第3章 「健康ふくい 21」評価と課題 1 評価の経緯 平成 17 年3月に「健康ふくい 21」を策定し、平成 19 年度及び平成 23 年度、2回の中 間評価を経て、平成 26 年度には、市民の健康に関するアンケート調査( 「健康ふくい 21」 最終評価アンケート、以下「アンケート」)や3回目の評価を行いました(資料3: 「健康ふ くい21」各世代別指標と達成状況一覧) 。 また、その他、福井県県民健康栄養調査(平成 23 年度)等、他の既存統計資料も参考に しました。 【評価方法について】 「健康ふくい 21」では、6つの分野(正しい生活習慣・健康管理、栄養・食生活、身体 活動、歯の健康、タバコ・アルコール、心の健康)ごとに健康課題に応じた指標を設定して います。 そして、各種統計資料等から設定している指標における直近値について調査し、策定時の 設定値と直近値を比較し、下記の指標の達成状況に関する評価方法により評価を行いました。 指標の達成状況に関する評価方法 A.改善した 1.目標に達した 直近値が目標値に達したもの。 2.目標値に達していない 直近値が目標値に達していないが、策定時 と比較して改善した もの。 ※1 3.目標の数値なし 目標値が設定されていないため上記のいずれにもあてはまらな いが、改善したもの。 B.変わらない 直近値が目標値に達しておらず、かつ、策定時と比較して変わらな いもの。 C.悪くなっている 策定時と比較して悪くなっているもの。 D.他のデータを勘 把握方法が異なる等の理由により、把握が困難なため、他のデータ 案し、評価した 【注釈】 を勘案して評価したもの。 直近値については、原則として平成 25 年度のデータを活用している。 ただし、平成 25 年度のデータがない場合には、それ以前の直近値としている。 ※1 策定時の設定がないものについては、平成 19 年度中間評価時の設定値、策定時及 び平成 19 年度の設定値がないものについては、平成 23 年度中間評価時の設定値。 12 2 目標の達成状況 全 99 項目の指標のうち、57.6%の指標が改善し、13.1%が目標を達成しました。一方、 悪くなった指標は 28.3%でした。 また、策定時に掲げたものと同じ指標での評価が困難なものが、14.1%ありましたが、他 のデータ等を勘案して評価しました。 6.心の健康づくり 5.タバ コ・ アルコー ル 4.歯の 健康 3.身体活動・運動 した 2.栄養 ・食生 活 1.正しい生活習慣 1.目標に達 総計 6 2 0 2 1 2 13 13.1% 6 13 4 4 4 4 35 35.4% 2 5 2 0 0 0 9 9.1% 0 0 0 0 0 0 0 0 10 4 6 0 3 5 28 28.3% 1 1 3 1 8 0 14 14.1% 25 25 15 7 16 11 99 100.0% 2.策定時に A.改善した 比べて改善 した 3.目標の数 値なし B.変わらない C.悪くなっている D.他のデータを勘案し、評 価した 項目数 (1)正しい生活習慣・健康管理 「8時前に起きる3歳児」 (策定時 83.1%→直近値 86.3%、以下同様)「22 時までに寝 る3歳児」(57.2%→70.9%)や「テレビを4時間以上見ている3歳児」(8.3%→6.9%) 等、正しい生活習慣が定着している3歳児が増加し、就寝時間については、目標値(70.0%) に達しました(資料3) 。 また、 「年1回健康診査を受けている人」 (59.6%→80.2%)、 「がん検診受診率」 (大腸が ん:17.3%→23.3%等)が増加しました(資料3)。 一方、「低出生体重児の割合」 (8.7%→8.8%)が微増しました(図①)。 13 【図① 低出生体重児出生率】 低出生体重児出生率(%) 12.00 10.00 8.00 8.40 8.68 6.00 8.76 9.16 7.90 7.96 全国 4.00 福井県 2.00 福井市 0.00 H16 H21 H22 H23 H24 H25 H26 (福井県人口動態統計) 健診の受診状況をみると、20 歳代から 50 歳代の約6割は勤務先で健診を受けていますが、 健診を受けていない人も2割以上います(図②) 。 健診の受診結果では、 「生活指導が必要」または「(医療機関への)受診が必要」であった 人が、40 歳未満で約3割、40 歳以上で約4割を占めています(図③) 。 【図② 健診受診状況】 健診を受けている人の割合(%) 0% 18~19歳 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 勤務先 100% 27.6% 20.7% 20~29歳 61.2% 21.2% 30~39歳 61.0% 22.0% 40~49歳 50~59歳 大学、短期大学、専 門学校 個人的に医療機関 12.4% 64.7% 60~69歳 70~79歳 20.5% 59.0% 市の健診 23.7% 27.3% 2.7% 16.8% 80歳以上 上記以外で受診 受けていない 14.9% 1.4% 【図③ 健診の受診結果】 健康診査の結果について 0% 18~19歳 20~29歳 10% 20% 14.3% 40% 17.9% 10.4% 24.5% 40~49歳 25.2% 60% 70% 80% 90% 100% 生活指導必要 7.3% 受診が必要 23.2% 35.1% 50~59歳 50% 14.3% 30~39歳 60~69歳 30% 異常なし 31.8% 21.9% 39.1% 70~79歳 13.0% 44.4% 80歳以上 13.6% 42.4% その他 未回答 (「健康ふくい21」最終評価アンケート) 14 (2)栄養・食生活 「朝食を毎日食べる子ども」 (3歳児:88.0%→93.5%等)、 「成人の野菜の摂取量」 (287.4 g→311.9g) 、 「バランスのよい食事をしている人(65 歳以上) 」 (23.1%→37.6%)は 改善しました(資料3) 。 しかし、若い世代、特に「20 歳代男性の朝食欠食率」 (H11 年度:21.6%→H23 年度: 33.3%)は約 10 年前の調査時に比べ、10%以上増加し、「20 歳代、30 歳代での1日の 野菜摂取量」 (20 歳代:256.5g、30 歳代:246.9g)は他の年齢層に比べ目標量とされ る 350gよりも約 100g少ない状況でした(図④、図⑤) 。 【図④ 朝食欠食率】 朝食欠食率の推移(男性)(%) 40 33.3 30 20歳代 30歳代 25.3 20 40歳代 21.6 22.2 50歳代 10 60歳代 70歳以上 0 平成6年 平成11年 平成18年 平成23年 朝食欠食率の推移(女性)(%) 20 18.2 20歳代 15 30歳代 12.7 10 40歳代 9.8 10.5 50歳代 5 60歳代 70歳以上 0 平成6年 平成11年 平成18年 平成23年 【図⑤ 1日の野菜摂取量】 野菜の摂取量(g) 400 300 353.3 344.8 350 304.1 288.8 256.5 246.9 250 200 摂取量 150 100 50 0 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 (福井県県民健康栄養調査) 15 また、20 歳代男性では、約 10 年前に比べて、肥満の人の占める割合(5.9%→33.3%) は約6倍に増加し(図⑥) 、30 歳以上の全ての年齢層で肥満の人の占める割合が2割以上と なっています(図⑦) 。 【図⑥ 肥満の人の割合】 肥満(BMI25以上)割合の推移(男性)(%) 50 20歳代 33.3 40 30歳代 40歳代 30 50歳代 20 22.9 10 60歳代 5.9 70歳以上 0 平成11年 平成18年 平成23年 肥満(BMI25以上)割合の割合(女性)%) 40 35 20歳代 30 30歳代 25 20 40歳代 17.9 15 50歳代 10 60歳代 5 70歳以上 6.1 7.7 0 平成11年 平成18年 平成23年 (福井県県民健康栄養調査) 【図⑦ 男性で太っている人の占める割合】 肥満度(男性) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 18~19歳 20.0% 20~29歳 15.4% 30~39歳 25.8% 40~49歳 22.4% 50~59歳 24.4% 60~69歳 27.2% 70~79歳 28.8% 80歳以上 20.0% やせ ふつう 肥満 (「健康ふくい21」最終評価アンケート) 女性では、出産年齢ともいえる 20 歳代(18.2%) 、30 歳代(17.7%)で、やせた人の 割合が他の年齢層に比べて高く、次に 80 歳以上(14.6%)となっています(図⑧)。 16 【図⑧ 女性でやせている人の占める割合】 肥満度(女性) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 18~19歳 18.2% 20~29歳 17.7% 30~39歳 やせ 40~49歳 ふつう 50~59歳 肥満 60~69歳 70~79歳 14.6% 80歳以上 (「健康ふくい21」最終評価アンケート) 母の出産年齢別出生数(人) 1600 1400 1200 平成21年 1000 平成22年 800 平成23年 600 平成24年 400 平成25年 200 0 20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 (福井県人口動態統計) (3)身体活動・運動 20 歳代男性では、運動習慣 ※1 のある人の割合(29.4%→5.6%)は、約 10 年前に比べて 5分の1に減少し(図⑨)、 「日常生活における歩数」(平成 11 年男性:13,218 歩→平成 23 年8,854 歩、女性:9,460 歩→8,044 歩)も約 10 年前に比べて減少してします(図 ⑪)。 また、20 歳以上のどの年齢層でも、運動習慣のない人の割合が多くなっています。その 中でも特に 30 歳代では、運動習慣がない人が4分の3以上を占めています(図⑩) 。 ※1運動習慣:国民栄養調査において、1日の合計で 30 分程度の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上続けて行ってい ることとすると定義。 ※2「日常生活における歩数」:福井県県民健康栄養調査において、全県下 26 地区、497 世帯、1,762 人を抽出し、452 世帯、1,353 人(男性 646 人、女性 707 人、有効回答率 76.8%)から回答を得ている。中でも、20 歳代、30 歳 代の標本数は他の年齢層に比べて少ない。 17 【図⑨ 運動習慣者の推移】 運動習慣者の年次推移(%) 45 40 35 29.4 30 20歳代 30歳代 25 25 40歳代 20 15 20 50歳代 10 60歳代 5.6 5 70歳以上 0 平成6年 平成11年 平成18年 平成23年 男 運動習慣者の年次推移(%) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 20歳代 28.6 30歳代 22.2 40歳代 50歳代 12.5 60歳代 9.4 70歳以上 平成6年 平成11年 平成18年 平成23年 女 (福井県県民健康栄養調査) 【図⑩ 運動習慣の有無】 (1日 30 分以上の軽く汗をかく程度の運動を週2回以上、1年以上継続) 運動習慣の有無 0% 20% 18~19歳 20~29歳 30~39歳 40% 60% 48.3% 80% 100% 51.7% 35.3% 64.7% 24.3% 75.7% 40~49歳 28.4% 71.6% 50~59歳 29.9% 70.1% 60~69歳 41.5% 80歳以上 無 58.5% 56.7% 70~79歳 有 43.3% 31.9% 68.1% (「健康ふくい21」最終評価アンケート) 18 【図⑪ 日常生活における歩数】 歩行数平均値の年次推移(歩) 14,000 13,218 12,000 10,000 8,561 8,276 8,854 8,000 20歳代 30歳代 40歳代 6,000 50歳代 4,000 60歳代 2,000 70歳以上 0 平成6年 平成11年 平成18年 平成23年 男 歩行数平均値の年次推移(歩) 12,000 10,000 8,044 8,000 20歳代 9,460 30歳代 6,000 7,171 5,420 40歳代 50歳代 4,000 60歳代 2,000 70歳以上 0 平成6年 平成11年 平成18年 平成23年 女 (福井県県民健康栄養調査) (4)歯の健康 「虫歯のある子ども」に改善がみられ、特に3歳児(30.3%→16.2%)と中学生(70.7% →55.1%)では、目標値に達しました。 「自分の歯を目標本数有する人」 (60 歳:44.1%→ 56.0%、80 歳:11.1%→24.1%)も改善しました(資料3) 。 毎日、歯の仕上げ磨きをしている保護者は、1歳6か月児では、福井市(60%)は全国 (65.1%)や福井県(65.1%)に比べて低くなっています。また、3歳児では、福井市(66%) は全国(63.1%)に比べると高いものの、福井県(74.5%)に比べると低くなっています (図⑫)。 3歳児を持つ保護者のうち、かかりつけの歯科医を持っている人は、福井市(20.5%)は 全国(41.0%)や福井県(22.2%)に比べて低くなっています(図⑬) 。 歯科検診受診状況は、18 歳以上の全ての年齢層で受診していない人の割合が約6割を超 19 えています(図⑭)。 【図⑫ 毎日、歯の仕上げ磨きをしている保護者の割合】 毎日、歯の仕上げ磨きをしている保護者の割合(%) 74.5 66 65.1 65.1 80 60 63.1 60 福井市 40 福井県 全国 20 0 1歳6か月児 3歳児 (平成26年度「健やか親子21」アンケート) 【図⑬ 子どものかかりつけ歯科医を持っている人の割合】 3歳児の子どものかかりつけ歯科医を持つ人の割合(%) 50 41 40 30 20.5 22.2 福井市 福井県 3歳児 20 10 0 全国 (平成26年度「健やか親子21」アンケート) 【図⑭ 歯科検診受診状況】 歯科検診を受けている人の割合(%) 0% 18~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70~79歳 80歳以上 20% 40% 60% 80% 41.4% 100% 58.6% 29.8% 70.2% 30.5% 69.5% 26.8% 33.3% 35.9% 73.2% 受診 66.7% 未受診 64.1% 56.6% 43.4% 63.8% 36.2% (「健康ふくい21」最終評価アンケート) 20 (5)タバコ・アルコール 喫煙率は、性別や年齢に関係なく低下しています。 喫煙率を性別、年齢別でみると、男性では 30 歳代(42.6%) 、女性では 20 歳代(8.6%) で最も高くなっています(図⑮)。 また、飲酒率についても、性別や年齢に関係なく低下しています。 飲酒率を性別、年齢別でみると、男性では 50 歳代(50.6%) 、女性では 30 歳代(9.4%) で最も高くなっています(図⑯)。 【図⑮ 喫煙率】 喫煙率の年次推移(%) 100 76.1 77.1 20歳代 64.1 30歳代 50 42.6 40歳代 50歳代 0 平成6年 平成11年 平成18年 60歳代 平成23年 70歳以上 男 喫煙率の年次推移(%) 20 15 10 5 0 13.9 12.5 20歳代 5 30歳代 8.6 40歳代 平成6年 平成11年 平成18年 50歳代 平成23年 60歳代 女 【図⑯ 飲酒率】 男性の飲酒率(%) 100 71 84.4 68.6 86 80.2 75 50.6 42.9 30.3 50 29.8 35.1 H18年度 H23年度 14.6 0 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 女性の飲酒率(%) 54.5 60 40 37.5 33.3 H18年度 20 5.2 9.4 13.3 4.9 7.7 10 7.3 6.7 H23年度 0.8 0 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 (福井県県民健康栄養調査) 21 (6)心の健康づくり 20 歳代から 50 歳代では、ストレスを感じている人の割合が7割以上を占めています。 15~64 歳の「ストレスを感じている人」 (55.4%→76.2%)、 「趣味活動や生涯学習活動 に参加している人の割合(65 歳以上)」 (53.0%→32.4%)は悪化しました(図⑰、資料 3)。 【図⑰ ストレスを感じている人の割合】 ストレスを感じている人の割合(%) 0% 18~19歳 10% 20% 10.3% 20~29歳 30% 40% 60% 70% 80% 90% 100% 44.8% 26.2% 30~39歳 50% 48.8% 28.4% 40~49歳 25.4% 50~59歳 25.3% 54.6% 非常にある ややある 54.4% あまりない 52.4% ない 60~69歳 10.8% 70~79歳 12.0% 80歳以上 8.8% 47.8% 39.6% 31.3% (「健康ふくい21」最終評価アンケート) 3 今後の課題 本市の健康状況や目標達成状況から、健康の基本的要素となるそれぞれの分野で健康的な 生活習慣の定着を図ることは継続しつつ、特に以下の3つの点を重点課題とし、新計画にお いて取り組んでいくこととします。 (1)【身体活動・運動】の取組の強化 分野別では特に【身体活動・運動】で改善がみられず、 「運動習慣のある人の割合」や「日 常生活における歩数」がいずれも大きく減少している等、悪化した指標が多いという結果が みられています。 体を動かすことは、生活習慣病やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防に つながるほか、ストレスを解消し心の健康につながる等、健康づくりには欠かせないことで す。また、高齢期のロコモティブシンドローム(運動器症候群)や認知症の予防にもつなが ります。 今後、身近で気軽に運動習慣を習得し、継続していくことができるような取組をしていく 必要があると考えられます。 (2)若い世代(20歳代、30歳代)に対する健康づくりへの支援 20 歳代や 30 歳代は、進学での一人暮らしや就職、結婚等で、生活環境や生活習慣が大き く変わるとともに、生活習慣病の発症に大きく影響するライフスタイルが確立する時期とい 22 われています。 世代別での現状をみると、20 歳代男性の肥満の増加や朝食の欠食、1日の野菜摂取量が 目標とする 350gよりも約 100g少ないこと、20 歳代の運動習慣者の減少や 30 歳代で運 動習慣のない人が多いこと、喫煙率が 20 歳代、30 歳代で高いこと等、生活習慣病の発症が 多くなる年齢層よりも前である 20 歳代、30 歳代といった若い世代から生活習慣病につなが る要因が現れています。その一方で、この時期は特に生活習慣病の症状が現れることがない ため、「健康」に興味、関心が薄い世代ともいえます。 この若い世代の人々に対し、 「健康」に関心を持ってもらうための具体的なきっかけづくり や意識づけを支援していくことが大切です。 (3)職域への働きかけ 若い世代は主に働いている等、平日は家庭や地域というより、職場で過ごす時間が長いと 考えられます。この働き盛りである若い世代の人に「健康」への関心を持ってもらうために、 家庭や地域での健康づくりはもとより、職域という環境の中での健康づくりを後押しするた めの社会環境の整備が必要であると考えられます。 23
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