集中管理システムを用いた消融雪施設の一元管理 ~ブロック制御による路面散水の平準化と節水への取り組みについて~ 大川 1. 滋*1 はじめに 流雪溝ポンプは現地での手動操作が基本となり、緊 新潟県上越市では市街地の消融雪施設について平成9 年から集中管理システムを導入している。平成9年~平 成24年までは、NTTの有線回線を利用して市役所にある 急時に遠隔地からの強制運転/停止を行うことができ る。 集中管理システムの概要を以下と図-1に示す。 サーバで施設の遠隔監視や遠隔操作などを行っていた。 近年は機器の老朽化がすすんでいたことから、平成 ○対象施設 25年に携帯電話網を利用したWEB対応型集中管理システ ・地下水消雪パイプ 31箇所 ムへと更新を行った。新システムでは、多数決判定に ・加温式消雪パイプ 6箇所 よるブロック制御機能や間欠運転による節水機能 1) な ども付加して運用を行っている。 ・流雪溝ポンプ 10箇所 ○主機能 ・遠隔監視(運転、降雪、故障、低水位、気温等) 2. 集中管理システム概要 2.1 ・遠隔操作(運転/停止) 概要 ・ブロック制御(降雪検知数による多数決判定) 集中管理システムは、地下水消雪パイプ・加温式消 雪パイプ・流雪溝ポンプについて遠隔地から監視・制 御を行うシステムである。 ・節水モード(外気温に応じた間欠運転) ・WEB配信(ブラウザ閲覧) ○通信回線 地下水消雪パイプと加温消雪パイプは中央サーバか らブロック制御(登録ブロック内の連動・多数決判 ・携帯電話網(FOMA通信) ○現地監視制御機器(写真-1,2) 定)を行うことが基本である。現地自動制御や遠隔地 ・接点入力 8点 からの強制運転・停止を行うこともできる。 ・接点出力 4点 インターネットを SSL(暗号化通信)で、 集中管理サーバへ接続 データセンター 上越市役所 消雪設備 集中管理システム ファイヤー サーバ ウォール 利用者 インターネット 地下水消雪パイプ (31箇所追加) 通信装置 スマートフォン閲覧 通信装置通信装置 メール通報も可能 地下水 消雪パイプ 上越市役所からインター ネット経由で消雪設備集 中管理システムへアクセ スする。 FOMA端末 専用線サービス 加温式消雪パイプ・ 流雪溝監視 16箇所 サーバから各設備へ定期的に運転状況の収集 各設備で運転、停止、故障が発生すると サーバへイベント通報する。 加温消雪 流雪溝ポンプ FOMA端末 NTT docomo FOMAネットワーク 図-1 *1 株式会社興和 利用者 集中管理システム概要図 ・アナログ入力 ・通信方式 4点 RS-232C/LAN/FOMA 作で設備の運転・停止ができる。 5)モニタリング機能 現地機器に接続されたアナログデータ(河川水位や 流量等)を、グラフ及びCSV形式で表示・保存できる。 6)ブラウザ画面表示 ・自動監視画面(パネル形式):個別の設備の監視・ 制御用の基本画面 ・詳細監視画面(地図形式):各施設ごとに詳細な設 備状況を確認 ・運転記録表示(グラフ形式):運転記録のグラフ表 示 ・アナログデータ表示(グラフ形式):水位・流量な どのデータをグラフ表示 7) 写真-1 ポンプ制御盤への組込み状況 モバイル対応 スマートフォン用の監視画面を用意し、モバイルに よる遠隔監視・操作にも対応している。 8) 大画面表示 市役所内では大型ディスプレイで全設備の状態を色 別の表示で確認できるようにしている。 写真-2 2.2 現地監視制御機器 基本仕様 1)データセンターとインターネット配信 図-2 画面表示(パネル形式) 遠隔地のデータセンターに管理サーバを設置し、現 地設備から情報を自動的に収集する。収集したデータ はインターネット経由で関係者に配信し、関係者はブ ラウザから設備監視や遠隔操作を行うことができる。 2)運転監視機能 通 信 回 線 と し て FOMA 網 を 利 用 し 、 一 定 ( 任 意 設 定 可)時間ごとに各設備の降雪検知状況、気温変化及び 設備運転状況を監視し、画面に表示する機能を有する。 3)運転データ記録・表示機能 設備の運転状況や制御・故障履歴を自動記録し、過 去の運転記録も画面上に表示できる。またこれらの記 録は、日報・週報・月報・季節・年報等で表示保存で きる。 4)遠隔強制運転・停止機能 操作権限をもつ管理者は、ブラウザ画面から遠隔操 図-3 画面表示(地図形式) 事前に設備をグループ分けし、グループ内の降雪検 知数を多数決判定して、設定条件以上の降雪を検知し た場合は、ブロック内のすべての設備へ運転指令を出 すものである。 実際にブロック制御を実施した運転記録を図-8に示 す。 ○判定条件例 ・ブロック内設備数:4箇所 ・多数決判定基準:降雪検知器4台中3台以上検知し たら全箇所運転、検知が2台以下になったら全箇所 停止 図-4 画面表示(稼働履歴) ○運転結果 図-8の稼働グラフは以下の状態となっている。 青色の時間帯=降雪ありで設備停止 緑色の時間帯=降雪なしで設備運転 青色+緑色の時間帯=降雪ありで設備運転 図-5 モバイル端末監視画面 図-7 ブロック制御動作 緑色=運転中 青色=降雪あり 降雪検知が2箇所以下だと運転しない 4箇所が同じタイミングで運転・停止している 図-6 3. 大画面表示(50型ディスプレイ) ブロック制御 ブロック制御とは降雪検知器の感度の違いによる設 備ごとの運転のばらつきを無くし路面散水の平準化を はかることを目的とするもので、集中管理システムを 利用した複数設備の一斉運転・一斉停止が可能となる。 図-8 ブロック制御時の稼働グラフ例 実際の運転状態を見ると、降雪の検知感度にばらつ きがあり、頻繁に検知する箇所とほとんど検知してい 5. ない箇所がある。 ○設備状態をリアルタイムに把握 システム導入効果 しかし、消雪設備の運転・停止は4箇所がほぼ同じ 設備の運転/停止状態をリアルタイムに把握できる。 タイミングで行われており、降雪検知数が2箇所以下 また故障や低水位などの障害発生についても迅速な状 だと全箇所とも運転していないことがわかる。 況把握が可能となった。 ○散水運転の平準化がはかれる 4. 節水対策 降雪検知器の検知動作はかなりばらつきがある(設 地盤沈下を防止するには揚水量を削減する必要があ 1) 置条件、気温や感度の設定、機種の違いなど)が、ブ る。 また上越地域では地盤沈下の緊急時対策を実施し ロック制御により散水運転の平準化がはかれた。 ており、地盤沈下警報発令時は揚水量を50%削減する必 ○一部の降雪検知器が故障しても継続して運用可能 要がある。 2) ブロック内の一部設備の降雪検知器が故障した場合 節水対策運転は、地下水位低下と地盤沈下を抑制す も、ブロック単位での多数決判定のため、検知器故障 るために、降雪状況と外気温を判定し自動的に節水運 設備を継続的に運用可能である。 転を行うものである。基本動作は下記のようになる。 ○降雪シーズン全体を通して適切な節水が可能 ・5割節水運転:降雪検知で外気温1℃以上の場合 20分散水-20分停止 ・3割節水運転:降雪検知で外気温1℃~-1℃の場合 通常のブロック制御と節水対策運転を遠隔から容易 に切り替えられるので、適切な節水を行うことができ る。 20分散水-10分停止 ・連続運転:降雪検知で外気温-1℃以下の場合 連続散水 平成25年度は、降雪量が多い期間(1月中旬~2月中 旬)は通常のブロック制御、その前後の降雪量が比較 的少ない期間は節水対策運転を行った。その結果、26 以上のように、気温が高めの時は自動的に散水を間 欠にし、節水を行うものである。 箇所の消雪設備の合計揚水量について、1シーズンで 約10%削減することができた。 実際に節水対策運転を行ったときの稼働記録を図-9 に示す。この期間は降雪はあるものの外気温が0℃~ 6. 2℃で推移しているため、3割節水や5割節水で運転して いることがわかる。 まとめ 上越市では消融雪施設についてWEB対応型集中管理シ ステムの導入を行った。これにより消雪設備の管理者 平成25年度に行った節水対策運転期間の記録からは、 はインターネット経由で施設稼働状況をリアルタイム 通常の散水と比較しておよそ20%~40%の節水が可能と で把握することができるようになった。さらに操作権 なることがわかった。 限をもつ管理者は遠隔操作が可能となった。 ブロック制御モードを利用することにより、図-8の 例に示すように設備稼働タイミングのばらつきがなく なり、散水運転の平準化をはかることができた。 緑色=運転中 青色=降雪あり 節水対策については、節水モードで運用した期間は 通常の散水と比較して20%~40%の節水を行うことがで きた。また節水対策モードを遠隔から切り替えること により、シーズンを通して適切な節水を行うことがで きた。 降雪はあるものの外気温が0℃~2℃で推移して いるため、3割節水や5割節水で運転している。 参考文献 1) 坂東和郎・鈴木由幸(2006):消雪パイプ用節水 タイマーの開発,2006年度日本雪氷学会全国大会講演 予稿集,P95. 2) 新潟県(2013):平成25年度上越地域地盤沈下緊 急時対策実施方針,新潟県ホームページ,環境にいが 図-9 節水対策運転時の稼働グラフ例 た
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