第4回 新館清掃工場基本計画検討委員会 資料-5 余熱利用方法について H26.10.27 1.ごみ焼却施設における熱利用形態 ごみ焼却施設は、ごみを燃やすことで大量の熱を発生させます。この熱を有効に利用すること が重要であり、維持管理費の低減にも結び付きます。したがって近年ではごみ焼却施設という呼 び方はせず、 「エネルギ回収型廃棄物処理施設」と呼ばれています。 この回収熱の利用方法は下図に示すものがあります。 今回検討している施設規模(200t/日)では余熱の大半は蒸気として回収し、発電(蒸気ター ビン)に利用します。 場内給湯 温 場外給湯 水 暖 高温排ガス 房 場内利用 熱回収 場外利用 冷・暖房 場内給湯 蒸 気 温 水 場外給湯 冷・暖房 発 電 施設内消費 売 図 エネルギ回収型廃棄物処理施設における熱利用形態 1 電 2. 余熱利用の手法 ごみ焼却施設からの余熱利用のエネルギー回収方式としては、 「温水変換」、 「蒸気変換」、 「電 気変換」の 3 つが挙げられる。これらの特徴を以下に示す。 概要 エネルギー回収効率 技術的問題点 エネルギー用途 温水 変換 燃焼排ガスの熱を 利用し、熱交換器で 温水又は高温水を 作る。 効率はよいが、需要の 時間変動に対応しにく く、ロスが大きい。 給湯、温水プー ル、公衆浴場 蒸気 変換 廃熱ボイラで排ガ スの熱を蒸気とし て回収し、その蒸気 をエネルギー源と して利用する。 効率は比較的良好で需 要変動には対応しにく い。 電気 変換 廃熱ボイラで回収 した蒸気によりタ ービン発電を行い、 電力に変換する。 通常火力と組合せる等 の工夫で効率は向上す る。一般的には需要変 動の対応が困難。 熱交換器の設置場所の温度域に よっては、腐食が発生し易いの で、余熱空気を熱源とした間接 式の温水熱交換器の採用が望ま しい。 廃熱ボイラの使用温度が概ね 180 ℃~300 ℃であれば腐食 の心配もなく、技術的にも問題 なく使用できる。近年は材料開 発等により、350~400℃の高 温腐食域での使用も増えてお り、高効率発電施設では標準的 となっている。 特に技術的な問題はないが、炉 規模の大きい施設に適してい る。 ※ ※ 回収効率 :温水>蒸気>電気 エネルギー利用用途:電気>蒸気>温水 2 工場熱源、温室熱 源、暖房、冷凍倉 庫、スケートリン ク、冷房 一般電力 3.東京都における余熱利用方法の事例 東京都における余熱利用方法の事例は以下に示すとおりです。 施設名 熱利用内容 熱供給形態 利用先 クリーンセンター多摩川 私立病院 高温水 外部利用有 西多摩衛生組合環境センター 浴用施設 蒸気 外部利用有 多摩清掃工場 老人福祉施設 高温水 外部利用有 町田リサイクル文化センター プール、老人福祉施設、福祉施設 蒸気 外部利用有 東京 23 区一組光が丘清掃工場 市民センター、社会教育館、熱供給会社 高温水、温水 外部利用有 東京 23 区一組江戸川清掃工場 老人福祉施設 蒸気 外部利用有 東京 23 区一組新江東清掃工場 プール、植物園、老人福祉施設 高温水、蒸気 外部利用有 東京 23 区一組杉並清掃工場 建替え中 市民センター、プール、老人福祉施設 高温水 ― 東京 23 区一組千歳清掃工場 プール 高温水 外部利用有 東京 23 区一組足立清掃工場 プール、老人福祉施設 高温水 外部利用有 東京 23 区一組多摩川清掃工場 区民センター 高温水 外部利用有 東京 23 区一組中央清掃工場 温浴施設、プール 蒸気 内部利用 東京 23 区一組板橋清掃工場 養護学校、プール、植物園 高温水 外部利用有 東京 23 区一組豊島清掃工場 プール、老人福祉施設 高温水 内部利用 東京 23 区一組北清掃工場 プール、老人福祉施設 高温水 内部利用 東京 23 区一組隅田清掃工場 健康ハウス 高温水 外部利用有 東京 23 区一組目黒清掃工場 市民センター 高温水 外部利用有 東京 23 区一組有明清掃工場 プール、熱供給会社 高温水、蒸気 外部利用有 東京 23 区一組練馬清掃工場 建替え中 プール、老人福祉施設、児童館 高温水 ― 八王子市戸吹清掃工場 地元還元施設、破砕処理センター 蒸気、温水 外部利用有 柳泉園組合クリーンポート 厚生施設、プール 蒸気 内部利用 3 4.余熱利用形態と必要熱量 新施設の規模は 200t/24h 程度が見込まれ、ボイラ設備を設けてごみから蒸気エネルギーを 回収し、発電のほかに施設内外熱供給・その他の余熱等の有効利用が可能と考えられる。代 表的な蒸気回収フローと発電利用以外の蒸気、温水の利用における例は下記の通り。 形式 蒸気・復水フロー 特徴 復水タービンの途中より蒸気を抽 気して抽気蒸気を余熱利用の熱源 として利用する。 発電以外の余熱利用を小規模に、ま た余熱利用の需要が季節的に安定 抽 気 していなくて、不要なときには蒸気 復水式 全量をタービンにまわせるように したもので、発電量と熱利用が最も 有効に行える。 しかし、蒸気発生量と蒸気圧力が安 定していることが必要である。 4 利用形態 必要熱量 MJ/h 単位当り熱量 備考 誘 引 送風 機の タービン出力500kW タ ー ビン 駆動 蒸 気 タ ー ビ ン 33,000 66,000kJ/kWh 蒸気復水器にて大気拡 散 す る熱 量を 含む 排 水 蒸発 処理 蒸発処理能力 設 備 2,000t/h 蒸 6,700 34,000kJ/排水100t 35,000 35,000kJ/kWh 設備名称 場 内 プ ラ ン ト 関 係 熱 回 収 設 備 場 内 建 築 関 係 熱 回 収 設 備 場 外 熱 回 収 設 備 発 設備概要(例) 定格発電能力 1,000kW (背圧タービン) 電 定格発電能力 2,000kW (復水タービン) 洗 車 水 加 温 1日(8時間) 洗車台数50台/8h 気 蒸 気 タ ー ビ ン 蒸 気 蒸気復水器にて大気拡 散 す る熱 量を 含む 40,000 20,000kJ/kWh 310 50,000kJ/台 5-45℃加温 洗 車 用ス チー 1日(8時間) ム ク リ ー ナ 洗車台数50台/8h 蒸 気 噴 霧 1,600 250,000kJ/台 工 場 ・管 理棟 1日(8時間) 給 油 給湯量10㎥/8h 蒸 気 温 水 290 230,000kJ/㎥ 工 場 ・管 理棟 延床面積1,200㎡ 暖 房 蒸 気 温 水 800 670kJ/㎡・h 工 場 ・管 理棟 延床面積1,200㎡ 冷 房 吸 冷 式 機 1,000 840kJ/㎡/h 作 業 服 1日(4時間) ク リ ーニ ング 50着 蒸 気 洗 浄 ≒0 - 道 路 その 他の 延面積1,000㎡ 融 雪 蒸 温 気 水 1,300 1,300kJ/㎡・h 収容人員60名1日 福 祉 セン ター (8時間) 給 湯 給油量16㎥/8h 蒸 温 気 水 460 230,000kJ/㎡ 5-60℃加温 福 祉 セン ター 収容人員60名 冷 暖 房 延床面積2,400㎡ 蒸 温 気 水 1,600 670kJ/㎡・h 冷房の場合は暖房時必 要 熱 量 × 1.2 倍と なる 収 凍 5-60℃加温 地 域 集中 給湯 対象100世帯 給湯量300L/世帯・日 蒸 温 気 水 84 69,000kJ/世帯・日 5-60℃加温 地 域 集中 暖房 集合住宅100世帯 個別住宅100棟 蒸 温 気 水 4,200 8,400 42,000KJ/世帯・h 84,000KJ/世帯・h 冷房の場合は暖房時必 要熱量×1.2倍となる 温 水 プ ー ル 25m 一般用・ 子供用併設 蒸 温 気 水 2,100 4,160 温 水 プー ル用 1日(8時間) シ ャ ワー 設備 給湯量30㎥/8h 蒸 温 気 水 860 230,000KJ/㎥ 5-60℃加温 温 水 プ ー ル 延床面積350㎡ 管 理 棟 暖 房 蒸 温 気 水 230 670KJ/㎡・h 冷房の場合は暖房時必 要 熱 量 × 1.2 倍と なる 動 植 物用 温室 延床面積800㎡ 蒸 温 気 水 670 840KJ/㎡・h 熱 帯 動植 物用 延床面積1,000㎡ 温 室 蒸 温 気 水 1,900 1,900kJ/㎡・h 海 水 淡 水 化 造水能力 設 備 1,000㎥/日 18,000 430kJ/造水11 多重効用缶方式 蒸 気 -26,000 (630kJ/遠水11) (2重効用缶方式) 施 園 蒸 温 気 630~1,500kJ / 6,300~15,000 水 ㎡・h 設 面積10,000㎡ 芸 野 菜 工 場 サラダ菜 換算5,500株/日 ア イ ス リンク面積1,200㎡ ス ケ ー ト 場 発 電 電 力 700kW 吸 冷 6,500 収 凍 式 機 ※給湯、冷暖房あり 5,400kJ/㎡・h 空 調 用 含 む 滑 走 人 員 500 名 (注)本表に示す必要熱量、単位当たりの熱量は一般的な値を示しており、施設の条件により異なる場合がある。 ※塩谷広域行政組合ホームページ 第6回検討委員会 資料4 5 P4より 5.余熱利用の用途実績 「ごみ焼却余熱有効利用促進市町村等連絡協議会」が全国 998 箇所の焼却施設を対象で調査 した結果、焼却施設規模別の場内、場外の用途別余熱利用の実績は、下表のとおりです。 表 焼却施設規模別場内余熱利用の用途実績(発電以外) 規 模(t/日) 利 用 例 50以上 100未満 50未満 100以上 200未満 200以上 割合(%) (合計÷998×100) 合 計 給湯 141 140 170 210 661 66.2 暖房 55 93 146 194 488 48.9 冷房 7 7 19 85 118 11.8 排ガス加熱 13 8 16 29 66 6.6 ロードヒーティング、融雪 3 3 7 4 17 1.7 汚泥乾燥 1 1 2 3 7 0.7 誘引送風機駆動用蒸気タービン 0 0 4 0 4 0.4 その他 0 1 1 4 6 0.6 (注)割り合とは、各々の回答の合計が、全施設(998施設)に占める割合を表している。 出典:ごみ処理施設整備の計画・設計要領2006改訂版 表 焼却施設規模別場内余熱利用の用途実施(発電以外) 規 模(t/24h) 利 用 例 50以上 100未満 50未満 100以上 200未満 200以上 割合(%) (合計÷998×100) 合 計 福祉施設 10 17 31 51 109 10.9 温水プール 0 2 18 80 100 10.0 保養施設 3 5 8 22 38 3.8 地区集会所、コミュニテイーセンター 1 5 9 13 28 2.8 下水汚泥処理施設 0 0 5 16 21 2.1 園芸など 0 1 5 11 17 1.7 スポーツ関係施設 1 1 2 13 17 1.7 浴場 1 3 4 2 10 1.0 地域給湯、暖房 2 1 1 4 8 0.8 文化関係施設 0 0 0 6 6 0.6 その他 0 3 4 14 21 2.1 (注)割合とは、各々の回答の合計が、全施設(998施設)に占める割合を表している。 ≪ごみ焼却余熱有効利用促進市町村等連絡協議会 平成6年1月11日~平成6年3月31日の調査による≫ 出典:ごみ処理施設整備の計画・設計要領2006改訂版 6 6.余熱利用方法 新しい工場が、毎日 200 トンのごみを燃やして、排ガスから蒸気として熱回収を行い、スチ ームタービンにより発電を行った場合、約 3,500kWh の電力が得られます。 本施設では前述のとおり、 「ごみ発電の最大化」及び「発電後の廃熱(中低温熱)の活用など も含めた場外への熱供給」を検討していく。したがって、発電を最大化した後、廃熱(中低温熱) を中心とした温水活用による風呂などへの場内利用、園芸施設などへの場外利用等を行うことが 現実的であると考えられる。なお、風呂については、作業者用と周辺住民用を兼用とし、大きな ものを設けることも可能であると考えられる。 施設規模 必要な熱量 温浴設備 利用見込 400 名/日 給湯 80m3/日 園芸施設 イチゴ ビニールハウス栽培 面積 2,300 ㎡ 温水 60℃ 4m3/h 920 メガジュール/h 温水 30~40℃ 2.1m3/h 260 メガジュール/h 導入事例 フレッシュランド西多摩 ほか多数 足利市南部クリーンセンター(栃木) 熊本市西部環境工場(熊本) 余熱の利用方法については、市民や地域住民の意見・要望等と新館清掃工場の周辺の環境、 立地条件なども併せて考慮し、検討していくものとします。 7
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