The Effects of Dictogloss on Acquiring Grammatical Features in

The Effects of Dictogloss on Acquiring Grammatical Features
in English Among Japanese Junior High School Students:
A Comparison of Individual, Pair and Group Activities
教科・領域教育専攻
言語系コース(英語)
佐々木 隆
1. 研究の背景
近年、日本の学校英語教育では、コミュニ
えて、日本人中学生における DG の学習効果
と、
タスク中の学習者の相互行為についての、
ケーション能力重視の流れが強まる一方、正
量的及び質的な検証が求められている。
確性を高める文法指導の機会の減少が懸念さ
2. 研究の概要
れている。Benesse (2009) では、日本人中学
2.1 研究の目的
生が、文法の難しさを英語学習でのつまずき
本研究の目的は、初級英語学習者である日
の最大の要因と感じていることが示された。
本人中学生において、DG が特定文法項目の
現行の中学校学習指導要領では、文法をコ
学習に効果があるのかを明らかにすることで
ミュニケーションを支える基盤として捉え、
ある。具体的には、(1) DG は、日本人中学生
その指導を言語活動と一体的に行うよう指示
にとって受動態と現在完了形の学習に効果が
されている。4 技能を統合的に活用し、コミ
あるか、(2) DG を個人、ペア、グループで行
ュニカティブでありながらも文法指導を効果
う場合で、学習効果に差が生じるか、(3) ペ
的に行える学習活動の 1 つとして、Wajnryb
アとグループによる対話や気づきの内容には、
(1990) によって提唱されたディクトグロス
どのような特徴が見られるか、の 3 点を明ら
(DG) がある。
かにするために調査を行った。
DG は、フォーカス・オン・フォームの理
念に沿った協働的なアウトプットタスクであ
2.2 実験参加者
新潟県の公立中学校 3 年生 80 名が参加し、
り、Swain をはじめ多くの研究者に支持され
学級単位で、DG を個人で行う個人群、男女
ている。 先行研究では、学習者の統語処理お
ペアで行うペア群、男女混合 4 人グループで
よび文法意識の促進、自らの中間言語への内
行うグループ群の 3 群に分けられた。
省、協働的な対話の生起といった DG の利点
2.3
が示唆されている一方で、教師の意図する目
(1) DG タスク
標言語項目の学習効果や、協働的な対話と学
測定具
受動態および現在完了形が頻出するテキス
習効果との関係を検証する上での課題が指摘
トを作成し、5 回の DG タスクを行った。
されてきた。
(2) 文法テスト
日本の学校英語教育の現場では、フォーカ
受動態と現在完了形それぞれに関する受容
ス・オン・フォームや DG といった文法指導
問題と産出問題からなる事前テストおよび事
はまだ認知度が高くない。上記の課題を踏ま
後テストを作成した。
(3) アンケート
学習効果に影響を与えないことがわかった。
毎回の DG タスク後の振り返りアンケート
タスク中に生じた気づきの面でも、群による
と、実験前後における事前アンケートおよび
目立った違いは認められなかった。しかし情
事後アンケートを実施した。
意面では、個人よりも協働で、特にグループ
2.4 方法
で行うことに肯定的な回答傾向が見られた。
予備実験を経て、
201X 年 7 月に計 6 日間に
DG は学習形態の違いにかかわらず効果を上
渡り本実験を行った。1 日目と 6 日目はテス
げる可能性があり、学習者にとってより心的
トおよびアンケートを行い、2 日目から 5 日
負担が少なく動機付けの高まる協働的な形態
目にトリートメントを行った。
(特にグループ)の方がよいと考えられる。
2.5 データ分析
(1) 文法テスト
事前テストと事後テストの得点
(受容得点、
タスク中の対話からは、テキスト復元段階
における 3 つの問題解決パターンが確認され
た。各パターンにおいては、
「聞き方、メモの
target-like 産出得点および interlanguage 産出
取り方」
、
「文法知識の活用」
、
「内容理解と推
得点)について、対応のある t 検定、および
測」といった異なるストラテジーが活用され
二要因分散分析(学習形態×テスト)を用い
ており、異なる次元の気づきが促進されたと
て分析した。
考えられる。また、初級英語学習者である日
(2) アンケート
本人中学生にとっては、気づきを学習として
DG タスクや学習形態に対する意識につい
完成するためには、その後の元テキストとの
て、各群の平均値と回答傾向を分析した。ま
比較・修正段階が不可欠であると思われる。
た、タスク中に生じた気づきについて、自由
4. 教育的示唆と今後の課題
記述をタイプ別に分類し、分析した。
(3) 活動中の対話
ペア群とグループ群のタスク中の対話を書
DG は文法知識の活用を促す、教室英語学
習における有効な活動であり、日本人中学生
に対しても積極的な活用が期待される。使用
き起こし、質的に分析した。
するテキストの質や量、気づきを焦点化する
3. 結果と考察
ための教師の積極的な介入、協働的な対話を
5 回の DG タスク前後におけるテスト得点
を比較したところ、参加者全体では受動態と
より充実させるためのスキル指導や仕掛けが
あると、さらに効果が期待できる。
現在完了形のいずれにおいても、受容面では
今後は、個人と協働(ペアやグループ)の
有意な差はなかったが、産出面、特に
有効性について、同じ学習者がそれぞれの学
interlanguage 得点においては有意に点数が伸
習形態を体験した時の学習効果の差異を比較
びていた。受容問題に関しては天井効果の可
する必要がある。また、タスク中の気づきの
能性も否めないが、DG は産出プロセスを強
生起と変容の様子や、協働的な対話にどのよ
化する有効な活動であることが確認された。
うに関わった学習者がより受益するかという
一方で、どの群も得点は伸びたものの、群
複雑な問題の考察が求められるだろう。
による差は統計的に認められず、DG におけ
る個人、ペア、グループという形態の違いは
指導
大場 浩正