ネオニコチノイド系農薬およびその代謝物質の固相抽出

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ネオニコチノイド系農薬およびその代謝物質の固相抽出
須藤勇紀, 柴田剛志, 伊藤智博, 久保田守, 大野桂二 (和光純薬工業株式会社)
1. はじめに
2. 実験方法
近年、ネオニコチノイド系農薬はミツバチが減っている現象
の原因の一つと考えられており、そのため、EUでは使用を一
部制限された。
ネオニコチノイド系農薬は原因不明の体調不良を訴える患者
の尿中からの代謝物の検出、河川などの水環境中からも検
出するなど関心が高まっている。
しかしながら、代謝物を含む分析報告は少ないため、今回、
固相抽出法による分析条件を検討した。
表1 HPLC条件
機器
カラム
移動相A
移動相B
グラジエント
条件
流量
カラム温度
注入量
Prominence LC-20A(島津製作所)
Wakopak® Ultra C18-2 Φ2.1mm × 100mm
0.1%ギ酸・10mM酢酸アンモニウム水溶液
0.1%ギ酸・10mM酢酸アンモニウムメタノール溶液
0min.(A:B=80:20)→2-15min.(15:85)
→15.1min.(80:20)→15.1-25(80:20)
0.1 mL/min
40 ℃
5 μL
表2 MSの機器条件
機器
イオン化
測定モード
Curtain gas
Collision gas
Ion Spray Voltage
Temperature
Ion Source gas 1
Ion Source gas 2
3200 QTRAP (AB SCIEX社)
ESI positive
SRM
10
3
5500
600
70
80
サンプルは農薬8成分、代謝物質4成分の全12成分を濃度50
ng/mLに調液した。
代謝物質は、ニテンピラムのCPFとCPMF、アセタミプリド、イミダ
クロプリド、チアクロプリド、ニテンピラムに共通の6-クロロニコチ
ン酸、チアクロプリドのチアクロプリド-アミドとした。
固相抽出カートリッジは和光純薬製の逆相モードのresep®RPP、逆
相-強陽イオン交換のPresep®RPP-SCX、逆相-弱陽イオン交換の
Presep®RPP-WCX、逆相-強陰イオン交換のPresep®RPP-SAX、逆
相-弱陰イオン交換のPresep®RPP-WAXを用いて検討した。
逆相-イオン交換では第1フラクションと第2フラクションを分析した。
表3 各化合物の測定m/z
成分名
分子量
アセタミプリド
イミダクロプリド
チアクロプリド
ニテンピラム
クロチアニジン
チアメトキサム
ジノテフラン
フロニカミド
CPF
CPMF
6-クロロニコチン酸
チアクロプリド-アミド
222.7
255.7
252.7
270.7
249.7
291.7
202.2
229.2
198.7
211.7
157.6
270.7
モニターイオン(m/z)
プロダクト
プリカーサー
223.0
126.1
73.1
256.9
210.1
176.1
253.5
126.0
73.1
271.2
126.0
225.2
250.0
132.1
169.1
292.0
211.2
181.2
203.1
129.1
87.1
230.1
203.1
148.0
199.1
128.1
181.2
212.1
126.2
73.1
158.1
122.1
78.1
271.6
125.8
73.1
3.結果
Presep®RPPは全成分において93~109 %
と良好な回収率を得た。
Presep®RPP-SCXはジノテフラン58 %、そ
れ以外の成分は88~104 %となり、ニテンピ
ラム、CPMF、チアクロプリド-アミドは第2フ
ラクションで回収した。
Presep®RPP-WAXはCPMFが不検出、そ
れ以外は82~115 %となり、6-クロロニコチ
ン酸を第2フラクションで回収した。
Presep®RPP-SAXはCPMF25 %、フロニカミ
ド52 %、チアメトキサム23 %となり、ニテンピ
ラム、6-クロロニコチン酸を第2フラクション
で回収、クロチアニジンは第1フラクション、
第2フラクション両方から検出された。
Presep®RPP-WCXは6-クロロニコチン酸が
不検出、フロニカミド53 %、チアメトキサム
45 %となり、CPMFが第2フラクションからの
検出、CPFがは第1フラクション、第2フラク
ション両方から検出された。
4.まとめ
サンプル1 mL(各濃度 50 ng/mL)
サンプル1 mL(各濃度 50 ng/mL)
+ギ酸10 μL+超純水1 mL
サンプル1 mL(各濃度 50 ng/mL)
+アンモニア水100 μL+超純水1 mL
Presep® RPP-SCX or
Presep® RPP-WAX
Presep® RPP-SAX or
Presep® RPP-WCX
1 %ギ酸水溶液3 mL
1 %アンモニア水溶液3 mL
①メタノール2 mLを用いて溶出
①メタノール2 mLを用いて溶出
②5 %アンモニア・メタノール溶液
2 mLを用いて溶出
②5 %ギ酸・メタノール溶液
2 mLを用いて溶出
Presep® RPP
メタノール4 mLを用いて溶出
図2 固相抽出の実験フロー
表4 各固相抽出カートリッジの回収率
回収率(%)
RPP
アセタミプリド
イミダクロプリド
チアクロプリド
ニテンピラム
クロチアニジン
チアメトキサム
ジノテフラン
フロニカミド
CPF
CPMF
6-クロロニコチン酸
チアクロプリド-アミド
97
93
94
101
104
101
100
98
99
100
96
109
SCX
①
②
100
N.D.
103
N.D.
91
N.D.
N.D.
104
100
N.D.
100
N.D.
58
N.D.
88
N.D.
104
N.D.
N.D.
104
97
N.D.
N.D.
97
WAX
①
②
112
N.D.
110
N.D.
104
N.D.
82
N.D.
108
N.D.
108
N.D.
105
N.D.
115
N.D.
114
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
109
111
N.D.
SAX
①
②
94
N.D.
106
N.D.
102
N.D.
N.D.
95
48
56
23
N.D.
101
N.D.
52
N.D.
123
N.D.
25
N.D.
N.D.
101
99
N.D.
WCX
①
②
98
N.D.
99
N.D.
98
N.D.
100
N.D.
105
N.D.
45
N.D.
98
N.D.
53
N.D.
80
10
N.D.
73
N.D.
N.D.
99
N.D.
Presep®RPPはネオニコチノイド系農薬およびその代謝物12成分を良好に回収することが可能であった。
Presep®RPP-SCXは CPFとCPMFの選択的回収が可能であり、 Presep®RPP-WAXおよびPresep®RPP-SAXは6-クロロニコチン酸
を選択的に回収することが可能であった。
今後、逆相-イオン交換での固相抽出条件の最適化と回収率の向上ならびに環境実試料への適用について検討する。