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平成 26 年度医工連携事業化推進事業 事業成果報告書(最終審査 1:最終製品)
24-081
非磁性合金を用いた脳動脈瘤用塞栓コイル(一般的名称:中心循環系血管内塞栓促進用補綴材)の
開発
製品名「非磁性合金を用いた脳動脈瘤用塞栓治療コイル」
事業管理機関:
事業実施機関:
問い合わせ先:
公益財団法人京都高度技術研究所
国立大学法人京都大学再生医科学研究所、田中貴金属工業株式会社、マルホ発條工業株式会社
マルホ発條工業株式会社 営業本部 吉松宣明(TEL:0771-24-2321 / E-mail:[email protected])
【事業成果概要】近年、脳動脈瘤に対する瘤内塞栓術をはじめとした脳血管内治療の進歩が目覚ましい。しか
し普及が進むにつれ新たな問題点も指摘されている。特に従来の金属コイルによる金属アーチファクトは治療
方針を左右するほど核磁気共鳴画像へ与える影響が大きい。今回、我々はこれまで培ってきた磁性を考慮した
合金作製技術およびコイル加工技術を用いて、アーチファクトの生じない非磁性塞栓用コイルを開発し、2年
後の上市を目指して準備を継続している。
【製品概要】
製品名
非磁性合金を用いた脳動脈瘤用塞栓治療コイ
ル
一般的名称*
中心循環系血管内塞栓促進用補綴材
クラス分類*
クラスⅣ
承認
申請区分*
製造販売業者
販売業者
田中貴金属工業株式会社
田中貴金属販売株式会社
上市計画
薬事申請時期
上市時期
国内市場
許認可区分*
2015
2016
年
年
改良医療機器
製造業者
マルホ発條工業株式会社
その他(部材供給) 田中貴金属工業株式会社
10
10
(注)*印は現時点の想定であり、今後変更される可能性がある。
1
月
月
海外市場(具体的に:
2016 年
2018 年
欧米
10
10
)
月
月
平成 26 年度医工連携事業化推進事業 事業成果報告書(最終審査 1:最終製品)
24-081
恐れがあり、臨床現場では大きな問題となっている。
1. 本機器が対象とする医療現場の課題・ニーズ
(2) 非磁性合金
(1) 高齢化社会の到来と血管内治療
金属アーチファクトを低減あるいは解消するため
には、金属コイルと周囲の生体組織の体積磁化率(以
下、単に磁化率と記述する)を近似させれば良い。
医療用デバイスの材料として要求される生体親和性
や高耐食性、更には高機械的特性を兼ね備え、生体
組織に近い磁化率を示す金属として、Au-Pt 合金を
見出し、各種混合比の Au-Pt 二元合金に対して 2 種
類の MR イメージング法である Spin Echo 法および
Gradient Echo 法を用いて評価を行ったところ、
30%白金 70%金の合金において金属アーチファクト
を最も抑えられる事を確認した。
超高齢化社会を迎えた我が国では年間 30 万人を
超える方々が脳卒中を発症しており年々増加してい
る。近年これらの脳卒中に対する有効な治療法とし
て脳血管内治療が急速に普及している。
血管内手術は従来の外科手術に比べて低侵襲であ
ること、直達手術では到達困難な部位へも到達可能
なことなどから急速に症例数が増えており、新しい
治療器具の開発とともに今後も大きく発展が見込ま
れている。
(2) 放射線被爆
治療後のフォローアップが X-線透視により行われ
放射線被爆が避けられない。また、造影剤を用いて
血管造影を行うため侵襲性の検査になっている。こ
のため、最近では非侵襲でかつ被爆のない磁気共鳴
イメージング法で行われるが、動脈瘤内に詰めた
Pt-W コイルに起因する疑似画像が出てフォローア
ップ診断が困難である。
3. 本機器の中核となる中小企業のものづくり技術
(1) マルホ発條工業株式会社
(3) 非磁性合金コイル
今回我々が開発した非磁性特性を有する生体適合
性の高い合金を用いた塞栓コイルは現有製品よりも
アーチファクトの発生を顕著に抑制でき、核磁気共
鳴画像装置下での血管内治療への対応を可能にする。
(4) 市場
現在、塞栓コイルの国内市場は凡そ 130 億円に上
る。また今後 5 年の間に市場規模は約 30%拡大する
との予測もある。
2. 本機器の特徴・ポイント
極小ばねの開発・設計・製造を通じて培った豊富
な技術とノウハウを生かし、様々な精密塑性加工技
術を駆使した新技術を開発することにより、国内の
大手医療機器メーカー数社に低侵襲治療用デバイス
の基幹部品を供給し続けており、次世代医療デバイ
スについての共同研究も複数実施している。
現在国内で臨床使用されているPtW製の脳動脈
瘤用コイルはそのほとんどが海外メーカー製である
が、マルホ発條は唯一の国産医療機器メーカーに対
してコイルの供給を行っている。
本製品についてもこの体制を踏襲すれば、現行製
品の製品システム、外部装置、販売ルート、販売ブ
ランド等をそのまま活用することができ、量産化に
は最も早くかつ初期投資も最小化できると考える。
4. 現状ステータスと上市予定
製品の仕様面での開発はほぼ終了しており、今年
度については申請準備として、新規開発合金の生物
学的安全性試験等を実施した。試験の結果、特に異
常な値は検出されておらず、十分な生物学的安全性
を有すると考える。
その他、ウサギ動脈瘤モデルを用いた現行上市品
と開発品との性能比較試験を実施し、動脈瘤の塞栓
性、放射線透視装置での造影性、血液凝固機能性、
炎症反応性等に特に有意な差が認められないこと、
及び核磁気共鳴装置での撮像画像でアーチファクト
が顕著に少ないこと等を確認した。
来年度以降については、これらの安全性他のデー
タを整理した上で、PMDAへの治験の必要性の有
無についての相談と、治験を要する場合は治験準備、
治験を要しない場合は薬事申請の準備等を実施する
予定である。
(1) 金属アーチファクト
脳卒中の一つである破裂脳動脈瘤に対しては、経
カテーテル的に動脈瘤の内部に Pt 製のコイルを挿入
することにより動脈瘤内部を血栓・器質化して破裂
を防ぐ瘤内塞栓術と呼ばれる治療方法が広く行われ
ている。
瘤内塞栓術後の経過観察においては、通常、核磁
気共鳴装置での画像診断が行われている。しかし瘤
内塞栓術に供した Pt コイルによる金属アーチファク
トにより、正常な親血管(脳動脈瘤が発生している
正常血管)が一部描出されなかったり、逆にコイル
が十分に充填されていない残存動脈瘤があたかも塞
栓され血流が滞っているかのように描出されてしま
ったりする現象が生じてしまう。これはコイル塊が
動脈瘤から正常血管に逸脱しているのかの鑑別を困
難としたり、再治療の必要性を過小評価してしまう
可能性も生じる。このコイルによる金属アーチファ
クトは上述の通り、患者の治療方針を変えてしまう
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