倒産件数は 7 年ぶりに 200 件下回る

2015/2/18
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特別企画 広告関連業者の倒産動向調査
倒産件数は 7 年ぶりに 200 件下回る
~リーマン・ショック前の水準へ~
はじめに
消費増税や天候不順などから本格的な消費回復には至っていないものの、政府・日銀による経済・金
融政策などから大手企業を中心とした企業収益は改善している。そうしたなか、2014 年における広告代
理店大手 3 社の月次売上高(単体)累計を見ると、電通が前年比 3.8%増の約 1 兆 5300 億円、博
報堂が同 7.4%増の約 6600 億円、アサツーディ・ケイが同 3.6%増の約 3000 億円と 3 社そろっ
て前年を上回っており、国内広告市場の好調さがうかがわれる。一般的に経済情勢に遅行して影響が
表れるといわれる広告業界においても、景気回復の恩恵が見られはじめている。
そうした状況を踏まえて、帝国データバンクは 2014 年の広告関連業者の倒産動向(※)について、調
査・分析した。
※
負債額 1000 万円以上、法的整理のみを対象。
調査結果(概要)
1.
2014 年の広告関連業者の倒産件数は、前年比 7.8%減の 189 件で、7 年ぶりに 200 件を下回
った。
2.
負債総額は、前年並みの 135 億 7600 万円となり、引き続き低水準が続いている。
3.
負債額「5000 万円未満」の構成比が 67.2%と引き続き高水準に。広告関連業者の倒産は引き
続き中小零細企業が中心となっている。
倒産件数と負債総額の推移
300
40,000
件数
250
258 166 206 35,000
30,000
236 200
負債総額
(百万円)
222 205 202 25,000
189 150
20,000
15,000
100
10,000
50
5,000
0
0
2007
©TEIKOKU DATABANK,LTD.
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
1
2015/2/18
広告関連業者の倒産動向調査
1. 倒産件数・負債総額動向
~7 年ぶりに 200 件下回る リーマン・ショック後初~
2014 年の倒産件数は、前年比 7.8%減の 189 件となり 2 年連続で減少、2007 年以来 7 年ぶり
に 200 件を下回った。経済産業省が発表する「特定サービス産業動態統計調査」によると、広告
市場は消費増税の影響から直後の 4 月は落ち込んだものの、以降は堅調な推移となっている。広
告業界は、一般的に経済情勢に遅行して影響が出るといわれているが、大手企業を中心とした収
益や雇用の回復、賃金の上昇機運といった経済環境の好影響が表れはじめたものと見られる。
負債総額は、前年とほぼ同額の 135 億 7600 万円。2011 年以降は低水準が続いており、広告関
連業者の倒産は引き続き中小零細企業が中心となっている。
件数
負債総額
(百万円)
2007
166
2008
206
0.0
前年比(%)
24.1
19,176
前年比(%)
2. 負債規模別動向
2009
258
25.2
22,303
13.3
36,947
16.3
65.7
2010
236
2011
202
2012
222
▲ 8.5 ▲ 14.4
37,394
18,132
9.9
17,617
1.2 ▲ 51.5
▲ 2.8
2013
205
▲ 7.7
13,573
2014
189
▲ 7.8
13,576
▲ 23.0
0.02
~「5000 万円未満」の小規模倒産の割合が高止まり~
負債規模別に見ると、
「5000 万円未満」が 127 件となり、構成比も前年に引き続き 67%台とな
るなど、小規模倒産の割合は高水準で推移した。全業種における負債「5000 万円未満」の構成比
が 50%台なのに対して、広告関連業者は 70%弱で高止まりしており、特に小規模倒産の割合が高
いことがわかる。
2007
構成比(%)
2008
構成比(%)
2009
構成比(%)
2010
構成比(%)
1000万-5000万円未満
95
57.2
122
59.2
138
53.5
147
62.3
5000万-1億円未満
32
19.3
31
15.0
50
19.4
39
16.5
1億-5億円未満
30
18.1
43
20.9
56
21.7
38
16.1
5億-10億円未満
6
3.6
8
3.9
7
2.7
6
2.5
10億-50億円未満
3
1.8
2
1.0
6
2.3
5
2.1
50億-100億円未満
-
-
-
-
1
0.4
1
0.4
166
100.0
206
100.0
258
100.0
236
100.0
合 計
2011
1000万-5000万円未満
構成比(%)
2012
構成比(%)
2013
構成比(%)
2014
構成比(%)
前年比(%)
128
63.4
137
61.7
138
67.3
127
67.2
▲ 8.0
5000万-1億円未満
25
12.4
34
15.3
30
14.6
28
14.8
▲ 6.7
1億-5億円未満
42
20.8
44
19.8
34
16.6
30
15.9
▲ 11.8
5億-10億円未満
4
2.0
5
2.3
1
0.5
3
1.6
200.0
10億-50億円未満
3
1.5
2
0.9
2
1.0
1
0.5
▲ 50.0
50億-100億円未満
-
-
-
-
-
-
-
-
-
202
100.0
222
100.0
205
100.0
189
100.0
▲ 7.8
合 計
©TEIKOKU DATABANK,LTD.
2
2015/2/18
広告関連業者の倒産動向調査
3. 業態別動向
~「広告代理業」など主要な業態で前年比減少~
業態別の動向を見ると、「屋外広告業」と「他に分類されない広告業」で増加しているものの、
「広告代理業」においては、前年比 10.3%減の 78 件と 2 ケタ減となった。このほか、「広告制作
業」も同 1.3%減の 74 件で、主要な業態ではいずれも前年を下回る結果となった。
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
前年比(%)
広告代理業
71
91
112
104
81
91
87
78
▲ 10.3
屋外広告業
5
9
12
6
8
5
7
9
28.6
他に分類されない広告業
10
10
17
7
7
6
10
11
10.0
広告制作業
59
77
86
90
72
85
75
74
▲ 1.3
ディスプレイ業
21
18
29
26
31
34
24
17
▲ 29.2
-
1
2
3
3
1
2
-
-
166
206
258
236
202
222
205
189
▲ 7.8
看板書き業
合計
4. 今後の見通し
~大手と中小で二極化鮮明に~
経済・金融政策による円安・株高などから、大手を中心とした企業の業績は好調さが目立つよ
うになってきている。その恩恵が広告業界へも波及しはじめたことで、広告関連業者の倒産件数
は、リーマン・ショック後初めて 200 件を下回った。こうした流れのなかで、今後の業界におけ
る倒産動向は、しばらくは落ち着いた推移になることが予想される。
その一方で、倒産企業における中小零細業者の割合が他の業種に比べて高いのも、広告業界の
特徴と言える。その倒産要因を見ると、「リーマン・ショック以降の受注減少」「東日本大震災後
の広告宣伝費削減」の影響をいまだに引きずり、資金繰りが改善しないまま力尽きるケースが少
なくない。そうした意味では、景気回復の影響が中小零細業者まで波及しているとはいいがたい。
例えば、11 月に破産手続き開始決定を受けた日東エージェンシー(株)は、ナショナルクライ
アントのテレビ広告も扱っていたが、リーマン・ショック後の広告費削減の影響で業績が悪化し
たことなどから破綻した。このように、今後も広告関連業者の倒産は、中小零細企業が中心とな
ってくるものと思われ、景気回復の恩恵を受ける大手との二極化がより鮮明となってくることが
予想される。
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