D2-09, P2-04 第 7 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2012 年3月) WIO-MFA による鉄鋼製品の国際貿易に随伴する Cr, Ni, Mo フロー解析 Substance Flow Analysis of Cr, Ni and Mo Associated with International Trade of Steel Products based on WIO-MFA Model ○大野 肇*1)、松八重 一代 1)、中島 謙一 2)、中村 愼一郎 3) 長坂 徹也 1) Hajime Ohno, Kazuyo Matsubae, Kenichi Nakajima, Shinichiro Nakamura, Tetsuya Nagasaka 1) 東北大学大学院 2) 国立環境研究所 3) 早稲田大学 *[email protected] 1. み合わせることで国際貿易に随伴するレアメタルのフロ モデルを利用して実施する。これは、産業間の上から 下への序列的相互依存のヒエラルキー構造を仮定した 解析である。以下にモデルの概要を示す。投入係数行 列( A )に、物質フローフィルタ(Φ)および歩留まり行列 ( )を乗じることにより、各部門における直接投入に ~ よる製品と材料に関しての組成行列 A を求める。この 関係は次式により表される。𝐴𝐴̃ = Γ (Φ 𝐴𝐴)( は アダマール積)ここで、加工度について考えると、(a) 資源は地球環境から採取され生産はされない。(b)素材 は資源から生産される。(c)製品は素材と製品から生産 される。と定義し、さらに製品間における加工度の違 いを考慮すると、製品の構成素材行列( CMP )は、次式に より表される。 𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊𝑊 𝐶𝐶𝑀𝑀𝑀𝑀 = 𝐴𝐴̃𝑀𝑀𝑀𝑀 (𝐼𝐼 + 𝐴𝐴̃𝑃𝑃𝑃𝑃 + 𝐴𝐴̃2𝑃𝑃𝑃𝑃 + 𝐴𝐴̃3𝑃𝑃𝑃𝑃 ⋯ ) = 𝐴𝐴̃𝑀𝑀𝑀𝑀 (𝐼𝐼 − 𝐴𝐴̃𝑃𝑃𝑃𝑃 )−1 ~ ここで、A は製品に対する材料投入係数行列、I は単 MP ~ 位行列であり、 A は製品への製品投入係数行列であ PP る。 ーを分析することを目的とした。WIO-MFA は中村らによ 2.2 国際貿易随伴レアメタルフロー はじめに 鉄鋼生産プロセスには様々な元素が随伴している。特 に、2005 年には 1485 千トンものレアメタルがフェロア ロイとして投入されており、この量はレアメタルの国内 消費量の約 95%を占めている 1)。これらのレアメタルは 主に近年わが国においてその生産量は増加傾向にある特 殊鋼材の生産に用いられる 2)。 日本はレアメタル国内消費量のほぼ全量を海外から輸 入している 1)。前述のとおり、これらのレアメタルは主に 特殊鋼を生産する際の合金元素として用いられ、最終的 に様々な製品に組み込まれる。もし、それらの製品が輸 出されなければ、含まれるレアメタルはスクラップとし て再び鉄鋼生産プロセスに戻ってくる。しかし、実際日 本は様々な鋼材や鉄鋼製品を輸出しており、相当量のレ アメタルがそれらの製品に随伴して輸出されている。 このような背景から、本研究では WIO-MFA(Waste Input-Output Material Flow Analysis)3)と貿易統計情報 4)を組 って開発された MFA の手法であり、産業連関分析(IOA) 国際貿易随伴鉄鋼合金元素フロー解析に際し、 を拡張したモデルである。WIO-MFA の特徴として、製品 𝐸𝐸𝐺𝐺𝐺𝐺 = 𝐶𝐶𝑒𝑒𝑒𝑒 𝑇𝑇𝐺𝐺𝐺𝐺 の数式により国𝐷𝐷との物品𝐺𝐺の貿易に随伴 組成を素材の段階まで遡って分析できる点が挙げられる。 この特徴により、その素材が最終的に何に、どのくらい 含まれるかだけではなく、他に何と一緒に存在するのか する素材量を推計した。𝑇𝑇𝐺𝐺𝐺𝐺 は国𝐷𝐷との物品𝐺𝐺の貿易量を 表しており、𝐶𝐶𝑒𝑒𝑒𝑒 には WIO-MFA により得られた製品マ テリアル組成行列𝐶𝐶𝑀𝑀𝑀𝑀 を用いた。WIO-MFA を用いるこ とにより従来 MFA では把握しきれなかった合金元素の を知ることができる。 今回は鉄鋼主要合金元素である Cr, Ni, Mo に注目し、 国 用途を網羅的に把握することができる。スクラップに関 内で生産される鉄鋼製品に随伴する合金元素フローを解 しては中古品の貿易に関する定義付けが困難であったた 析すると共に製品の貿易に伴う合金元素の移動量を定量 め、今回は鉄鋼スクラップのみを考慮した。 化することを目的とした。 3. 結果 2. 図 1 から図 3 に WIO-MFA により得られた各合金元素 解析モデル 2.1 WIO-MFA モデル 総務省が発行する産業連関表の最新版である 2005 年 表を元に、鉄鋼関連部門及び素材部門を金額表記から物 の製品輸出随伴量上位 10 部門を示す。3 元素共にステン レス鋼及び自動車関連製品に随伴した輸出量が多くなっ ている。ステンレス鋼がトップの Cr, Ni に対して Mo は 量表記に変換し、MFA を可能とした。また、産業連関表 乗用車がトップとなっている。これは Mo が各種特殊鋼 において複数の産業及び製品が統合されている部門のう に広く用いられていることに起因し、自動車が多種多様 ち鉄鋼随伴の合金元素フローを解析するに当たり重要な の特殊鋼によって製造されているということを示唆して 部門(特殊鋼熱間圧延鋼材、フェロアロイ等)を種々の統計 いる。Cr, Ni, Mo それぞれの間接輸出量は 318kt, 80kt, 5),6)を元に細分化することで WIO-MFA Table を作成した。 解析は、行列の三角化(もしくは三角形化)に基づく 7kt であり、国内一次投入量の 627kt, 178kt, 30kt と比較 すると、Cr と Ni ではその半数程度が海外へ製品として - 246 - 第 7 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2012 年3月) 予想されるため、大量の合金元素がアジア諸国へ流出す 輸出されている事がわかる。 ることが考えられる。 4. まとめ 資源小国である我が国においては、限りある資源の 有効利用が求められる。今回の結果により明らかとな った実際に我が国に留まる合金元素の量を価値ある都 市鉱山として捉え、持続可能な循環型社会の構築する ことが重要である。 図 1 Cr 間接輸出量上位 10 部門 図 4 世界地域別鉄鋼材輸出随伴合金元素量 図 2 Ni 間接輸出量上位 10 部門 図 5 世界地域別最終製品輸出随伴合金元素量 謝辞 本研究の一部は科研費若手研究 A(23686131)ならび に環境省平成 23 年度自動車リサイクル連携高度化等支 援事業、文部科学省グローバル COE プログラム「材料イ 図 3 Ni 間接輸出量上位 10 部門 ンテグレーション国際教育研究拠点(東北大学)」の助成 支援を受けたもので ある。記して謝意を申し上げる。 また、図 4 に世界の地域別鋼材輸出随伴合金元素量、 図 5 に同じく世界の地域別輸出製品随伴合金元素量を示 参考文献 1) す。鋼材に関してはアジア向けの鋼材輸出に随伴する合 鉱物資源マテリアルフロー2006, JOGMEC (石油天 然ガス金属鉱物資源機構),2008 金元素量が群を抜いて多く、近代における同地域の急激 2) 特殊鋼需給統計, 日本鉄鋼連盟 な発展を裏付ける結果となった。製品に関しては鋼材と 3) S.NAKAMURA and K.NAKAJIMA, Transactions, 46 (12), (2005), pp.2550-2553 は対照的に、欧米に対する輸出に随伴する合金元素量が 多く見積もられた。これは先進国向けの自動車輸出に伴 4) 貿易統計, 財務省 ったものであるが、アジアも北米と並ぶ随伴量があり、 5) 普通鋼地域別用途別受注統計, 日本鉄鋼連盟, 今後は発展を続けるアジア向けの輸出が増加することが 6) 鉄鋼統計年報, 経産省 - 247 - Materials
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