●サンヨー ・ プロダクト ・ トピックス● 環境対応型塗料の市場増に応え さらなる性能向上を実現する 水系塗料用ウレタン樹脂エマルション『ユーコート UX - 485 485』 』 外壁の塗装に 大気環境に対する意識の高まりを受け、法 規制などによるVOC︵揮発性有機化合物︶ 低減が世界的な流れになるにしたがって塗料 分野でも脱溶剤化が進んできました。これま で主流だった有機溶剤系塗料は、樹脂をトル エンなどの溶剤に溶かしたもので、溶剤が蒸 発︵乾燥︶することで樹脂が塗膜になるとい うメカニズムでしたが、有機溶剤に代えて水 を媒体として用いる水系塗料︵エマルション 塗料︶や媒体をまったく用いない粉体塗料、 紫外線硬化塗料などの開発が進められ実用化 されてきました。 特に水系塗料は従来の溶剤系塗料と同様の 設備で取り扱える場合もあり、建築用途、自 動車用途を中心に大きな伸びを示しています。 水系塗料は水、バインダー樹脂、顔料、その 他架橋剤、粘性調整剤、助溶剤などの添加剤 を主な構成材料としていますが、今回はこの 水系塗料の機能を向上させるウレタン樹脂エ マルションを紹介します。ウレタン樹脂エマ ルションは、直径数十∼数百㌨㍍のウレタン 樹脂粒子を水中に安定的に乳化分散したもの です。 水系塗料 水系塗料のバインダー樹脂としては、主に アクリル樹脂エマルションが用いられますが、 アクリル樹脂だけでは塗膜の可とう性や下地 9 2014 秋 No.486 ■アクリル樹脂とウレタン樹脂の相溶性の影響 ウレタン樹脂 アクリル樹脂 との密着性が不足しがちという欠点がありま す。塗膜の可とう性が不足すると温度変化な どで下地が伸縮してひび割れが発生したり、 下地との密着性が不十分だと塗膜が剥がれた り浮いたりします。そこで添加されるのがウ レタン樹脂エマルションで、塗膜に可とう性 を付与し、下地との密着性向上といった高機 能化を可能にします。このためバインダー樹 脂としてアクリル樹脂エマルションとウレタ ン樹脂エマルションを併用した水系塗料が 種々の塗装用途で使用されています。 一方、アクリル樹脂とウレタン樹脂との相 溶性が悪いと、乾燥塗膜中で相分離を起こし てしまい、光沢などの外観低下、耐候性など の塗膜性能の低下を引き起こします。 三洋化成の水系塗料用ウレタン樹脂エマル ション﹃ユーコートUX 4 - 85﹄は、アク リル樹脂エマルションとの相溶性に優れてお り、光沢などの塗膜外観や耐候性の低下が起 こらないため、経年劣化が低減し塗膜寿命が 保持されます。さらに塗膜には可とう性や密 着性といったウレタン樹脂の特性も生かされ ています。 ウレタン樹脂エマルションの広い用途 ウレタン樹脂エマルションは、先に述べた 塗料用途以外にもインキ、化粧合板や木工な どの接着剤用途、さらに合成皮革や顔料を織 三洋化成ニュース 10 ドメイン径:∼ 0.1μm ウレタン樹脂の凝集が発生していない ドメイン径:∼ 0.5μm ウレタン樹脂の凝集が発生➡外観 (光沢) 、密着性、耐候性等の悪化 ユーコート UX-485 乾 燥 従来のウレタン樹脂 アクリル樹脂/ウレタン樹脂( 9/1)の乾燥塗膜の TEM 写真(黒色部がウレタン樹脂) ■アクリル樹脂とウレタン樹脂併用系塗膜の耐候性(光沢保持率) 100 90 光沢保持率 (%) 80 70 ユーコート UX-485(10 質量%配合) 従来のウレタン樹脂(10質量%配合) 60 アクリル樹脂単独 50 0 100 200 経過時間(h) 300 400 〈光沢保持率の測定方法〉 促進耐候試験機(アイスパー UV テスター、光源:メタルハライドランプ、照射強度:75mW/cm2) 73℃・50%RH×4hr⇔38℃・95%RH×4hr を繰返して、60°光沢の初期値からの保持率を光沢保持率とした ■当社ウレタン樹脂エマルションの製品例 ユーコートUX-485 ユーコートUWS -145 パーマリンUA-368T パーマリンUA-200 ユープレンUXA-307 ポリオールの種類 ポリカーボネート系 親水基の種類 カルボン酸 カルボン酸 トリエチルアミン塩 トリエチルアミン塩 性 状 物 性 主用途 品 名 ポリエステル系 ポリカーボネート系 ポリエーテル系 ポリエステル系 カルボン酸 トリエチルアミン塩 カルボン酸 トリエチルアミン塩 スルホン酸 ナトリウム塩 40 不揮発分 (% ) 40 35 50 30 粘度 (mPa・s) 70 300 250 300 50 120 20 210 70 200 100% Mod. (MPa) 14 13 3 2 11 300% Mod. (MPa) − 14 − 4 12 粒子径 (nm) 破断強度 (MPa) 破断伸度 (% ) 塗 料 25 21 42 23 31 250 400 420 710 660 ◎ ⃝ ⃝ ⃝ 接 着 ⃝ 繊 維 ◎ ◎ ◎ ◎:非常に適している、⃝:適している 編布に固着させて色柄を付与する顔料捺染の バインダー、ガラス繊維集束剤、ウール布の 防縮加工剤などの繊維用途にも幅広く用いら れています。 三洋化成には、ポリイソシアネートとポリ オールとの反応生成物であるウレタン樹脂に 関する長年の技術の蓄積があります。特にポ リオールは多くの種類を有し、これまでウレ タン樹脂に関する各種の要求に応えてきまし た。またエマルションとして水に乳化分散さ せる方法としては、界面活性剤を乳化剤とし て使用する強制乳化型と、ウレタン樹脂中に 親水基を導入する自己乳化型がありますが、 乾燥後に界面活性剤がブリードアウトして物 性低下が発生しない自己乳化型が主流になっ ています。三洋化成は、このエマルション技 術に関しても豊富な技術力をベースに、これ まで上記の表のように﹃ユーコート﹄ ﹃パー マリン﹄各シリーズなど各種エマルションを 開発、上市してきました。 法規制などによるVOC削減がさらに進む にしたがい、これに対応するため各分野でウ レタン樹脂エマルションの需要はますます高 まっています。三洋化成は、これからも地球 環境に配慮した製品であるウレタン樹脂エマ ルションに、よりいっそうの高機能を付加し、 各種用途に適した製品開発に注力していきま す。 2014 秋 No.486 11
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