Title 不可能への挑戦: 知的冒険による夢の実現 Author(s) 染井, 正徳 Citation ファルマシア = FURUMASHIA, 30(1): 50-50 Issue Date 1994 Type Journal Article Text version publisher URL http://hdl.handle.net/2297/43964 Right *KURAに登録されているコンテンツの著作権は,執筆者,出版社(学協会)などが有します。 *KURAに登録されているコンテンツの利用については,著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲内で行ってください。 *著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲を超える利用を行う場合には,著作権者の許諾を得てください。ただし,著作権者 から著作権等管理事業者(学術著作権協会,日本著作出版権管理システムなど)に権利委託されているコンテンツの利用手続については ,各著作権等管理事業者に確認してください。 http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/ .・. し,このような基礎研究カく万が一,成果を挙げた 時,時代に革斬的な進財fもたらされ,新しい文 不可能への挑戦 イじゃ文明の発端となっていることを,歴史は証拠 知的冒険による夢の実現 金沢大学薬学部教授 染井 正徳 だてている . したがって,少なくとも独創的な科 学者と自認する,あるいは季伴者を志す者は,安 易な模倣の価値観と出花離して,上述の価値の高 い夢を窃移散す象とすべきである . そして,このよ うな獄野院が,忍指摘〈支援,奨励され,幅広 人鎖の歴史は,その時点,その時点での不可能 へ挑戦し,不可能を可能にしてきた歴史である. と ころで不可能とは,何であろうか? 不可能な対 くまた数多くの対象を標的として実施されること, 更に次ぎの時代を担う若者逮に, とのような絶体 的価値観を教育し,啓蒙することによつて初めて, 象と判断されるた めには,3つの原則があると考 その国に える . 第1に,対象が,この世に存在しない空想 であること . 第2に,理論に反すること . 第3に, 康に育まれると考える . 過去に類例がなく,演緯できないことの3つであ て,具体的な夢初l障しでも,枚挙に限りないの 21世紀という一時点,薬学という領域に限定し る . いずれかの原則を満たせば,不可能となるが, でやめるが,これまでに人類の知りえた気蹴縫は, 3つ揃った時にその度合いは,最高に達する . 一 方,糊j的研究の独創たる所以は,研究者個 僅かなものである . 「真実の大海の渚におけるづ沼 人の知的好奇心と真理探究心を因となす点にある. 万有引力発見の際に語られた言葉が示唆するよう を 一つ拾ったに過ぎない」という,ニ ュ ー トンの およそ知的好奇心の対象は,個人個人の育ち方, に,研知換となる不可能な夢は,数限りなく存 経歴や価値観により全く奨なる . この一点におい 在する . 不可能な夢は,精神的に若くて柔軟な頭 て,知的好奇心の対象は,本質的に独創的であり, 脳にのみ惹起する . 既成険金:,伝統や慣習の殻の 模倣とは異質なものである . 中に安住するようになったら,決して見つからな この知政好奇心の対象が,不可能な対象と重複 いし,たとえ見つかっても知的な冒険を樹子ずる し,その実現を夢とした瞬間に,その夢は,至高 勇気も消え去ってしまっているだろう . だから,い の価値を内に秘めることとなる . しかし,その実 つまでも,M個児やd中生の生徒のように, ど 現の確率は極めて低いものであるから,たった一 うして? 度の人生瑚搬になってしまう確率カ塙いから,こ 柔軟性と若さを保ち続けることが大事なのであろ のような夢に挑戦する人はまた極めて少ない . そ れよりは,明治時代以来先進国に追い付くために, なぜなの? と謙虚に自然に対峠する っ. どうあがいても,短い人生なのだから,横並び 国を挙げて展開された,外国のあるいは先達の研 なんてけちな根性はさっさと捨てて,若者は空想 究者の開拓した基礎研究へただ乗りする検倣に専 の世界を大事にして,大胆な発想、で不可能に羽織 心した方が,あるいは容易に推測できる変法を編 しよう! み出したり,既知の知識の組み合せに精を出した の苦しみ抜く過程の中にこそ,喜怒哀楽と生き甲 生きている間しか,頭は使えない . そ り,感受性良いアンテナを張って,我先に時流に 斐がある . 自己の存在価値は,他者の評価の中に 乗り遅れない研院を展開して報文数をかせいでい なく,主観的評価の中にあることに早〈気付くべ る方が,それなりの評価も受け,仲間もでき, 世 きだ . 間相場の幸せな一生を送れるのだろう. 峻別して存在する,不可能かつ独創的な夢の追 求は,他者による評価や雑音に影押されぬ孤独な 21世紀は,近欄艮的な成架のみにこだわらず, 真実の大海に向かつて,知的冒険に封位つ若者が, 続々と宣伝出する築学領域で有って欲しいものだ . ものである . 必然的に報文数も少なく,他者によ る理解を報酬として掠階するものではない . しか 50 Vol.30, No.l (1994)
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