バセドウ病とは? バセドウ病の診断ガイドライン

豊田厚生病院
臨床検査技術科
No.1
平成21年8 月
バセドウ病とは?
バセドウ病は、びまん性甲状腺腫を伴った甲状
腺機能亢進症(甲状腺ホルモン過剰)であり、甲
状腺に対する自己抗体である抗TSH受容体抗体
(TRAb)を認める自己免疫性疾患です。抗TSH
受容体抗体(TRAb)は、TSHと同様に甲状腺を
刺激し、T3、T4を過剰に分泌させ全身の新陳代謝
が活発になり、常にジョギングをしているような
状態になります。また、1000人に2~6人いる
と言われており、20歳~50歳の女性に多いのも
特徴です。(男:女=1:5)
TSHレセプター
正常
TSH バセドウ病
TRAb T3・T4 T3・T4 バセドウ病の診断ガイドライン
a)臨床所見
–日本甲状腺学会第7次案より–
1.頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見
2.びまん性甲状腺腫大
3.眼球突出または特有の眼症状
b)検査所見
1.FT4、FT3のいずれか一方または両方高値
2.TSH低値(0.1μU/mL以下)
3.抗TSH受容体抗体(TRAb、TBII)陽性、または刺激抗体(TSAb)陽性
4.放射線ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性
1)バセドウ病:a)の 1 つ以上に加えて、b)の 4 つを有するもの
2)確からしいバセドウ病:a)の 1 つ以上に加えて、b)の1、2、3を有するもの
3)バセドウ病の疑い:a)の 1 つ以上に加えて、b)の1と2を有し、FT4、FT3
高値が 3 ヶ月以上続くもの
当院はTRAb迅速測定が可能です!
従来TRAbは外注検査でしたが、平成21年4月より院内導入を実施し、FT3 、FT4、
TSHと同時にTRAbも測定が可能となり、採血後1時間以内で報告を行っています。よっ
て受診当日にバセドウ病の診断がつき、治療方針が立てられるようになりました。
予診・診察
TRAb 相関 100 80 検査
TRAb(IU/l)
TRAb(IU/l) FT3、FT4、TSH、TRAbな
どの血液検査、超音波検査、
シンチグラフィーなど
60 <2.0IU/l ≧2.0IU/l TRAb(%) ≦15 >15.1 57 2 7 25 40 20 従来はTRAb外注検査だったので… 次回、検査説明と
治療方針の決定
現在はTRAb院内検査なので… 当日のうちに検査
説明と治療方針の
決定が可能!
0 0 20 40 60 TRAb (%) 80 100 「当院での検討結果:エクルーシスTRAb ≧ 2.0 IU/l 、
TRAb>15.1%(BML)を陽性とすると、両者の一致率は
90.1%と良好な結果が得られました」
バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別
バセドウ病
無痛性甲状腺炎
発症
徐々
急速
症状
自覚症状の程度は様々
軽度のものが多い
経過
無治療では進行性
治療しなくても自然に治癒
しばしば機能低下症を経過
眼球突出
20-50%にあり
TRAb
なし
約90%の症例で陽性
一部の症例で経過中に陽性
放射性ヨード摂取率
高い
低値
T4/T3
低い
高い
TRAbカットオフ
60
40
20
エクルーシス試薬TRAbのバセドウ病診断
のためのカットオフ値は特異度を優先して、
2 .0 IU/L と設定しました。
10
6
4
甲状腺機能亢進症( FT4 3.0ng/dl以上)
におけるTRAb判定基準 2
1
0.6
0.4
未治療
バセドウ病
n=298
無痛性
甲状腺炎
n=85
Subacute
Thyroiditis
0.1
Painless
Thyroiditis
0.2
Unterated
Graves' Disease
TRAb「EC」
Elecsys TRAb (IU/L)
2.0IU/Lの設定
対 破壊性中毒症
Cut off = 1.86 AUC = 0.993 100
無痛性甲状腺炎は、甲状
腺の破壊により一時的に甲
状腺ホルモンが過剰になり
バセドウ病と紛らわしい症
状が出ることがあります。
長くても4ヶ月以内には自
然に治るため治療の必要な
バセドウ病との鑑別が重要
になります。
今 回院 内導 入した TRAb
で両者の鑑別が大方できる
ようになりました。
亜急性
甲状腺炎
n=135 1.0 IU/L 以下
1.0~3.0 IU/L 3.0 IU/L 以上
バセドウ病の疑いなし
グレーゾーン
バセドウ病の可能性が高い