12月全校集会 校長講話 平成26年12月22日 津南中等教育学校長 吉 原 満 今年も残すところあと10日となりました。体育祭や先週の大雪など、天候に泣かさ れることの多い一年でした。しかし、苦しいとき忘れてはいけないことが2つあります。 1つめは、大変な状況の時にこそ、その人間の価値が見えてくると言うことです。普通 ではない困難な事態になったとき、情報収集力や冷静な判断力が試されます。そして何 よりも、くじけない勇気があるかどうかがはっきりとわかります。 2つめは、困難を乗り越えることで、人は成長できると言うことです。逃げる理由は いくらでもあげられます。しかし肝心なことは、困難を乗り越えるための努力をしたか です。言い訳をしても、ごまかせません。 そういう意味で、まさに試練を乗り越えようとしている6年生のみなさんは、今、学 年一丸となって一人一人の進路実現に向かってがんばっていることと思います。目標も そこまでの道筋もみな違っていますが、この6年間の集大成として力を尽くしている点 では同じです。進路実現は人生のゴールではなく、新たなスタートです。卒業が真に価 値あるものになるよう実力をつけ、自分を磨いてください。 うれしいことに、お互い同士が自然に助け合い、勇気づけ合っているという話を耳に しています。今苦しんでいる人のために、ぜひお互い少しずつでも力をわけ与えあって 欲しいと思います。 また、各学年とも、校外研修に出かけてきました。特に4年生は、この6年間で最大 の行事とも言える海外研修をやり終えました。英語力をつけたり、世界の多様性を学ぶ ことも大きな目的ですが、校外での研修の一番の目的は、今まで「受け身」の姿勢で甘 えていたことに気づき、自分から動かなければならないことを知ることです。旅とは、 「苦労をしに行く」ことであり、「かわいい子には旅をさせよ」と言うのも、苦労を通 して人は成長するからです。研修を終えた今、自分の足でしっかりと立っているか、確 かめてください。 今日は『正しいことを信じる勇気を持つこと』について話します。 今年ノーベル賞で、日本の3人の技術者が青色発光ダイオードの研究で受賞し、話題 になりましたが、ノーベル平和賞も17歳という史上最年少で受賞したマララ・ユスフ ザイさんが大きく注目されました。 パキスタンではタリバンが影響力を強め、イスラム教への偏った解釈をして、女性の 教育を否定し、男女共学の学校を次々と破壊しました。学校経営者である父親とマララ は教育の自由を守ろうとし、生き方を変えずに堂々と主張していましたが、15歳のあ る日、スクールバスの中で襲撃され、前にかがんだとき銃弾が撃ち込まれ、左目の下か -1- ら首へと貫通しました。瀕死の重傷を負いましたが幸い一命は取り留め、パキスタンの 病院での集中治療のあと、イギリスの病院に移され、1年間治療を続けました。脳が腫 れたため、頭蓋骨を一部外したり、切れてしまった顔の神経をつなぐ手術をしたそうで す。 回復して16歳になった彼女は国連に招かれ、スピーチをします。このスピーチはそ の場にいた人々はもちろん、世界中の人の心を打ちました。とてもシンプルな英語です が、一つ一つの言葉が、強く心に響いてきます。ネット上で動画も見られるので、機会 があったら聴いてみてください。 「一本のペンと一冊の本で、世界を変えられる」というこのスピーチの最後の言葉は とても有名です。「もし一人の屈強な男が、銃で全てを破壊できるなら、一人の少女が、 それを1本のペンで変えられないはずがない」と彼女は考えます。 銃撃を知ったタリバンの幹部の男が、スピーチ後に手紙をくれました。そこには、「考 えを改め、全身を覆い隠すブルカを来て神学校に行くことにしたら、許してやろう」と 書いてありました。それを読み、彼女は、「この人は自分を誰だと思っているのだろう、 パキスタンの支配者でもないのに・・・。私は自分の生き方は自分で決める。」ときっぱり 思います。私は、自分のことを人がどう思い、何を言われるかばかり気にしていたこと を反省させられました。 今日この話をするまでに、2回複雑な気持ちになりました。1回目は、彼女の自伝を 読んだときです。そこには、とても元気で陽気な、人間的魅力にあふれた女の子の人生 が描かれていました。学ぶことに何よりも大きな喜びを感じていた少女が、政治や宗教 による紛争のために、自由をどんどん奪われ、脅かされていく様子が手に取るようにわ かりました。日本はなんて平和で、しかもそれを粗末にしている国だろうと思いました。 そして先週再び学校襲撃事件が起き、140人以上の尊い命が奪われました。学ぶこと が命がけなのです。残酷な悲劇がくり返されることに強い悲しみを覚えます。 2つめは、感動で自伝を読み終えた後、周辺事情をネットで調べたときです。世界中 が熱い拍手をしているのに、祖国パキスタンでは、彼女の平和賞受賞にはとても冷やや かです。表だって支持を表明すると、過激派の標的になってしまうこともあるでしょう が、それだけではなく、彼女の主張はイスラム世界の価値観を否定し、西洋に追随して いると批判されているからです。私たちが読んだらごく普通の内容でしかないと感じら れるマララの自伝は、パキスタンの多くの学校では図書館に置くことを禁止されていま す。 自伝のタイトルは『私はマララ』(I am Malala)です。これも非常にシンプルなタイト ルですが、彼女の生き方を象徴しています。私たちは、臆病さや卑怯な気持ち、自信の なさから、つい信じていることを簡単に捨ててしまいがちです。弱さゆえに「自分」か ら逃げてしまうのです。困難な状況にあってもまず自分から逃げないこと、I am ○○と 臆せず言えることを、いつも大事にして欲しいと思います。 来年が、さらにによい年となるようお祈りし、今年最後の講話を終わります。 -2-
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