ブリーダー通信 ㉝ 機能性野菜 「ファイトリッチ」シリーズ ~機能性成分向上野菜でワンランク上の食生活を~ タキイ研究農場 とみ なが なお き 富永 直樹 野菜を食べる理由を調査すると、 「体によいから」との 究結果が国内外で数多く報告されています。 ビタミン・ミネラルなどの栄養素が多く含まれています である5つの色素成分を引き出すことで、おいしさにも ※1 回答が目立ちます。日常的に食べられている野菜には、 が、そのほかにも「機能性成分」といわれる体によい成 分が含まれています(第1図) 。 土に根を張り、自由に動くことのできない植物は強す ぎる日光や、そのほかのストレスから身を守るために機 能性成分を作り出します。近年では研究も進み、野菜の 機能性成分を摂取することで、健康維持に役立つとの研 第1図 機能性成分の効果・効能 レッド 色 成分 リコピン タキイ種苗ではこの「元々植物が持つ力=機能性成分」 こだわったプレミアム野菜「ファイトリッチ」を開発し、 「野菜の消費拡大」と「健康で豊かな食生活」への貢献 を目指しています。(http://www.takii.co.jp) 今回は「ファイトリッチ」シリーズから、春夏栽培に ピッタリでプレミアムな品種を紹介します。 (監修:お茶の水女子大学教授 森光 康次郎) 性質・食べ方 期待される効能 脂溶性のため油料理で、またはオイルド 抗酸化性、免疫強化、動脈 レッシングと一緒に食べると吸収がよい。 硬化予防、美白効果など。 オレンジ イエロー シスリコピン リコピンよりも体内へ吸収されやすい。脂溶 性のため油料理で、またはオイルドレッシン グと一緒に食べるとさらに吸収がよい。 抗酸化性、免疫強化、動脈 硬化予防、美白効果など。 カロテン 体内で必要に応じてビタミンAに変換される 物質。脂溶性のため油料理で、またはオイル ドレッシングと一緒に食べると吸収がよい。 抗酸化性、目・気管・皮膚 の粘膜の正常化、L D Lコレ ステロール低下など。 ケルセチン ゆでる場合はスープや味噌汁で食べるの がおすすめ。 抗酸化性、血小板凝集の抑制効 果(いわゆる血液サラサラ) 、 動脈硬化予防、糖尿病予防など。 ルテイン ゆでる場合はスープや味噌汁で食べるの 抗酸化性、加齢黄斑変性症 がおすすめ。 (AMD) 予防など。 パープル ホワイト アントシアニン 紫だけでなく、赤、青とさまざまな色合いを 示す。水溶性のため生で食べるか、ゆでる場 合はスープや味噌汁で食べるのがおすすめ。 動脈硬化予防、炎症を抑え る、肝機能障害の軽減作用、 目の健康維持など。 スルフォラファン ゆでる場合はスープや味噌汁で食べるの がおすすめ。 発がん性酵素の誘導、ピロ リ菌(胃炎や胃がんの原因) の減少など。 GABA ↑通常の赤色品種よりカロテンの豊富な 「オ レンジ千果」 。高糖度で食味にすぐれる。 水溶性のため生で食べるか、ゆでる場合 精神安定作用、血圧低下作 はスープや味噌汁で食べるのがおすすめ。 用など。 活性酸素を除去する効果もあり、活性 トマト ち か ●カロテン~「オレンジ千果」〜 酸素が原因とされる生活習慣病や皮膚 ↑糖度が高く、まるでフルーツのような「フ ルティカ」 。 従来品種と比べると2倍のリ コピンを含んでいる。 ●リコピン~「千果」 「フルティカ」~ ミニトマト「千果」 、中玉トマト「フ のシミ、シワに対しても美容効果が期 ルティカ」は糖度が高く、フルーツの 新品種の「オレンジ千果」は、従来 待できます。 ように甘くておいしいトマトですが、 品種の約3倍のカロテンを含むミニト カロテンが多いだけではありません。 それぞれ従来品種の約2倍のリコピン マトです(第2図) 。 カロテンは体内 酸味も少なく甘さが格別です。彩り的 を含みます(第3図) 。 特にリコピン でビタミンAに変化し、皮膚や気管、 にもオレンジ色が映えるので、赤のミ は抗酸化力が強く、その強さはカロテ 粘膜の機能を正常に保つ働きがあると ニと一緒に陳列すれば、一層注目を集 ンの約2倍といわれるほどです。この されています。また、体内で発生した めること間違いなしです。 強い抗酸化力で紫外線によって生じる 6 2014 タキイ最前線 春号 ※1 タキイ種苗 2013年度 野菜と家庭菜園に関する調査 白・美肌効果が期待できます。紫外線 あとの働きはどちらも同じですが、シ の強くなる真夏には、リコピンの多い スリコピンの方が体内へ 2 . 5 倍吸収さ 「千果」 「フルティカ」を食べて内側か れやすいとの報告がされています。 ら体を守りましょう。 また、 「桃太郎ゴールド」と「クック ●シスリコピン~「桃太郎ゴールド」 「クックゴールド」~ ゴールド」は、トマト独特の臭いが抑 大玉完熟トマトの「桃太郎ゴールド」 食べやすい品種です。「クックゴール と果重1 2 0g程度の調理兼用種「クッ ド」は生食だけでなく、加熱調理用と クゴールド」は、柿のような橙黄色を してもオススメできます。うま味成分 しています。これは、シスリコピンと であるグルタミン酸を非常に多く含み、 いう成分による色です(第4図) 。 ト 加熱することでさらにうま味が引き立 マトに含まれるリコピンには、構造に ちます。割れにくく着果がよいので初 より2種類が存在しています。赤色を 心者でも作りやすい品種です。 もも た ろう とう こう C ピーマンは元々栄養価の高い野菜で すが、 「ピー太郎」には従来のピーマン 含まれています(第5図) 。さらに「ピ と高評価を得ている品種です。発売後、 各地で行った試食会で実際に80%以上 の子どもがアンケート調査にて「苦く ない」と答えました。 ります。お子様がピーマンが苦手で困 っているというご家庭でも、機能性成 分たっぷりの「ピー太郎」を使ってピ ーマンを食べる楽しみを共有してみて はいかがでしょうか。 2.7 2 0 オレンジ千果 従来品種 12 10 ミニトマト 10.35 8 5.7 6 4 2 0 16 14 12 10 8 6 4 2 0 千果 従来品種(M) 中玉トマト 13.8 7.2 フルティカ 従来品種(R) 第4図 トマト各品種におけるシスリコ ピンの含量 (タキイ研究農場調べ) 品 種 桃太郎ゴールド クックゴールド 従 来 品 種 シスリコピン (㎎/100g) 2.3 3.2 検出されず 第5図 ピーマン各品種における ビタミンC、カロテンの含量 ビタミンC含量の比較 150 120 80 71 60 60 40 40.70 20 30 0 カロテン含量の比較 100 92.65 110 90 (タキイ研究農場調べ) 含量 (μg /gD.W.) 前が示すように子どもにも食べやすい 調理することでより吸収されやすくな 4 (タキイ研究農場調べ) (フルティカ、千果) 含量 (㎎/100gF.W.) ー太郎」は、苦みの成分が少なく、名 カロテンは油と相性がよく、一緒に 6 リコピン含量 ●カロテン ~こどもピーマン「ピー太郎」~ 7.7 8 第3図 ミニトマト・中玉トマト各品種 におけるリコピン含量 (㎎/100gF.W.) ↓従来のピーマンに比べて、 独特の苦みや臭いが少なく、 ビタミン ・カロテンが豊 富な「ピー太郎」 。 ピーマン と比べ多くのカロテンやビタミンCが ↓生食だけでなく、加熱調理にも むく「クックゴールド」 。 橙黄 色で卵形が特長。 ↓シス型リコピンを多く含む 「桃 太郎ゴールド」 。糖度は低いが、 酸味とのバランスがよく独自の 味が楽しめる。 えられていて、トマトが苦手な方にも 10 リコピン含量 すシスリコピンです。体に吸収された カロテン含量 ラニンの蓄積を抑えてくれるので、美 第2図 ミニトマト各品種における カロテン含量 (タキイ研究農場調べ) (㎎/100gF.W.) 示すトランスリコピンと、橙黄色を示 (㎎/100gF.W.) 活性酸素を効果的に除去し、肌へのメ ピー太郎 普通 ピーマン 0 ピー太郎 普通 ピーマン います。 地域の特産品にもご利用いただけると 政府は2013年6月の規制改革会議で、 思います。 今回紹介させていただいた品目以外 野菜等青果物での機能性表示について 今後もタキイ種苗は「ファイトリッ にも、 「ファイトリッチ」シリーズには 言及しました。以降、野菜に含まれる チ」シリーズを通し、バランスよく、 トマトの2倍のリコピンを含むニンジ 機能性成分に注目が集まっています。 より機能性成分に富んだ野菜を四季を ンの「京くれない」や、シスリコピン 世界に先駆けて誕生した機能性野菜ブ 通して食べていただけるよう品目・品 を含むハクサイ「オレンジクイン」な ランド「ファイトリッチ」シリーズは、 種数を増やし、健康で豊かな食生活を ど、機能性に富む野菜を取りそろえて 6次産業化の好素材として特色のある 応援していきます。 更に増えるファイトリッチシリーズ きょう 5 2014 タキイ最前線 春号
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