家畜栄養学(04) 2014/5/29 脂肪酸の構造 家畜栄養学(第4回:栄養素の化学Ⅲ:脂質と脂肪酸) 今日のまとめ Take-home message 脂肪酸: カルボキシル基(‐COOH)とアルキル基が結合したもの 脂質とは有機溶媒に可溶な成分の総称で、炭素・⽔素・酸素に より構成 O HO セリド(グリセリン+脂肪酸3分⼦)で存在 動物体内での脂質の機能は ①エネルギー源、②細胞膜の構成、③情報伝達 O HO 脂質は効率に優れたエネルギー源だが、グルコースと⽐較して 利⽤に制約あり 1 3 2 5 4 7 6 9 8 11 10 13 12 15 14 16 (C15H31-COOH) ・不飽和結合(CH=CH)を⾻格内に含む脂肪酸も存在する 必須単語:トリグリセリド、グルコース、蓄積 選択単語:β酸化、揮発性脂肪酸(VFA)、リポタンパク質、 燃焼、ケトーシス、細胞膜、飽和脂肪酸 ・炭素数が短いほど極性が⾼い⇒⽔と親和性が⾼い 4 1 脂肪酸の種類 -飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸- 飼料の⼀般成分 有機物 含窒素化合物 飼料 名称 タンパク質 ⾮タンパク態窒素 乾物 C CH2 -CH2-… -CH2-CH2 -CH3 一般的な特徴 ・脂肪を構成する脂肪酸は⼀般に炭素数が偶数個である 来週の⼩テスト ⽔分 CnH 2n+1で表わされる 一般に 動物体内の貯蔵脂肪はほぼ全て中性脂肪で、その多くはトリグリ ミネラル 示性式 CH3‐(R)‐CO2H 2:0 (null) プロピオン酸 3:0 ‐(CH2)‐ 酪酸 4:0 ‐(CH2)2‐ 脂質 吉草酸 5:0 ‐(CH2)3‐ ビタミン 炭⽔化物 パルミチン酸 16:0 ‐(CH2)14‐ ステアリン酸 18:0 ‐(CH2)16‐ オレイン酸 18:1(9) ‐(CH2)7CH=CH(CH2)7‐ リノール酸 18:2(9,12) ‐(CH2)3(CH2CH=CH)2(CH2)7‐ (9,12,15)‐リノレン酸 [α‐リノレン酸] 18:3(9,12,15) ‐(CH2CH=CH)3(CH2)7‐ (6,9,12)‐リノレン酸 [γ‐リノレン酸] 18:3(6,9,12) ‐(CH2)3(CH2CH=CH)3(CH2)4‐ (トリグリセリド、ロウ; アルコールと脂肪酸で構成) 脂質 (リン脂質、糖脂質、リポタンパク質;他の分⼦を含む構造) *脂質とはエーテル、クロロホルム、ベンゼンなど有機溶媒に可溶な成分の総称で あり、粗脂肪(crude fat)またはEE(ether extract)と表現されることもある 融点 揮発性脂肪酸 (VFA) 無窒素化合物 脂質 脂質 (lipid) 数値表現 酢酸 63.1 飽和脂肪酸 69.6 14.0 ‐5.0 ‐11.3 不飽和脂肪酸 2 5 不飽和脂肪酸にみられる異性体 - 構造異性体、幾何異性体- 脂質の化学構造 主として炭素(C), ⽔素(H), 酸素(O) の三元素で構成される 構造異性体: ⼆重結合の位置の違いによる 動物の貯蔵脂肪 (体脂肪)はほぼすべて中性脂肪 ≒トリアシルグリセロール(トリグリセリド) (9,12,15)-リノレン酸 [α-リノレン酸] トリグリセリド: グリセリンと脂肪酸(3分⼦)がエステル結合したもの CH2 OH CH OH CH2 OH O HO O HO O HO C R C R C R CH2 CH CH2 O O O O O O C R C R C R (6,9,12)-リノレン酸 [γ-リノレン酸] 幾何異性体: ⼆重結合の⽅向の違いによる 硬化油 オレイン酸 (融点13.4℃) 3 Y. Uyeno ([email protected]) エライジン酸 (融点43-45℃) 6 1 家畜栄養学(04) 2014/5/29 必須脂肪酸 反芻動物第⼀胃内でのトランス脂肪酸⽣成 動物は脂肪酸の-COOH基末端から数えて10位以遠のCに ⼆重結合を導⼊する不飽和化酵素(desaturase)を持たない 9 9 12 オレイン酸 [18:1(9)] [必須] リノール酸 [18:2(9,12)] 11 9 (6, 9,12)-リノレン酸 [18:3(6, 9,12)] [必須] (9,12,15)-リノレン酸 [18:3(9,12,15)] 11 体内に吸収されたトランス脂肪酸(共役リノール酸含む)も、 ほかの脂肪酸と同様エネルギー源となり、乳脂肪となる DHA [22:6(4,7,10,13,16,19)] 7 10 栄養素の乳中への移⾏(反芻動物) 飼料中と畜産物中の脂肪酸組成の違い 究極の付加価値はどこから⽣まれるか? 反芻動物の体脂肪は単胃動物に⽐べ飽和脂肪酸の割合が⾼い アミノ酸 タンパク質 ・・・もう⼀つの理由:酢酸・酪酸を基質として飽和脂肪酸が合成されるから トリグリセリド 乳脂肪 酪酸 酢酸 酢酸 プロピオン酸 (トウモロコシ油) (⽜⾁[和⽜サーロイン]) (⽣乳) グルコース 乳糖 ⾎中 乳腺 8 *いずれも第5版標準⾷品成分表より引⽤ 11 動物における脂質の機能① - エネルギー源 - 反芻動物第⼀胃内での不飽和脂肪→飽和脂肪への変換 反芻胃内細菌は不飽和脂肪酸による ⽣育阻害を受けやすい ↓ 細菌にとってのメリット: 不飽和脂肪酸による阻害から回避 反芻胃にとってのメリット: 胃内還元⼒(H2)の消費 炭⽔化物よりも炭素と⽔素の割合が⾼いため、燃焼時に多量の熱を発⽣する。 ↓ 効率の良いエネルギー源となる。 (CH2) mOn …炭⽔化物の⼀般式は Cm(H2O)n グルコース(分⼦量180.2)の場合 C6H12O6 + 6 O2 → 6 CO2 + 6 H2O mol ATP パルミチン酸(分⼦量256.5)の場合 C15H31COOH + 23 O2 → 16 CO2 + 16 H2O 18:1 mol ATP 18:2 18:3 脂質は体内の蓄積エネルギーとしての機能を有する ただし 都合のいいことばかりではない 18:0 9 Y. Uyeno ([email protected]) 12 2 家畜栄養学(04) 2014/5/29 O H2C H2C H2C β-炭素 O H2C H2C H2C H2C O C C C 動物における脂質の機能② -機能脂質- β-酸化… 脂肪酸からエネルギーを 取り出すための⼿段 OH S CoA Acyl CoA C 主として S CoA 細胞膜成分を構成 細胞液を包む細胞膜は耐⽔性である 必要がある. リン脂質は脂質⼆重層と呼ぶ層状の ミセルを形成し,膜が疎⽔性で, 膜の両外側が親⽔性である. H S CoA O C H2C H2C グリセロリン脂質 (複合脂質) リノール酸やアラキドン酸 α-炭素 O H2C 分⼦内に疎⽔基と親⽔基の両⽅をもつ(両親媒性分⼦)→⽔分の保持 O C H3C S CoA アルキル基が2つずつ減少 S CoA 疎水性リン脂質 クエン酸回路で使える! 親水性リン脂質 細胞膜 強度を維持 13 脂質→エネルギーへの変換 16 特徴的な脂質 - コレステロール 所在・合成 ・⾼疎⽔性 ・環状構造(安定的) ・構造特異性付与が容易 肝臓で合成→ リポタンパク質として体内を循環 ⾷品(特に動物由来⾷品)にも含有 機能 a. 細胞膜脂質の構成 b. 脂溶性ビタミン、ホルモンの前駆体 c. 脂質消化の⽀援(胆汁酸) リポタンパク質(コレステロール+タンパク質, トリグリセリド, リン脂質)の 種類と役割 名称 略称 役割 キロミクロン β酸化 β酸化後の⼯程でオキザロ酢酸(グルコース由来)が反応に必要 →脂肪酸単独ではクエン酸回路で使いきれない トリグリセリドの肝臓への輸送 超低⽐重リポタンパク質 VLDL 低⽐重リポタンパク質 LDL 肝臓 組織へのコレステロール輸送 ⾼⽐重リポタンパク質 HDL 肝臓 組織へのコレステロール輸送 14 動物体内での脂質代謝 17 飼料中脂質と家畜栄養 ①栄養過多による肥満状態は、家畜の場合でも有害となることが多い 脂質からのエネルギー獲得経路が停滞し、アセチルCoAが蓄積すると ⾎中ケトン体濃度が上昇し、ケトーシスに陥る →エネルギーを多量に必要とする時期(分娩前後など)に、⼗分な炭⽔化物の 供給が重要 脳で 消費 ②⾼脂肪は家畜嗜好性を低下させ、また消化能⼒も低下する 乳⽜の場合、飼料中脂質量が8%を超えると顕著に栄養消化速度が低下する (反芻胃での栄養素消化能⼒の低下による) 筋⾁で 消費 ・飼料中の脂肪が不可⽋の状況とは: a. 必須脂肪酸の供給 これらに必要な質と量を確保したうえで、 b. 体内での⾮極性分⼦の輸送 状況に応じて給与量を増やす c. 体温保持(特に幼獣の場合は重要) 脂肪酸は脳細胞膜を通過できないので 脳でのエネルギー源とはならない Y. Uyeno ([email protected]) 15 ヒトの場合も同様… 総エネルギーに占める脂質由来エネルギーの割合は20-30%が理想 18 3
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