P-128 ネオニコチノイド系農薬およびその代謝物質の固相抽出 須藤勇紀, 柴田剛志, 伊藤智博, 久保田守, 大野桂二 (和光純薬工業株式会社) 1. はじめに 2. 実験方法 近年、ネオニコチノイド系農薬はミツバチが減っている現象 の原因の一つと考えられており、そのため、EUでは使用を一 部制限された。 ネオニコチノイド系農薬は原因不明の体調不良を訴える患者 の尿中からの代謝物の検出、河川などの水環境中からも検 出するなど関心が高まっている。 しかしながら、代謝物を含む分析報告は少ないため、今回、 固相抽出法による分析条件を検討した。 表1 HPLC条件 機器 カラム 移動相A 移動相B グラジエント 条件 流量 カラム温度 注入量 Prominence LC-20A(島津製作所) Wakopak® Ultra C18-2 Φ2.1mm × 100mm 0.1%ギ酸・10mM酢酸アンモニウム水溶液 0.1%ギ酸・10mM酢酸アンモニウムメタノール溶液 0min.(A:B=80:20)→2-15min.(15:85) →15.1min.(80:20)→15.1-25(80:20) 0.1 mL/min 40 ℃ 5 μL 表2 MSの機器条件 機器 イオン化 測定モード Curtain gas Collision gas Ion Spray Voltage Temperature Ion Source gas 1 Ion Source gas 2 3200 QTRAP (AB SCIEX社) ESI positive SRM 10 3 5500 600 70 80 サンプルは農薬8成分、代謝物質4成分の全12成分を濃度50 ng/mLに調液した。 代謝物質は、ニテンピラムのCPFとCPMF、アセタミプリド、イミダ クロプリド、チアクロプリド、ニテンピラムに共通の6-クロロニコチ ン酸、チアクロプリドのチアクロプリド-アミドとした。 固相抽出カートリッジは和光純薬製の逆相モードのresep®RPP、逆 相-強陽イオン交換のPresep®RPP-SCX、逆相-弱陽イオン交換の Presep®RPP-WCX、逆相-強陰イオン交換のPresep®RPP-SAX、逆 相-弱陰イオン交換のPresep®RPP-WAXを用いて検討した。 逆相-イオン交換では第1フラクションと第2フラクションを分析した。 表3 各化合物の測定m/z 成分名 分子量 アセタミプリド イミダクロプリド チアクロプリド ニテンピラム クロチアニジン チアメトキサム ジノテフラン フロニカミド CPF CPMF 6-クロロニコチン酸 チアクロプリド-アミド 222.7 255.7 252.7 270.7 249.7 291.7 202.2 229.2 198.7 211.7 157.6 270.7 モニターイオン(m/z) プロダクト プリカーサー 223.0 126.1 73.1 256.9 210.1 176.1 253.5 126.0 73.1 271.2 126.0 225.2 250.0 132.1 169.1 292.0 211.2 181.2 203.1 129.1 87.1 230.1 203.1 148.0 199.1 128.1 181.2 212.1 126.2 73.1 158.1 122.1 78.1 271.6 125.8 73.1 3.結果 Presep®RPPは全成分において93~109 % と良好な回収率を得た。 Presep®RPP-SCXはジノテフラン58 %、そ れ以外の成分は88~104 %となり、ニテンピ ラム、CPMF、チアクロプリド-アミドは第2フ ラクションで回収した。 Presep®RPP-WAXはCPMFが不検出、そ れ以外は82~115 %となり、6-クロロニコチ ン酸を第2フラクションで回収した。 Presep®RPP-SAXはCPMF25 %、フロニカミ ド52 %、チアメトキサム23 %となり、ニテンピ ラム、6-クロロニコチン酸を第2フラクション で回収、クロチアニジンは第1フラクション、 第2フラクション両方から検出された。 Presep®RPP-WCXは6-クロロニコチン酸が 不検出、フロニカミド53 %、チアメトキサム 45 %となり、CPMFが第2フラクションからの 検出、CPFがは第1フラクション、第2フラク ション両方から検出された。 4.まとめ サンプル1 mL(各濃度 50 ng/mL) サンプル1 mL(各濃度 50 ng/mL) +ギ酸10 μL+超純水1 mL サンプル1 mL(各濃度 50 ng/mL) +アンモニア水100 μL+超純水1 mL Presep® RPP-SCX or Presep® RPP-WAX Presep® RPP-SAX or Presep® RPP-WCX 1 %ギ酸水溶液3 mL 1 %アンモニア水溶液3 mL ①メタノール2 mLを用いて溶出 ①メタノール2 mLを用いて溶出 ②5 %アンモニア・メタノール溶液 2 mLを用いて溶出 ②5 %ギ酸・メタノール溶液 2 mLを用いて溶出 Presep® RPP メタノール4 mLを用いて溶出 図2 固相抽出の実験フロー 表4 各固相抽出カートリッジの回収率 回収率(%) RPP アセタミプリド イミダクロプリド チアクロプリド ニテンピラム クロチアニジン チアメトキサム ジノテフラン フロニカミド CPF CPMF 6-クロロニコチン酸 チアクロプリド-アミド 97 93 94 101 104 101 100 98 99 100 96 109 SCX ① ② 100 N.D. 103 N.D. 91 N.D. N.D. 104 100 N.D. 100 N.D. 58 N.D. 88 N.D. 104 N.D. N.D. 104 97 N.D. N.D. 97 WAX ① ② 112 N.D. 110 N.D. 104 N.D. 82 N.D. 108 N.D. 108 N.D. 105 N.D. 115 N.D. 114 N.D. N.D. N.D. N.D. 109 111 N.D. SAX ① ② 94 N.D. 106 N.D. 102 N.D. N.D. 95 48 56 23 N.D. 101 N.D. 52 N.D. 123 N.D. 25 N.D. N.D. 101 99 N.D. WCX ① ② 98 N.D. 99 N.D. 98 N.D. 100 N.D. 105 N.D. 45 N.D. 98 N.D. 53 N.D. 80 10 N.D. 73 N.D. N.D. 99 N.D. Presep®RPPはネオニコチノイド系農薬およびその代謝物12成分を良好に回収することが可能であった。 Presep®RPP-SCXは CPFとCPMFの選択的回収が可能であり、 Presep®RPP-WAXおよびPresep®RPP-SAXは6-クロロニコチン酸 を選択的に回収することが可能であった。 今後、逆相-イオン交換での固相抽出条件の最適化と回収率の向上ならびに環境実試料への適用について検討する。
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