新製品 紹介 1,700 V 耐圧 SiC ハイブリッドモジュール 1,700 V Withstand Voltage SiC Hybrid Module 牛島 太郎 * USHIJIMA, Taro 近年,地球温暖化を防止するために,これまで以上に CO2 などの温室効果ガスの削減が求められている。温室 効果ガスを削減する手段の一つとして,パワーエレクト ロニクス機器の省エネルギー化がある。中でもインバー タの高効率化が挙げられ,特にインバータの主要な素子 であるパワーデバイスの低損失化の要求が強い。 代表的なパワーデバイスである IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor) モ ジ ュ ー ル に は, 従 来 は Si( シ リ コ ン ) の IGBT チ ッ プ と FWD(Free Wheeling Diode) チップを用いてきた。この Si デバイスに替わって,耐熱 (a)外 観 性と高い破壊電界強度を持った SiC(炭化けい素)デバイ 110 スが装置の高効率化や小型化を実現するものとして期待 されている。 富 士 電 機 で は 600 V 耐 圧 SiC-SBD(Schottky Barrier Diode) ,および 1,200 V 耐圧 SiC-SBD の開発を完了し, と Si-IGBT E2 C1 80 これらの SiC-SBD C2E1 を組み合わせて搭載し G2 E2 E1 G1 た SiC ハイブリッドモジュールを製品化している。今回, 690 V 入力インバータ用に 1,700 V 耐圧の SiC ハイブリッ ドモジュールを開発し,製品化した。 本稿では, 「M277 パッケージ」に搭載した 1,700 V 耐圧 30 SiC ハイブリッドモジュールの特徴とスイッチング特性に ついて述べる。 (b)外形図 1 特 徴 図₁ 「M277 パッケージ」 M277 パッケージの外観と外形図を 図₁ に示す。従来 の Si モジュールから容易に置き換えることができるよう に Si モジュールと同じ M277 パッケージを採用し,富士 T j =150 ℃,I o =177 A,E d =1,073 V,F o =50 Hz, cosφ=0.85, λ=1.0, 3 相 PWM 1,400 と第 6 世代「V シリーズ」IGBT チップを搭載した。SiC- 1,200 VF 1,000 E off 800 V sat トータル発生損失(W) 電機で量産立上げを行った 1,700 V 耐圧 SiC-SBD チップ SBD は,これまで使用していた Si ダイオードに比べ,低 抵抗でかつスイッチング特性に優れている。また,バン ドギャップが広いため,熱励起されるキャリアが非常に 少なく温度上昇による影響を受けにくい。したがって, 高温動作が可能である。図₂ にトータル発生損失のシミュ レーション結果を示す。キャリア周波数 fc が 2 kHz のとき, べて約 26 % 低い。また,SiC ハイブリッドモジュールは, * 富士電機株式会社電子デバイス事業本部事業統括部モジュール技 400 E on 26 % 低減 200 0 SiC ハイブリッドモジュールの損失は Si モジュールに比 fc が高い領域における損失が Si モジュールより低いので 600 E rr SiC Si SiC Si f c=1kHz 2 kHz SiC Si 4 kHz SiC Si 8 kHz SiC Si 10 kHz 図₂ トータル発生損失のシミュレーション結果 高周波動作に有利である。 術部 2014-S04-1 富士電機技報 2014 vol.87 no.4 1,700V 耐圧 SiC ハイブリッドモジュール V cc=900 V,I c =400 A,V GE=+15 V/−7 V,R g=1.0Ω, T j =150 ℃ V cc=900 V,I F =400 A,V GE=+15 V/−7 V,R g=1.0Ω, T j =150 ℃ on V CE :200 V/div 0A :64.8 mJ(58 %減) 0V GE I F :200 A/div rr 0V C :10.0mJ(91% 減) :500 ns/div 0V (a)SiC ハイブリッドモジュール V cc=900 V,I c =400 A,V GE=+15 V/−7 V,R g=4.7Ω, T j =150 ℃ V cc=900 V,I F =400 A,V GE =+15 V/−7 V,R g=4.7Ω, T j =150 ℃ 0A on V CE :200 V/div :155.6 mJ 0V I F :200 A/div GE ピーク電流 rr:112.5mJ :500 ns/div 0V :200 V/div :500ns/div (a)SiC ハイブリッドモジュール ピーク電流 :200 A/div CE 0A :20 V/div C :200 A/div CE 0A 0V :20 V/div :200 V/div :500ns/div (b)Si モジュール (b)Si モジュール 図₃ 逆回復波形 図₄ ターンオン波形 向アーム側の IGBT ターンオン電流に影響するため,ター 2 スイッチング特性 ンオン損失が低減する。逆回復波形と同様にターンオン ⑴ 逆回復損失特性 Si モジュールと比べて約 58 % 低い。 ピーク電流はほとんどなく,400 A 品のターンオン損失は 図₃ に,SiC ハイブリッドモジュールと Si モジュール の 400 A 品における逆回復波形を示す。SiC ハイブリッド 発売時期 2014 年 10 月 モジュールは,逆回復ピーク電流がほとんどない。これ は SiC-SBD がユニポーラデバイスであるため,少数キャ リアの注入が起きないことに起因する。400 A 品の逆回復 お問い合わせ先 損失は Si モジュールに比べて約 91 % 低い。 ⑵ ターンオン損失特性 富士電機株式会社 図₄ に,SiC ハイブリッドモジュールと Si モジュール 電子デバイス事業本部事業統括部 の 400 A 品におけるターンオン波形を示す。SiC ハイブ モジュール技術部産業モジュール3課 リッドモジュールは,SiC-SBD の逆回復ピーク電流が対 電話(0263)27-7457 (2014 年 11 月 21 日 Web 公開) 富士電機技報 2014 vol.87 no.4 2014-S04-2 *本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する 商標または登録商標である場合があります。
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