太陽光発電市場の動向 - 日本産業機械工業会

情 報 報 告
ウィーン
太陽光発電市場の動向
BVA Bielefelder Verlag 社(ドイツ)が発行する『SUN &WIND ENERGY』の 2013 年 11・
12 月号から、世界の太陽光発電市場の状況および太陽光発電所のメンテナンスについて紹
介する。
1.太陽光発電市場の動向
1.1 はじめに
過剰供給と不自然なモジュール価格低下から数年後に、市場分析者は太陽光(以下、PV)
業界が 2017 年までに安定化し始めると信じている。市場の動きは欧州からアジア太平洋地
域と北アメリカへとシフトしている一方で、太陽セルとモジュールの製造を含みながら PV
業界の再編は本格的に続いている。
クリーンなエネルギーや電気自動車などのクリーン市場の専門調査会社である Navigant
Research 社の市場分析者による最新レポートによると、PV 施設からの 1 年間の世界全体
での収益は、2020 年までに 1,340 億ドルを超える。「資金的インセンティブ、政府の再生可
能エネルギー開発目標、そして技術的コストの低下が、まだ PV 市場の最も大きな原動力で
ある」と、『Navigant Research』の分析者である Dexter Gauntlett 氏は述べている。この
ような見通しに関して、業界の多くの企業が 2017 年には PV が、これ以上のインセンティ
ブの必要無しで、最終的に大きな市場で自立することができる年になるとレポートで報告
している。
1.2 欧州の主導的役割の終焉
欧州太陽光発電協会(EPIA)は、世界中の PV 業界の発展に密接に追従しており、EPIA は
調査から、欧州市場がかつて続けてきた国際的な主導的役割の時は終わったという明白な
結果を得ている。
「それは、2012 年の結果とこれから数年間の予測から、PV 市場における
欧州の主導的な役割が終わりに近づいている」と、EPIA の政策コミュニケーション室長の
Craig Winneker 氏は話す。2011 年、世界で新しく設置された PV の 70%が欧州のグリッ
ドに接続された。2012 年にそのシェアは 55%に落ち込み、2013 年の新規設置のほとんど
が欧州以外であったことに疑いの余地はない。世界のモジュールと太陽セルの製造メーカ
ーは、既にこの傾向に対応しているが、業界のプレーヤーは投資への準備をする必要があ
る。市場調査会社の IHS によると、モジュールと太陽セルの製造メーカーは、3 年ぶりに
新しい工場や生産設備に関する投資の増加にともなって、新しい需要の状況に対応してい
くことを予定している。
2012 年の 72%の減少後、
2013 年は資本支出が 36%まで落ち込み、
IHS では、2014 年に業界の資本支出が 30%上昇の 30 億ドルになると見込んでいる。
「新しい地域での需要増加にもとない、PV 製造メーカーはこれらの地域での自社製品の生
産に関心を持っており、新しい工場の稼働や現地の設備投資の加速という結果につながっ
ている」と、IHS の市場分析者の Jon Campos 氏は述べる。これらの良い例として、カナ
ダに本社のあるモジュールメーカーの Canadian Solar 社は、カナダの Ontario にある製造
施設とともに、早くからアメリカの PV 市場における自社の地位を築いてきた。2009 年に、
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情報報告 ウィーン
この世界第 4 位のモジュール製造メーカーで、世界第 6 位の太陽セルの製造メーカーは、
日本での最初の活動をすでに開始していた。その 4 半期ごとの最新レポートにおいて、現
在、Canadian Solar 社は太陽モジュールの日本への輸出を 2012 年の第 4 四半期から 75.9%
上昇したことを報告している。2013 年の第 1 四半期において、Canadian Solar 社の太陽
モジュールの全輸出量は 340 メガワット(MW)におよぶ。Canadian Solar 社は最近、韓国
の Samsung Renewable Energy 社と日本の Samsung 社のビジネスプロジェクト向けに、
出力 400MW のモジュールを調達する契約を結んだ。Canadian Solar 社は日本で初めて太
陽モジュール生産施設を建設した海外メーカーでもある。この施設は、150MW の生産能力
を持ち、2014 年前半での稼働開始を予定している。日本太陽光発電協会(JPEA)によると、
需要は非常に大きくなっているので、設置されるモジュールの多くの割合を、当初は国外
から輸入する必要があった。
1.3 トップ 10 の先頭に立つ中国
太陽セルとモジュールメーカーのトップ 10(2013 年の IHS iSuppli による試算)を見ると、
中国メーカーが主導的な立場であることは明らかである。リスト上の 10 社のうちの 8 社が
中国を拠点にしている企業である。モジュールと太陽セルメーカーの Sun Power 社は唯一
のアメリカに本社のある企業であり、現在、2 つの事業において 8 位にランクしている。
それでも、Sun Power 社はアジアでの生産量を増加させている。特にアジア太平洋地域に
おいて大きく成長しており、Sun Power 社は 1 億 190 万ドルの販売を記録している。
Sun Power 社によると、日本における市場のシェアは同時に 10%に達しており、フィリピ
ンを含む様々な場所で製造施設を稼働させている。Sun Power 社の最高財務責任者(CFO)
である Chuck Boynton 氏は、同社の生産施設がフル稼働しており、台湾の電子機器メーカ
ーの AU Optronics 社との製造に関する共同事業を拡大するか、または新しく生産施設を建
設するかどうか検討していることを報告している。
トップ 10 の 2 つ目の中国外メーカーは、シンガポールに本社があり、マレーシアとメキ
シコで製造ラインを稼働させている Flextronics 社である。Flextronics 社は 2013 年にトッ
プ 10 入りし、そして世界的なモジュール製造事業において、台頭しつつある新たなトレン
ドである。相手先ブランド名製造(以下、OEM)メーカーとしてモジュールを製造するもの
の、市場に直接提供はしていない。この典型的な OEM メーカーは、他の製造メーカーに自
社製品を販売し、市場では販売先メーカーの名前で取扱いされている。Flextronics 社は、
世界第 6 位のモジュールメーカーとして、トップ 10 に入っている。最近、Flextronics 社
は、製造量を 975MW から 1,375MW へと増産する計画について発表した。これは
Flextronics 社の体制をより柔軟にし、そして OEM 製品によって変動する需要に対応する
ことで他の製造メーカーを助けるだろう。これに加えて、中国のモジュールメーカーは、
EU によって課された輸入制限と関税を回避し、これまでと同様に欧州の PV 市場に供給し
続けるために備えている。
太陽セルの製造場所として、台湾はこの状況から利益を得る人々の中間にある。市場調
査会社の Trend Force 社によると、2013 年前半(1 月から 6 月)において世界で販売された
太陽セルの 16%が台湾製であった。これらのセルのうちの 40%が中国に輸出されており、
欧州(17%)、日本(12%)、アメリカ(6%)、そして韓国(4%)と続く。「中国での大きな取り引
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情報報告 ウィーン
き高は、反ダンピングとその罰として関税の影響を受ける中国モジュールメーカーが、台
湾からより多くの太陽セルを購入しているということに由来する」と Energy Trend 社は説
明する。そして、台湾は魅力的であり続ける。台湾で 300MW の太陽セルの生産施設を設
立する Mascotte Holdings 社と Hareon Solar Technology 社との提携はこの 1 例である。
表 1-1 太陽セル製造メーカーのトップ 10
メーカー名
[単位:MW]
2011
2012
JA Solar Holdings
中国
2,800
2,800
Suntech Power Holdings
中国
2,400
2,400
Yingli Green Energy Holding
中国
2,400
2,450
Trina Solar
中国
1,900
2,200
LDK Solar
中国
1,800
2,100
カナダ
1,500
2,100
Hareon Solar Technology
中国
1,500
1,500
Motech Industries
台湾
1,500
1,500
Hanwha SolarOne
韓国
1,500
1,500
Jinko Solar
中国
1,450
1,450
Canadian Solar
出典:SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
表 1-2 太陽モジュール製造メーカーのトップ 10
メーカー名
[単位:MW]
2011
2012
LDK Solar
中国
3,000
3,000
Suntech Power Holdings
中国
2,450
2,450
Yingli Green Energy Holding
中国
2,400
2,450
カナダ
2,118
2,300
Trina Solar
中国
1,900
2,400
SHARP
日本
1,575
1,575
Hanwha SolarOne
韓国
1,500
1,500
Jinko Solar
中国
1,450
1,450
JA Solar Holdings
中国
1,200
1,500
アメリカ
1,020
1,020
Canadian Solar
Jabil Circuit
出典:SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
1.4 再編の波が中国にも到達
PV の調査機関である NPD Solarbuzz 社によると、中国の主導的役割はトップ 10 企業に
限られたことではない。2013 年の第 1 四半期(1 月から 3 月)において、市場で販売された
モジュールの 70%が世界的大手である 20 の PV 企業で生産されていた。「継続する PV 製
造メーカー同士の合弁は、市場をリードするティアワン(tier-one)のモジュール供給メーカ
ーになる機会を創出している。トップ 20 のモジュール供給メーカーの市場シェアは 2012
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情報報告 ウィーン
年の同時期の 58%から著しく増加している」と、NPD Solarbuzz 社 の Ray Lian 上級分析
員は説明する。PV 市場のグローバル化によって、特に中国に拠点のある大企業(Yingli
Green Energy 社、Trina Solar 社、Canasian Solar 社、Jinko Solar 社、そして Rene Sola
社など)は、より積極的なマーケティング戦略を続けている。さらに、中国企業が市場を支
配し続けている」と Ray Lian 上級分析員は言う。
過去四半期において、中国のモジュールメーカーの大手 10 社が世界中のモジュール生産
量の 41%を占めた。しかし、JA Solar 社のような太陽セル事業の中国の製造メーカーもま
た、現在、世界最大のセル製造メーカーであり、Hareon Solar 社が主導的役割を担う。「ト
ップ 10 にいる中国の供給メーカーは、国内のモジュールメーカーまたは魅力的な PV 政策
のインセンティブによる強力な競争が行われている国々ではあまり成功していなかった。
例えば、アメリカや日本の PV 市場において、現地の製造メーカーが、いまだに自国内の
PV モジュール出荷量のトップ 10 に入っている」と Lian 氏は続ける。
それでもやはり、中国企業もまた市場の展開から被害を受けている。Lux Reaserch 社は
最近、中国の PV 業界の合併を予測したレポートを出版したが、中国メーカーが世界の PV
市場を支配し続けるということに変化は無かった。「大きな再編:合理的な太陽光業界への
中国の道」というレポートによると、PV 事業における中国の低価格への焦点が、2007 年
から 75%の価格下落の要因であり、国内の業界だけでなく国外もまた大きな損失を生じて
いる。「Yingli 社や Trina Solar 社のような中国のティアワンの製造メーカーが合弁によっ
て利益を上げる一方で、多くの小さな製造メーカーは業界からの撤退に直面している。非
常に多くの過剰供給と大きな損失が、中国の PV 製造メーカーを合併へと追い込んでいる」
と、Lux Reaserch 社の市場分析員の Zhun Ma 氏は説明する。
「この動きの先には、カオス
と不確実性をまき散らすが、合弁は中国における新しい PV 業界の社会を描くだろう」と、
Bloomberg の分析員は、ほんの 10 社の中国製造メーカーだけがこの再編を上手く切り抜け
るだろうと予測している。
1.5 数社への減少
Sun Power 社を除いて、薄膜事業における First Solar 社や日本を拠点にする Solar
Frontier 社のような一握りの企業だけが、このような市場環境で競争することが可能であ
る。つまり、薄膜製造メーカーは、生き残るためにさらに協力を続けている。その 1 例が、
アメリカのカリフォルニア州において、フランスの EDF Renewable Energy 社が実現させ
た Catalina プロジェクトである。EDF Renewable Energy 社が、82MW の Solar Frontier
社製薄膜モジュールと 61MW の First Solar 社製モジュールを結合するシステムを建設し
ている。First Solar 社、Sharp 社、そして Solar Frontier 社は、薄膜事業で自身の地位を
確立する立場にいる。一方で、Soltecture 社、Inventux 社と Konorka 社のような他社は破
産の申請をしなければならなくなった。
1.6 市場の再均衡
IHS の市場専門家によると、
「過剰供給はすぐに過去のものになる。我々の調査では、需
要と供給に関する市場の均衡状態に戻ることを示している。過剰設備自身は修正されてき
ており、最近の複数の財政に関する発表から、一握りの PV 企業は黒字転換とマージンの拡
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情報報告 ウィーン
大に戻ってきた。回復のパズルの最後のピースは、高効率な技術への資産の使用と投資で
ある」と Capital Spending 社の Jon Campos 氏は説明する。
現時点では、容量は減少しており、価格は安定かまたは上昇のどちらかである。したが
って、2013 年の第 2 四半期(4 月から 6 月)は、グローバルな PV メーカーの危機の中でのタ
ーニングポイントとなった。多くの企業が第 2 四半期に対して、自社の予想を上昇させて
いた。Jinko Solar 社は 2011 年以来はじめて、再び利益を記録した。このことは、太陽モ
ジュール業界が、収益性のある領域に戻りそうな気配を示すものである。IHS では、Yingli
Grenn Energy 社、Trina Solar 社、そして Canadian Solar 社が 2013 年中に再び利益を上
昇し始めると予測している。Jinko Solar 社は、第 2 四半期に 800 万ドルの利益を出してお
り、Yingli 社は中国とアメリカ市場の両方で販売量を伸ばした。IHS はまた、日本とアメ
リカを拠点する市場参加者の観点からも楽観的である。SHARP 社や KYOCERA 社は大き
な販売量の伸びを記録し、アメリカの San Power 社は数年間で初の営業益を計上した。回
復は、第 2 四半期の欧州の事前効果によって拡大したものの、IHS はこの展開が長期的に
はポジティブになると予測している。Yingli Green Energy 社、Trina Solar 社、Canadian
Solar 社、そして Jinko Solar 社が、2013 年第 1 四半期よりも第 2 四半期において、より
大きく成長することが予想されている。LDK Solar 社は、近年、損失の減少を発表した企
業の 1 つである。JA Solar 社が自社の販売量を伸ばすことができ、通常の状態に戻ってく
ると思われるのと同時に、ポジティブなニュースはまた、
“大打撃を受けた”欧州市場から
もある。スペインのIsofotón社が報告したように、欧州と中国の間で合意された中国製品に
対する最低価格と最大輸入量によって、太陽モジュールの発注がある程度上昇した。
「2013
年 8 月初旬以降、欧州からの PV モジュールの発注量は、特にフランス、イタリアと英国か
ら増えてきている。反ダンピング措置は、2013 年の第 2 四半期において利益の回復をもた
らすように欧州市場での価格を上昇させた。そして、Isofotón社は現在、事業の再構築中で
ある」と Ángel Luis Serrano 代表兼最高経営責任者(CEO)は述べている。その将来は、現
在、企業が財政の再建、資産の売却、そして現在の市場規模にあった大きさに調整できる
かどうかに懸っている。
よりポジティブなニュースは、フランス北東部の Alsance 地方を拠点とする中堅企業の
VOLTEC Solar 社からも届いている。
「我々は、クリスタルラインモジュールに対する生産
能力を、現在の 55MW から 100MW に引き上げることを検討している。ようやく、太陽光
モジュールへの需要は、特にフランスにおいて再び上昇してきた。公共の PV 事業への入札、
VOLTEC Solar 社はまだいくつかの手掛けている仕事がある。主に小型の屋上型 PV 据え
付けに対する事業である」と、ドイツ系フランス企業の共同設立者兼副社長の Maruks
Schaefer 氏は話す。同社が欧州危機を通り抜けた大きな理由は、セールス構造を 1 つにだ
け焦点を当てずに、欧州の太陽市場のいくつかに焦点を当ててきたからである。
アメリカのコンサルタント企業の Mercom Capital グループによる分析では、世界の PV
市場は、2013 年に 23%の成長を見せ、総量 38 ギガワット(GW)にまで到達する。中国と
EU 間の貿易問題の決着を受けて、Mercom Capital グループでは、PV 市場の状況は概ね 3
ヵ月前よりも“かなり良い”と見ている。この合意は、2013 年、中国メーカーが欧州に 7GW
程度の供給を可能にし、そしてそれは欧州の需要の少なくとも半分を満たすと分析者は言
う。実際には、これらの 7GW と解決前からあった在庫は、欧州の新設容量のほぼ 100%を
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情報報告 ウィーン
カバーするのに十分である。一方で、KYOCERA 社の副生産ラインマネージャーの Stefan
Wiebach のような市場参加者は、2013 年に欧州では、6.5GW から 7GW だけが新しく設置
されるだろうと予想している。これは、欧州の市場が 2012 年の同時期より 50%以上減少
することを意味している。2012 年に約 17.2GW の PV 施設が欧州のグリッドに新しく接続
され、そのうちの 7.6GW はドイツ単独で設置されたものであった。Mercom Capital グル
ープによるレポートによると、2013 年の日本で新しく設置される容量は 7GW の範囲にあ
り、欧州の不況の一部を補うことになる。8.5GW の新規設置量が予想される中国では、
10GW の目標に届かないだろうとそのレポートには記載されている。アメリカと英国は、
それぞれ 4.5GW および 1.5GW から 2GW と上位グループに入ることは可能であると見込
んでいる。
PV 市場がいつ長期間回復するかの問合せに関して異なる意見がある。分析者およびアジ
アの製造メーカーはすでに、2014 年に向かってトンネルの出口の光を見ており、他の関係
者は、グローバルなグリッドパリティの目標と最終的なブレークスルーが 2017 年までに起
きることを予想している。しかしこの時が来るときには、生き残った企業の数は非常に少
なくなっているだろう。
1.7
2013 年の世界の PV 業界(注:2013 年 10 月時点)
市場の再編は非常に大きい。本書のモジュールと太陽セルの製造メーカーの年次調査に
おいて、現在および 2014 年に向けて予想される企業リストは、結果的に過去数年間と比べ
て非常に減少している。現在の調査、出版物や分析レポートに関する世界地図では、146
の太陽セル、336 の太陽モジュール、そして 57 の薄膜製造メーカーが存在する。
2012 年の終わりに、世界の太陽セルの生産能力は 67GW に増加した。施設の閉鎖や破産
によって、この能力は 2013 年には、47GW から 50GW まで減少した。この現象はモジュ
ール事業にも類似しており、2012 年の終わりまでに 79GW に上昇した後、世界的なモジュ
ールの生産能力は 60GW から 63GW に減少すると予想されている。薄膜事業では、2012
年の終わりには 14.4GW であったが、2013 年に 8GW から 9GW に大きく減少する。
欧州では、2012 年に 2.8GW の容量で太陽セルと 9.5GW のモジュールの製造をする一方
で、最大の分け前は、太陽セルが 44GW そしてモジュールが 56GW の容量を持つ中国から
来ていた。欧州の太陽セルの容量は、2013 年中は安定したままであるが、モジュールの容
量は 7.5GW から 8GW にまで減少することが予想されている。このような展開は中国でも
同様で、太陽セルの容量はほんの少し減少し、モジュールの容量は 44GW にまで減少する。
これらの数値の点から、大規模施設の建設の時期は終わったように見える。トップ 10 社
の大半が自社の生産能力を変更していない。1.3GW から 2.37GW に昨年生産能力の拡大を
発表した Gintech Energy 社は、結局、200MW だけの 1,500MW へと太陽セルの生産能
力を上げた。モジュール事業では、Trina Solar 社が JA Solar 社と同等の 2,500MW の能
力を建設することができた。トップ 10 リスト内の新しい企業は、OEM メーカーの
Flextronics 社である。薄膜事業においては、First Solar 社が 2,200MW の製造能力でトッ
プに位置している。
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情報報告 ウィーン
太陽セルの生産場所
太陽モジュールの生産場所
薄膜モジュールの生産場所
生産場所があったかまたは 2013 年に閉鎖が予定
破産した企業が所有していた場所
2012 年/2013 年/2014 年の生産能力(単位:MW)
2012 年末時点で、スウェーデンにある同社の施設は 100MW
のモジュール生産能力を有していた。2013 年末の時点で、そ
の生産能力は 100MW のままである。2014 年の生産能力は
170MW になることが予測されている。
2012 年末時点で、ドイツにある同社の施設は 200MW の太陽
セルと 120MW のモジュール生産能力を有していた。
2013 年末の時点で、太陽セルの生産能力は 200MW、モジュ
ールは 120MW のままである。
2014 年末までに、生産能力の変更が無いことが予測されてい
る。
2012 年末時点で、日本にある同社の施設は 980MW の薄膜の
生産能力を有していた。2013 年末の時点で、その生産能力は
980MW のままである。
2014 年の生産能力の数値は明らかにされていない。
出典:SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 1-1 PV 業界の世界地図(北米、韓国、台湾、日本)
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情報報告 ウィーン
出典:SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 1-2 PV 業界の世界地図(欧州、オーストラリア)
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情報報告 ウィーン
出典:SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 1-3 PV 業界の世界地図(中国)
(参考文献)
・・SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社(ドイツ)
・Lux Research 社、China Will Retain Dominance of Solar Industry Despite Looming
Shakeout (http://www.luxresearchinc.com/news-and-events/press-releases/195.html)
・VOLTEC Solar 社ホームページ、(http://www.voltec-solar.com/)
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情報報告 ウィーン
2.太陽光発電所のメンテナンス
2.1 はじめに
太陽光(以下、PV)発電所の運転事業者は、装置の保証期間終了後に、外部のサービス業
者に依頼して装置のメンテナンスに対処している。また、規格ではメンテナンスの範囲を
定義している。
PV システムの製造メーカーは、「PV 発電では、メンテナンスをすることはあまりない」
というメッセージを持って、それに基づいて自社の販売スタッフを訓練してきた。PV シス
テムには、回転部分が無いので給油する必要も無い。そして何も開閉しないし、上下する
部品も無い。しかし、これらのシステムがほとんどメンテナンスフリーであるといった主
張は作り話であった。大規模な PV 発電所の運転事業者が所有するシステムのメンテナンス
を外部のサービス業者に委託しているという状況から、関連する多くの企業が生計を立て
ている。メンテナンスの範囲は規格で指定されていて、手作業から専用機に変わりつつあ
り、正確なエラーの検出が可能となっている。
2.2 基本は年次点検である
少なくとも 1 年に 1 度の PV 発電所の徹底的な目視検査は、全てのサービス業者が持つ
独自のサービスプログラムの必要最低限のことである。モジュールまたは搭載ラックに対
する機械的損傷に注意が払われている。モジュールは主に、破壊行為、風による損傷また
はあられなどの自然現象からの危険にさらされている。ドイツの F&S solarconcept 社の技
術ディレクターである Uwe Czypiorski 氏は、損傷の原因がいつも直ぐに明らかにならない
と自身の経験から説明する。彼の検査訪問の 1 例として、モジュールを介した全ての方法
で、握りこぶし 1 個分くらいの大きさの穴があることに気付いたが、穴の原因と思われる
石または他の物体はどこにも見当たらなかった。「しばらくの間、我々は当惑していたが、
今は飛行機から落下した氷の一部だったかもしれないということを今は確信している。穴
の発生後に氷は溶けて跡形も無く消え去った」と Czypiorski 氏は振り返る。
IDEEMA San energy 社 O&M 室長の Jan Kächele 氏によると、モジュールまたはフレ
ームの機械的損傷に加えて、目視点検中に電気的損傷も発見することが可能である。これ
を達成するために、専用の熱画像カメラを駆使して、PV 発電所の構成機器を検査する。検
査訪問は最初の指導でもある。検査を実施する担当者が、損傷した構成部品のあるモジュ
ールを発見すれば、電気的パラメーターの現地計測を引き続き実施する。PV 発電所のよう
な大規模なシステムでは、メンテナンス技術者は発電機用接続箱で計測を行なう。なぜな
ら、一般家庭用の屋上に搭載するような小さなシステムと違って、大規模な PV 発電所は中
央のインバーターステーションで運転が行われているからである。
「多数(16、32、時には 24)の配線が発電機用接続箱で一緒に結線できる構造に設計がさ
れている。この接続箱で計測が行われ、ここから、メインの DC 系統がインバーターに向
かって走っている」と、Czypiorski 氏は説明する。インバーターは 6 または 7 ヵ所の接続
箱からのエネルギーを受け取る。技術者によって実施される計測では、どの配線が“悪い
モジュールの中にあるか”を示すことが可能である。Czypiorski 氏は、どのように欠陥の
あるモジュールが見つけられるかを次のように説明する。「我々は配線の出力を見ている。
我々は個々のモジュールを検索するときに助けてくれる図解を持っている。各々のモジュ
― 50 ―
情報報告 ウィーン
ールはスキャンされ、地図上に印またはソフトプログラム内で確認される。これが、我々
がどのスキャンコードが、発電所のどの位置のどのラック上にあるかを知る方法である。
エラーが発見されれば、技術者はその場所に向かう。」
2.3 銀行がメンテナンス契約を要求
全てのシステム運転事業者が、直ぐに外部のサービス業者とメンテナンス契約に取り掛
かる訳ではない。実績から Czypiorski 氏は、「実際に、より大きなシステムの方が、メンテ
ナンス契約が締結されやすくなると言うことがいえる。逆に、むしろ小さな方がそのよう
にならない」と、契約とシステムサイズの間に相互関係があることを知っている。彼はま
た、その要因がメンテナンス契約のコストに関係していることも理解している。システム
の設計と実施されるメンテナンスの範囲により、その価格は 1 年間に 1kW あたり 2 ユーロ
から 15 ユーロの範囲であり、時には 20 ユーロにまで上昇することもある。価格設定の必
須条件の 1 つとして所要時間があり、24 時間から 48 時間で行なわれる。
大規模な PV システムの運転事業者にとって、施設管理を含むメンテナンス契約にサイン
する最も大きな理由は銀行からの要求である。このことは銀行からの視点からいって理解
しやすいことである。彼らが専門家によって融資、試験、そして評価してきた投資先が、
利息の支払いを保証するために機能し続ける必要がある。
「大規模なシステムではプロジェクトに融資される資金が必要となる」とドイツの
Commerzbank の再生可能エネルギービジネス開発室長の Simone Löfgen 氏は言う。
「我々は全ての要素を見ている。そして重要な要素の 1 つが、疑問のないサービス契約の
締結である。これは検査が実施されることを保証してくれるが、サービス業者の能力につ
いては何も言っていない。なぜなら、我々は技術アドバイザーに信頼できる企業の推薦を
依頼しているからである」と Löfgen 氏は続けた。
2.4 現地計測は可能である
PV 発電所のメンテナンスの自動化は困難であるものの、市場はいつしか清掃および草地
管理の専用機械を販売し始めている。ドイツの IDEEMA SUN energy 社ではこの状況に満
足しておらず、PV 発電所の草地管理専用の幅の狭いトラクターを再構成した(図 2-1 参照)。
センサー類は、安全な根覆い機(mulcher、注:このような仕様の芝刈り機の呼び名)がラッ
クとモジュールに損傷を与えないことを確実にする。しかしながら、IDEEMA San energy
社の Kächele 氏は、「市場には、乾燥地帯で水を使わずに清掃をする機械はない。問題を解
決するための簡単な方法を見つけ出すことができなければならない」と、付け加えた。
全自動化試験の目標は、現地からモジュールを取外しする必要なく、モジュールの特性
を読取ることである。フランス・パリでの欧州太陽光発電会議(EU PVSEC)において、イタ
リア企業の ECOPROGETTI 社は、明滅光を放つ機器が、ある地点の電流―電圧曲線を作
成することができるモジュールフラッシャーの Flysun の実演をしていた。
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情報報告 ウィーン
出典:SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 2-1
IdeemaSun energy 社の mulcher
Flysun は、光源と計測部分の 2 つのユニットから構成されている。イタリアの製品とし
て、それは細心の注意を持って設計されており、そして人目を引くことを意識して芸術的
であることは言うまでもない。この装置はまた、技術的精巧さが不足していることもない。
光源はケーブル無しで光を送り、それが 3 軸のロボットシステムに取り付けられており、
トラクターによって運ぶことができる。光が照射される範囲は“1m×2m の大きさ”であ
り、150 個の光線が充電無しで使用可能である。追加の仕様としては、測定時間は 3 秒であ
り、測定誤差は 1%以下であるとメーカーは説明する。
出典:SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社
図 2-2
ECOPROGETTI 社の Flysun
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情報報告 ウィーン
特性カーブの計測に加えて、太陽セル内のどこのエラーかを特定することによって、熱
画像もまたエラーの可能性の原因を可視化してくれる。セルコネクターまたはプラグ内の
接続の悪い隠れた欠陥については、特性カーブの計測を使用しながら発見することも可能
となる。それらは、計測の許容誤差内で“行方不明”となり、見過ごされることが多いも
のである。熱画像とは異なり、最新のカメラでは 0.03℃の温度の違いまで検出できる。隠
れた欠陥は、通常温度からのより大きな偏差を持っており、つまり、信頼できる検出が可
能となる。
3 番目の検査方法は、エレクトロルミネッセンスを使用した方法であり、極めて小さな部
分まで明らかにすることが可能である。この方法では、太陽セルに印加された電気がセル
を明るくさせる。この輝きが弱いかまたは全く無ければ、微小なクラックまたはセルの断
線部分が発生していることになる。より低い分解能にもかかわらず、PV 発電所内でエレク
トロルミネッセンスによる検査を実施する方法がある
2.5 メンテナンスに対する規格
ドイツにおける PV 発電所のメンテナンス作業は、国が定める労働者保護規則と国際規格
にあたるドイツ工業規格 DIN EN62446 が対象となる。重要な点は、作業、部品交換と計
測データの完全な書類を保証するということである。この国際規格(グリッドに接続された
PV システム:システム文書、試運転と調査(IEC62446、2009 年、ドイツ語版は EN62446、
2009 年)に対する最低限の要求)では、グリッドに接続された PV システムの設置後に、顧
客に引き渡しされるべき必要最低限の仕様と文書を定義している。この文書はまた、起動
試験、試験基準だけでなく、安全なシステムの据付けと適切な運転を確実にするために必
要な文書の最小量も説明している。この文書はまた、定期検査にも適用することが可能で
ある。この規格は、グリッドに接続された PV システム専用に開発されたので、AC モジュ
ールシステム、エネルギー貯蔵(例:蓄電池)付きシステム、またはハイブリッドシステムに
は適用されない。これは効果的な顧客文書を提供するためのひな形として、システム開発
者やグリッドに接続された PV システムの設置者にとって有益なものである。予想される最
小限の詳しい説明のために、設置後および以降の定期検査、メンテナンスまたは変更時に、
グリッドに接続された PV システムの試験を支援することにも役に立つ。
(参考資料)
・SUN &WIND ENERGY 2013 年 11・12 月号、BVA Bielefelder Verlag 社(ドイツ)
・IDEEMA SUN energy 社ホームページ、(http://www.ideemasun.com/index.php?lang=en)
・ECOPROGETTI 社ホームページ、(https://www.ecoprogetti.com/en/)
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