qqq = ∫ q ∫ q

構造振動特論-第 7 回資料
振動とエネルギー
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7
第7回
振動とエネルギー
Equation Chapter 7 Section 1
7.1
地震動を受ける1自由度系モデルのエネルギーの釣合い
地震動を受ける1質点1自由度系モデルにおいて,地面から加速度 y0 が作用しているときの運動
方程式は式(7.1),あるいは固有円振動数ωと減衰定数 h を式(7.2)で定義して式(7.3)で表される.
my + cy + ky = −my0
(7.1)
k m = ω 2 , c m = 2hω
(7.2)
y + 2hω y + ω y = − y0
(7.3)
2
ここで,地震動の継続時間を td とし,時刻 0 において系は静止しているとする.以下では,地震
をか
が始まってから地震終了時までのエネルギーの変化を考える.この時,式(7.1)の両辺に dy = ydt
けて時刻 0 から時刻 td まで積分すると式(7.4)が得られる.
td
td
td
td
0
0
0
0
+ ∫ cy 2 dt + ∫ kyydt
= − ∫ my0 ydt
∫ myydt
(7.4)
ここで,時刻 td における運動エネルギーWK(td),減衰エネルギー(減衰力によるエネルギー消費分)
WD(td),ひずみエネルギーWS(td),入力エネルギーEI(td)をそれぞれ式(7.5)~(7.8)で定義する.
td
=
WK ( td ) = ∫ myydt
0
2
1
m { y ( td )}
2
(7.5)
td
WD ( td ) = ∫ cy 2 dt
(7.6)
0
td
=
WS ( td ) = ∫ kyydt
0
2
1
k { y ( td )}
2
(7.7)
td
EI ( td ) = − ∫ my0 ydt
(7.8)
0
式(7.5)~(7.8)を式(7.4)に代入すると,エネルギーの釣合い式が式(7.9)で得られる.
WK ( td ) + WD ( td ) + WS ( td ) = EI ( td )
(7.9)
図 7-1 に,固有周期 T=0.5 秒で非減衰(h = 0)の線形1自由度系モデルが JMA Kobe1995NS 記録
に対して応答するときの変位応答ならびに運動エネルギーWK,減衰エネルギーWD,ひずみエネルギ
ーWS,入力エネルギーEI の時刻歴を示す.なお,時刻 t における WK(t),WD(t),WS(t),EI(t)の値は,
式(7.5)~(7.8)において td を t に置き換えた式より求める事ができる.図 7-1 より,運動エネルギー
WK(t)とひずみエネルギーWS(t)は,変位応答が最も大きくなる 8~12 秒の間で最も大きくなり,その
後時間の経過とともに小さくなり地震動がほぼ終了した 25 秒以降では 0 とある一定値の間を振動す
る傾向にあること,および EI(t)の値も 8~12 秒の間で最も大きくなり,その後減少して 25 秒以降で
は概ね一定値となっている事がわかる.
7-1
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図 7-1
JMA Kobe 1995NS に対する 1 自由度系モデルのエネルギーの時刻歴(非減衰)
一方,図 7-2 には固有周期は図 7-1 と同じ 0.5 秒で,減衰定数を h = 0.05 とした時の変位応答な
らびに WK(t), WD(t),WS(t),EI(t)の時刻歴を示す.図 7-2 より,WK(t)と WS(t)は図 7-1 と同じく 8
~12 秒の間で最も大きくなるものの,その後減少して 25 秒以降では概ね 0 となる事,一方で WD(t)
は時間の経過とともに概ね単調増加して 25 秒以降で概ね一定値となる事,ならびに EI(t)の値も振動
7-2
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の生じている 8~12 秒の間では増減が見られるものの,その後増加して 25 秒以降で概ね一定値とな
る事がわかる.
図 7-2
JMA Kobe 1995NS に対する 1 自由度系モデルのエネルギーの時刻歴(減衰定数 h = 0.05)
7-3
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図 7-2 の現象を式で考えると以下のようになる.すなわち,減衰がある線形弾性応答の場合には,
地震終了時(t = td)には振動が静止して運動エネルギーWK(td)とひずみエネルギーWS(td)がともに 0
となる.従って,式(7.9)より式(7.10)が得られる.
WD ( td ) = EI ( td )
(7.10)
式(7.10)は,減衰がある線形弾性応答の場合,地震による入力エネルギーEI(td)が全て減衰によるエ
ネルギーWD(td)として消費される事を表している.
以下では,地震終了時における入力エネルギーEI(td)を総入力エネルギーと呼び,単純に EI で表す.
7.2
総入力エネルギースペクトル
ここでは,総入力エネルギーEI に着目し,これと固有周期 T ならびに減衰定数 h の関係を調べる
事とする.総入力エネルギーの速度換算値 VE を式(7.11)により定義する.
VE =
2 EI
m
(7.11)
式(7.11)より,EI と VE の関係は式(7.12)で表す事もできる.
EI =
1
mVE 2
2
(7.12)
そこで,前回の講義で述べた応答スペクトルと同様に,縦軸に総入力エネルギーの速度換算値 VE
を,横軸に固有周期 T をとったものを総入力エネルギースペクトルと呼ぶ.図 7-3 に,JMA
Kobe1995NS 記録の総入力エネルギースペクトルを示す.ここで,図 7-4 には JMA Kobe1995NS 記
録の速度応答スペクトルを比較のため併せて示している.図 7-3 と図 7-4 の比較より,以下の点が
指摘できる.
(1)
総入力エネルギースペクトルの場合,速度応答スペクトル(図 7-4)とは異なり,減
衰定数 h が増大しても減少するとは限らない.むしろ,総入力エネルギースペクトルは,h の
増大により平滑化する傾向にある.具体的に言えば,非減衰(h = 0)の場合には総入力エネ
ルギースペクトルの形状は非常に山谷が激しいが,h の値が 0.10 に増大すると総入力エネル
ギースペクトルの形状はなだらかになる.
(2)
総入力エネルギースペクトルの形状は,速度応答スペクトルと非常に似通ったものと
なる.特に,非減衰(h = 0)の場合,総入力エネルギーの速度換算値 VE の値は速度応答スペ
クトルの値と近い値となる.
7-4
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図 7-3
総入力エネルギースペクトル(JMA Kobe 1995NS)
図 7-4
速度応答スペクトル(JMA Kobe 1995NS)
7-5
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ここで,上記の(2)について考察してみる.線形振動の場合,系に蓄えられるひずみエネルギーの
最大値 WSmax は式(7.13)で表される.
WS max =
2
1
1
1
2
2
kS D (T , h ) = m {ω S D (T , h )} = mSV (T , h )
2
2
2
(7.13)
従って,非減衰の場合には,入力エネルギーEI の最大値 EImax とひずみエネルギーの最大値 WSmax
が等しくなると考えると,式(7.14)が得られる.
EI max = WS max =
1
1
2
2
mSV (T , 0 ) ≥ EI = mVE (T , 0 )
2
2
(7.14)
以上により,式(7.15)が得られる.
SV (T , 0 ) ≥ VE (T , 0 )
(7.15)
図 7-5 に非減衰(h = 0)における速度応答スペクトルと総入力エネルギースペクトルを比較して
示す.図 7-5 より,式(7.15)の関係が成立している事がわかる.
図 7-5
非減衰における速度応答スペクトルと総入力エネルギースペクトルの比較
7-6
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7.3
等価減衰定数
ここでは,話を変えて減衰により消費されるエネルギーについて検討する.初めに,正弦波入力
に対して定常振動状態にある場合を考える(式(7.16)).
my + cy + ky = −ma0 sin ω0 t
(7.16)
話の単純化のため,共進状態(ω = ω0)を考える事とし,そのときの変位 y(t)が式(7.17)で表され
るとする.
y ( t ) = Y0 sin (ωt − φ )
(7.17)
y ( t ) = ωY0 cos (ωt − φ )
(7.18)
この時の速度は式(7.18)で表される.
従って,系全体の抵抗力(減衰力と復元力の和)Q は式(7.19)で表される.
Q ( t ) = cy ( t ) + ky ( t ) = cωY0 cos (ωt − φ ) + kY0 sin (ωt − φ )
(7.19)
この時の変位 y と抵抗力 Q の関係は図 7-6(a)で表されるように楕円を描く事となる.定常振動状
態において,1 サイクルにおいて系により吸収されるエネルギーは,1 サイクルあたりの減衰エネル
ギーΔWD と等しく,かつこれは図 7-6(a)の楕円の面積と等しい.以上により,ΔWD は式(7.20)で得ら
れる.
t +T
ΔWD =
∫ c { y ( t )}
2
dt = π cωY0 2 = π ( 2mhω ) ωY0 2 = 2π mhω 2Y0 2
(7.20)
t
さらに,最大振幅(y = Y0)におけるひずみエネルギーWSmax は式(7.21)で表される.
WS max =
1 2 1
kY0 = mω 2Y0 2
2
2
(7.21)
以上により,減衰定数 h は最大振幅におけるひずみエネルギーWSmax と 1 サイクルあたりの減衰エ
ネルギーΔWD により式(7.22)で関係付けられる事となる.
図 7-6
等価粘性減衰定数の定義
7-7
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1 ΔWD
⎛1
⎞
ΔWD = 2π h ⋅ 2 ⋅ ⎜ mω 2Y0 2 ⎟ = 4π hWS max ∴ h =
4π WS max
⎝2
⎠
(7.22)
一般に,非線形領域で定常応答する場合の履歴減衰の扱いとして,図 7-6(b)に示すように 1 サイ
クルあたりの履歴吸収エネルギーΔW と等価なポテンシャルエネルギーWe(= ke d2/2)を用いて式
(7.23)で定義される等価粘性減衰定数 heq がよく用いられる.
heq =
1 ΔW
4π We
(7.23)
式(7.23)で定義される heq は,図 7-6(b)の1サイクルあたりの履歴吸収面積ΔW と等しい1サイクル
あたりの吸収エネルギーを有する粘性減衰に置き換えた時の粘性減衰定数と見ることができる.た
だし,式(7.23)で定義される等価粘性減衰定数 heq は定常応答を仮定して得られる値であるため,後
述するようにこの値を非線形領域での最大応答の推定に直接用いる事ができない点に留意する必要
がある.
一方で,式(7.10)に示したように,減衰がある線形弾性応答の場合には,地震終了時(t = td)には
地震による入力エネルギーEI(td)が全て減衰によるエネルギーWD(td)として消費される(式(7.24)).
td
td
0
0
WD ( td ) = ∫ cy 2 dt = EI ( td ) = − ∫ my0 ydt
(7.24)
式(7.24)において,c = 2mhωの関係を用いて書き改めると,式(7.25)が得られる.
td
td
td
∴h = −
y0 ydt
2hω ∫ y dt = − ∫ 2
0
0
∫ y ydt
0
0
(7.25)
td
2ω ∫ y dt
2
0
式(7.25)は,1自由度系モデルのエネルギーの応答に着目した減衰定数 h の定義式と見る事ができ
る.この式は,線形弾性範囲を超えて非線形領域で応答する1自由度系モデルの応答を考える上で
非常に重要な式となる.
7-8
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演習課題
7.4
図 7-7,図 7-8 はある観測記録の位相特性を用いて作成した模擬地震動の加速度波形である.
図 7-7
演習課題の地動加速度の時刻歴波形(模擬地震動 A)
図 7-8
演習課題の地動加速度の時刻歴波形(模擬地震動 B)
この波形 A,B について,講義のホームページから Excel ファイルをダウンロードして,以下の条
件で応答スペクトルを作成し図示せよ(模擬地震動 A,B の結果を同じグラフに図示のこと).
z
固有周期 T は 0.2 秒~3.0 秒で 0.1 秒刻みとする。
z
減衰定数 h は 0.05 の 1 種類とする。
z
作成する応答スペクトルは以下の通り
z
¾
変位応答スペクトル(前回資料の図 6-4)
¾
(擬似)速度応答スペクトル(前回資料の図 6-5)
¾
(擬似)加速度応答スペクトル(前回資料の図 6-6)
¾
SA-SD 曲線(前回資料の図 6-9)
¾
エネルギースペクトル(Ve スペクトル,今回資料の図 7-3)
グラフを作図する際,以下のような表を作るとよい(提出物への表の添付は自由)
7-9
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表 7-1
応答スペクトル作図のための表のイメージ
模擬地震動 A
T(s)
SD
pSV
pSA
模擬地震動 B
VE
SD
pSV
pSA
VE
0.2
0.3
0.4
・・・
・・・
・・・
提出は A4 の紙に,表題の紙をつけて各グラフ(1 ページにつきグラフを 1~2 枚)を綴じること。
講義の URL は以下の通り:http://citrcsl.sharepoint.com/Pages/advancedstructuraldynamics.aspx
7-10