第10回TRIZシンポジウム2014 過酷環境で使用するロボット開発へのTRIZ活用 2014/09/12 (株)日立製作所 日立研究所 岡田 聡 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 1.背景と目的 原子炉 建屋 地上 階 地下 階 格納容器 43 m トーラス室 タービン 建屋 背景 福島廃止措置において 格納容器やトーラス室の 損傷状況が不明 格納容器内部の 調査が必要 目的 格納容器内部に アクセス可能な 移動装置の開発 原子炉建屋断面図 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 1 2.格納容器内部を調査する移動装置の課題 狭隘な管内走行 内径100mm 過酷環境下での 動作 (例)放射線 100Gy/h 凹凸面上の 安定走行 開口 25mm×90mm 格納容器の断面図 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 2 3.本開発の流れと技法活用 要求仕様の整理【VOC/QFD】 方式決定【KT法-DA】 方式案検討【TRIZ/IPS】 試作設計・製作前のリスク分析【KT法-PPA】 試作設計・製作 試作後の問題解決【KT法-PA】 製作後の問題解決【KT法-PA】 実機設計・製作 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 3 4.物理的矛盾と発明原理による解決策 開発課題の物理矛盾をTRIZの発明原理で解決 No 開発課題 物理的矛盾 発明原理 解決策 狭隘部走行可 狭隘部走行と 能な形状では、 平面走行時と狭隘 時間の分離 凹凸面上の 凹凸のある平 部通過時で、形状 ① 【15.ダイナ 安定走行の 面走行時の安 を最適化 ミックス】 両立 定性が確保で 【形状可変機構】 きない モータへの給 耐環境性の低い部 電に必要な電 過酷環境下で 空間の分離 品のみを対象領域 ② 源基板は過酷 の動作 【2.分離】 外に分離 環境下での動 【電子基板分離】 作が不安定 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 5.解決策①:形状可変機構 TRIZ/時間の分離(15.ダイナミックス) 平面走行 狭隘部進入 本体に対して2つの クローラを90°配置 可変 本体に対して2つの クローラを直線配置 形状可変モータ 本体 形状可変 ギア クローラ © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 5 6.解決策②:電子基板分離 空間の分離(2.分離) モータ制御 モータはロボット外で制御。回転は電流制御 信号線 従来 制御装置 C 電源線 ME 今回 ・ケーブル細線化可能 ・放射線耐性が低い EM 制御装置 電源線 カメラ M CCDの制御回路を分離。微弱電流信号伝送。 レンズ CCD 制御回路 ・ケーブル細線化可能 ・放射線耐性が低い 今回 微弱電流信号 制御装置 制御回路 ビデオ信号 制御装置 従来 M ・放射線耐性が高い ・ケーブル細線化難 (高い走行トルク要) レンズ CCD ・放射線耐性が高い ・微弱電流信号伝送のためケーブル細線化難 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 6 7.開発した形状変化型移動装置の概要 段差のある平面走行と、狭隘部 (直径100mm配管)への進入を両立 電子基板を分離し、耐放射線性を大幅に向上 形状変化 カメラ収納軸 挿入性 装置の仕様 直径100mm配管通過 踏破性 段差のある平面走行可能 最大推力 10kgf(平面走行時) 耐環境性 耐放射線1000Gy程度 ケーブル 長さ40m,外径15mm 搭載カメラの詳細 ・耐放射線型 CCDカメラ ・上下動作範囲 120°以上 上下動作回転軸 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 7 8.実機での動作イメージ 貫通配管 グレーチング 内径100mm 開口25mm×90mm 本装置の典型的な動作 形状変化 平面走行 映像取得 カメラ 上下 動作 配管通過 クローラ カメラ グレーチング3)面 3)グレーチング:格子状の鋼材 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 8 9.形状可変機構の動作検証(動画:1分) 直径100mm配管進入と、グレーチング上の走行を両立 段差のあるグレーチング上を安定して走行可能 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 9 10.走行性能評価 電子基板を搭載しないため、モータ駆動用のケーブル牽引が必須 → グレーチング上で牽引力約10kgf程度必要 ダミーウェイトを4kg以上追加することで、概ね10kgfを達成 斜め方向 ダミー ウェイト グレーチング 長手方向 14 12 10 8 6 (kgf) 4 2 00 牽引力 短手方向 長手 斜め 短手 2 ダミーウェイト(kg) 4 放射線環境下での走行確認 → 集積線量1000(Gy)までの正常動作を確認 ※100(Gy/h)の環境で10時間動作 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 10 11.まとめ TRIZの発明原理を用いて、格納容器内部にアクセス可能な 移動装置を開発し、以下の結論を得た。 ① 狭隘部走行と凹凸面上の安定走行の両立するため、時間の分離 (ダイナミックス)を活用し、形状可変機構を考案した。 ② 過酷環境下での動作を実現するため、空間の分離(分離)を活用 し、耐環境性の低い電子基板を対象領域外に分離する構造を考 案した。 ③ 上記2つのコンセプトを用いて、形状可変ロボットを製作し、モック アップ試験を実施し、実機で活用できることを確認した。 ※本成果はNHKスペシャル「廃炉への道①」で紹介された(4/20放送)。 © Hitachi, Ltd. 2014. All rights reserved. 11 12
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