KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date Bone bonding ability of a chemically and thermally treated low elastic modulus Ti alloy: gum metal( Abstract_要旨 ) Tanaka, Masashi Kyoto University (京都大学) 2014-03-24 URL http://hdl.handle.net/2433/188676 Right 許諾条件により本文は2014-11-30に公開 Type Thesis or Dissertation Textversion ETD Kyoto University 京都大学 博士( 医 学 ) 氏 名 田 中 真 砂 史 Bone bonding ability of a chemically and thermally treated low elastic modulus Ti alloy: gum metal 論文題目 (生体活性処理を付与した低弾性型チタン合金「ゴムメタル」の 骨結合能評価) (論文内容の要旨) 【序論】チタン合金(Ti–6Al–4V)は優れた生体適合性、耐腐食性、高強度のため、骨 折後の内固定用プレートや髄内釘、人工股関節ステムなどの整形外科用インプラ ントとして幅広く用いられている。しかし、ヒト皮質骨のヤング率が 10~30 GPa であるのに対し、Ti–6Al–4V チタン合金は 110 GPa と大きく解離するため、術後、骨に 伝わる力よりもインプラントに伝わる力の方が大きくなり、皮質骨の被薄化が生じるスト レスシールディング現象が生じ、歩行時に大腿部痛を引き起こす報告が増加している。 2003 年、低ヤング率(55 GPa)で高強度(1200MPa)なチタン合金であるゴムメタル (Ti–36Nb–2Ta–3Zr–0.3O)が開発され、先行研究においてゴムメタルに 1M NaOH 100mM CaCl2 - 加熱(700℃)- 温水(80℃)- 乾燥(40℃)処理を付与すると、擬似体 液(SBF)中でのアパタイト形成能が確認された。本研究の目的は、生体活性処理を付与 した低弾性型チタン合金ゴムメタルの生体内における骨結合能を評価することである。 【方法】材料として、15×10×2 mm の試験片を下記に示す 4 種類準備した。 (1) UT-GM: ゴムメタル未処理 (2) ACaH-GM: ゴムメタル 1M NaOH - 100mM CaCl2 加熱(700℃)処理 (3) ACaHW-GM:ゴムメタル 1M NaOH - 100mM CaCl2 - 加熱(700℃) - 温水(80℃)- 乾燥(40℃)処理 (4) AH-Ti: 純チタン 5M NaOH - 加熱(600℃)処 理。先行研究から、SBF 中で(1),(2)にはアパタイト形成能がないが、(3),(4)にはアパタイ ト形成能がある。雄の日本白色家兎(n = 8)脛骨骨幹端に試験片を内側皮質骨から外側皮 質骨まで貫通するように挿入。術後 4, 8, 16, 26 週後に安楽死させ、脛骨を摘出した。試 験片が骨のみと接する状態にして引きはがし試験行い、接着強度を測定した。測定値は埋 植期間ごとに一元配置分散分析、Tukey-Kramer 法による多重比較検定を行い、p<0.05 を有意差ありとした。材料表面および引きはがし試験後の材料表面の観察を走査型電子顕 微鏡(SEM)で行い、エネルギー分散型 X 線分光法(EDX)分析を行った。組織観察用の標 本(n = 2)は、固定後脱水して、硬組織切片を作成後、Stevenel’s blue and Van Gieson’s picrofuchsin 染色を行い、光学顕微鏡にて観察した。 【結果】 SEM による材料表面観察の結果、ACaH-GM と ACaHW-GM には nanometer scale の、AH-Ti には submicrometer scale の網目状構造が見られた。引きはが し試験の結果、全期間を通じて ACaHW-GM と AH-Ti は UT-GM、ACaH-GM 両者に比較 して統計学的有意に高い結合力を示した(p<0.05) 。一方、ACaHW-GM と AH-Ti の間の 結合力には全期間を通じて統計学的有意差はなかった。引きはがし試験後の材料表面を SEM で観察し、EDX 分析をすると、ACaHW-GM と AH-Ti では埋植期間に従って多くの 骨組織が試験片に付着していた。組織標本では、4 週後において UT-GM、ACaH-GM で は骨組織と試験片の間に軟部組織が介在していたが、ACaHW-GM、AH-Ti では新生骨が 試験片に直接結合していた。26 週後では ACaHW-GM、AH-Ti では UT-GM、ACaH-GM に比べて明らかに多くの骨組織が増生していた。 【考察】UT-GM 及び ACaH-GM は生体中で骨結合能を有しなかったが、ACaHW-GM は 既に生体活性を有することが証明されている AH-Ti と同等の骨結合能を有した。このこと は、表面構造のみならず、SBF 中でのアパタイト形成能が生体内での骨結合能に影響を及 ぼすことを示している。温水処理を加えると SBF 中でアパタイト形成能を有する機序に 関しては、温水処理を施すとチタン酸カルシウム層状構造中の Ca2+の移動度が上昇するこ とにより合金表面に Ti-OH 基が生成され、SBF 中の Ca2+が結合し、更に HPO42-と結合し てリン酸カルシウムを形成し、アパタイトへ変化するものと考えられる。 【結論】低弾性型チタン合金であるゴムメタルは、その力学的特性によりストレスシー ルディング現象を予防する効果があると考えられている。本研究により、ゴムメタルが生 体活性能を有することが新たに証明されたことにより、今後、整形外科インプラントへの 応用が期待される。 (論文審査の結果の要旨) Ti-6Al-4V チタン合金は人工関節の材料として広く用いられているが、 その高い弾性率のた め術後に周囲骨への応力遮蔽から骨萎縮をきたすストレスシールディング現象が生じる。 本研究の目的は、低弾性型チタン合金「ゴムメタル」(Ti-36Nb-2Ta-3Zr-0.3O)に①NaOH - CaCl2 - 加熱処理を加えたもの、②NaOH - CaCl2 - 加熱 - 温水 - 乾燥処理を加えた もの、③未処理のもの、及び対照として既に生体活性能が証明されている④アルカリ加熱 処理純チタンの4種類の試験片を作成し、家兎脛骨骨幹端に埋入して生体内での骨親和性 を評価することである。試験片の表面構造は①、②群共にナノレベル、④群はサブマイク ロレベルの網目状構造が認められたが、③群では認められなかった。力学試験では、②、 ④群が①、③群に比較して統計学的有意に高い骨結合力を示した。②群と④群間には有意 差はなかった。組織標本では、4 週後において①、③群では骨組織と試験片の間に軟部組 織が介在していたが、②、④群では新生骨が試験片に直接結合しており、26 週後では②、 ④群は①、③群よりも多くの骨組織が増生していた。これまでのアルカリ加熱処理では生 体活性能が付与できなかったゴムメタルにも②群の処理で生体活性能が付与されること が示された。 以上の研究により低弾性型チタン合金にも生体活性能が付与されることが示され、今 後、強固な骨結合と長期的な周囲骨の骨量維持を可能にするインプラント開発に寄与する ところが大きい。 したがって、本論文は博士(医学)の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、平成26年2月12日実施の論文内容とそれに関連した 試問を受け、合格と認められたものである。 要旨公開可能日: 年 月 日 以降
© Copyright 2024 ExpyDoc