(抄訳)Portable Alpha 2.0

Perspectives
June 2014
ポータブル・アルファ 2.0
(日本語訳)
一貫性があり無相関のリターンはあらゆるポータブル・アルファ戦略の基盤ですが、金
融危機は幾つものストラクチャーの主要な欠点として、流動性の不足を露呈させました。
Erik Schiller, CFA
Principal
Senior Portfolio Manager
Prudential Fixed Income
株式市場の暴落、ベータに関連する追加証拠金請求、流動性に乏しいアルファ・エンジ
ン等の複合的な影響により、投資家は金融危機後に一斉にポータブル・アルファ戦略か
ら資金を引き揚げたため、当カテゴリーの資産は 2009 年 9 月 30 日までの一年間に 44%
近く減少しました。1
こうしたポータブル・アルファ戦略に対する投資家の受け止め方はここ数年間で薄らいで
いるかもしれませんが、特に株式アクティブ・マネジャーの長期的なパフォーマンスがベ
ンチマークと極めて似通ったものに止まっていることを考慮すると、一貫したアルファ創
出の源泉を特定するのは依然として難しい問題です。その結果、ポータブル・アルファに
対する関心は回復していますが、併せて流動性が高く無相関のアルファ・エンジンこそが
戦略全体の成功にとって最も重要であるとの認識も広がっています。
株式投資に関するお馴染みのジレンマ
株式市場に最近戻ってきた投資家は、一貫性のあるアルファを創出できる株式
アクティブ・マネジャーを特定することの難しさを改めて痛感しています。多
くの場合、控え目な超過リターンを達成するためにさえも高水準のトラッキン
グ・エラーや低水準のインフォメーション・レシオを受け入れる必要があるた
め、こうしたマネジャーを見つけることは一段と難しくなっています。
株式アクティブ・マネジャーがアルファを生み出す際に直面する問題は、投資期
間の長短にかかわらず存在します。次の図に示しているように、例えば短期でみ
た場合、大型株マネジャーの半分近くは 2014 年 3 月 31 日までの 1 年間に
S&P500 指数をアウトパフォームすることに失敗しています。パフォーマンス下
位のマネジャーが指数を 650 ベーシスポイント近く下回っていることから、アン
ダーパフォーム幅も大きくなる可能性があることが判ります。
大型株アクティブ・マネジャーの半数超は当該 1 年間でベンチマークをアウトパ
フォーム(一部のマネジャーは大幅に)しましたが、しかし長期的にみると、一
貫してアウトパフォームできるかについても大きなハードルがあることが明らか
です。
1
Pensions & Investments, February 8, 2010.
Perspectives—June 2014
30
年率リターン –
米国大型株コア運用ユニバース
5th -25th Percentile
25th-Median
Median-75th Percentile
75th-95th Percentile
S&P 500 Index
Total Annualized Return, %
25
2014 年 3 月 31 日時点
15
10
5
0
Annualized Performance
11 Year
years
33Year
years
55Year
years
21.86
14.66
21.16
100% S&P 500 Index
10
Year
10 years
7.42
Source: eVestment Alliance (U.S. Large Cap Core Universe) and MPI Stylus (S&P 500 Index returns and calculations), March 2014.
上の図に示すように、10 年の期間で見ると、株式アクティブ・マネジャー間のリターン格差は大幅に縮小し、
第 1 分位のマネジャーは第 3 分位のマネジャーをわずか 162 ベーシスポイント、アウトパフォームするにとどま
っています。2 リターン格差の縮小により、アクティブ・マネジャーのユニバースでは長期パフォーマンスがベ
ンチマーク指数に極めて類似することとなり、コストを考慮すると、投資家に提供される長期アルファは相対的
にわずかなものになります。
一貫してアウトパフォームするためのハードルは、大型株マネジャーのインフォメーション・レシオが相対的
に低い点からも見て取れます。次の図に示すように、インフォメーション・レシオは長期間の場合でさえ 0.3
以下に止まっています。
3
インフォメーション・
レシオ—
米国大型株コア運用
ユニバース
5th to 25th Percentile
25th to Median
In fo rma tio n R a tio
Median to 75th Percentile
2
1
0
75th to 95th Percentile
2014 年 3 月 31 日時点
-1
-2
Information Ratio
eA US Large Cap Core Equity Median
3 y ears
5 y ears
3 Years
5 Years
0.01
-0.18
1 0 y e a rs
10 Years
0.27
Source: eVestment Alliance (U.S. Large Cap Core Universe) and MPI Stylus (S&P 500 returns and calculations), March 2014.
パフォーマンス上位の大型株マネジャーを選定しようとする投資家が常に直面するこうした問題も手伝って、
機関投資家を対象に最近実施されたサーベイでは、過去 6 カ月間に株式への配分をネット・ベースで増加さ
せたのは回答者の 3%に止まっていることが明らかになりました。一方、同期間にポータブル・アルファ戦略
への配分をネット・ベースで増加させたのは、回答者の 6%に上りました。3
2
3
MPI Stylus, March 2014.
bfinance 2014 Pension Fund Asset Allocation Survey. Based on investment decisions during the six months prior to the January 2014 publication.
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ポータブル・アルファ 1.0 - ボラティリティへのエクスポージャー
伝統的なポータブル・アルファのストラクチャーは、株式のベータ・エクスポージャーを生み出すために株式先
物と現金バッファーを組み合わせ、現金の大半は無相関の超過リターンを達成するように設計されたアルファ・
エンジンに投資されます。ポータブル・アルファに新たな関心を示している投資家は、市場のボラティリティが
高まった場合、こうしたアルファのストラクチャーがベータとの高い相関性を再度露呈したり、あるいはアルフ
ァ・エンジンの流動性が過度に低下することを不安視する傾向があります。これらは第一期のポータル・アルフ
ァ戦略から学んだ教訓です。
金融危機前に登場し人気を博した例としては、ショート・デュレーション・クレジット戦略または絶対リターン
戦略によってベータ・オーバーレイを補強したストラクチャーが挙げられます。こうしたストラクチャーはポー
タブル・アルファの定義を満たすのに不十分であるだけでなく、その金融危機におけるパフォーマンスは本来ポ
ータブル・アルファ戦略に期待されていたものを裏切るものでした。これら「アルファ」戦略の全てではないに
せよ、その多くはベータ・プールに対して大幅な正の相関性を示し、資産の大幅な下落を経験し、一貫した流動
性を提供することもできませんでした。
金融危機前に見られたもう一つのストラクチャーは、ファンド・オブ・ヘッジファンズを利用するものでした
が、このストラクチャーは金融危機が最高潮に達した際に流動性の欠如を露呈しました。重層構造であるファ
ンド・オブ・ファンズは、投資先ファンドの現金化が遮断されると、自らも直ちに投資家の現金化を遮断しま
した。その結果、投資家は自己の資金へのアクセスが不可能となり、追加証拠金請求に対応するためその他の
資産の売却に頼ることになりました。このプロセスのスパイラルによって、市場が過度に混乱し、アルファ・
プールとベータ・オーバーレイとの相関度が高まる結果につながりました。
ポータブル・アルファ 2.0
金融危機は広く利用されていたいくつかのポータブル・アルファのストラクチャーの欠点を浮き彫りにし
たと同時に、ポータブル・アルファの新たな理念の再定義を促すことにもなりました。
十分な流動性
&
無相関のアルファ
ポータブル・アルファ 2.0 のストラクチャーにおけるアルファ・エンジンの潤沢な流動性は、二つの基準に対応
することを可能にします。一つ目はストレス時にボラティリティの高いベータの源泉からの追加証拠金請求に応
じる能力、そして二つ目はそうしたベータ関連の追加証拠金請求に応じるため資本を使い果たすことに伴い、ア
ルファ・エンジンのリスク・ポジションを調整する能力です。次のセクションで詳しく述べる通り、これらの基
準は、投資家の資金へのアクセスを保全し、ボラティリティ上昇期に続く次の局面で比較的素早い回復を見せ、
アルファ・エンジンとベータ・プールとの相関性を一貫して抑制することに貢献する可能性があるという点で、
ポータブル・アルファの進化を反映しています。
基本的なベータ・エクスポージャーに対するアルファの無相関性は、平均回帰を狙ったリスク・ポジションを
ストレス時にも保有することを可能にし、強制売却を余儀なくされる可能性を排除するためにも重要です。あ
らゆる市場環境における相関性リスクを適切に勘案することで、ポータブル・アルファ 2.0 の戦略全体の永続
性が高まることになります。
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Perspectives—June 2014
政府関連セクターを用いたポータブル・アルファ 2.0 の構造
債券市場におけるプルデンシャル・フィクスト・インカムの経験と債券市場の規模を踏まえると、最高格付けの
政府関連セクターは潤沢な流動性を提供するための市場の厚みと透明性を備えつつも、しばしばミスプライシン
グにより一貫性があり無相関のアルファを提供し得る市場であると考えます。従って、これらのセクター(例え
ば米国債、デリバティブなど)は新しいポータブル・アルファの世界において最も効率的なアルファを生み出す
エンジンの一つであると考えます。
市場の流動性は様々な方法(ビッド/アスク・スプレッド、市場の厚み、取引執行速度、市場の弾力性、取引高)
で計測することができますが、投資家の視点からすると、流動性は必要に応じて現金化できる能力を意味します。
次の図に示すように、政府関連セクターはその高格付けステータスと市場流動性により、資本市場の中でも最も
証拠金率と借入コストが低い資産の一つです。このことは高水準の「借入能力」または日次調達可能金額につな
がり、ベータ関連の追加証拠金請求に応じる資金を調達するためにその他の資産を直ちに売却する必要性を大幅
に低下させます。
実際に金融危機に際して他の資産クラスの大半が調達条件の著しい悪化に晒された際にも、政府関連セクター資
産の証拠金率は相対的に低水準に止まりました。
加えて、ベータ関連の追加証拠金請求に応じるために資金を使うことで、アルファ・エンジンのリスク・
プロファイルが変化する際にも、アルファ・エンジンの高い流動性は、投資家が望むリスク・エクスポー
ジャーを維持するためのポジション調整を容易にします。
35%
30.0%
30%
政府関連セクターの
債券は各種資産の中
で最も担保としてのヘ
アカット率が高い
25%
20%
15%
10%
5%
2014 年 5 月 28 日現在
6.0%
7.5%
15.0%
11.0%
9.0%
5.5%
3.0%
0.5%
0%
Treasury
Bills
3-5 yr
10-30 yr
Treasuries Treasuries
5-10 yr
Agencies
5-10 yr
10-30 yr Select U.S.
Select
Select
MBS
Sovereigns Sovereigns
Gold
Select
Equities
Source: CME Group, May 2014. Rates provided are for example only.
ただし、流動性があるからといって、政府関連セクターに特化したアルファ・エンジンが極度なボラティリテ
ィ上昇の影響を必ずしも免れるわけではありません。特にレバレッジ解消が起こる時期には、レラティブ・バ
リューのポジションは公正価値から(または通常の市場における相互関係から)大幅に乖離する可能性があり
ます。しかし、政府関連セクターの厚みと透明性 - そして当該資産の安定的な資金調達条件 - を踏まえる
と、極端な市場ボラティリティの期間にディスロケーションが生じた場合でも、状況が一旦安定化し始めると、
そうしたディスロケーションが比較的速やかに回復する傾向があります。
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Perspectives—June 2014
過去において政府関連セクターがその他の主要な債券・株式市場と比較して迅速に安定化したことは、市場サイ
クルを通じて創出されるアルファとベータとの無相関が維持される潜在力を裏付けています。ポータブル・アル
ファを再び検討中の投資家にとって、低相関を一貫して維持する可能性があるという点は、最も求められる特性
の一つかもしれません。なぜならば、平均回帰を狙ったレラティブ・バリュー取引が一時的に逆方向を向いてい
る状況下でアルファ・エンジンから資金を調達する必要性が低減されるためです。さらに、信用リスクまたはデ
フォルト・リスクが無視できることも政府関連セクターのもう一つの特性であり、これが低水準の相関性を維持
しつつ、過去にはドローダウンからの短時間での回復に貢献しています。
恒常的な流動性と無相関のアルファ機会の提供を追求する戦略には、様々な方法があります。頻繁に見られる事
例の一つとして、先進国市場の政府関連証券と先物契約との間の裁定機会の利用が挙げられます。裁定の収斂期
間は先物契約の期日(通常3ヵ月先)により規定されます。両者の相対価格は短期的なディスロケーションにさ
らされる可能性がある一方で、その後の回復とアルファ創出には高い信頼性が期待できます。
この他、政府関連セクターに焦点を当てるアルファ・エンジンは、市場全体にわたり存在するフェア・バリ
ューからの様々な乖離を捉えるためにレラティブ・バリュー取引を利用する場合があります。例えば、以下
の図は米国債のイールドカーブに沿った構造的なディスロケーションの度合いを示しており、戦略ではカー
ブの割安なセグメントにおけるロング・ポジションとカーブの割高な部分におけるショート・ポジションと
のペアを構築する場合があります。
利回りの乖離は米国
債カーブ状のレラティ
ブ・バリューを反映
Yield deviations
from fair value
0.2
Cheap
Bonds & Notes
0.1
Current
0.1
0.0
-0.1
2014 年 3 月 31 日現在
-0.1
-0.2 -0.2
Rich
0
5
10
15
20
25
30
Years To Maturity
Source: Prudential Fixed Income, March 2014.
この種の割高な証券と割安な証券とのペアトレードは、一貫したアルファの源泉を提供するだけでなく、主要な
債券・株式市場と無相関のポートフォリオを維持する際の追加的な支援材料となります。最近実施されたヘッジ
ファンド投資家調査では、金融・政治政策に関わる不確実性が最も大きな懸念材料として挙げられましたが、こ
のような市場中立性は同調査で指摘された数多くの懸念にも対応しています。4
個別に見ると、レラティブ・バリューのポジションのリターンは比較的小さいものの、米国政府関連の資産ク
ラス全体を通じた多層にわたる厚みのある収益機会群は、大幅な超過リターンを生み出す潜在性を備えた、長
期アルファの重要な源泉と位置付けられます。
4
Credit Suisse, March 2014
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一貫したレラティブ・バリュー機会、市場中立特性のメリット、社債クレジット・リスクの不在など、政
府関連セクターに焦点を当てたアルファ・エンジンの総合的な特性は、下図にみられるように、投資家が
レラティブ・バリュー戦略に対する選好度を強めているとの示唆を裏付けています。
25%
Anticipated 2014 Investor Allocations to Hedge Strategies*
(Increasing or Considering Increasing)
20%
20%
レラティブ・バリュー/ア
ービトラージは債券関連
のヘッジファンド戦略の
中で最もニーズが高い
2014 年 3 月現在
14%
15%
13%
13%
9%
10%
7%
5%
0%
Fixed Income
Relative Value /
Arbitrage
Credit MultiStrategy
Credit Relative
Value
ABS/Structured Emerging Markets
Credit
Leveraged
Loans/HY
Source: Credit Suisse, March 2014. * Net Demand represents percentage increasing or considering increasing minus
percentage decreasing or considering decreasing. Shown for illustrative purposes only.
結論
低ボラティリティと堅調なリターンの好環境にもかかわらず、多くの株式アクティブ・マネジャーは長期的にベ
ンチマークをアウトパフォームするのに依然苦戦しています。これは特に無相関のパフォーマンスと長期的なア
ルファ創出の潜在性というコンセプトとしてのポータブル・アルファの魅力を裏付ける現象です。
金融危機は、ポータブル・アルファ戦略がコンセプトにおいてだけでなく、ストラクチャーにおいても健全で
ある必要性を示すリトマス試験紙の役割を果たしました。ポータブル・アルファの投資目標は、バージョン
2.0 でも変わっていません。しかしながら、潤沢な流動性と無相関のアルファを維持するためにストラクチャ
ー面から焦点を当てることで、それらの目標の達成、並びに資本への一貫したアクセス維持やボラティリティ
上昇期の後の比較的迅速な回復等様々な特性の実現に向けた、ポータブル・アルファの進化が反映されていま
す。
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Notes
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Perspectives—June 2014
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本資料はプルデンシャル・フィクスト・インカムが作成した" Portable Alpha 2.0 "をプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン
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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第392 号
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