、試料表面の凹凸が大きく測定部との接触が十分ではない場合には大きな測定誤 差が生じる欠点があります。そこで、本研究では試料表面の凹凸等に影響されない非接触による 非破壊計測技術を開発します。 相対吸光度比; 受光ファイバー 反射率; 光照射 ファイバー g = R = isig iref iref isig ln ( R ( l1 ) ) − ln ( R ( l0 ) ) ln ( R ( l2 ) ) − ln ( R ( l0 ) ) 組成 C1 C 2 ⋅ = Ck ⋅ Cn 果物や生体等 の被検体 相対吸光度比 a10 a11 a a 20 21 ⋅ ⋅ + ak 0 ak 1 ⋅ ⋅ an0 an1 a12 a22 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ak 2 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ an 2 ⋅ ⋅ ⋅ a1n g 1 a2 n g 2 ⋅ ⋅ akn g k ⋅ ⋅ ann g n TFDRS:Three−Fiber−Based Diffuse Reflectance Spectroscopy 図 1.TFDRS 法の概略図。相対吸光度比 γ により、被検体による散乱や夾雑物による吸収、さらには温度の 影響を排除して数種類のみの波長の光で糖度等の組成を計測することができる。 3. 成果の応用例 図2は TFDRS 法を用いて商品化した糖度計で、光源に 発光ダイオードを使用して重量 200g(電池重量含む)と 世界最軽量を実現しています。さらに、本開発成果により、 選果ライン応用による糖度計の拡販、穀物類の食味計や医 療診断機器による新事業創出を目指します。 関連する研究事業: 県経常研究「非接触による光学的非破壊計測技術の開 発」 (平成26~27年度) 図2.TFDRS 法を用いて商品化した糖度 計。重量 200g の世界最軽量を実現。 連絡先 長崎県工業技術センター 電子情報科 下村 義昭 0957-52-1133 E-mail;[email protected]
© Copyright 2024 ExpyDoc