次世代パワーエレクトロニクス 内閣府 プログラムディレクター 大森 達夫 1 目次 •パワーエレクトロニクス技術の課題 •国内外の状況 •研究開発概要 •研究開発の全体像 •研究開発内容 •運営体制 •知財・出口戦略 2 パワーエレクトロニクス技術の課題 ・ パワーエレクトロニクスは電気エネルギーの発生・輸 送・消費を効率的に行うためのキーテクノロジー 輸送 運輸 (23.6%) 業務 (19.5%) 家庭 (14.2%) 産業 (42.8%) 最終エネルギー消費動向 発生 100 電 力 損 失 70 Si デバイス 次世代パワー エレクトロニクス による革新 30 24 ‘80 ‘85 ‘90 ‘95 ‘00 ‘05 ‘09 新デバイス ∼ ∼ 消費 パワーデバイスの性能変遷 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010energyhtml/2-1-1.html 3 国内外の状況 • パワエレ関連の世界市場は、着実に成長し、今後更に大きな伸びが期待 • しかし競争環境は激化 <欧米では、実用化に向けた緊密な産学開発体制の構築。中国・韓国・台湾の台頭> 欧州 ECPE, フラウンホーファ, IMEC (兆円) ■ ウェハ・装置 ■ パワー半導体 ■ パワーエレクトロニクス機器 20兆円 20 10 0 ・機器→デバイス→基礎 上位からの課題設定 ・企業ニーズを取り込む産官学連携 ・モジュール実装など実用化技術 ・ 風力用HVDC・人材育成ネットワーク 6兆円 米国 次世代パワエレ・イノベーション・ インスティチュート 現在 ・ 先端技術ものづくり国家戦略 エネルギーイノベーションによる雇用創出 ・ WBGデバイス応用加速、特にGaN、 SiC ・ ノースカロライナ大,Cree等,7大学18社 2030年 パワーエレクトロニクス世界市場予測と世界シェア 欧米の研究開発動向 4 研究開発概要 目的: 省エネルギー化のためのキーテクノロジーであるパワーエレクト ロニクスの性能向上や用途と普及の拡大を図り、一層の省エ ネルギー化の促進と産業競争力の強化を進める 2014 2016 2017 2018 2015 研究開発項目Ⅰ SiCに関する拠点型共通基盤技術開発 (高耐圧化、小型化、低損失化、信頼性向上) 研究開発項目Ⅱ GaNに関する拠点型共通基盤技術開発 (ウエハ及びデバイスの高品質化) 研究開発項目Ⅲ 次世代パワーモジュールの応用に関する基盤研究開発 (回路、使いこなし技術) 研究開発項目Ⅳ 将来のパワーエレクトロニクスを支える基盤研究開発 (新材料、新構造等) 5 研究開発の全体像 アプリケーション・パワ エレ機器を中心と した事業化領域 次世代パワーエレクトロニクス技術開発プロジェクト :経済産業省 H26∼H31 SIP 次世代パワーモジュールの応用に関する研究 機器・回路 Ⅲ ・次世代パワーモジュールを使いこなす各種回路やシステム実装技術 ・応用製品の試作および動作実証 次世代SiCモジュールの技術開発 Ⅰ モジュール (実装・部品等) ・ 超小型・高電流密度モジュール技術 ・ 高温・高電流密度・高耐圧用材料、部品開発 ・ モジュール設計・信頼性技術 次世代SiCデバイスの技術開発 デバイス ウエハ・エピ 材料 基盤 技術 ・ 超高耐圧IGBT, PiNダイオード ・ 新構造ユニポーラデバイス(SJ構造) 次世代SiCウエハ ・ 高耐圧デバイス低応力多層厚膜ウエハ ・ 伝導度制御技術 新回路、 ソフトウエア Ⅳ ・ パワープロセッシング 技術 新材料基盤技術 Ⅱ 次世代GaNデバイス ・ 縦型パワーデバイス 次世代GaNウエハ ・ 低欠陥・高品質ウエハ ・Ga2O3 パワーデバイ ス ・ダイヤモンド パワー デバイス 新プロセス・ 評価技術 ・高品質ゲート絶縁膜 ・超高感度顕微鏡技術 ウエハから機器・回路までの基盤技術開発を行い、次世代パワーエレクトロニクスの適用用途の 拡大や普及拡大、性能向上を図り、我が国の産業競争力の強化と省エネルギーを加速させる。 6 SIP「次世代パワーエレクトロニクス」 研究開発内容 7 SiCに関する基盤技術開発(研究開発項目Ⅰ) 35mm 2インチ 3インチ ‘03頃 4インチ ‘05頃 •SiC-MOSFET(耐圧1.2kV)は既に市販 •SiCモジュールも市販開始 6インチ ‘12頃 ’90代前半 ’90代後半 SiCウェハ径の変遷 更なる高性能化(高耐圧化、小型化、低損失化、信頼性向上)に向けた取り組みが必要 Niマイクロメッキ 低抵抗ウェハ pSiCウェハ 低抵抗ウェハ、高品質厚膜エピ pSiCデバイス 高耐圧SiCスイッチ開発(IGBT、SJ-MOSFET) Ref: T. Kato et al., Mat. Sci. Forum, 778-780(2014)pp.47. 高品質厚膜エピ Ref: N. Kato et al., Mat. Sci. Forum, 778-780(2014)pp.1110. pSiCモジュール ゼロストレス接合 高温・高周波動作、大電流密度 n+ p +p - nCSL p - n+ p + n - ドリフト層 n バッ ファー Ref: T. Miyazawa et al., Mat. Sci. Forum, 778-780(2014)pp.135. 低抵抗ウェハ 高品質厚膜エピ開発 p コ レクタ p+ + 層 大電流密度、 耐熱モジュール開発 コレクタ SJ-MOSFET 高耐圧SiCスイッチ開発 IGBT 8 SIP「次世代パワーエレクトロニクス」採択テーマ(研究開発項目Ⅰ) テーマ名 テーマリーダー SiC次世代パワー エレクトロニクスの 統合的研究開発 奥村 元センター長 (産総研) 実施項目 参画 機関数 次世代SiC ウェハの 技術開発 企業:14 大学:4 機関:2 ・低抵抗ウェハ 産総研、京都大、 電中研、昭和電工、 ・高品質厚膜エピ 京セラ、他 次世代SiC デバイス の 技術開発 企業:7 大学:3 機関:1 産総研、京都大、 富士電機、東芝、 三菱電機、他 高耐圧SiCスイッチの開発 ・IGBT ・SJ-MOSFET 次世代SiC モジュー ルの技術 開発 企業:16 大学:3 機関:1 産総研、日産、阪 大産研、明電舎、 他 大電流密度 ハイブリッド自動車向けSiC耐熱 企業:5 モジュール実装技術の研究開発 大学:2 巽 宏平教授(早稲田大) 機関:1 主な参画機関 目標 早稲田大、九工大、 HV用インバータ開発 トヨタ、デンソー、他 9 GaNに関する基盤技術開発(研究開発項目Ⅱ) GaNの発光デバイスとしての物理現象解明、 技術開発は大きく進展 上記課題が解決されれば、SiCを超える高性能、 高コストパフォーマンスパワエレ技術が実現可能 SIP「次世代パワーエレクトロニクス」 高品質・大面積・ 低価格GaNウェハ開発 •アモノサーマル法 •改良HVPE法 GaN縦型デバイスプロセス 技術開発 •選択的ドーピング(イオン注入) •MOS界面形成技術 ・・・ GaN物性解明 物性値精密測定 •絶縁破壊電界強度、飽和電子速度 ・・・ 10 SIP「次世代パワーエレクトロニクス」採択テーマ(研究開発項目Ⅱ) テーマ名 テーマリーダー 実施項目 GaNウェハ 開発 GaN縦型パワー デバイスの基盤 技術開発 須田 淳 准教授 (京都大) 参画 機関数 企業:2 主な参画機関 三菱化学、 住友電工 目標 アモノサーマル法、 改良HVPE法 ・低転位密度 GaN縦型パ 企業:3 ワーデバイス/ 機関:1 プロセス開発 豊田中研、富士 GaN縦型MOSFET 電機、パナソニッ ・耐圧1200V ク、産総研 GaN評価技術 京都大、大阪大、 名古屋大、北大、 福井大、工繊大、 東北大、筑波大、 大学:8 ・絶縁破壊電界強度の精 密測定 ・移動度の方位・温度・ドー ピング濃度依存性測定 ・MOS界面形成技術開発 ・イオン注入、エピ再成長 技術 11 次世代パワーモジュールの使いこなし技術開発(研究開発項目Ⅲ) 次世代パワーモジュールを使用したパワー エレクトロニクス機器とその統合システム 実用化 技術 応用 技術 6.6 kV連系用 トランスレス電力 変換システム (富士電機) 高圧直流 送電用電力 変換システム (三菱電機) 高周波加熱 ハイブリッド直流 遮断器(東工大) (山口大) 絶縁形DC-DC コンバータ (東工大) 実装・ 回路制御 技術 (横国大) 基盤要素 技術 AC/DC 変換器(名工大) 電磁気学的EMC設計法 (大阪大) 新回路トポロジー、 機電一体インバータシステム、 システム出力密度向上 (芝浦工大、日産自動車) 高密度電力 変換器(東工大) 超高速モータ用 インバータ(北海道大) チョッパ回路 EV モータ駆動用 機電一体インバータ モータ駆動 回路システム(筑波大) マルチレベル 変換器(千葉大) 受動デバイスの 高性能化 (首都大学東京) 12 SIP「次世代パワーエレクトロニクス」採択テーマ(研究開発項目Ⅲ) テーマ名 テーマリーダー 次世代パワー モジュールを使 用したパワーエ レクトロニクス機 器とその統合シ ステムの包括的 研究開発 赤木 泰文 教授 (東工大) 実施項目 基盤要素 技術 参画 機関数 主な参画機関 大学:2 首都大、大阪大 目標 ・高周波受動素子 ・低EMCモジュール 実装・回路・ 大学:5 千葉大、名工大、 ・フライングキャパシタ 制御技術 横国大、筑波大、 マルチレベル変換器 北大 ・超高速モータ駆動用 インバータ 応用技術 大学:2 東工大、山口大 実用化技術 企業:2 三菱電機、富士 大学:1 電機、東工大 EVモータ駆動用機電一体 インバータの研究開発 赤津 観 准教授(芝浦工大) 企業:1 芝浦工大、日産 大学:1 ・高効率絶縁型DC-DC コンバータ ・ハイブリッド直流遮断器 ・HVDC用マルチレベル変換器 ・連系用トランスレス電力変換 器 EV用機電一体型インバータ開 発 13 新材料、新プロセス・評価技術、新回路技術(研究開発項目Ⅳ) 新材料 新回路技術 パワープロセッシング技術 酸化ガリウム(Ga2O3) ダイヤモンド 低抵抗基板の可能性 特願2012-250529 4インチ単結晶ウェハ 108 比抵抗 [Wcm] 106 n型、リンドープ 104 102 100 p型、ホウ素ドープ ホッ ピング伝導 新プロセス・評価技術 10-2 10-4 1014 10151016 1017101810191020 10211022 不純物濃度 [cm-3] 革新的界面制御技術 高精度界面・表面評価技術 ゲート 絶縁膜 (バルク) 熱酸化 SiO2 膜中欠陥 × × × 界面近傍の ×× × 膜中欠陥 界面欠陥 Ref: . T. Makino et al., JJAP 53, 05FA12 (2014). Ref: M. Higashiwaki et al., IEDM Tech. Dig., 707-710 (2013). SiC 基板中欠陥 http://www.d-nanodev.riec.tohoku.ac.jp /subcontents/contents_101.html 10-20年後の産業競争力に資する研究開発力強化 14 SIP「次世代パワーエレクトロニクス」採択テーマ(研究開発項目Ⅳ) テーマ名 テーマリーダー 酸化ガリウムパワーデバイス基盤技術の研究開発 東脇 正高 統括(情通機構) (FS)超高次非線形誘電率顕微鏡法を用いたSiC基板材料 及びパワーエレクトロニクス素子の高性能化に資する評価 技術の開発 参画 機関数 主な 参画機関 企業:3 大学:1 機関:1 情通機構、農 工大、タムラ 製作所、他 ノーマリオフ縦型 MOSFET、及びSBD 大学:1 東北大 SiC-MOS界面の電荷 状態、キャリア濃度の 面内分布精密評価 大学:1 東大 高移動度、高信頼性 MOS界面開発 企業:1 大学:1 機関:2 物材機構、産 総研、東工大 超低オン抵抗ダイヤ モンドパワーデバイス 作製要素技術開発 大学:2 機関:1 産総研、阪大、 低抵抗、高品質ダイ 千葉大 ヤモンドウェハ 大学:6 京都大、千葉 工大、東京電 機大、他 長 康雄 教授(東北大) (FS)材料科学に基づく4H-SiC上の高品質ゲート絶縁膜形 成手法の研究開発 喜多 浩之 准教授(東大) (FS)パワーデバイス用ダイヤモンド合成基盤技術の研究 開発 小泉 聡 主幹研究員(物材機構) (FS)ダイヤモンドパワーデバイス用ウェハの研究開発 鹿田 真一 総括研究主幹(産総研) (FS)SiCパワーデバイス応用による低容量小型パワー集積 回路開発およびパワープロセッシング技術の研究開発 引原 隆士 教授(京都大) 目標 パワープロセッシング 実現に向けた要素技 術開発 15 SIP「次世代パワーエレクトロニクス」 運営体制、方針 16 運営体制 内閣府 大森PD サブPD(東大・堀 教授) 推進委員会 情報共有・連携 NEDO 知財委員会 リーダー会議 ワークショップ 新プロセス・ 評価技術 新回路・ ソフトウエア 研究開発項目Ⅲ 新材料 基礎基盤 機電一体 インバータ モジュール デバイス ウエハ パワエレ機器 統合システム 研究開発項目Ⅱ 基礎技術 研究開発項目Ⅰ デバイス 向モジュール GaN GaN GaN ウエハ HV SiC SiC SiC 公開シンポ 研究開発項目Ⅳ 17 知財・出口戦略 1. 知的財産戦略 • SIPのプロジェクト初期段階において、知的財産取扱規程等の細目を策定 • 本課題を円滑に推進するために知財委員会を設置し、知財取扱に関する最終決定 機関とする 2. 技術ロードマップ・出口戦略 • 鉄道、自動車、電力、民生機器・産業用等のニーズ・動向を元に、技術ロードマップを 作成(毎年見直しを予定) • ロードマップ作成と共に、次世代パワーエレクトロニクスの出口戦略を検討 3. 標準化 • 各業界団体や海外における規定・標準化の現状調査を実施 • 次世代パワーエレクトロニクスに関わる標準化に対し、 オープン・クローズ戦略の検討を行う 18 技術ロードマップ策定活動 l 平成26年度NEDO調査事業にて、市場・技術開発動向の調査に加えて、2030年 迄の技術ロードマップ案を検討中。 l 2030年の社会像と、将来実現されるべきアプリケーション(パワエレが適用される 最終製品)の要求性能からバックキャストして、最終製品から部材まで一気通貫の 目標策定をめざす。パワエレを通じて、サプライチェーンの風通し向上を図る。 Step 1 未来社会像の想定 Step 2 未来のパワエレ適用先の想定 2030年の社会像(例) 領域(例) 安心・安全社会 社会インフラ 電力流通基盤の安定性の維持 更なる送配電ロスの低減 鉄道車両 高速化と安全性の両立、省エネと 省メンテによる輸出競争力 少子高齢化/省力化 省エネ・創エネ 海外への産業移転 ・・・ 課題(例) 非接触給電 環境負荷の低いモビリティの実現 産業機器 低コスト・高信頼性・省エネの実現 日本の産業競争力の維持 ・・・ ・・・ • • Step 3 未来のパワエレアプリの実現に 不可欠な性能目標の設定 材料(例) 性能目標(例) Si 課電寿命○○倍、熱伝導率○倍の達成 プロセスルール○○nmへの移行実現 SiC 耐電圧○千V、○○cm2/Vsの達成 成長厚み○○mm、歩留まり○%の実現 GaN 本格実用に向けた歩留まり○%の実現 ノーマリーオフ動作の容易化 ・・・ ・・・ 機器ユーザ、機器メーカ、デバイスメーカ、学識経験者など産学官の実務者を結集し、 オールジャパンでパワエレの適用拡大ターゲットを洗い出す(検討委員会)。 当該領域にパワエレを適用する上で必要となる研究開発課題を洗い出す(WG)。 19 まとめ 1. SIP「次世代パワーエレクトロニクス」では計11テーマを採択。各テー マ内では、1年ごとにマイルストーンを設定することで、特に、競合する 海外の研究開発動向を見据えた研究計画・目標の見直しを機動的に 行う事が出来る体制を構築した。 2. 各テーマ内での研究成果・情報の共有化は勿論であるが、テーマ間 での情報共有を積極的に図る事で、研究開発の効率化を図る。その ために、リーダ会議・ワークショップを頻繁に開催するとともに、シンポ ジウム・国際会議という形で外部への成果発信も積極的に行う。 3. アプリケーションの要求性能からバックキャストした目標設定を目指す ためのロードマップを作成し、研究開発計画にフィードバックする。 20
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