現代ファイナンス論講義ノート No.5 効率的フロンティアと資本市場線(CML) 蛭川雅之 2014 年 11 月 3 日 現代ファイナンス論講義ノート No.5 担当:蛭川雅之 1 効率的フロンティア 1.1 多数のリスク資産から構成されるポートフォリオのリス クとリターン • ポートフォリオを構成するリスク資産は2種類に限定されない。 – 実際には、多数のリスク資産が市場で取引されている。 • 3種類のリスク資産 A・B・C から構成されるポートフォリオのリ スクとリターンとの関係を考える。 – 期待収益率:(E (rA ) , E (rB ) , E (rC )) = (0.06, 0.04, 0.02) – 収益率の標準偏差:(σA , σB , σC ) = (0.4, 0.3, 0.2) – 収益率の相関係数:(ρAB , ρBC , ρCA ) = (−0.3, 0.3, 0.0) 2014 年 11 月 3 日 1 現代ファイナンス論講義ノート No.5 2014 年 11 月 3 日 2 担当:蛭川雅之 現代ファイナンス論講義ノート No.5 担当:蛭川雅之 1.2 効率的フロンティア • 3種類のリスク資産から構成されるポートフォリオのリスクとリ ターンの集合は、曲線 AB、曲線 BC、およびこれらの包絡線で囲 まれた領域である。 – この集合を投資機会集合という。 – 包絡線を最小分散境界という。 • 効率的フロンティアは、最小分散境界の頂点より上側部分を指す。 – 効率的とは、「所与のリスクに対し、リターンをこれ以上改善 できない」という意味である。 – リスク資産のみへの投資を考える場合、効率的フロンティア上 の点(より正確には、効率的フロンティアと無差別曲線との接 点)で投資を行うのが最善の選択である。 2014 年 11 月 3 日 3 現代ファイナンス論講義ノート No.5 2014 年 11 月 3 日 4 担当:蛭川雅之 現代ファイナンス論講義ノート No.5 担当:蛭川雅之 2 資本市場線 (CML) 2.1 無リスク資産の導入 • 効率的フロンティアより左上側にあるリスクとリターンの組合せを 実現するにはどうすればよいか? – 国債などの無リスク資産(リスクフリー資産)をポートフォリ オに組入れる。 – 無リスク資産の収益率は一定である。 2014 年 11 月 3 日 5 現代ファイナンス論講義ノート No.5 担当:蛭川雅之 • 手持ち資金の α% をリスク資産のみからなるポートフォリオ M、 残り (1 − α) % を無リスク資産 F に投資するようなポートフォリ オを考える。 – 以下の表記を用いる。 1. ポートフォリオ M の収益率:rm 2. 無リスク資産 F の収益率 (=リスクフリー・レート、また は無リスク金利):rf 2 3. ポートフォリオ M の収益率の分散:σm = V ar (rm ) • このポートフォリオの収益率 rP の期待値および分散は次のように なる。 E (rP ) = αE (rm ) + (1 − α) rf , 2 σP2 = α2 σm 2014 年 11 月 3 日 6 (1) (2) 現代ファイナンス論講義ノート No.5 担当:蛭川雅之 2.2 資本市場線 (CML) •(2)から σP = ασm が成り立ち、これを(1)に代入して、次の関 係式を得る。 { E (rP ) = rf + E (rm ) − rf σm } σP . –(3)は σP − µP 平面上で直線として表される。 • 傾き E (rm ) − rf (リスク・プレミアム) = σm (ポートフォリオのリスク) をシャープ・レシオ(Sharpe Ratio)という。 2014 年 11 月 3 日 7 (3) 現代ファイナンス論講義ノート No.5 2014 年 11 月 3 日 8 担当:蛭川雅之 現代ファイナンス論講義ノート No.5 担当:蛭川雅之 • 直線(3)が効率的フロンティアの接線となるとき、最も効率的で ある。 – この接線を資本市場線(Capital Market Line, CML)という。 – シャープ・レシオは資本市場線で最大となる。 • 資本市場線と効率的フロンティアとの接点では、リスク資産の最適 な組合せ(=投資比率)が一意に決まる。 – この組合せをマーケット・ポートフォリオ(Market Portfolio) という。 – マーケット・ポートフォリオは投資家の選好(=無差別曲線の 形状)に関係なく決まる。 • 合理的な投資家は無リスク資産とマーケット・ポートフォリオを組 み合わせたポートフォリオを保有する。 2014 年 11 月 3 日 9 現代ファイナンス論講義ノート No.5 2014 年 11 月 3 日 10 担当:蛭川雅之 現代ファイナンス論講義ノート No.5 担当:蛭川雅之 2.3 分離定理 • 多数のリスク資産と1つの無リスク資産からなるポートフォリオの 最適構成を考える。 1. マーケット・ポートフォリオは投資家の無差別曲線の形状に関 係なく決まる。 2. マーケット・ポートフォリオと無リスク資産との最適構成比率 は、資本市場線と自身の無差別曲線の接点で決まる。 • これら2つの意思決定が別々に行われることをトービンの分離定理 (Tobin’s Separation Theorem)という。 2014 年 11 月 3 日 11 現代ファイナンス論講義ノート No.5 2014 年 11 月 3 日 12 担当:蛭川雅之 現代ファイナンス論講義ノート No.5 担当:蛭川雅之 練習 1 2種類のリスク資産 A・B および1種類の無リスク資産から最適 なポートフォリオを構成する。これらの収益率に関する条件を以下のよう に仮定する。 リスク資産: 期待収益率 収益率の標準偏差 収益率の相関係数 リスクフリー・レート (E (rA ) , E (rB )) = (5%, 10%) (σA , σB ) = (0.04, 0.10) ρAB = −0.2 rf = 2% エクセル・ファイル“ln05.xls”を利用して以下の数値を計算せよ。 1. マーケット・ポートフォリオの内訳(=各リスク資産の組入れ比率) 2. マーケット・ポートフォリオの期待収益率、リスク・プレミアムお よび収益率の標準偏差 3. 資本市場線のシャープ・レシオ 2014 年 11 月 3 日 13
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