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青水増事業概要 Vol第 5号 (1976)
ホ タ テ ガ イの 種 苗 生 産
産 卵 誘 発 に つ い て
田中
俊輔 ・佐藤
敦 ・川 村
要
ホタテガ イの産卵誘発 は他の二枚貝の産卵誘発 と同様、水槽 中 に収容 した ホタテガイに海水 をか け流
し、海水 の温度 を徐 々に上昇 させ る温度刺激が用 い られていた。 しか し、 昨年度 は この方法で産卵誘発
を行 った ところ、誘発 に応 じたホタテ ガ イが少 く、本年度 は従来 の加温刺激 の他 に アワビ属で産卵誘発
効果 が報告 され てい る紫外線 流水照射器 をホタテガイの産卵誘発 に用 いた ところ、 その誘発効果が認め
られたので ここに報告す る。
材 料 と 方 法
産卵誘発試験 に使 ったホタテガ イは昭和 48年 12月 21日か ら昭和 49年 4月 1日にか けて、 陸奥湾 内
8カ所 で採捕 した垂下養殖 3年貝 (昭和 46年度産卵 )、同 2年貝 (昭和 47年度産卵 )、地蒔養殖 4年
生殖巣重量
貝 (昭和 45年度産卵 )、 同 3年貝の一部であ る.採捕 と同時 に生殖巣 の成熟 の 目安 として、
巣重量
を測定 し、生殖巣指数 (G。I
.
× 1
00% )を計算 した。
重量
は じめに、紫外線 流水照射器の誘発効果 をみ るために、昭和 49年 3月 20日か ら同年 4月 1日にか け
て 3回紫外線流水照射器の効果試 験 を行 った。紫外線 流水照射器中 を通 った加温海水 の対照 として、加
温 刺激 のみによ る誘発率、および各個体の誘 発 に応ず るまでの時間 をみた。
これ ら 2 つの刺激方法 (紫外線 流水照射器 およ び加温海水 )を併用 した時のホタテガイの放卵、放精
の 開始時刻 (生殖巣 の成熟度 、誘 発時の水温 は無祝 した )の頻度 を誘 発 に応 じた 77個 体 につい て 検 討
した。
同場所で同時 に採捕 され、成熟度等 の条件が同 じと思 われ るホタテガイ (横浜町産垂下養殖 3年貝 )
を現場水温 を最低水温 として、 それぞれの水温での誘発率 をみた。
雌雄の生殖巣指数 別の誘発水温 (紫外線流水照射器 を併用 )と誘発 に応ず るまでの時間、誘発時の水
温 、生殖巣指数、誘 発率 の関係 を調べた。
なお、 今回の試験 において誘発時の水温 はそれぞれ一定 に設定 して行 った。
結 果
と 考 察
生殖巣指数の場所 および時間別変化 で は湾 内各地先 の ホタテガ イ生殖巣重量 を延べ29回測定 し、 それ
らの うち、青森 市奥 内、横浜町、 むつ市 大湊地先 にお け る生殖巣指数 の、
出現頻度 を第 1図 に示す。今回
測 定 した 湾 内 各 地 のホタテガ イの生殖巣指数 は同 じ地先で もホタテガイの養殖 されて きた経歴、養殖
方法等 に差異が あ るために、一概 にその地先 を代表 している と断言す ることはで きないが、各地先 の垂
下養殖 3年貝の生殖巣指数の最高値 をみ ると、青森市奥 内で は、 G.
Ⅰ
.-23.5±3.3% (33.3- 15.6% )
(49年 2月 25日測定 )、横浜町で は 3月 13 日か ら 3月 27日までの うち 3回採捕 し、 その うちの 1回 は
- 2 8-
背 水 増事業 概要 Vol第 5号 (1976)
当セ ンタ
ー前
の筏 に垂下
してお
を行 った。
生殖巣指数
の平均
値 き、
(範 後で測定 し、合 計 4回測定
5
)
0 I L49422
49.
3.
27
√
㌧
5.2% (42.1- 18.0% ) (49.
年 3 囲 )はそれぞれ、 25.9 士
493.
27
」1
% (35.4- 23.1% ) (49年 3月 20
月日13日測定 )、 28.2 士 7.
5
了
㌧
49.
3
.
27
測定 )、 32.0士 3.8%
(33.8- 28.6%
49.
3.
l
3
「し
皮
.
3
.
l
3
49.
3
」1
2
0
r L
0士 3・
8% (39.
6
) (49年 3月 27日測定 )、30.
- 2
4
r
n.
9
.
3
t
3
49.
3.
_
むつ市
1.6%大湊産
) (49年 3月 27日測定 )で あ った。
の い、生殖巣
ホタテガイは 3月 7日、 3月 13日、 3月 27
日の 3回測定 を行
17
.3% (49年 3月 7日 )、 指数 の範 囲 はそれぞれ、41・3-
49
A
A7
_
49.
2.
40.6- 17.8% (49年 3月 13日 )、
41.7- 28.3% (49
し、生殖巣指数 の平均値
年 3月
はそ
27日 )とか な り高 い生殖巣指数を示
れぞれ、 23.5士 4.8% 、 26・0 ±
5.0% 、 3
3.1は西湾の青
生 殖巣 指数
士 3.7% を示
し、内よ
3月下旬
に高値 がみ られ た。
森 市奥
りも東湾
大湊 の方 が高 く、生殖巣 指数 の最高値 の時 闇は
の横浜町、 むつ市
J
爪
4凡
9
L
.
.
2
9
5
6
J'
9
浜町紫外線
むつ市
流水照射器中
大湊 と遅 を通
くなっ
った
ていた。
0
■■一▲■
48
H
.
r
2.
一
2J
日 ■▲一■■▲▲▲■ ■■一■▲
02
03040
1
0203040
f
O203040 ー
第 1図
ホタテ
生 ガ
殖 巣 指 数
%
化
場 所 .時期別変
イ生殖巣指数
の
注)左
むつ市大湊
よ り青森市奥
の垂 下養殖
内、横浜
3年 町
貝、
。
青森市奥 内- 横
海水
を第 2図 に示す。
N0
.1は横 浜産垂下養殖 3年貝 G.I
.の誘発効果
(哩
)-30.8 士 3・30
∫.(雄 )-28.1士 3.20
/
O
、Nd2は茂 浦産地
/
O
、G・
I。(哩 )-15.3士 2.10
/
O、 G.Ⅰ
・(雄 ) 蒔養殖 4年 貝、 G・
-15・4士 2・80
/
O
、
Nd
3は同 3年 貝、 G.
。
12.3 士 2.2% の ホ タテガ
Ⅰ
.(哩イをそれぞ触
)- 10.0士 2.験
2%
、G
.Ⅰ
.(雄 )に供
した
.
第 2L
XJ
に示 す よ うに、 No
図中の年月 日は測定月陣日
I
7
】
NO.
2
も 100 % の誘 発率、
れの場 合
時
紫外線 流 水
間
精 に要 し た時 間
放卵放
-2 9-
NO.
3
1で は雌 はいず
雄は
従来考 え られて いた に示 したよ うに、茂浦産 の地 蒔養殖 貝 は
応 じたが、 この こ とは産卵
よ りか誘
な り低 い生殖巣指数 で産卵 誘 発 に
蒔 養殖 貝は垂下養 殖 貝 と産卵状
発 の方法 もさることなが ら、地
れ今
る。
回 の試験 で産卵 誘
第 3図
ホタテガイの誘発開始 時 刻 と
じた時刻 を第 3図 に
況 が異 な って い るよ うに思 わ
発 に応 じた77個体 につ いて、 誘発 に応
精 開始 時刻 にモー ド示 す。第 3図 に示 したよ うに、軍卵、放
監翌誘放
発卵
開始
.放精
時刻 時刻
⊂コ
●
放卵 .
放 精 時刻
始 時刻 によ る もの とが み られ るよ うで あ るが、 これ は誘発 開
ガ イの産卵 し易 い時 思 われ、 この時 間帯 がす なわ ち、 ホ タテ
で、 今 回 同条件 の ホ 間帯 とは一概 に決 め るこ とはで きないの
発 を行 い、産卵 開始 時
タテガ イの誘発 開始 時刻 を変 えて産卵 誘
率
8
第 4図
●雌
ろ う。 また、放卵 、放刻 を検 討 しな い と何 と もい えないで あ
●
0
9
精 した77個体 につ いて み る と、 それ ら
の生 殖巣指数、 誘発 時の
10 日 0
0
2o
ほ 1
4
ホ タテ ガ
水 イの誘発水温
温 1
c
と誘発率
o雄
捕 した樺 浜産 垂下 養 殖 3年 貝 (G
水温 誘発
の違 いによ
って比較す る こ とは
で きないが、 77個体 の うち、
に応 じる
したの はわずか に 5個体 で、産卵 開始 時刻 の に 5時 間以上要
まT
.
:、Nd2、Nd3
時 雌雄
間の間
の誘発
で あ に応ず
った。 るまでの時 間 をみ るために
3月
27日に採
2- 3
モー
ドは
紫
し
か
つ
、
加温
℃に
9
8、
・
流水照射器を使用しても
外線
誘発はできず
・
Ⅰ(雌 )- 29・
6士 4・30/O、 G・
I・(雄 1- 30・
6士 3・00
/
o )を雌雄 それ ぞ
れ
射器を使用した場合
に雌雄
外線流水照
7・4℃
℃5
(現
個場
を水温
1個ず
つ水槽
に入れて産卵
誘発 を試 みた。 その結果 を第 4図 に示 す。 第 4図 に示 す よ うに 5.4
で は紫
)、
0
同条
%であ
た
%
100
4
っ
0
。
、
れ
た時
間
l
●
n
t
Fl
+
I5.
●
●
..
に 要5
5放 卵 放 精2
0
..し
●
●●
と
%
の誘発率を示し
20
、合
の場
℃
8
l
. 雄は
℃の時
に示
8
11
13、
・ 試験
率を
それぞれ
40
たが
はできなか
っ
、
は
では雌
た
であ
100
%
っ
にもかかわらず
、 雌は
その誘発率をみたところ
い、 それぞ 現場水温では
紫外線流水照射器を使用しても、 海水
た
であ
20%
っ
。
の誘発
100
%. したので
を加温するこ
2
℃
では雄
のみを
14℃
に使
件
のホタテガイの場合、 誘発
時間 5
20
1
■
・
.
/
●
■
5
5
2
fG
I3
[
4
5
1
温
oc
65432
9
8水
1
この
・「
r。
放精
に要す、る時間 左
右列雄
列
雌
・
図
誘発水温と放卵
5
第
0
JO H
間
30
-
青水増事業概要 Vol第 5号 (1976)
とによって産卵誘発 は一 層促進 され ることが わか った。
雌雄、生殖巣 別 に誘発 に応 じた個体 について、生殖巣指数別にホタテガイの柵卵、放精 に要す る時間
% 以上の 3段階に分 け
と誘発時の水温 の関係 をみ るた めに、年殖巣指数の値 を10- 20% 、 20- 30% 、 30
て第 5図に示 す。第 5図 に示 したよ うに、 生殖巣指数の高低 は特 に誘発 に関係 な く、第 3図に示 したよ
うに、 この産卵誘発試験 において、産卵誘発 に応 じた77個体 の うち、 1時間以内に誘発 に 応 じた も の
9.1%
、 1- 2時間24・
7% 、 2- 3時間35.
0%、 3- 4時間 15・
5% 、 4- 5時間 1
0.
4%、 5 時 間 以 上
5.7%であった。
生殖巣指数、水温 と誘発率 の関係 を第 6図、第 7図 に示す。誘発時の ホ タテガイの生殖巣指数 および
水温 のハ ッキ リしてい る21グル ープについて、生殖巣指数、誘発時の水温別 に 、便宜上 それぞれ を、生
/
0
、 20- 300
/
0、300
/
o以上、 水温 は 6℃ 以下、 6- 10℃ 、10- 15.
C.15℃ 以上のそれぞれ
殖巣指数 は10- 200
一
o
o
% 80
3段階 と 4段 階 に
分 けたが、生殖巣
60
40
指数 の段 階別 に水
20
温 と誘発率 の関係
l
oo
をみ ると、生殖巣
80
60
指数 の高低 にかか
40
o
0 8 6
0 4
O 2
0
で は産卵誘発 は行
われず、 10- 20
%で は 13.4℃ 、20
1
2o
r314J5J6
水温
J
OI
体 があ らわれ、生
℃
-10
卵 誘発 に応ず る個
89J
5
℃で、 それぞれ産
℃
6
、6
係 以下
水温は上段よりそれぞれ
第
図生殖巣指数と誘発率
の関
7
30% 以上では 8.
9
C
Oで は 9.8℃ 、
- 300
/
0 67
20
わ らず、現場水温
範囲
、 10- 15℃ 、15℃以上の
殖巣指数 が高 くな る程、低水温で産卵誘発 に応ず ることがわか
20
0
1
01
2 1
4 日; 1
8 2022 2426 28 30 32
一
4
8
6
o0
o
第 6図
1・
'
.姉 と誘発率の関
i
j
l
・桁 数
%
誘発水温