産業ニュース 1兆円受注で弾みつく炭素繊維ビジネス

マーケットウィークリー・810号
産業ニュース
2015.1.1
1兆円受注で弾みつく炭素繊維ビジネス
作成者:兵藤三郎
東レ、1兆円受注で
弾みつく炭素繊維
ビジネス
昨年の11月17日、東レ(3402)は米ボーイング社より現在生産中の787のほか、
18年納入定の777X主翼向け素材として、累計で1兆円に上る炭素繊維の受注を受
けたと表明した。ボーイング社によると11月末現在286機の受注残がある。鉄の1/4
の重量で、10倍以上の強度を持つと言われる炭素繊維、従来から様々な用途が模
索されてきたが、高価なため利用は限定的であった。今回のビッグビジネスで、
生産能力の増強が行われる。量産効果でコスト軽減が図れれば、さらに用途が拡
大すると見込まれる。中期的な成長フェーズに入った炭素繊維に注目したい。
炭素繊維の世界シ
ェアは日本勢3社
合計で約半分
炭素繊維はその特性から、飛行機の主翼等以外にも、風力発電用風車、自動車
部品・シャーシ、ゴルフクラブのシャフト等様々な用途に用いられてきたが、一
部高額商品等に限定されたものであった。一方供給側は、昨年3月に業界2位だっ
た米ゾルテックを買収した東レが世界1位、その他帝人(3401)、三菱ケミHD
(4188)の国内メーカー3社で世界シェアの約半分を占めている。
エアバス社、GM
社等も炭素繊維活
用で軽量化を図る
ボーイングのライバルメーカーエアバス社はA-350で炭素繊維を活用し燃費効
率を向上させる。同社への供給は帝人の子会社東邦テナックスが手がける。帝人
は11月6日、米大手自動車メーカーGM社から自動車部品向け素材として炭素繊維
が認定されたことを発表した。自動車での採用が本格化する2020年頃には売上高
で2,000億円レベルが見込めよう。三菱ケミの子会社三菱レイヨンはドイツの自動
車部品メーカーを買収、顧客として持つ欧州大手自動車メーカー向けに炭素繊維
を活用した部品を納入する計画。欧州では自動車の燃費規制が強化されることも
あり、特にハードルの高い大型高級車向けで、車体の軽量化につながる炭素繊維
需要は高いと予想される。
燃料電池車市販開
始で炭素繊維の需
要高まる
昨年自動車業界では、初めて燃料電池車が市販された。トヨタ(7203)の「M
IRAI(ミライ)」、名前が示すように将来の需要拡大が期待される次世代の
車となろう。「MIRAI」では高圧水素タンク、燃料電池スタック、スタック
フレームなどで東レが供給する炭素繊維が使われている。今後、水素ステーショ
ンの水素貯蔵用タンク向けの需要拡大が期待できよう。
周辺部から始まる
用途拡大、成型材
にも注目
その他の関連銘柄では、炭素繊維を活用し主要部材、エンジン周辺部材等を製
造する日機装(6376)、鉄道用台車に炭素繊維強化プラスチックを使用し海外展
開をもくろむ川重(7012)などがある。炭素繊維の需要増加に伴い成型に用いる
工程紙を手掛けるリンテック(7966)にも注目したい。
◇主な炭素繊維関連銘柄の株価とコメント
(単位:円、倍)
銘柄
コード
株価
PER
コメント
帝人
3401
312
-
子会社東邦テナックスで製造、エアバス、GM等に納入
東レ
3402
932.0
18.3
炭素繊維世界最大手、ボーイング社より1兆円の受注獲得
三菱ケミHD
4188
603.0
19.3
子会社三菱レイヨンで製造、欧州自動車メーカー向けに注力中
日機装
6376
1,136
15.2
航空機の部品製造、炭素繊維の活用拡大を図る
川重
7012
557
19.4
鉄道用台車に炭素繊維を活用、車体の軽量化で海外展開を図る方針
リンテック
7966
2,683
19.6
成型用工程紙を手がける、需要拡大による恩恵享受を期待
(出所)各種資料に基づきCAM作成 (注)株価は12月19日終値、PERは今期予想