「統合輸送計画(NK対処)について(通達)」の開示決定に関する件

諮問庁:防衛大臣
諮問日:平成25年5月15日(平成25年(行情)諮問第201号)
答申日:平成26年8月4日(平成26年度(行情)答申第166号)
事件名:「統合輸送計画(NK対処)について(通達)」の開示決定に関する件
答申書
第1
審査会の結論
「「統合輸送計画(NK対処)について(通達)」(統幕後第40号)」
(以下「本件請求文書」という。)の開示請求につき,「統合輸送計画(N
K対処)について(通達)(統幕後第40号。24.4.16)」(以下
「本件対象文書」という。)を特定し,開示した決定については,本件対
象文書を特定したことは,妥当である。
第2
1
異議申立人の主張の要旨
異議申立ての趣旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3
条の規定に基づく本件開示請求に対し,平成25年2月18日付け防官文
第1842号により防衛大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)
が行った開示決定(以下「原処分」という。)について,本件対象文書の
本来の電磁的記録の特定を求める。
2
異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書の記載によると,
おおむね以下のとおりである。
国の解釈によると,「行政文書」とは,「開示請求時点において,『当該
行政機関が保有しているもの』」である。
そこで国の解釈に従って,改めて本件対象文書の電磁的記録についても
特定を行うべきである。
第3
1
諮問庁の説明の要旨
経緯
本件開示請求は,「「統合輸送計画(NK対処)について(通達)」(統幕
後第40号)」を求めるものであり,これに該当する行政文書として「統
合輸送計画(NK対処)について(通達)(統幕後第40号。24.4.
16)」を特定し,法9条1項の規定に基づき,平成25年2月18日付
け防官文第1842号により開示決定処分を行った。本件異議申立ては,
原処分に対して提起されたものである。
- 1 -
2
本件対象文書の電磁的記録について
統合幕僚監部では,本件対象文書を紙で管理しており,電磁的記録は保
有していなかった。
なお,電磁的記録は上記のとおり不存在であるが,念のため以下のとお
り確認を行った。
(1)原処分に当たり,文書管理を行っている統合幕僚監部において,書庫,
倉庫及びパソコン上のファイル等の探索を行ったが,電磁的記録を保有
していないことが確認された。
(2)本件異議申立てを受け,確実を期すために再度上記(1)の確認を行
ったが,電磁的記録を保有していないことが改めて確認された。
3
異議申立人の主張について
異議申立人は,「国の解釈によると,「行政文書」とは,「開示請求時点
において,『当該行政機関が保有しているもの』」である。そこで国の解釈
に従って,改めて本件対象文書の電磁的記録についても特定を行うべきで
ある。」と主張し,本件対象文書の本来の電磁的記録についても特定を求
めるが,上記2のとおり本件対象文書の電磁的記録を保有していないこと
から,異議申立人の主張には理由がなく,原処分の維持が相当と考える。
第4
調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
第5
1
①
平成25年5月15日
諮問の受理
②
同日
諮問庁から理由説明書を収受
③
平成26年7月17日
審議
④
同月31日
審議
審査会の判断の理由
本件対象文書について
本件対象文書は,統合幕僚監部が作成し,保有,管理している通達であ
り,統合幕僚長から,陸上自衛隊の西部方面総監並びに航空自衛隊の航空
総隊司令官及び航空支援集団司令官に対して発出されたものである。
処分庁は,本件対象文書の開示決定を行ったところ,異議申立人は電磁
的記録の特定を求めるとして異議申立てを行った。
これについて,諮問庁は,本件対象文書に係る電磁的記録(以下「本件
電磁的記録」という。)を保有していないとして原処分妥当としているこ
とから,本件電磁的記録の保有の有無について,以下,検討する。
2
本件電磁的記録の保有の有無について
(1)諮問庁は,理由説明書において,統合幕僚監部では,本件対象文書を
紙で管理しており,電磁的記録は保有していない旨説明することから,
その詳細について,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたとこ
- 2 -
ろ,次のとおりである。
ア
本件対象文書は,統合幕僚監部が輸送に関する細部実施要領を関係
部署に示すことを目的として発出された通達であり,統合幕僚長の統
制下において,陸・海・空の各自衛隊及び特別の部隊(統合任務部
隊)の人員,貨物等の輸送を行う際に担任する部隊等に示すことを目
的とするものである。
イ
本件対象文書は,統合幕僚監部の担当者がパソコンを使用して作成
した電磁的記録(文書番号及び発簡日は空白のもの)を紙媒体に印刷
し,これを起案文書として決裁を受けた通達である。当該通達は,決
裁終了後,文書番号及び発簡日を入力したものを改めて紙媒体で印刷
し,押印した上で,郵送により各部署に送付したものであり,電子メ
ール等により送付を行ったものではない。
ウ
統合幕僚監部の行政文書管理規則(平成23年4月1日・自衛隊統
合達第9号)には,行政文書を電磁的記録として保存するよう義務付
ける規定はなく,本件対象文書については,同規則42条2項ただし
書に基づき,文書管理者である主席後方補給官が定めた「主席後方補
給官標準文書保存期間基準」により,保存期間を1年(保存期間満了
時期は平成26年3月31日)と定められており,起案文書として,
紙媒体により適切に保存,管理されている。
そして,本件対象文書は,上記イの決裁終了後,文書番号及び発簡
日をパソコンで入力する前の起案文書に手書きで番号と日付を記入
したものであり,統合幕僚長の押印もないが,送付先部分に割印が
押なつされていることから,統合幕僚監部においては,起案文書た
る本件対象文書を原本として保存している。
エ
本件対象文書の作成過程において作成した電磁的記録については,
文書作成時には作成担当者のパソコン内に存在していたものの,当該
通達の発出後,別の統合輸送計画の通達を発出する際に,当該電磁的
記録に上書きして作成したため,開示請求時点では本件電磁的記録は
存在していなかった。
オ
以上のことから,防衛省において,本件電磁的記録は保有していな
い。
(2)当審査会事務局職員をして,諮問庁から上記行政文書管理規則を含む
各種規則を取り寄せて確認させたところ,これらの規則には,行政文書
の電磁的記録の保存を義務付ける規定は見当たらなかった。
加えて,本件対象文書については,現に紙媒体で保存されており,重
ねて電磁的記録により保存する必要はないことに鑑みると,上記(1)
の諮問庁の説明に,特段不自然,不合理な点があるとは認められない。
- 3 -
(3)また,諮問庁は,異議申立てを受け,関係部署において改めて探索し
たが,本件対象文書の電磁的記録は確認できなかったと説明するところ,
本件対象文書の性質に照らせば,諮問庁の上記説明が不自然,不合理と
は認められない。
(4)したがって,防衛省において,本件電磁的記録を保有しているとは認
められない。
3
本件開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,本件対象文書を特定し,開示し
た決定については,防衛省において,本件対象文書の外に開示請求の対象
として特定すべき文書を保有しているとは認められないので,本件対象文
書を特定したことは,妥当であると判断した。
(第4部会)
委員
森田明,委員
大橋洋一,委員
- 4 -
中曽根玲子