2014/ 11/ 16 第17回広島感染防止及び 滅菌業務研究会 化学的モニタリングについて ~ISO基準を踏まえて~ 株式会社サクラクレパス 中央研究所 中村 慶子 本日の内容 ・ CIのクラス分類・仕様について ・ ケミカルインジケータ(CI)について 「医療現場における滅菌保証の ガイドライン2010」のポイント ・ バイオロジカルインジケータ(BI)の 仕様・性能等について 滅菌の概念図 106 BIの限界 10-6 本日の内容 ・ CIのクラス分類・仕様について ・ ケミカルインジケータ(CI)について 「医療現場における滅菌保証の ガイドライン2010」のポイント ・ バイオロジカルインジケータ(BI)の 仕様・性能等について CIの設計 ガイドライン2010 P75 CIは設定温度において経時的に段階的に 変色し,生物学的インジケータ(biological indicator:BI)の死滅時間〔8~9Dに相当 する滅菌処理時間であり、10-2~10-3の無 菌性保証水準(sterility assurance level: SAL)で陰性となる〕より遅れて完全変色 するものが望ましい. CIのクラス分類 Class1 プロセス インジケータ 滅菌工程を通過したか否かを区別する 1つあるいは複数の重要なパラメータに反応 Class2 特定の試験のため のインジケータ Class3 シングルパラメータ 高圧蒸気滅菌器中の空気排除及び蒸気の浸透を確認する B&Dテスト用のインジケータが含まれている 重要なパラメータの1つに反応 インジケータ Class4 マルチパラメータ 重要なパラメータの2つ以上に反応 インジケータ Class5 インテグレーティング 全ての重要変数に反応 SVはISO11138で規定されている要求性能と同等また インジケータ はそれ以上 Class6 エミュレーティング 規定された滅菌サイクルの全ての重要変数に反応する 規格幅がClass4より狭く、SVを精度よく検知するための インジケータ サイクル検証用 ISOでは「Parameter」→「Variable」に変更されている CIのISO分類における留意点 Class4 :2つ以上の変数(variable)に 反応する Class5 :指標菌の死滅曲線に相関 した規定値(SV:Stated Value)を持つ が、規格幅の下限では指標菌の死滅 時間(7Log)とほぼ合致するためセー フティマージン(安全時間)は小さい CIのISO分類における留意点 Class6:全ての重要な変数に反応す る。滅菌工程をモニタリングできるよ うにSVを精度よく検知する性能 を持つ。 クラス分類に序列的な意味はない (ISO 11140-1:2005) Class4,6 インジケータ の要求性能 134℃ 8分 (SV) で完全変色する インジケータの一例 Class 6 Class 5 Class 5 カードS Class 6 : 8分までは段階的に変色。赤枠の3分で濃い緑色に変色する(色差は、65.2)。 3M 5 : 0.5分程度でACCEPT(合格域)。日本の通常滅菌条件135分8~10分には適合しない。 Class AC-15 : 3分程度で完全変色に達する。AC-1S は、135-5分で滅菌済み色調との記載あり。 Class 酸化エチレンガス滅菌 ★微生物の生体そのものである蛋白質に化学 反応を及ぼすことによって、滅菌を行う。 ☆この反応には湿気(水分)が必要である。 これは、湿気が存在することにより菌体を膨潤させ、水と 親和性の良い酸化エチレンが菌体内に浸透しやすくなり 滅菌効果が良くなるためである。 ☆滅菌成立の4要素 の相乗作用 条件 Bacillus atrophaeus EO濃度 700mg/L 、温度 湿度 50%RH D値 濃度(450~1,000mg/L) × 温度 (40~60℃) × 湿度(50%RH前後 ) × 時間 50℃ 約6分 クラス4CI クラス5CI クラス4CI クラス5CI EOG滅菌用 ステラッド用CI(性能・品質) A社 B社 C社 D社 ○ ○ △ △ 全機種 200 非対応 全機種 全機種 初期塗膜 ○ ○ × ○ 完全変色後 塗膜 ○ △ △ △ NR-1での測色 ○ × × × 積載量の影響 あり なし なし なし 変色前色相 変色後色相 BIとの相関性 対応機種 耐光性テスト (蛍光灯照射1週間) 過酸化水素ガスプラズマ滅菌用 実験結果 B社 指示色 BI(+) ⇔ BI(-) A社 指示色 120 120 100 100 初期との色差⊿E* 初期との色差⊿E* BI(+) ⇔ BI(-) 80 60 40 A社 開発品 20 ※⊿E*は顕微色差計 CR-241測色値。 C社 指示色 D社 指示色 80 60 40 C社 B社 20 0 0 0 50 100 150 200 過酸化水素 注入量 積算濃度(mg/L・分) 0 50 100 150 200 過酸化水素 注入量 積算濃度(mg/L・分) • A社とB社はBI(+)~(-)にかけ段階的に変色した。 • A社は色差と積算濃度が相関する領域が幅広かった。 • C社とD社はBI(+) で指示色付近となる場合があった。 クラス4相当 クラス1相当 化学的インジケータの使用頻度 「医療現場における滅菌保証のガイドライン2010」および「病院機能評価<3rdg:Ver1.0>」「医療法」において記載されています。 医療現場における滅菌保証の ガイドライン2010 使用頻度 勧告1) 蒸気滅菌 外部用:全ての包装 内部用:厳重な包装 :各包装内部 A A B EOG滅菌 外部用:全ての包装 内部用:厳重な包装 :各包装内部 A A B プラズマ滅菌 外部用:全ての包装 内部用:厳重な包装 :各包装内部 A A B 病院機能評価 一般病院2 < 3rdG:Ver.1.0 > 2) (2013.4.1~適用) 3.1.8 洗浄・滅菌機能を適切に発揮している 滅菌の実際に際しては、物理的、化学的、生物学的 な滅菌精度の確認が求められる。物理学的インディ ケーターは常時モニターされ、あらかじめ定めた運 転条件を満たしていることが確認され、記録されて いる必要がある。化学的インディケーター は毎回パックの内側と外側3)に使用さ れていることが望ましく、使用者が滅菌 済み器材であることを確認できること が必要である。生物学的インディケーターは、 毎日初回の滅菌工程において使用されることが望 ましいが、少なくとも週に1回以上使用され、滅菌効 果が不十分な場合には、前回の陰性判定までさか のぼって、速やかにリコールが実施されなければな らない。また、生物学的インディケーターは滅菌が 困難な器材の代表とすべくPCDの形態で滅菌工程 をモニターすることが望ましい。 医療法 (業務委託) 包装ごとにインジケータを 貼付・挿入 (課長通知第3,1,(4),ア)4) 包装ごとにインジケータを 貼付・挿入 (課長通知第3,1,(4),ア)4) - 1)勧告 A:病院内滅菌を行っている総ての施設で実行すべき項目 B:病院内滅菌を行っている総ての施設で可能な限り採用すべき項目 2)病院機能評価 機能種別評価項目 解説集 一般病院2 < 3rdG:Ver.1.0 > 3.1.8より抜粋 3)包装内部用CIが視認可能な場合には、包装外部用CIは貼付しなくてもよい:ガイドライン2010(P81)より抜粋 4)厚生省健康政策局指導課長通知 平成5年2月15日 指第14号課長通知 CIの変色原理について 各種CIの変色原理を一部、簡単 にご説明いたします。 色の変化を統一して欲しいとの 要望がありますが特許等もあり 難しいのが現状です ①金属塩使用タイプ:変色パターン 高圧蒸気滅菌用 (白色系 → 黒色系) 市販品の例:①OKカード™ ,②コンプライ1250(3M) 炭酸鉛(PbCO3) + 硫黄(S) → 硫化鉛(PbS) 白色 + 乳白色 黄色 黒色 黒色 滅菌物にインジケータ インキが付着しないよ うに注意が必要! 佐々木次雄編:医療機器の滅菌及び滅菌保証(一部改変) ②色素使用タイプ:変色パターン 高圧蒸気滅菌用 (カラー → カラー) • 市販品の例:① ネスコス ® I・CカードS(アルフレッサ ファーマ),②HP 135-10(日油技研) シアニン系色素 + 顔料 → 色素分解 + 顔料 赤色 + 濃紫色 緑色 無色 + 緑色 緑色 佐々木次雄編:医療機器の滅菌及び滅菌保証(一部改変) ③インジケータバー伸長タイプ (ムービングフロント方式) 高圧蒸気滅菌用 • 市販品の例:①コンプライ1243、2134MM(3M) 湿熱による熱量を感知した検知部から有色 のワックス状物質が溶融してインジケータ バーが伸び滅菌条件を表示するタイプ 佐々木次雄編:医療機器の滅菌及び滅菌保証(一部改変) 本日の内容 ・ CIのクラス分類・仕様について ・ ケミカルインジケータ(CI)について 「医療現場における滅菌保証の ガイドライン2010」のポイント ・ バイオロジカルインジケータ(BI)の 仕様・性能等について ガイドライン2010のポイント CIについての改正点(2005→2010) • ISO 11140-1:2005年7月 第2版に改訂 ①CIの「parameter」を「variable」に変更 ⇒ガイドライン2010では従来通り ②Class5のCIの「求められる性能」追記 • 勧告B → A に変更 ①インジケータを使用する際は、 反応する重要なパラメータを十分に把握する。 ②インジケータを使用する際は、 適用可能な滅菌条件を十分に把握する。 Class5のCIに求められる性能 • 重要変数へ曝露した際に BIと同様な挙動を示すように設計 • 121℃、135℃、これら2点の間の温度(例 えば128℃)、の3点の温度でのSV(規定 値)を求めなければならない SV:インジケータが反応する重要なパラメータの値またはその範囲 蒸気滅菌用Class5インジケータのSVの1例 135℃では、2.1分で完全変色する (CIERでの変色条件) 121℃,128℃,135℃ でそれぞれ何分で完 全変色するかが記載 されている 温 度 圧 力 2分 実際の滅菌器 ではSVより短 い時間でCIが 完全変色する 場合がある CIER:Chemical Indicator Evaluating Resistmeter CIER(CIの評価試験装置) ISO/18472でBIの評価装置と統一 蒸滅菌用 CIER:三浦工業㈱製BIER Temperature (110 to 145)℃±0.5℃ Pressure (140 to 420)kPa±3.5kPa Vacuum (4 to 100)kPa±0.5kPa NOTE The pressure values given are the absolute pressures. 昇温:10秒以内 排気:10秒以内 CIの性能試験 • 医療機関の滅菌器では、 SVは評価できない • CIのSVはCIERで評価する ←CIが要求性能を満足しているかを 一定条件で評価することが目的 Class5 CIの反応時間と規格幅 ISO11140-1:2005 高圧蒸気滅菌用 100 Class5インジケータの反応曲線の例 合 格 域 10 に 達 す る 時 間 1 分 ) 規格幅 ( 指標菌の死滅曲線 7Log=SV限界 0.1 118 120 122 124 126 128 滅菌温度(℃) 130 132 134 CIについて勧告がB→Aに改訂された背景 ガイドライン2010より ①インジケータを使用する際は、 反応する重要なパラメータを十分に把握す る。 ②インジケータを使用する際は、 適用可能な滅菌条件を十分に把握する。 自施設において管理したい滅菌条件を検知できるCIを 使っていますか? CIの運用方法について (ガイドライン2010 P76) 「医療機関で一般的に使用される滅菌器 を用いた場合の合格条件と、CIERを用 いた場合の規定値は通常異なるため, 使用にあたっては検証をおこない,運用 方法を決める必要がある.」 自施設の滅菌条件と使用中のCI のSVは、必ず把握しましょう! SV と実際の変色性(Class6 CI) SV :134℃ 8分のCI SV :134℃ 3.5分のCI 135℃ 6.5分で完全変色 135℃ 1.5~3.5分で完全変色 高圧蒸気滅菌バリデーション(セット内温度測定)とクラス6CIの変色の関連 田村秀代, 米谷隆志, 成田梓 (名古屋第二赤十字病院 中央滅菌センター) 医器学 Vol.75, No. 10 , 635~636 (2005) 各国の滅菌工程 • • • • • • • • • • 英国 ドイツ スカンジナビア スペイン フランス オーストラリア ブラジル 南アフリカ 米国 日本 134℃ 134℃ 134℃ 134℃ 134℃ 134℃ 134℃ 134℃ 132℃ 3.5分 4.0分 5.3分 7.0分 18 分(プリオンの失活) 3.5分 7.0分 5.0分 4.0分(CDCガイドライン) 132~5℃ 8~10分 Mr.Helmut Raake(BROWNE) , サクラ精機株式会社 第26回日本手術医学会総会 トピックスセミナー1 Nov. 11,2004(一部改訂) 市販の化学的インジケータのSV(規定値) (一例) A社:134℃ 3.5分(クラス6)欧州市場対応 B社:134℃ 8.0分(クラス6)日本市場対応 C社:121℃ 22.0分 , 128℃5.7分 , 135℃ 2.1分 (クラス5)米国市場対応 BIの死滅時間は? 135℃でのD値は0.06分間 (ISO 11140-1附属書C) ☆BIの死滅時間は8D~9Dであるため ・ 8D=8×0.06=0.48(分間) ・ 9D=9×0.06=0.54(分間) 計算上では135℃30秒前後で 死滅することになる BIの死滅時間に関する学会発表データ • 高圧蒸気滅菌における高 圧蒸気滅菌における 高圧蒸気滅菌におけるボウィー・ディックテスト (BD)、CI、BIの使用頻度の検討 田村秀代(名古屋第二赤十字病院),米谷隆志, 國井恵子(日本ステリ株式会社) 医器学 Vol.77, No. 10 , 735~736 (2007) 高圧蒸気滅菌における化学的インジケータの 変色と工程時間の関係 酒井義信、野田 稔、中島美和子ほか 佐賀大学医学部附属病院材料部ほか 医器学 Vol.77, No. 10 , 735~736 (2007) プリオン処理 134℃ 18分 2分 「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」 ハイリスク手技に用いられた手術器具等に 対して現時点で推奨される処理方法 1.適切な洗浄+3%SDS 3~5分煮沸処理 2.アルカリ洗浄剤を用いたウォッシャーディスインフェクター(90~93℃)洗浄 + プレバキューム式オートクレーブ 134℃ 8~10分 この赤色下線条件の達成をどのように確認しますか? なお、ウォッシャーディスインフェクターを用いることができない場合には、 適切な洗浄剤による充分な洗浄+ プレバキューム式 オートクレーブ 134℃ 18分 3.軟性内視鏡については適切な洗浄剤による充分な洗浄+過酸化 水素プラズマ滅菌 洗浄の重要性 106 洗浄でこの数を減らす ことが滅菌の質保証の ポイント 102 12 10-6 10-10 ここで押さえるポイントあり! ここまでのCIの変色試験結果及びBIの 死滅条件を再現するには空気除去が 確実に行われる滅菌器を用いた場合です B&Dテストの重要性 空気が正常に排除されていないと… 滅菌包装 空気 蒸気:滅菌剤 空気がクッションとなって 蒸気が行き届かない 本日の内容 ・ CIのクラス分類・仕様について ・ ケミカルインジケータ(CI)について 「医療現場における滅菌保証の ガイドライン2010」のポイント ・ バイオロジカルインジケータ(BI)の 仕様・性能等について BIの使用頻度 ガイドライン2010と関連ある法規等との比較 滅菌法 ガイドライン2010 使用頻度 蒸気滅菌 1日1回以上 フラッシュ滅菌実 施日毎 インプラントは毎回 EO滅菌 毎回 インプラントは毎回 プラズマ 1日1回以上 滅菌及び インプラントは毎回 過酸化水 素滅菌 同左 病院機能 医療法 勧告 評価(3rdG) (業務委託) B 週一回 A 毎日初回 (週の最初) A B A B A が望まし いが少な くとも 週一回 (課長通知 第3,1,(4),イ) ー 高圧蒸気滅菌用の主な再使用型PCD A社PCD B社PCD C社PCD 18枚のパルプシート を収納したSUS304 箱型ケース らせん状ステンレス チューブを収納した プラスチック円筒 プラスチックチューブを 巻き取り収納した プラスチック容器 BIの挿入 汎用品のBI を挿入可能 難しい 難しい データロガー の挿入 挿入容易 難しい 難しい 構造 運 用 性 BIのタイプについて 培地一体型( 48時間培養) 違いをご存知 ですか? 短時間判定型( 3時間培養) BIの検出原理 培地一体型( 48時間培養) 酸の生成 pH指示薬 (培養) 芽胞が増殖した際に生成する酸 をpH指示薬で検出する。培地の色 が変化することで陽性を確認する BIの検出原理 短時間判定型( 3時間培養) 蛍光物質の付 着が誤判定の 原因となる 活性酵素 芽胞 滅菌が不十分な場合、非蛍光基質が酵素反 応により分解され、蛍光物質が生成される。 この蛍光物質をオートリーダーで検出し 陽性判定する 最後に 滅菌の質保証を高めるために、ガイド ラインなどの指針を参考にして、また 各種製品の性能を把握して限られた コストで業務改善を! 一歩一歩前進しましょう!! ご清聴ありがとうございました
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