2014年2月までの調査の取りまとめ.

農産物の放射性物質汚染に対する
消費者評価の推移
ー2014年2月までー
筑波大学生命環境系
氏家清和
[email protected]
ポイント
• 消費者意識の変化
• 消費者の地域支援意向は震災以降大きく増加したが徐々に低下し,現在はおおむ
ね横ばい.
• 京浜においては国産商品への信頼感は震災以降低下したが,現在は2011年3月
の水準をほぼ回復.関西は震災でも変化は小さく,ほぼ横ばいで推移.
• 国や専門家への信頼感は震災以降大きく低下.回復傾向は見られるものの,
2011年3月の水準にはまだ届いていない.
• 汚染に対する評価の変化(産地評価と健康リスク評価)
• 京浜においては産地に対する評価の回復傾向が見られる.特に,福島近隣県産の
農産物に対する評価は大きく改善.汚染にかかわらず福島ないし福島近隣県のも
のは買わないという消費者態度は徐々に小さくなっている.
• 京阪神においてもやや改善傾向は見られるものの,依然として福島・近隣県産への
忌避感は強い.
• 汚染の健康リスクに対する評価は2012年4月の基準改訂後にやや改善したもの
の,その後悪化.現在では基準改訂前とほぼ同水準に.基準改定による評価改善
効果が消失したと見られる.
2
消費意識の変化
3
産地や地域活性化につながる商品を買う
•
震災直後は産地への支援意向が強まったが,震災から1年経過後にはほぼ通常の値に落ち着いている.
•
それでも,約半数の消費者にとって産地や地域活性化と商品との関連性は食品購入の際に評価ポイントとなっている.
当てはまると回答した回答者の比率
100%
100%
京浜
80%
80%
60%
京阪神
58.0%
53.0%
60%
55.4%
49.6%
47.9%
49.4%
45.9%
52.0%
47.5% 46.3% 47.4%
54.4% 53.2%
50.7% 51.6%
48.9%
48.6%
44.1% 45.5%
40%
40%
20%
20%
45.6%
0%
0%
1103 1106 1108 1111 1202 1206 1210 1302 1308 1402
1103 1106 1108 1111 1202 1206 1210 1302 1308 1402
4
国産の商品を買う
•
京浜においては,2011年8月以降に値が大きく減少している.国産の商品自体への忌避感が大きくなったと考えられる.値は徐々
に増加し,2014年2月では2011年3月の値に近くなっている.
•
京阪神では,2011年8月以降若干減少傾向がみられるが,京浜ほどの落ち込みは見られない.
当てはまると回答した回答者の比率
100%
100%
京浜
80.6%
80%
京阪神
81.7% 81.4%
78.4%
71.8% 71.0% 72.3% 72.1%
74.8% 74.4% 73.8%
77.4%
80%
60%
60%
40%
40%
20%
20%
80.1% 80.3% 79.5% 79.5%
77.6% 78.9%
83.0% 82.1%
0%
0%
1103 1106 1108 1111 1202 1206 1210 1302 1308 1402
1103 1106 1108 1111 1202 1206 1210 1302 1308 1402
5
国や専門家が安全と認定した商品は安心できる
•
震災以降,2011年6月頃から値が大きく低下している.情報開示の遅さや専門家間での意見の相違などが明らかになるにつれて,国や専門
家への信頼感が徐々に低下していったと考えられる.
•
最も信頼感が低下したのは2011年8月であるが回復傾向も見られる.ただし,2014年2月においても2011年3月と比較して値は小さい.
当てはまると回答した回答者の比率
100%
100%
京浜
80%
80%
60%
60%
52.6%
48.1%
43.2%
40.9%
40%
京阪神
36.8%
39.5% 39.5%
40.2%
49.0%
46.2%
47.6%
44.5%
41.6%
20%
53.7%
38.9%
41.8%
43.9%
41.8%
45.0% 43.6%
40%
20%
0%
0%
1103 1106 1108 1111 1202 1206 1210 1302 1308 1402
1103 1106 1108 1111 1202 1206 1210 1302 1308 1402
6
放射性物質への汚染へ
の評価
ほうれん草の例
7
産地に対する評価
•
京浜では2011年8月・11月をピークにWTAの値は減少傾向が顕著.特に茨城県産については統計的に有意な値ではなくなっている.
•
京阪神でも低下傾向が認められるが,京浜と比較してWTAの値が大きい.また,福島県産と茨城県産との間に有意な差は見られず,差別化さ
れていない.
汚染が不検出である場合の各県産ほうれん草へのWTA*(値が大きいほど忌避感が大きい)
¥60
¥120
105.5
52.1
49.3 49.8
¥50
99.2
¥100
46.1
42.2
92.3
88.9
43.7
96.2
40.0
80.4
79.4
¥40
¥80
37.2
34.5
29.6
¥30
28.7
60.0
¥60
72.4
68.1
64.1
60.3
23.3
59.6
52.8
21.0
¥20
74.8
73.5
83.1
82.8
78.9
31.6
31.4
91.9
18.3
¥40
14.5
13.0 13.5
¥10
6.5
¥20
京浜
京阪神
¥0
¥0
福島産
茨城産
福島産
茨城産
8
*算出方法については付録参照
健康リスクに対する評価
•
汚染に対する評価に関しては,京浜・京阪神とも大きな変化は見られない.ただし,基準改訂後の2012年6月には京浜ではWTAが
大きく低下しているのと比較して,京阪神では基準改訂前と同様の値となっている.
•
基準改訂後にWTAはいったん低下するが,徐々に増加し,2014年現在では基準改訂前と同様の水準となっている.
汚染が基準値以下である属性に対するWTA*(値が大きいほど忌避感が大きい)
¥90
¥90
83.0
76.9 78.3
¥80
77.6
80.0
84.2
¥80
72.6
67.0
¥70
¥60
59.0 58.1
80.4
78.9 77.9 77.7
69.5
¥70
75.4
77.1
72.4
¥60
61.0
57.1
¥50
¥50
¥40
¥40
¥30
¥30
¥20
¥20
¥10
¥10
¥0
¥0
9
*算出方法については付録参照
付録:調査方法等
10
調査概要
2012/10/
2013/2/2 2013/8/2 2013/2/2
29~
6~2/28 6~8/29 0~2/24
10/31
20歳~69歳までの既婚女性(国勢調査年齢分布によるセル割付)
京浜(東京,千葉,埼玉,神奈川),京阪神(滋賀,大阪,京都,兵庫,奈良,和歌山)
2011/3/2 2011/6/1 2011/8/2 2011/11/ 2012/2/1 2012/6/4
調査期間
9~3/31
~6/3
~8/4
1~11/4
~2/3
~6/6
調査対象
対象地域
回答依頼
数
対象農産
物
調査項目
京浜,京阪神で各約1000名
ほうれん草・牛乳
ほうれん草・牛乳・米・牛肉
消費意識(公益志向,価格志向,安全志向,国産志向)
震災以前の購入頻度(ほうれん草・牛乳,米,牛肉)
震災後の品目購入忌避態度(ほうれん草・牛乳,米,牛肉)
受容価格調査(ほうれん草・牛乳,米,牛肉)
基本属性(年代,最終学歴,居住地,世帯所得,職業,同居子ども人数,定期購読新聞)
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質問形式
• 「汚染の恐れがない産地のほうれん草(ほうれん草A)」と「茨城県産・福島県産ほう
れん草(ほうれん草B)」があるときに,どちらを選択するかを想像してもらう.
• ほうれん草Aが150円であった場合,ほうれん草Bがいくらならば,ほうれん草Bを選択
するかを質問.
• 消費者がほうれん草Bを選択するのに必要な価格差を測定.
ほうれん草A 150円
ほうれん草B ???円
ほうれん草Bを購入しても
良いと考える価格を質問
ほうれん草B: 産地×汚染度合 =10通り
産地:①福島県産・②茨城県産
放射性物質汚染の度合:①基準値以下・②基準値1/2以下,③基準値1/10以
下,④基準値1/100以下,⑤不検出
12
支払カード(例)
産地
汚染程度
支払ってもいい価格
福島県
基準値以下
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
福島県
基準値1/2以下
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
福島県
基準値1/10以下
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
福島県
基準値1/100以下
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
福島県
不検出
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
茨城県
基準値以下
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
茨城県
基準値1/2以下
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
茨城県
基準値1/10以下
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
茨城県
基準値1/100以下
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
茨城県
不検出
>¥150 ¥150
¥140
¥130 ・・・・・
¥20
¥10
¥0
買わない
13
本研究でのWTAの考え方
• WTA = 参照価格(150円) – 許容価格
• 消費者が汚染を受け入れるのに必要な金銭的便益
ほうれん草 A
ほうれん草 B
参照価格 (150円)
許容価格 (支払カードの回答)
WTA(円)
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WTAの分解
参照価格 (150円)
ほうれん草A
ほうれん草B
許容価格 (円)
産地評価部分
WTA (円)
汚染による
健康リスク評価部分
WTA  ORIGIN  RISK
産地評価
健康リスク評価
15
WTA modelの推計
• 基準価格(150円)との価格差(WTA)に換算.
• 回答データは区間データなので,random effect interval
regression による最尤推定.
産地評価部分(≒風評)
「福島県産」
への評価
「茨城県産」
への評価
WTA  OF OF  OI OI
誤差項など
 T 1T 1  T 2T 2  T 3T 3  T 4T 4    
「基準値以下」
への評価
「基準値1/2以
下」への評価
「基準値1/10以
下」への評価
健康リスク評価部分
「基準値1/100以
下」への評価
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