東京から北海道まで 〝1200 〟 ドライブでわかった実力 新たな 〝ドライブ・イー〟 パワートレーンの真価を知る ボルボの快進撃が止まらない訳 クロストーク XC T5の詳細と開発者インタビュー 60 km Motor Magazine 2014年4月号より収録 2 SUV新時代 東京→夕張 1200km 長距離試乗 3 写真:永元秀和 ボルボ XC60 T5 SE 「新しいパワートレーンの実力はどうなのか」 SU V 新 時 代 ボルボ XC60 T5 SE 東京→夕張 1200km 長距離試乗 「新しいパワートレーンの実力はどうなのか」 Drive-Eの低燃費と高効率を実証した ボルボが新たに開発した新世代のパワートレーン「Drive-E (ドライブ・イー)」は 環境性能と高いパフォーマンスを両立した2ℓ直4直噴ターボ「T5エンジン」を搭載する。 その実力を知るべく、XC60 T5 SEで北海道・夕張までの1200km超のロングドライブに出た。 石川芳雄/写真:永元秀和 文: 4 、 昨年、ニースの試乗会で乗ったの はターボとルーツ式スーパーチャー ジ ャ ー を 組 み 合 わ せ て3 0 6 トのインターフェースは見慣れたX C そのもの。夜間走行ではTFT より浮き立って美しい。 液晶のカラフルなメーターパネルが 60 そのパワーフィールをじっくり味わ うのに北海道までのロングツーリン グはまさに渡りに船である。 取材車両はXC 。FFなのは雪 道に遭遇することを考えるとちょっ されるこのモードが、エンジンの特 とグランドクリアランスに余裕が ある上に、タイヤはもちろんスタッ ドレスに履き換えてあるから不安は 搭載車で夕暮れの東京を出発した。 いのが静粛性の高さだ。フロントバ 都心の道を軽く流しただけで、早 くもDrive Eユニットの仕上 ない。国内初出しのDrive E 国内初導入のDrive E その静粛性の高さに驚いた 性を知るのにもっとも向いている。 になり、速度は中央にデジタル表示 中央の単眼メーターがタコメーター 赤い﹁パフォーマンス﹂にセット。 僕にとっても 5はこれが初体験。 表示モードとカラーを3パターン のテーマに切り替える機能を使って 400Nm としたT6だったから、 ps 北海道へクルマで行く場合、津軽 海峡はもちろんフェリーで渡るが、 出港地の青森まで東北自動車道は約 700 。青函フェリーの4時間の 乗船時間を入れても、早朝に東京を 出れば同日中に函館へ上陸するのは 不可能ではない。問題はその道程を ﹁どんなクルマで走るか﹂だ。 T と気になるものの、XC は235 60 ボルボが独自に新しく2ℓの4気 筒直噴ターボエンジンを開発したこ とはすでに2月号でお伝えしたとお シ り。Drive Eと呼ばれるその 新パワートレーンを搭載した リーズがいよいよ上陸を開始した。 まず到着したのはシングルターボ のT5で、今後4つの出力展開予定 60 まったく新しいエンジンを搭載し ているとはいえ、内外装やコクピッ がりぶりに驚かされた。まず挙げた − 60 のガソリンエンジンでは 番目にパ − mm km ワフルな245 、350Nm 。 5 2 − − ps ポイント 1 ポイント 2 東京都港区(1日目)|トリップメーター:000.0km 福島県白河市(2日目)|トリップメーター:274.0km 距離を重ねるほど身体に馴染んでくる。 一緒に時を過ごせば過ごすほど 心地よい一体感を味わわせてくれる。 取材車両は新しいパワートレーンを搭載したボルボXC60 T5 SE (以下T5 SE) 。走行距 離は83kmの新車だ。目的地が北海道夕張市ということもあり横浜ゴムのSUV用スタッド レスタイヤを装着して出発。翌日早朝からの撮影に備え福島まで移動する。 初日夜に270kmほどの走行をこなし福島県の東北自動車道白河インターチェンジ付近に 宿泊。2日目は早朝から撮影しながら北上する。3人乗車+荷物とカメラ機材を積み込んだ が、交通量は意外と少なくここまでの燃費は、D (ドライブ) モード走行で約13.2km/ℓだ。 東京→夕張間1200kmの走行ルート ※今回の1200km超長距離テストの走行距離、燃費などはすべて車両に標準搭 載されているオンボードコンピュータによって計測、 そのデータを使用しています。 東京→夕張間1200kmの走行ルート 3 2 5 4 と呼ばれている。ダイムラーやBM Wはボッシュ製の高圧システムで実 ルクヘッド周りの防音/吸音対策を さらに進めたようで、エンジン音自 用化したが、ボルボはデンソーとの ト/ストップ機能が標準装備なので い。Drive Eはエンジンスター ﹁AWF8F ﹂と呼ばれるこのト で開発した8速ATである。 が、アイシンAW社とボルボが共同 Eユニッ もうひとつ、Drive トの燃費性能を高めているコア技術 デンソーとアイシンAW 日本の技術力が投入される 共同開発でこれを実現した。 体が低いレベルに抑えられている。 また、200bar という非常に 高い燃圧の燃料噴射システムを使っ ているにもかかわらず、アイドリング 時に出がちなカチカチとしたイン そもそもアイドリングすることが少 ジェクターノイズは室内には届かな ないのだが、スタート直後の冷間始 この辺の静粛性はほぼ同じ構成のB 動時でも音はまったく気にならない。 ずり抵抗を徹底的に低くし、スーパー ランスミッションは、空走時の引き km とまだ下ろした Eが200bar と Drive いう高い燃圧を必要としたのは、こ 室内側の防音が優れているのだ。 ノイズはわずかに出ていた。やはり ドリング音を聞くとインジェクター 終えるためだ。その際、車外でアイ ボディのうちに所定のカットを撮り 翌朝は早めに宿を出て撮影をこな す。路面に雪が出てくる前の綺麗な に良い燃費も出るに違いない。 ての新車だから、当りがつけばさら オドメーターが これは立派な数値だ。スタート時の 13 83 km は極めて上手くいったようだ。 サプライヤー。今回もその共同作業 ボルボとは古くから付き合いのある である。デンソーもアイシンAWも イバビリティを損なわないのが特徴 域からロックアップを行ってもドラ ことで1000rpm という低回転 ロングトラベルダンパーを採用する − MW製4気筒より高いと言える。 45 それは滑らかな走行フィールに表 れている。1500 4800rp km で記録した平均燃費は ・2 /ℓ。 交通量の少ない東北自動車道を北 上。福島県白河市までの約274 km 13 J C モードが ・6 /ℓだから 08 するエンジンは、どこからアクセル m の広いレンジで最大トルクを発生 ペダルを踏んでも意思どおりの加速 を味わわせてくれる。応答性が良い から速度コントロールが非常に楽。 しかもレブリミットの6500rp 8速ATのシフトクオリティもと ても高い。発進のスムーズさや、滑 も併せ持っている。 m まで直線的に回り切る元気の良さ クターとプラグを配したスプレーガ ATを採用したのは﹁プレミアムカー CTも実用化しているが、今回8速 コンバーター式。ボルボはすでにD らかなギアの繋がりはさすがトルク 費の向上が図れるため新世代の直噴 べると成層リーン燃焼が可能で、燃 これまでのウォールガイド直噴と比 イド式直噴を採用しているからだ。 のエンジンが燃焼室中央にインジェ − 1 デンソーの燃焼マネージメント技術が投入された「T5エンジン」。 ECO+モード ボタンはここに用意される。 アイシンAW社と共同開発した8速AT。 後席は 40:20:40分割可倒式。 雪道走行に備え18インチのスタッドレスタイヤを装着。 − − 宮城県大崎市長者原SA(2日目) 青森自動車道に入るあたりから天候は雨となる。給油警告 灯も点灯、色もオレンジになったので青森インターチェンジを 出てから給油。 ここまでの燃費はDモード走行で12.0km/ℓ を記録。3人乗車などの条件を考えるとかなり優秀である。 慣らし運転しながら白河から約210km走る。T5 SEの燃 料はまだ半分も減っていないが、 スタッフのお腹が減ったの で長者原サービスエリア (宮城県) で昼食。 「ここはやっぱり 牛タンでしょう」 ということで牛タン定食1人前 (1575円) 。 17時05分に出港する津軽海峡フェリーに乗船し、本州に 別れを告げ約3時間40分の船旅で北海道・函館港へ上陸 を目指す。ここまで約500km走ってもまだ船内で仕事がで きるほどの余力があるのはT5 SEのおかげなのだろう。 青森県青森市(2日目)|トリップメーター:799.1km 青森県青森港津軽海峡フェリー(2日目) ポイント 3 ポイント 4 ポイント 5 6 SUV新時代 ボルボ XC60 T5 SE ポイント 8 ポイント 7 ポイント 6 北海道千歳市(3日目)|トリップメーター:1227.8km 北海道夕張市(3日目)|トリップメーター:1109.1km 北海道函館市金森赤レンガ倉庫(3日目) 気温マイナス5℃。風もなく暖かく感じた夕張を後にして最 終目的地の新千歳空港に到着。今回の取材でT5 SEは 1227. 8kmを走り、平均燃費はDモード走行で12.5km/ℓ だったが、ECO+モードでの走行ならもっとよくなるだろう。 道央自動車道も登別あたりから天候が悪化し、前方の視 界が悪くなってきたが幸いにも夕張市の天候は晴天であっ た。ガソリンスタンドに無理を言って洗車機を動かしてもら い撮影に備えて洗車。走行距離も1100kmを超えた。 いよいよ3日目。夜のうちに降った雪を下ろし洗車して出 発。午前中に函館市内を走りT5 SEの撮影。天候は良く ないが、 カメラを構えると空が明るくなってくるから不思議で ある。昼食は北海道にきたらやはり味噌ラーメン (650円) 。 Drive-Eパワートレーンを搭載したXC60 T5 SE。従来のT5とインテリアに大 きな違いはないが2ℓ直4直噴ターボエンジンに8速ATを組み合わせている。 取 材 車 両 デ ー タ XC60 T5 SE ボディカラー:クリスタルホワイトパールメタリック インテリアカラー/シートマテリアル:アンスラサイトブラック/レザー オプション装備 ●クリスタルホワイ トパールペイント 100,000円 ●電動ガラスサンルーフ 172,000円 ●自動防 眩機能付ドアミラー 30,000円 ●ステアリングホイールヒーター 25,000円 ●本革スポーツシー ト 100,000円 ●ETC車載器(音声ガイダンス機能付)25,000円 ●セーフティパッケージ (全 車速追従機能付ACC〔アダブティブ・クルーズ・コントロール〕、 ヒューマンセーフティ〔歩行者・ サイクリスト検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム〕、車間警告機能、BLIS〔ブ ラインドスポット・インフォメーション・システム 〈レーダー方式〉〕、LCMA〔レーン・チェンジ・マー ジエイド 〈急接近車両警告機能〉〕、CTA〔クロス・トラフィック・アラート〕、DAC〔ドライバー・ アラート・コントロール〕、LDW〔レーン・デパーチャー・ウォーニング〕)200,000円 ●レザーパッ ケージ (本革シート、12セグ地上デジタルTV)250,000円 オプション+車両価格合計 6,492,000円 かしこんなロングドライブをこなし たにもかかわらず船内で仕事モード XC を乗せて、しばしの休憩。し になる体力や気力が残っていた。こ 60 としての走りの質にこだわったから﹂ ンに来日したボルボ・カーのパワー と、このXC のプレゼンテーショ トレーンプログラムマネージャー、 れも新しいパワートレーンの恩恵だ − と言えるのかもしれない。 北海道上陸2日目は、道央自動車 道を一路札幌方面へ。しかし千歳を + ヨルゲン・ブリンネ氏は言う。 pm あたりを重点的に使い軽やかか / 以上のスロットルオフ時に 過ぎたあたりから大吹雪になり通行 新千歳空港でクルマを返却した時 の総走行距離は1227・8 。雪 止めも出たため、晴れ間を求めて夕 道もグリップの良いスタッドレス つスムーズに走らせる。一方、スポー 駆動系を切り離してエンジンはアイ と、扱いやすいトルク特性で緊張感 km ツモードでは、レスポンスの鋭さが ドリング運転となる﹁ECOコース なく走れ、疲労感は皆無だった。 − 張へ行き今回の旅は終了とした。 ト機能︵惰性走行モード︶ ﹂も活用で km h 楽しめ、ECO モードにすれば、 きる。こんな多彩なドライビングス 優れたドライバビリティに加えて 静粛性や経済性を高い次元でバラン 7 タイルを持つのも最新のパワート ※:チルトアップ機構付電動パノラマガラスサンルーフ装着車は+20kg。 レーンらしいところ。様々なモード 5,590,000円 スさせたDrive E。まさにボル FF 8速AT(ギアトロニック) 5.250/3.029/1.950/1.457 1.221/1.000/0.809/0.673/4.015 3.329 ラック&ピニオン ストラット マルチリンク Vディスク ディスク 235/60R18 ボの今後を担うのに相応しいパワー 4645×1890×1715 2775 1630/1585 1770※ や走り方を楽しみながら、青森港ま B420 直4DOHCターボ 1968 80.2×93.2 10.8 180(245)/5500 350(35.7)/1500-4800 プレミアム・70 13.6 171 での500 強を一気に走っていた。 XC60 T5 SE トレーンだと実感させられた。 ●Engine 型式 種類 総排気量 cc ボア×ストローク mm 圧縮比 最高出力 kW(ps)/rpm 最大トルク Nm(kgm)/rpm 燃料・タンク容量 ℓ JC08モード燃費 km/ℓ CO 2排出量 g/km ●Dimension&Weight 全長×全幅×全高 mm ホイールベース mm トレッド前/後 mm 車両重量kg ●Chassis 駆動方式 トランスミッション 変速比 1/2/3/4 5/6/7/8/R 最終減速比 ステアリング形式 サスペンション形式 前 後 ブレーキ 前 後 タイヤサイズ ●Price 車両価格 青森港からは津軽海峡フェリーに ■主要諸元 65 km 緩加速では8速ATがキメ細かい シフトを行い1800 2200r 902,000円 5,590,000円 オプション価格合計 車両価格 60 見た目は、すでにお馴染みのボル ボXC である。驚くような要素は は2014年モデルで新しいフロ とくにはない。それはそうだ。XC 60 、最大トルク350Nm と従来よ この2ℓ直列4気筒ガソリン直噴 ターボエンジンは、最高出力245 パワートレーンが搭載されたのだ。 ライブ・イー︶ 〟と呼ばれる新世代 − 力であるT5に〝Drive E︵ド では一体何が変わったのか。それ はパワートレーンである。販売の主 ならない理由などない。 鮮度は上々であり、変更しなければ 良を受けたばかり。当然、まだまだ ントマスクを採用するなど大幅な改 60 り5 、 Nm の出力向上を実現し ps 30 ている。一方で燃費はJC モード ps 08 で ・6 /ℓと、こちらは %の km 23 開発、そしてスウェーデン国内に T5は将来的に8種類以上が 作られるエンジンの第一弾 番のキーであることは間違いない。 理想的と言えるこのレイアウトが一 の面でもムラのない燃焼のためにも 置した直噴システム。混合気の生成 の点火プラグとインジェクターを配 に目をひくのは燃焼室の頂部に小径 エンジンテクノロジーである。とく 管理システムの採用といった最新の ン内部の摩擦抵抗の低減、先進の熱 ル式の直噴システムをはじめエンジ インジェクターを用いたコモンレー この高出力・低燃費化を可能にし たのは、まずは200bar の高圧 の100%減税対象車となった。 改善を達成し、これによりボルボ初 13 8 SUV新時代 新開発2ℓ直4 直噴ターボエンジンと 8 速ATの相性はとてもいい 島下泰久/ 写真 永元秀和 〝ドライブ・イー〟パワートレーンはひとつのアーキテクチャで ガソリン、 ディーゼルを 含む8種 類以上のエンジンを 開 発 するという。 その第一弾となるのが、 この﹁T5エンジン﹂なのである。 文 あるショブデ工場の生産設備更新な どのために約320億円という巨費 を投じて世に送り出されたこのエン ジンは、将来的に同じアーキテク チャからガソリンとディーゼル、計 8 種類以上が生み出される予定に なっている。ガソリンだけでも最高 出力120∼140 程度のエント ジャーの追加で最高出力306 を リ ー 仕 様 か ら、 ス ー パ ー チ ャ ー ps 行うエンジンStart/Stop る。当然、アイドリングストップを ザインにはパドルシフトも用意され ギアボックスは、こちらも新開発 の8速AT。T5 SEとT5 Rデ 5は、その第一弾というわけだ。 類のスペックが揃う予定であり、T 実現するT6まで大きく分けて4種 ps 技術も装備され、市街地での燃費を 約8%向上させているという。 ● 環境対応コンセプト Drive-E から生まれた 新開発の2ℓ直4直噴ターボエンジンを搭載する。 ● トランスミッションはアイシンAW社と共同開発した 8速AT、駆動方式はFFを採用する。 ● 新たに採用されたECO+モードで 最大約5%の燃料消費量削減を実現した。 ● エンジンStart/Stopテクノロジーにより 市街地の燃費を最大約8%向上させる。 平成17年低排出ガス基準75%低減の4つ星認定、 平成27年度燃費基準+20%達成する。 ● JC08モード燃料消費率は13.6km/ℓ、 CO 2排出量は171g/kmという優秀な環境性能。 新世代パワートレーンに関する話 は、それだけには終わらない。新し 9 XC60 T5 Rデザイン ボルボ 国内 単独 試乗 「ニューパワートレーンDrive-Eの真価」 XC60 T5ラインナップのポイント ● いXC には自由に設定できる3つ のドライブモードが用意されてい る。 中でも注目がECO+モードだ。 通常走行用のD︵ドライブ︶モー ド、より走りに振ったスポーツモー ドに対して、ECO+モードではエ /h以上での走行 ンジンとギアボックスの制御が変更 されるほか、 中にアクセルペダルから足を離すと 惰性の走行を行うECOコースト機 能が働きエアコンのコンプレッサー もオフに。エアコンは再始動もでき るが、その際も省エネルギーモード での運転となる。また、アイドリン グストップも車両が7 /hまで減 すような場面では、アイドリング付 ダルの踏み込み量の少ない街中を流 さにひと役買っている。アクセルペ ピークを維持し続ける特性も滑らか 4800rpm までフラットにその わずか1500rpm という低回 転で最大トルクを発生し、そのまま 感触を伝えてくる。 音が高まることなく、実に滑らかな 出して回転を上げていっても無闇に リングから静かなエンジンは、走り おそらく多くの人が驚くのが、そ の静けさではないかと思う。アイド りっぷりは一体どんなものなのか。 ティな仕様となる。では実際の走 もパワフルな部類に属するスポー E パワート 以上がDr ive レーンの概要である。T5は、中で 最大5%の燃費向上に繋げている。 様々な制御を盛り込むことにより、 速した時点でエンジン停止するなど km 近までギクシャクすることのない良 3 1 65 km 好なドライバビリティを活かして、 して行き低い回転域を保つ。 8速ATは矢継ぎ早にシフトアップ よく観察していると、アクセルペ ダルを緩めればすぐ上のギアに送り 込まれ、少しでも踏み込まれれば1 段 な い し2 段 す ぐ に ギ ア が 落 ち て ⋮⋮というのを始終繰り返している のだが、回転計を注視していなけれ ばそれを意識させられることも皆 無。マナーが洗練されているのだ。 快適性重視ならT5 SE 一体感ある走りはRデザイン ECO+モードでは、アクセルの 反応が穏やかになり、シフトアップ のポイントもさらに低回転に寄せら れるが、トルクは十分に確保されて いるしドライバビリティも犠牲とは されないから、普段はとくに不満を 覚えずに済む。真夏のエアコンの効 きだけは要検証だが、少なくとも他 の3シーズンはECO+モードのま までも良いのではないだろうか。 一方、T5らしくスポーティに走 らせた時の印象も上々だ。1、 2速 のギア比は低く、車重を考慮して最 より低くされていることも 終減速比が同パワートレーンのS /V 60 つい手が伸びてしまうほどだ。 指先に心地良いタッチも相まって、 の剛性感、裏面をラバー張りとした パドルシフトも、この好レスポン スがあってこそ活きる。パドル自体 なかなか新鮮で心地良い。 に軽快に吹け上がるフィーリングも オーバーまで乾いたサウンドととも 上昇に澱みがなく、6000rpm あって、加速は俊敏そのもの。回転 60 ホイールベース 2775mm フロントトレッド 1630mm 最小 回転半径 全長 4645mm 全幅 1890mm 5.8m リアトレッド 1585mm 7 6 5 4 − T5 Rデザインのインテリア。3 テーマ選択式デジタル液晶メー ターパネルは専用。 フロントシー トは専用のロゴ付スポーツシート。 本革/パフォーレーテッドレザー コンビネーションシート。後席のヘッ ドレストは立てて使用する。 専用 デザインのアルミホイール “IxionⅡ” (ダイヤモンドカット/マットブラッ ク) 8.0J×20インチ 255/45R20 タイヤを装着する。 エンジンスター トでRデザインのロゴがメーター内 に浮かび上がる。オーナーになった 歓びを味わえる瞬間である。 高 速道路では8速巡航も可能だ。パ ドルシフトを使えば軽快なアップダ ウンも積極的に楽しめる。 右側 下から2番目には新たにECO+モー ドのスイッチが、下列の右から2番 目にはステアリングホイールヒー ター(op) のスイッチが用意される。 2 60 全高 1715mm 10 「T5エンジン」のパフォーマンス 環境性能 エンジン性能曲線 世界ナンバー1エンジンを目指して開発されたB420型2ℓ 直4直噴ターボエンジンは、 「トップクラスのエンジン出力」 と 「トップクラスの環境性能」 を両立させた過給ダウンサイジ ング直噴エンジンである。最先端の直噴ターボ技術により 極めて正確な燃料噴射と10.8という高圧縮比を実現、最 高出力245ps、最大トルク350Nmを発生する。これによ りT5、T5 SEともに平成17年排出ガス基準75%削減の 4つ星を取得、平成27年度燃費基準+20%達成するエ コカー減税対象車となる。 またこのDrive-Eのエンジン制 御システムにはデンソーの技術も投入されている。 XC60 T5 SE新旧比較 SUV新時代 ボルボ XC60 新型XC60 T5 SE B420 2ℓ直4DOHCインタークーラーターボ 1968cc 82.0×93.2 10.8 245ps/5500rpm 350Nm/1500-4800rpm 1770kg プレミアム・70ℓ 13.6km/ℓ FF 8速AT 5.250/3.029/1.950 1.457/1.221/1.000 0.809/0.673/4.015 T5 Rデザイン 車名 エンジン型式 種類 排気量 ボア×ストローク 圧縮比 最高出力 最大トルク 車両重量 燃料・タンク容量 JC08モード燃費 駆動方式 トランスミッション 変速比 1/2/3 4/5/6 7/8/R 3.329 5.8m 標準装備 標準装備 対象車 5,590,000円 最終変速比 最小回転半径 ECO+モード アイドリングストップ エコカー減税 価格 従来型XC60 T5 SE B4204T 2ℓ直4DOHCインタークーラーターボ 1998cc 87.5×83.1 10.0 240ps/5500rpm 320Nm/1800-5000rpm 1790kg プレミアム・70ℓ 11.1km/ℓ FF 6速DCT 3.818/2.150/1.407 1.029/1.188/0.971 -/-/5.284 4.533(1 ∼ 4速) 3.091(5 ∼ 6速、後退) 5.8m ー ー ー 5,290,000円 XC60に採用される安全装備 T5 Rデザインは、 ダイナミックで刺激的な走りを実現、 よりスポーツマインドが高いモデルである。 取 材 車 両 デ ー タ XC60 T5 Rデザイン ボディカラー:パッションレッド インテリアカラー/シートマテリアル:アンスラサイトブラック/レザー オプション装備 ● 電 動ガラスサンルーフ 172,000円 ● 自動 防 眩 機 能 付ドアミラー 30,000円 ● ステアリングホイールヒーター (全車速追従機能付ACC〔ア 25,000円 ●ETC車載器(音声ガイダンス機能付)25,000円 ●セーフティパッケージ ダブティブ・クルーズ・コントロール〕、 ヒューマンセーフティ〔歩行者・サイクリスト検知機能付追突回避・軽減フル オートブレーキ・システム〕、車間警告機能、BLIS〔ブラインドスポット・インフォメーション・システム 〈レーダー方式〉〕、 LCMA〔レーン・チェンジ・マージエイド 〈急接近車両警告機能〉〕、CTA〔クロス・トラフィック・アラート〕、DAC〔ド ライバー・アラート・コントロール〕、LDW〔レーン・デパーチャー・ウォーニング〕)200,000円 オプション価格合計 車両価格 オプション+車両価格合計 軽快な走りの印象は、嬉しいこと にシャシにも反映されている。新世 軽減 20 kg 代パワートレーンの軽量設計が活き て、2014年モデルより された車重も貢献しているのだろ う。ハンドリングは輪をかけて正確 性が高まり、一体感のある走りを満 20 喫できる。とくに専用スポーツサス ペンションと インチの大径タイヤ &ホイールを得たRデザインの高速 域のフラット感はちょっとしたも の。そのぶん路面の継ぎ目などで跳 ねることもあるが、十分に許容範囲 と言えるだろう。一方、より快適性 に重きを置くならT5もしくはT5 SEを選ぶのが正解だ。いずれにし ても、一層気持ちの良い走りに仕上 60 ボルボのブランドピラミッドの頂点にあるのは 「安全」 である。XC60にも、作動速度域が 拡大した新シティセーフティ (全車標準装備) 、 ミリ波レーダーとカメラで歩行者やサイク リストも検知するヒューマンセーフティ (op) 、 レーダー式BLIS (op) などを搭載する。 がっていることを保証する。 最初に書いたとおり、新しいXC で大きく変わった箇所と言えばパ ワートレーンだけである。しかしエ ンジンはクルマの心臓。ハードとし てもっとも大事な部分であり、また 同時ににクルマにとって大事なハー ト、パッションの源と考えれば、変 60 化の影響は実は想像以上に大きい。 振り返ればXC は、ボルボが新 しいデザイン言語を採用し、ファン な走りへと目覚め、またシティセー フティによって定評の安全性を新た な次元へと高めた、まさに今のボル 14 ボの幕開けとなるモデルだった。そ れが 年モデルでのリファインと走 りの進化を経て、仕上げに新世代パ ワートレーンを得ることで、ついに ひとつの完成形へと行き着いた。新 しいXC を走らせていて、そう思 うようになってきたのである。 11 60 452,000円 6,140,000円 6,592,000円 SU V 新 時 代 海外でも試乗したXC にあらためて 60 ps チャージャーを追加して300 オーバーも を見ているなと感じます。2ℓならスーパー ℓ直4で出してきたところも、ちゃんと物事 何をすべきかが明確だったからでしょう。2 一発目で。それは技術がしっかりしていて、 で達成しています。それも新しいエンジンの マークのBMW3シリーズと遜色ないレベル 島下 ターボでなるべく下を出し、かつ上ま でトルクを出すというスタイルを、ベンチ のまとまりもとてもいいですね。 こともあり、パワートレーン全体で見たとき だと思います。8速ATを組み合わせている が、とても扱いやすくボルボらしいエンジン 石川 新しいT5エンジンは2ℓで245 とスポーツユニットの範疇になると思います がなく気持ちのいい軽やかさを味わえます。 ら、それは完全に解消されていました。嫌味 が気になっていました。しかし日本で乗った 島下 同じ印象です。海外ではプロトタイプ ということもありフィーリングはいいけど音 に静粛性などが向上していますね。 た。海外で乗ってから、この短い期間でさら ランニューとなったパワートレーンがよかっ 石川 クルマそのものは乗り心地がよくなっ ていて確実にアップデートした印象です。ブ 日本で触れた感想を聞かせてください。 │ 8速ATのフィーリングはどうですか。 中のエンジンが出てきたことが嬉しいです。 の段階から採り入れています。ズバリど真ん ない最新のトレンドをコンセプトメイキング 環境、発展性、未来を見て、無闇に小さくし には1・6ℓじゃ足りない。ユーザーや社会 狙えます。V6エンジンの領域をカバーする ps は大きいでしょう。8速に入る速度がもう少 島下 8速あることで燃費の面でもメリット 石川 よくできていますよ。小刻みにシフト するけどビジーではなく滑らかです。 │ 聞き手: 千葉知充(本誌)/写真:永元秀和 石川芳雄 島下泰久 XC60 T5ラインナップ ボルボ Cross talk 「Drive-Eパワートレーン第一弾の印象」 全方位に進化した ボルボの新しいパワートレーン 昔から日本の技術を信頼し、 そしてリスペクトしていたボルボは デンソーやアイシンAWと共同で新しい「Drive-E」パワートレーンを開発した。 そこにはスウェーデンと日本の、物づくりに対する真摯な姿勢が見えてくる。 12 し低くてもいい気はするけど、高速巡航では パドルを使って早めにシフトアップする方法 もあります。フィーリングに目を向けても、 トルクのある低回転域でシャキシャキ変速し ていて、ちゃんとエンジンの息吹を感じさせ てくれるものになっています。これは高い点 数をつけたいですね。 石川 タウンスピードで走っていると細かく 変速しますが、とても滑らかに繫がります。 そして高回転まで引っ張らなくても十分に速 い。とても洗練された印象です。 島下 不快なショックやトルク変動を感じさ せないトランスミッションの技術があったか ら、この心地いい変速スケジュールを実現で きたわけですね。何を作りたいかというボル ボのマインドがあって、それにアイシンAW が応えた。相乗効果です。 開発したこともそう。いいものを持っている 石川 ボルボは昔から日本の技術を信頼し尊 敬していました。かつてヤマハとV8を共同 ことがわかっているから、ブロークンマイン 島下 アイドリングストップは、あまり印象 に残らない方がいいんです。アイドリングス トップ機能は止まったり始動したり、どうし ても音や振動がうっとうしくなりがち。だか ら何も気にならないことが究極の姿なんで す。そういえば止まってたな、と。 石川 ECO モードはエアコンやアイドリ ングストップの設定、コースティングも制御 していてすごく効果があるから、スイッチや 表示でもっとアピールするといいですね。エ コに特化した機能をスマートに馴染ませてい るのはボルボらしい奥ゆかしさかもしれない けど、もっと演出してもいいかな。作動させ ると低回転域を使うから多少こもり音や加速 の鈍りがあるけど、エコを優先した結果です から。そのぶんノーマルモードではプレミア ムブランドらしいフィーリングが味わえる と、ボルボは割り切っているようです。 島下 加速が鈍るのもデメリットばかりでは ありません。たとえば奥さんが運転するとき だってありますから。 ﹁あまり速いクルマは嫌なの﹂というケース 石川さんは北海道まで1200 を走 りましたが、燃費はどうでしたか。 /hで1600rpm をキー 石川 100 km ドで付き合えるのでしょう。アイシンAWと は古くから付き合いがあると聞いていたの で、長い付き合いの中でツーカーの仲になっ ているはず。アイシンAWやデンソーなど日 「B420型(2ℓ直4ターボ)」ガソリンエンジン アイシンAW社と共同開発した8速ATは、低燃費を実現するた めすべての前進ギアにロックアップ機構を備えている。 新開発8速ギアトロニック付AT「AWF8F45」 Drive-E (ドライブ・イー) とは、 ボルボの新パワート レーン戦略の総称のこと。 「ランニングコストの低 減」や「高効率化へのインテリジェントなソリュー ション」、 「妥協なきドライビングエクスペリエンス」 をドライバーに提供するものだ。 このプロジェクト の構想は2007年に始まり、 2010年に独立プロ ジェクトとして決定され、2011年にその商品内 容がマネジメントで承認されている。 + /ℓくらいでした ちょっ プすると ・2 /ℓくらい出ますね。 km km と加速を多用すると 13 が、 あの大きなクルマでこの燃費は十分です。 12 km 本のサプライヤーを使うのは、ドイツ勢との │ /ℓ台がいいと 島下 かつての常識なら7 べ4気筒はインパクトが薄いような気もする は音質の変化がないからですね。5気筒に比 アをちょこちょこ選んでも不快に感じないの ウンしても音が大きく変わったりしない。ギ フィーリングが荒れることもない。キックダ ないけれど、上まで引っ張っても気持ちいい 変わらないんです。とりたてて高回転型では かで滑らかですが回してもいい意味で印象が ころでしたしね。ところでこのエンジン、静 km 違いをアピールする要素にもなっています。 島下 長くやっているから、お互いの信頼関 係が築けたわけですね。意思疎通のベースが できていて、 それが素晴らしい結果になった。 アイドリングストップはいかがですか。 石川 再始動がスムーズですね。ECO+ モードを使えば7 /hから止めます。 石川 できるだけアイドリングの時間を少な くすること、アイドリングをまったくさせな 島下 欧州車もそういった傾向になってきま した。ポルシェも早く止めますし。 km いことが最終目標でしょうから。 13 │ 新開発エンジンの注目ポイント 新開発のエンジンには3つの柱がある。 そのひとつは 「4気筒 (またはそれ以下) エンジン」 である こと。ふたつ目は 「Dr i ve-E (ボルボの自社開発パワートレーン)」、3つ目は 「高度な電動駆動 化、効率化」 である。このエンジンはスウェーデンのイェーテボリのボルボ・カーで設計され、今 回、 60シリーズに採用されたのはその第一世代で、 生産はスウェーデンのショブデ工場にてガソ リンエンジンとディーゼルエンジンが同じ生産工程で造られる。 またガソリンエンジンとディーゼル エンジンは25%共通部分が使われ、25%は異なる部分、50%が類似部品で構成される。 Drive-Eとは 「ここから始まるボルボの新エンジンラインナップ、今後も本当に楽しみです」-石川 3つのドライブモード 「ECO+(エコプラス)モード」 ● エンジンとトランスミッション、 エアコンの制御システムが燃費効率を高めるため最適化、燃費性能を高める。 ● 65km/h以上でアクセルペダルから足を離すとエンジンブレーキが解除され エンジン回転数をアイドリング状態にまで下げる 「ECOコースト機能」 を持つ。 「エンジンStart/Stop」機能が減速時に7km/hになった時点でエンジンがストップするように変更される。 ● エアコンのコンプレッサーがオフになり補機類の負荷を下げ、 メーター内にあるインフォメーションディスプレイに 「ECO」 が表示される。 ● D(ドライブ)モード SPORT(スポーツ)モード デフォルトで設定されているのが、 この エンジンとトランスミッションの制御をレスポンスのいいスポーティな D(ドライブ) モードである。 「エンジン 走りに最適化し、 スロットルマップやシフトポイント、 ロックアップスケ Start/Stop」機能も速度が0km/hに ジュールなどのギアシフトスケジュールが専用チューニングされたも なった時点でエンジンを停止させる。 のになる。 また 「エンジンStart/Stop」機能はキャンセルさせる。 S U V 新 時 代 Cross talk ボルボ XC60 スイッチを押してECO+ モードにするとインフォ メーションディスプレイに 「ECO」 と表示される。 こ のモードではECOコース ト機能の作動など燃費を 優先したさまざまな制御 が行われることになる。 T5ラインナップ ニュー 60シリーズの 新エンジンラインナップ S60、 V60シリーズ S60 S60 V60 V60 T5 T5 T5 T5 SE Rデザイン SE Rデザイン 4,340,000万円 4,890,000万円 4,540,000万円 5,090,000万円 パッケージオプション (T5 SE) ●レザーパッケージ (本革シート、助手席8ウェイパ ワーシート、12セグ地 上デジタルTVチューナー) 250,000円 写真左からS60、V60、XC60。60シリーズ全モデルにDrive-Eパワートレーンを搭載したT5 SEとT5 Rデザインが用意される。 XC60シリーズ XC60 T5 XC60 T5 SE XC60 T5 Rデザイン Drive-Eパワートレーンのパフォーマンス エンジン トランスミッション 新型 S60 T5(245ps/350Nm) 8速AT 新型 V60 T5(245ps/350Nm) 8速AT 新型 XC60 T5(245ps/350Nm) 8速AT 従来型 XC60 T5(240ps/320Nm) 6速AT 4,990,000万円 5,590,000万円 モデル 6,140,000万円 パッケージオプション (T5、T5 SE) ●レザーパッケージ (本革シート、12セグ地上デジ タルTVチューナー)250,000円 ※2014年2月28日現在 減税(減税額) JC08モード燃費 75%(207,300円) 14.6km/ℓ 75%(207,300円) 14.4km/ℓ 100%(298,400円) 13.6km/ℓ ー 11.1km/ℓ 「いよいよボルボはすべてが新しくなったんだなと実感しました」 -島下 けど、乗った印象の上質感はプレミアムカー 60 として十分なもの。T6も楽しみです。 XC のいちばん印象に残ったところ は、 そうしたエンジンのフィーリングですか。 島下 実用域がしっかりしていて素晴らしい だけでなく、スポーティな面でもちゃんと要 求に応えてくれる。パドルを装備する意味が しっかりとわかるエンジンです。低速域で走 れば効率がよくて上質感もあるけど、ワイン ディングでは思わずパドルを弾いてみたくな る。環境だけでなく、全方位に進化したエン ジンであることを実感しました。 石川 T5が十分なパフォーマンスなので、 AWDが組み合わされてもよかったですね。 きっとT6が導入されたときにAWDも用意 されると思いますが。エンジンについて言え ばこのT5の2ℓがボルボのメインで、ハイ エンドのT6も登場していますから、今後は どれだけエコ方向に振ってくるかが興味深い ところです。出力を落としてエコを極めてい くのでしょう。その選択肢にはハイブリッド も視野に入っているわけです。ボルボはこの エンジンを礎にあらゆるクルマを作っていく 60 わけですから、本当に楽しみです。 60 ボル 島下 まさにこのXC が最初ですが、 ボのデザインが大きく変わりました。同時に 走りも変わり、それがS やV 、他のライ ンナップにも新しい流れが波及していった。 いろいろ変わって最後のピースがパワート レーンだったわけですが、それが埋まって新 しい世代のボルボを形作るすべての要素が揃 いました。環境性能を含め、新しい世の中の 最前線にあるスペックとフィーリングがあ り、運転のしやすさもある。ECO モード に象徴される環境に配慮したボルボらしさも あります。いよいよボルボはすべてが新しく なったんだと感じられます。未来を展望させ るいいものが出てきたなと思いました。 + 60 │ 14 Key persons Special Interview VOLVO 開発者に訊いたDrive-Eの核心 60シリーズに搭載された「Drive-Eパワートレーン」はスウェーデンのボルボと 日本のデンソーとアイシンAWがコラボし開発に力が注がれている。 文:千葉知充(本誌) Key Person 1 Volvo Car Corporation パワートレーンプログラムマネージャー ヨルゲン・ブリンネ JÖRGEN BRYNNE 「今後はほぼすべてのモデルに採用されるでしょう」 -今回開発したパワートレーンの特徴はどこで すか。 また直6や直3の選択はありましたか。 「ボルボの視点から言えば、共通のアーキテク チャでひとつエンジンファミリーを持つことが重 要でしたが、 お客様にとって重要なのは、 より高 い性能や優れた燃費を実現していることです。 エンジンサイズはさまざまな可能性を検討した結 果、2009年の戦略的決定により、4気筒で開 発を進めることになりました。 これはSPAプラット フォームと同時に開発していたため、 それに最 適なエンジンでした。 また2ℓだけでなく1.4ℓや 1.6ℓも候補にありましたが、小排気量を意識し たのはT4やT3など小さなエンジンで、T5やT6 に必要なパフォーマンスを得るためには2ℓの 排気量が必要だったのです。日本ではXC60と V60、S60にT5を搭載しましたが、今後はほぼ すべてのモデルにも採用されるでしょう」 -なぜサプライヤーに日本のメーカーのデン ソーとアイシンAWを選んだのですか。 「デンソーもアイシンAWもボルボと長い付き合 いがありますが関係が長いからではなく、 さまざま な要素を総合的に判断して選んでいます」 Key Person -ボルボ車として初めて8速ATを搭載しまし たが、 ボルボ流の味付けはあるのでしょうか。 「開発にあたってボルボの出した要求は、優れ た燃費を実現しそして軽量なことです。 またクオ リティとフィーリングも重要視しました。 さらに速く 広がる可能性もあります。個人的な想像です てスムーズなシフトフィーリングをできるだけ低い が、電気モーターを追加することでT6はさらに高 回転域で可能にすることもポイントでした。 ドラ い出力を発生できるでしょう。 また現在のパワー イバーに振動を感じさせないシームレスな変速 トレーンは、 エンジンとトランスミッションの間に の実現は低回転域でトルクを出すことが必要で スペースがあるので、電動駆動化したいときに す。 そのためトルクコンバーターに高性能なダン も搭載方法を変えずモーターを加えることがで パーを装備するといった部分に力を注ぎました」 きます。次期XC90はプラグインハイブリッドで -デュアルクラッチ式トランスミッション (DCT) 後軸にモーターを搭載しますので将来的には 400ps/500Nmが狙えるでしょう」 というは選択肢はありましたか。 「DCTは高出力でプレミアムなクルマに適して -ガソリンとディーゼルエンジンを同じラインで いないと私たちは考えています。ATにはトルクコ 製造することで効率アップが実現できますか。 「5気筒エンジンに比べると、製造時間が30% ンバーターがあるので、滑らかに駆動を繋げるこ 減です。ボルボは小規模の会社なので生産効 とができ、 さらに効率もアイシンAWと共同開発 した8速ATならDCTと同じレベルを達成でき、 率を最適化していかなければなりません。エンジ 燃費と特性が各モデルにマッチしています」 ンごとに製造ラインを分けると、1ラインあたりの これなら市場の -パワーやトルクはどの程度の幅がありますか。 製造数が減ってしまいますが、 「ガソリンエンジンのT3で140ps/250Nm、 需要に合わせて造るエンジン種類をフレキシブ ルに変えられることも大きなメリットなのです。 T6では306ps/400Nmですが、今後はもっと 2 Key Person 3 デンソー株式会社 パワトレインシステム開発部 アイシン・エィ ・ダブリュ株式会社 技術本部 第3技術部 第4開発室 担当次長 岩本伸一 Shinichi Iwamoto 第3グループ 主担当 松浦正基 Masaki Matsuura 「デンソーもセンター直噴は初めてでした」 「この8速ATはベストだと考えています」 -新しいエンジンにはどのような部分で開発に携わったのですか。 「エンジン制御全般です。デンソーとしても燃焼室の直上から吹くセン ター直噴は初めてで、30%以上とダウンサイジング率が高くさらに高過給 であるため、噴射系では広いダイナミックレンジが要求されました。燃焼室 の中にインジェクターが突き出していて高温に晒されることもあり、諸問題 をどう解消するか、 常にボルボ側と打ち合わせ開発を進めました」 -それはいつ頃から開発が始まったのですか。 「2010年からです。ボルボが今後、 主流エンジンは2ℓ直4の過給器エン ジンでいくと決定したので、 デンソーもその新しいエンジンのために取り組 みました。ボルボとのお付き合いは、1998年の2.5ℓ直5エンジンで制御 システムの開発から始まり、 ヤマハと共同開発した4.8ℓV8、3.2ℓ直6エ ンジンなども担当しています。 その最初の開発が上手くいったこともあり、 信頼性や品質の良さを評価していただくことができました。以来、 エンジン マネジメントシステムのサプライヤーとして使っていただいています」 15 -ボルボとアイシンAWの付き合いはいつから始まったのですか。 「歴史は古く、1975年にFR用の3速トランスミッションを納入し、 その後 FR用の4速やFF用の4速、 5速、 6速と続き、 そのシリーズで8速ATになり ました。アイシンAWにとって最初の海外の顧客がボルボでした」 -新しい8速ATの特長を教えてください。 「8速化はもちろんですが、燃費の改善も特長です。エンジンは6気筒か ら5気筒、4気筒へと少気筒化されたので、 それに伴い爆発間隔や振動 が増えてくるためダンパーを改善しました。 またケースハウジングの余計な 肉厚を削ったほかピストンのアルミ化など材料変更も行っています」 -今後はさらに多段化が進むのでしょうか。 「このクラス、 このトルク帯で考えると私たちは8速がベストだと思ってい ます。 ドライバーの要求に応じられるクイックなシフトフィーリングが得られ るからです。 さらにこの新しい8速のトランスミッションは、2002年の6速 ATから熟成を積み重ねてきました。 その信頼性には自信があります」
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