Title 企業のリスク・ファイナンスと保険【序】 Author(s) Citation 九州大学経済学会経済学研究 (1999), 66(2): 129-150 Issue Date URL 吉澤, 卓哉 1999-09 http://hdl.handle.net/10252/5144 Rights This document is downloaded at: 2016-01-18T21:00:45Z Barrel - Otaru University of Commerce Academic Collections 企業のリスク@ファイナンスと保険[痔} 津 亡と 仁3 目 次 哉 感・自信といったもので,保験引受可能リスク l.はじめに ( i n s u r a b l er i s k ) ではないため,企業は保険制 2 . 企業の管理可能リスク 度に頼ることができない。 3 . 純粋リスクと保険カバー 4. 純粋リスクの保険化と保険キャパシティ 5 . 総合的なリスク・ファイナンス 他方,前者の管理可能リスクについては,企 業としては,リスク・ファイナンス手段のーっ として,保険制度の利用が可能である。しかし ながら,世界の保険業界は企業の保険需要に必 1.はじめに ずしも十分には応えてこなかった。 また,保険商品が供給されていた分野につい 企業は実に多様なリスクを抱えながら事業運 ても,米国では 1 9 8 0年代中盤に第二次保険危機 n t e r p r i s e 営を行っている1)。この企業のリスク(e が訪れて,賠償責任保険を中心に保験料は高騰 r i s k )は , 1 )スク@マネジメントの過程 ( r i s k し,保険会社の引受条件も厳しくなり,保険に managementc y c l e )を経ることで処理が可能な 頼っていた米国企業のリスク・ファイナンスは 管理可能リスク ( m a n a g e a b l er i s k )と,リスク・ しく不安定になった九このような保験危機 マネジメントの過程を経てもりスクを全ては処 は,競争が十分に(あるいは,過度に)行われ 理 で き な い 企 業 家 的 リ ス ク (e n t r e p r e n e u r i a l ている保険市場において,保険料水準等の保険 )ス r i s k )とに分類することができる 2)。なお, 1 会社の引受条件が周期的に循環する保険サイク ク・マネジメントの過程とは, 1 )スクを発見・ ル(i n s u r a n c ec y c 1eo ru n d e r w r i t i n gc yc 1e .保険 確認・測定したうえで,リスクの軽減・紡止・ 引受の景気の波のこと)の一環として起こるも 回避といったリスク・コントロール ( r i s k のとされている。 c o n t r ol)を行い,それでも残存するリスクに対 このように,保険化が可能な管理可能リスク して財務的備えであるリスク・ファイナンス について,保険業界は企業の保険需要に見合つ ( r i s kf i n a n c e )を行うことである。 1) 1 )スクを抱える主体としては,企業や個人のみな 3 ) (金光 1 9 87)参照。 また, 1 9 89 " 年 9月のハリケーン・ヒユーゴ(支払 保険金 4 7 億ドル。 S w i s sR e,s i g m aN o . 2 / 1 9 9 6による。 以下問じ), 1 9 9 2年 8月のハリケーン・アンドリュー (支払保険金 1 6 0億ドル), 1 9 9 4年 1月のノースリッ らず,闇・地方公共団体,それらの外郭自体等も考 えられるが,本稿では企業に焦点を絞る。 1 9 9 0年代前半には自然災答を担保する保険の引受が 後者の企業家的 1 )スクは,企業家の勘・直 ジ地震(支払保換金 1 1 8億ドル)と自然災答が続き, 2 )( B e n巴t t1 9 9 2 ]p p 1 1 8, 2 1 3, 2 8 9 厳しくなった。 1 2 9- 経済学研究 第 6 6巻 第 2号 た商品を必ずしも提供せず(あるいは,提供で な保険カバーが得られないため, リスクを保有 きず 4)),また,供給される保険商品も価格等 ( r e t e n t i o n )せざるを得ないのであるべ の供給条件が変動するという事情から 5) 米国 ところで,米国で自家保険やキャプティヴ保 では企業はリスク・ファイナンスを保験市場に 験の対象となったリスクは次の二つに分類でき ばかりは頼ることができなくなり,自家保険 るが,両者は全く性格を異にするので峻別が必 ( s e l f insurance)6)や キ ャ プ テ ィ ヴ 保 険 会 社 要である。 ( c a p t i v e insurance company)7)などといった保 一つめのリスク類型は,事故の発生頻度が高 険代替市場 (alternativemarket) がますます発 く , 1件 I件が少額事故であるリスクである(た 展することになった 8)。企業としては,安定的 とえば,自動車の運行リスクや労災リスク)。 こうしたリスクについては,リスク・ファイナ 4) もちろん,保険業界の商品開発努力の問題だけで はなく,保険監督よの規制が障害となることもある。 5) (森宮 1 9 97 ]3 3 5頁参照。 6)米国では,自家保険制度を制定法(連邦法)とし ても後押しするべく,リスク保有グループ。 (RRG; r i s kr e t e n t i o ng r o u p )の制度が創設された。まずは 9 8 1年製造物責任リスク 製造物責任リスクに関して 1 保有法 ( TheP r o d u c tL i a b i l i t yR i s kR e t e n t i o nA c to f 1 9 81)が制定され,さらにその対象を一般賠償責任 巴n e r a lL i a b i l i t yI n s u r a n c e )のリスク全般に 保険 (G R i s k も拡大するべく 1986年 に 改 正 が な さ れ た ( e n t i o nAmendm 巴n t so f1 9 8 6 )。 R巴t また,最近は,交互リスク保有グループ ( r e c i p r o c a l r i s kr e t e n t i o ng r o u p )という, ')スク保有グループ とキャプティヴ保険会社の中間的な形態の設立が, 米閣のヴァーモントリ 1とハワイ州で認められるよう e f ( O s t e r m i l l e r1 9 9 8 ] . になった。 R 7)キャプティヴ保険会社とは,企業の専属保険会社 のことであり,キャプティヴ保険会社法の下に設立 9 9 8年末時点で世界に約 3,4 0 0社が存在す される。 1 e e,( BI 19 9 9 ]p 3 . ると言われている。 S 安定的な保険カバーの入手が困難であることの他 にも,キャプティヴ保険会社を設立・活用する意義 はある。たとえば,キャプティヴ保険会社に資金プー ルを設けて資本金と保険準備金を運用できる(さら には,キャプティヴ保険会社をグローパルな資金運 用センターとすることもできる),コストの安い再 保険マーケットに直接アプローチできる,元受保険 と再保険の料率の差や再保険手数料によって保険の 収益部分を保険会社から取り戻すことができる,一 定の')スクを保有するので企業のリスク・マネジメ ント体制が構築しやすくなる,等々である。 なお,キャプティヴ保険会社全般については, [ B a w c u t t1 9 9 7 ]( D o w d i n g1 9 9 7 ]( B I1 9 9 9 ) (森宮 1 9 9 7 ] [臼吉(浮)1 9 9 6 )を参照。また, ( 林 z 湯川 1 9 9 8 ) は,キャプティヴ保険会社の単なる紹介にとどまら す¥日本でもキャプティヴ保険会社法を制定のうえ, 東京または沖縄にキャフティヴ市場を創設すること を提言している。 8)米国においては, 1 9 9 7年時点で企業のリスク・ ファイナンスの 48%を保険代替市場が占めていると れている。 Re , . f ( B o w e r s1 9 9 9 )p 2 9 . また, 勺 - 130 ンスの観点のみから判断すると,保険を手配す るよりも,企業自身がリスクを保有した方が有 利だと言われている 10)。なぜなら,損失コスト の総額が予測可能で,かつ,企業の準備金で十 分に対応できるため, リスク処理の対価である 世界においては, 1 9 9 5年時点で企業のリスク・ファ イナンスの 25%を保険代替市場が占めていると e f .,[ S w i s s R巴 1 9 9 6 ]p ll.ただし,保 れている。 R 険代替市場においては労災保険の占める割合が大き し1。 こうした保険代替市場は,伝統的な保検制度とは 異なるリスクの移転手法であるので,代替的危険移 ART; a l t e m a t i v er i s kt r a n s f e r )と呼ばれて 転手法 ( いる。なお,たとえば自家保険はリスクの移転を伴 わないが,保険制度を利用しないリスク・ファイナ ンス手段のー稜であるので,代替的危険移転手法に 分類されることが多い。 代替的危倹移転手法全般の説明については, ( S w i s s R e1 9 9 9 ] [後藤 9 9①②]を参照。 9) こうした保険代替市場が発展していくと,それに 付槌するサーどスが求められるようになる。たとえ c l a i ms e r v i c e ),キャプティヴ保険 ば,事故の処理 ( 会社の運営, ')スク・コントロール等々である。こ れらは保険会社の得意分野であるので,企業は保険 には加入せずに,必要なサービスだけを保険会社に 求めるようになり,やがて保険会社もこうしたサー ビスのみの提供を売り込むようになる。これが,保 険事業のアンバンドリング ( u n b u n d l i n g )と呼ばれ るものである。 な お , ア ン バ ン ド リ ン グ と は ば ら 売 り J とい う意味であり,保険商品の中核であるリスク引き受 け以外の,保険付随業務のみの提供という意味合い で用いられる。 1 0 ) Re , . f ( G r 巴巴n e巴t. a l1 9 9 2 ]p 3 0 . ところで,例年一定額の損失が予定されるような ')スクは保有した方が良いとすると,企業向けの生 命保険(たとえば,団体定期生命保険)の分野のリ 企業のリスク・ファイナンスと保険[序] 保険料に含まれる保険会社の経費や利益を勘案 自由化・規制緩和の時代が訪れ,高品内容や料 すると,リスクを保有した方が得策となるから 率・サービスの競争に時代を迎えた l2)。臼本で である l1)。こうしたリスク分野については,企 は米国ほどの極端な保険サイクルは今後も起こ 業自身の判断で,自発的に自家保険やキャプ らないかもしれないが,保険業界が結果として ティヴ保険会社にリスク・ファイナンスが流れ 企業の保険需要に必ずしも十分には応えてこな ていく場合がある。 かった事情は米国と同様である。したがって, 二つめのリスク類型は,保険カバーがそもそ も存在しなかったり,あるいは存在するにして 保険業界としては企業に「適切な保険を安定的 に供給」すべく不断の努力をすべきである。 も,適当な価格で安定的に継続入手ができない そのためには,まず,金業の抱える管理可能 リスクである o こうしたリスクについては,企 リスクを洗い出し(次述 1 2. 企業の管理可能 業としてはリスクを保有せざるを得ない。しか リスク J ),適切なリスク・コントロールを経て しながら,こうしたリスクがそもそも保険化で もなお残存するリスクのファイナンス手段とし きない保険引受不能リスク (uninsurablerisk) て,現在保険業界が提供している商品が十分か であれば仕方がないが,そうではないのであれ 否かを検討する(後述 1 3. 純粋リスクと保険 ば,保険業界としては保険商品の開発や安定的 カバー J )。もし保険需要に十分には応えていな な保険の供給に努めるべきである。 いのであれば l3) その原因を解明し,対策を講 翻って日本に自を移すと,保険業界にも漸く じたうえで(後述 14. 純粋リスクの保険化と 保険キャパシティ J ),新商品開発や商品内容の スクは,大企業であれば保有すればよいことになる (集積リスクが心配であれば,一旦キャプティヴ保 検会社でリスクを引き受けたうえで,超過損害再保 c e s so fl o s sc o v e r )を手配すればよい)。け 険(巴x れども, E3本では現実にはそうなっていない。 なお,米国メイン州のキャプティヴ保険会社法で は,関係険形態のみではあるが,生命保険や健康保 険や年金についてもキャプティヴ保険の対象にする M a i n巴R e v i s e dS t a t u t e s,T i t l e ことが認められている ( 2 4 A ; Maine I n s u r a n c巴 Cod , 巴 C h a p t e r8 3 ;C a p t i v e I n s u r a n c eC o m p a n i e s,%702)。 1 1 ) 逆に,こうしたリスクは事故が多発するので, 故処理やリスク・コントロール等が不可欠である。 これを社内で対応したり,あるいは,保険会社から アンバンドリング・サービス(前掲注 9参照)とし て購入したりするよりも,こうしたリスク分野の保 険は保険会社聞で十分な競争がなされているので, 保険ごと購入した方が安価であるとの見方もある。 たとえば,ブリティッシュ・ペトロリアム社 ( B r i t i s hP e t r o l e u m ) は1 9 9 1年に保険手配の見醸し ,0 0 0万米国ドルまでの損害については保 を行い, 1 険を手配し,それを超える損害については自家保険 に変更したのである(ただし,操業地の法制で強制 e e,[ E c o n o m i s t 付保が求められる場合を除く) S 1 9 9 4 ]p p 2 0 21 . いずれにしても,企業自身が保有か保険手配かの いずれが得策であるかを判断して選択すればよいの である。 改善を前向きに検討する必要がある(後述 15. 総合的なリスク・ファイナンス J )。 そうでないと,たとえ極端な保険サイクルが 日本で起こらなくとも,企業の抱える管理可能 リスクと保険商品のミス・マッチが企業を保険 代替市場へと過震に向かわせることになってし まうであろう。たとえば,東京デ、ィズニーラン ドを経営するオリエンタルランドは,保険制度 を利用せずに,地震リスクを直接,資本市場へ 1 2 )1 9 9 6年 4月に保険業法が全面改正され(平成 7年 法律 1 0 5号),子会社方式による生損保栢互参入が始 1 9 9 6年 1 0月),また,損害保険の料率算定会 まり ( 制度も保険業法全面改正時の純率算定会制度を経 て,純率部分の参考料率制度に移行した ( 1 9 9 8年 7 月。金融シズテム改革法のーっとして法改正がなさ れた)。 1 3 ) 淫論的には保険化が可能であるにもかかわらず, 諸般の事情から保険化に至っていないリスクのこと を保険業界が保険引受不能リスクであると説明して いるに過ぎない場合もあるので,注意が必要である。 9 9 8②]参照。 [臼吉(信) 1 0 1 3 1- 経 済 学 研 究 第 6 6巻 第 2号 と 移 転 す る こ と に な っ た の で あ る 14)。 まず,明らかに企業家的リスクのみであるもの また,詳細は後述するが,広範な管理可能リ (たとえば,経営方針,会社形態、の選択,事業 スクの保験商品化は金融商品との融合や競争を 展開,工場・庖舗の畏開,的社との合弁・合併, 生むが, 技術開発・新製品開発など)のみを除外して, 日本でも今後ますます金融業界との坦 根が低くなっていくことと併せ考えれば,顧客 広く企業の抱えるリスクを拾いあげてみること ニーズを出発点(原点)とする事業運営へと経 にする。 企業においてリスクがどのような形で顕在化 営の重心を移動させていく将来の保険業界・金 融 業 界 の 方 向 性 に も 沿 う も の で あ る 15)。 さらに見方を変えると,こうした方向性は世 するかに関しては,種々の分類方法が考えられ る が 17) とりあえず¥ここでは企業の抱える管 8つ に お お 界のリスク・キャピタルの有効活用につながる 理可能リスクを含む事象を,以下の ものとも評価できょう まかに分類してみた(完全な分類ではないので, 1 6 )。 重複する部分がある)。 第 1は , 企 業 価 健 の 評 価 に 関 す る リ ス ク で あ 2. 企 業 の 管 理 可 能 リ ス ク r e p u t a t i o n ), の れ ん , ブ ラ ン ド , 格 り,名声 ( 検討を始めるにあたっては,企業の抱える 理可能リスクをまず確認する必要がある。本来 付け機関による格付け,株価,就職人気ランキ ングといったものが低下するリスクである。 第 2は , 法 務 ・ 総 務 に 分 類 さ れ る リ ス ク で あ は企業リスクを管理可能リスクと企業家的リス クとに分けなければならないが,ここではひと 1 7 ) 亀井教授は企業リスクを,全般危険(全般管理の 1 4 ) 東京ディズニーランドを経営するオリエンタルラ ンドは,特別目的会社を通じて地震リスクのキャッ ト・ボンド ( c a tb o n d . 大災害発生の有無で償還条 件が変動する債券のこと)の取引を成立させた(19 9 9 年 S月)。発行額は l億ドルが 2本で,合計 2倍 、 ド ルである。 発行目的は地震発生時の入場者減少による収入減 少に備えて,運転資金を確保することにある(地震 発生時には元本僕還が免除される)。これは,神戸 ポートピアランドが,兵庫県南部地震によって,ボー トピアランド自体の直接被害は少なかったものの, 入場者減少による大幅な入場料減収に踊ったのを包 の当たりにしたためである。 なお,企業の利益損失リスクを広範にカバーする 保険として f企業費用・利益総合保険 Jがあるが, その普通保険約款では地震リスクは免責となってい , 2章 2条 2J 貰2号。東京海 る(1章 2条 2項 2号 上火災の約款による。以下,約款条文につき陪じ)。 1 5 ) 保険数理と金融工学の融合については[森本 4頁を参照。 1 9 9 9 ]2 5…4 1 6 ) さらに,こうしたリスクの融合商品は,保険会社 が企業の財務部門等との接触を増やす良い機会をも たらすであろう。というのは,従来,保険会社は, 顧客企業のやで保険手配を担当する部門(総務部門 等)と接触する機会が多かったが,企業リスク全般 を管理できる保険商品(や金融商品との融合商品) を開発できれば,企業の経営部門や財務部門との接 触も増えていくと思われるからである。 貧関,ワンマン経営などに生産危険(新製品開発, 安全管理,品質管理など),販売危険(売上不振, 売掛金回収閤難など),財務危険(資本調達,資金 管理,設備投資,資産保全など),労務危険(労働 争議,人件費,退職金,高齢化など)の 5つに分類 す る ([亀井 1 9 9 5 ]1 0 2頁 , 1 3 5頁以下参照)。 )ス また,スイス湾保険会社は,典型的な企業の J クとして次のようなものを掲げる ( R e f .,( S w i s s Re 15 )。 1 9 9 5 ) p. 第 1はのれん・名声 ( g o o d w i l l,r e p u t a t i o n )に関す るリスクであり,経営の失敗,広報の不備,低品質, 製品廃棄の問題,詐欺的行為といったリスクがある。 第 2は資産 ( a s s e t s )に関するリスクであり,火災・ 爆発,自然災答,建物倒壊 J 労働争議による設備 破壊・生産妨害,機械の故障といったりスクがある。 第 3は収益 ( r e v 巴n ueeamingc a p a c i t y )に関連する リスクであり,重要顧客の信用状況,為替,金利と いったリスクがある。 第 4は事業 ( b u s I n e s s ) に関するリスクであり, 原材料の不足,重要データの喪失,オペレーティン グ・システム(供給電力,水,蒸気,排出,冷熱・ 加熱システム)の喪失,情報伝達手段の故障,爆発 物の爆発,製品への悪質ないたずら,市場の変化, 消費者行動の変化といったリスクがある。 第 5は,人間 ( p e o p l e . 従業員および顧客)に関 連するリスクであり,事故,重要人物の不在, 物質や放射性物質の意間的放出,ストライキといっ たリスクカtある。 1 3 2- 企業のリスク・ファイナンスと保検{序] り,法令遵守,企業倫理,人権尊重,環境保護 3. 純粋リスクと保険カバー といったものがこれにあたる。 第 3は企業内の人事関連リスクであり,採用, 一般に,リスクは,損失のみが発生する可能 育成,退職(死亡,境失,解雇,転職などに 無断欠勤,長期病欠,不正,誘拐,人件費,社 oss only r i s k )である純粋リ 性のあるリスク(l 員構成,労働争議など,多岐にわたる。 スク (pure r i s k ) と,利得または損失が発生 第 4は財務リスクであり,最終的には,貸借 ossorg a i nr i s k )で する可能性のあるリスク(1 対照表 (B/S),損益計算書 (P/L),キャッ i s k ) とに分類 ある投機的リスク (speculativer シュ・フロー,資産運用,資本調達などに結果 できるとされている 19)。そして,通常は純粋リ となって表れる。 n s u r a b l e ) スクにのみ保険化の可能性がある(i 第 5は資産リスク(知的財産権のような無形 と雷われている 20)。 この分類により保険可能性の有無を決する考 国定資産を含む)であり,資産の取得・形成,減 え方については疑問があるが(後述 5参照), 値・消耗・段損・喪失。披侵害,不稼働・不活用・ 回収不能といった場面でリスクが顕在化する。 第 6は情報関連リスクであり,違法・不当な 情報入手,社内の情報伝達不全,社外への情報 発信不足・誤報道,顧客情報や企業秘密の漏洩 などが問題となる。 第 7は当該企業の事業運営自体のリスクであ り,部品・顔材料やユーティリティ(電力,水 道など)の調達(価格も含む),生産・保管や 施設運営,製品の販売(売上・価格・売り掛け の信用リスク)や流通。護送といった様々なリ スクを抱えている。 第 8は賠償責任・保証責任・費用の負担や負 担額増大に関するリスクであり,労災,セクシャ ル・ハラスメント,当初に予定されたプロジェ クト費用の増加といった内部的な問題、と, PL 事故,製品保証,リコールといった外部的な問 題とに分かれる。 このように,企業は実に様々な管理可能リス クを抱えながら事業運営を行っている。なお,こ うしたリスクの発生原因を考えると,企業の外 部に由来するものもあるし,企業の内部に由来 J の分類も可能である 18)。 ) するものもある(また, 5I - 1 3 3- 1 8 ) メーア教授とヘッジズ助教授は,企業リスク ( b u s i n e s sr i s k )の発生原因を次のように分類してい る 。 R e f .,[Mehr& Hedges1 9 6 3 ]p 3 1 1 . まず,企業 1 )スクの発生原因を純粋リスクと投機 )スクに分ける。純粋リスクは,静態的リスク 的1 ( s t a t i cr i s k ) と同義と捉えているが,資産の物理的 損壊をもたらすもの,詐欺や犯罪,法律に基づく賠 償責任,販売先や原料手配先の財産損害,重要な従 業員や経営者の死亡・廃失に分類する。 他方,投機的 1 )スクは,動態的リスク ( d 戸泌n i cr i s k ) と同義と捉えているが,経営リスク ( m a n a g e m e n t r i s k ),政治的 1 )スク ( p o l i t i c a lr i s k ),技術革新リス クCin n o v a t i v er i s k )に分類する。さらに,経営 1 )ス クを市場リスク ( m a r k e tr i s k ),財務リスク,生産 1 )スクに分類する。 )スクの発生原因 また,スイス湾保険会社は企業 1 を次のように分鎮している ( S e e,[ S w i s sRe1 9 9 5 ]p )スクを企業の管理・統制外のリ 1 2 )。まず¥企業 1 g l o b a lr i s k s )と , スクであるグローパル・リスク ( 企業の管理・統制やファイナンスの対象となる組織 1 )スク ( o r g a n i s a t i o n a lr i s k s )とに分類する。 グローパル・リスクは,政権崩壊,気象変動,人 口爆発,宗教原理主義,核拡散,伝染病蔓延といっ たリスクである。 他方,組織リスクはさらに事業リスクとハザード ・1 )スクに分かれる。事業リスクは,金融リスクや 市場リスク(証券,商品,金利,信用など)や政治 )スク(戦争,社会,テロ,国家行為,規制など) 的1 である。ハザー F・1 )スクは,事業活動リスク(人 物的損害,経済損失,刑事事件,データなど) や損害賠償責任リスク(契約上の責任,専門家責任, 不法行為責任,制定法上の責任など)である。 1 9 ) Re , . f [Mowbraye t .a l1 9 6 9 ]p p 6…8 ,[Mehre t .a l O u t r e v i l l e 1 9 9 7 )p p 3 4 . 1 9 8 5 ]p p 3 9 4 0, ( C r a n e1 9 8 4 )p p 4 5, [ V a u g h a n& V a u g h a n 2 0 )R e f .,( 1 9 9 5 ]p 9 . 経 済 学 研 究 第 6 6巻 第 2号 ここではひとまずこの考え方に従って議論を進 現存する企業向け保険商品としては,財物の める。すなわち,管理可能リスクのうち,保険 損壊リスクを担保する物保険(火災保険,貨物 化の可能性が高いとされる純粋リスク 2l)につい 保験,動産総合保険,機械保険など 22))や,損 て,日本の保険業界は十分な保険カバーを企業 害賠償責任等のリスクを担保する賠償責任保険 に安定的に提供しているかどうかの検討である (事業者賠償責任保険,企業包括賠償責任保験, (なお,企業家的リスクはそもそも保険化には 椴抗保証責任保険など 23))や,人貨の運搬用具 馴染まないので,やはり検討対象とはしない)。 の運行リスクを担保する総合保険(自動車保険, 結論から言うと,企業の抱える純粋リスクに 航空保験,船舶保険など 24)),人の生死リスク ついて,保険会社は「新種保険 J (海上保険や や疾病・傷害リスクを中心に担保する生命保険 火災保険のような主要保険分野以外の新しい保 や医療保険や傷害保険(法人向けの田体定期保 険分野を,損害保険業界では「新種保険」と総 険・傷害保険・権外旅行傷害保険加など),企 称している)を中心に,企業の保険需要に合致 業の費用リスクや利益喪失リスクを担保する費 するように商品開発に努めてきたが,必ずしも 用・利益保険(約定競行費用保険,企業費用・ 十分な保険化ができている訳ではない。 利益総合保険,異常気象保険など 26)),信用リ 2 2 ) 火災保険は動度・不動度に隠して,火災を中心と するリスクを担保するものであり,貨物保険や動産 総合保険や機械保険は,貨物や動産や機械の媛壊リ スク全般を担保するものである。 2 3 ) 事業者賠償資任保険は,企業の賠償責任負担リス クを広範に担保するものである。施設所有(管理) 者賠償資任保険と誇負業者賠償責任保険と生産物賠 償責任保検を組み合わせたものよりもさらに担保範 囲が広い。 企業包括賠償資任保険は,別名,アンブレラ保険 と呼ばれるものであり,第一次保険や高額な免黄金 額を超過するリスクを広範に担保する。 E 毘庇保証責任保険は,製品に取疫がないことを保 証することによって負担するリスクを担保するもの である。 2 4 ) 自動車保険,航空保倹,船舶保険は,それぞれ自 動車・航空機・紛船の運行リスクを按保するもので ある。 2 5 ) 傷害保険は人の傷害リスクを中心に担保するもの であるが,海外旅行傷害保険は疾病も含めて担保し ている。 2 6 ) 約定履行費用保険は,被保険者と第三者との約定 に基づいて,被保険者が一定の場合に負担すること になる費用リスクを担保するものである。 企業費用・利益総合保険は,保険の目的が損害を 受けて営業が休止・阻害されたために生じる収益喪 失リスクや収益減少防止費用を担保するものである。 一方,異常気象保険は,異常気象により営業が休 止・限害されたために生じる収益喪失リスクや収益 減少防止費用を担保するものであり, 1 9 9 9年 5月に 東京海上火災から発売された(従来から,レジャー 業者や興業者向けの天候保険は存在した)。なお, 歌米では AIG社やスイス再保険会社が商品化して いる。 また,保険荷品のほとんど全てが純粋リスクのみ を対象としてきたことは事実である。 R e f .,( W iI li a m s &H e i n s1 9 8 9 )p 1 4, ( R e j d a1 9 9 8 )p p 7, 21 . なお投機的リスクとは異なって,純粋リスク は‘ i n s u r a b l e ' である J とある部分でメーア教授が 述べているのは,保険可能性という意味よりも,保 険務品が用意されているので保険手配が可能である ee,(Mehr 1 9 8 6 ]p 5 4 . という意味合いであろう。 S 2 1)ヴォーハン教授夫妻は純粋リスクを次のように分 S巴e,( V a u g h a na n dVaughan1 9 9 5 ]p p 9 類している ( 1 0 ). 第一の分類は人的リスクであり,早期の死亡 ( p r e m a t u r ed e a t h ),老齢 ( d e p e n d 巴n to I da g巴),病 気や後遺障害 ( s i c k n e s so rd i s a b iI it y ) ,解 ( unemployment)がこれにあたる。 d i r 巴c t 第二の分類は財産リスクであり,直接損害 ( I o s s )と 間 接 損 害 ・ 結 果 損 害 ( i n d i r e c t o r “c o n s e q u e n t i aJ "I o s s ) にさらに分類できる。 第三の分類は賠償責任リスクである。 第四の分類は他人の契約不履行による損失発生リ r i s k sa r i s i n gf r o mf a i l u r eo fo t h 巴r s ) であり, スク ( たとえば,工事を発注したが工期内に完成しない, お金を貸したが期眼内に返済してくれない,といっ たりスクがこれにあたるとする。 また,ゴードン氏はリスク・ファイナンスの対象 となるリスクとして,財物損壊,賠償責任,営業停 止 ( b u s i n e s si n t e r r u p t i o n ),人的損失を挙げている。 See, ( G o r d o n1 9 9 2 )p 2 . そしてまた,亀井教授は,純粋リスクを次のよう に 分 類 す る ((亀井 1 9 9 5 ]1 0 1頁参照)。まず,純粋 1 )スクを人的リスクと物的リスクとに大別し,物的 )スク,収益リスク,責任リ リスクをさらに,財産 1 スク,費用リスクに分類するのである。 A件ム qu 企業のリスク・ファイナンスと保険[序〕 スクを担保する保証保険・保証証券 27) .信用保 傷害保険に付帯する)31)という損害保険商品が 険(住宅ローン保証保険,金融保証,取引信用 存在する。けれども,死亡以外の退職リスク(駈 保険などお))等々があるが,必ずしも十分では 職・出産・介護等による退職)に対応する保険 ない。 はない。 たとえば,人事関連リスクでは,企業構成員 たとえば,財務リスクでは,キャッシュ・フ の不正リスクについて,従業員の不正リスクを ローの一般的な保護について,保険商品は存在 担保する身元信用保険は存在するが,役員の不 しない。むしろ,大事故を担保する企業保険で リスクを担保する保険は存在しない。身元信 は,かなりまとまった金額の保険金を支払うこ 用保険は,保険証券記載の被保証人の不誠実行 とがあるが,現在の保険会社の保険金支払は, 為による企業の損害を担保するが(同保険普通 大事故であればあるほど損害処理に時間がかか 保険約款 1条),企業の役員は被保証人として り(その代わり,正確な損害処理と適正な保険 想定されておらず¥また,役員の故意・重過失 金支払が実現している),企業の円潜なキャッ による損害は免責とされている(向約款 3条 1 シュ・フ口ーの維持にはやや欠けることになる 号)29)。 ことカtある 32)。 また,従業員の退職リスクについても,死亡 キャッシュ・フローの保護については,現在 退職については,ヒューマン・バリュー特約(総 は保険の代わりに金融商品が対臨している 33)。 合福祉団体定期保険に付帯する)30)という生命 たとえば,むしろ保険会社が顧客の立場で利用 保険商品や,事業主費用担保特約(法人向けの している金融商品として,非常時貸出枠予約方 式 (contingentcreditf a c i l i t y )34),非常時サーブ 2 7 ) 民法上の保証であり,保険ではない。損答保険会 社は保証証券業務を営むことが特に認められている ( i 呆険業法 3条 6項 ) 。 2 8 ) 住宅ローン保証保険は,金融機関が融資した住宅 ローン債権の信用 1J スクを担保する保証保険であ る。金融保誌は,金融取引に関する債務者の信用リ スクを担保する保証証券である。取引信用保倹は, 企業(小売業を除く)の物品販売に伴う信用リスク を担保する信用保険である。 2 9 ) なお,会社役員賠償責任保険は役員が被保険者と なるものであり,直後に企業を守るものではない。 もちろん,付保によって役員の賠償資力を確保する ことができ,間接的に企業自体の損答回復が容易に なる面はある。けれども,役員に損害賠償責任が生 ずるような場合には,会社役員賠償責任保険の法令 違反免責条項等(伺保険普通保険約款 S条)に該当 して,保険てん補がなされない可能性も高い。 3 0 ) 従業員全員を被保険者として企業が付保していた 「団体定期保険 (Aグループ)J (通称,自体 A) に ついて,企業が従業員や遺族に付保事実や保険金請 求事実を開示していなかったことが社会問題となっ た。そのため,この団体 A の販売を停止し,代わり に発売した総合福祉団体定期保険へと切り替えて いったものである(19 9 6年秋以降)。 この総合福祉団体定期保険の被保険者はやはり従 業員であるが,主契約は家族が保険金受取人となり (企業の退職金規程等にリンクする),特約である ヒューマン・バリュー特約は企業の抱える従業員死 亡退職 I Jスクを定額で担保するものになっている。 特約の保険金額は主契約の保険金額以下,かつ, 2 ,0 0 0万円以下とされており,また,付保事実は従 業員に開示して承諾を得ることになっている o 31)法人の役員・従業員が死亡・後遺障害を負ったと きに,法人が支出する葬儀費用・代替者採用費用等 を実費で法人(本特約の被保験者)に補償するもの 9 9 9年に東京海上火災によって開発された として, 1 ものである。 3 2 )そもそも,損害保険では円滑なキャッシュ・フロー の維持をあまり重視してこなかったのである。実損 てん補方式の見直しも含めて,損害保険商品の意義 と在り方を再構成してみることが必要であろう。 また,花来型の{呆換でも,少なくとも保険金の積 極的な内払いによる企業のキャッシュ・フローの保 護は十分に可能であろう。 3 3 )( B o o t h1 9 9 7 ] (臼吉 1 9 9 8f]参照。 3 4 ) 非常時貸出枠予約方式とは,予約手数料 (commitmentf e eo rb o o k i n gf e e )を事前に支払って おいて,その代わり,非常時に金融機関から一定金 利で貸し出しを受けることを約すものである。 たとえば,ハワイ・ハリケーン救済基金<HHRF; 巴R e l i e fF u n d )やフロリダ-ハリケー H a w a i i' H u r r i c a n ン 異 常 災 害 基 金 (FHCF; F l o r i d a ' s H u r r i c a n e C a t a s t r o p h eF u n d )が利用している。 1 3 5 経済学研究 ラス・ノート発行方式 ( C S N ;contingentsurplus 第 6 6巻 第 2号 たとえば,事業リスクでは,施設・設備(た a o t e s ) 3 5 ),非常時増資プット ( CEP; contingent とえば,工場や!吉舗〉の不稼働リスクは,施設・ equityput)3 6 )といった金融蕗品がある。どれも, )ティ(電力・ 設備自体の損壊や構外ユーティ 1 一定事象の発生をトリガーとするものであり, ガスなど)の供給停止による不稼鏑損害を担保 保検商品に極めて近いものである。現在のとこ するものはあるが(企業費用・利益保険),不 ろ保険会社は利用者の立場に立っているが, I 非 意の不稼働損害(たとえば,第三者による操業 常時 (contingent)Jの決め方次第では,保険に 妨害や原材料の納品遅延などによる不稼働損 を広く担保する保険は存在しない。 きわめて近いもの,あるいは,まさに保険商品 I 非常時 J とい たとえば,賠償責任リスクでは,知的財産権 う保験事故の決め方の問題と,損害のてん補と 侵害による賠償金負担の問題があるが,このリ いう損害保険の大原知の問題であろう。 スクを担保する保険はない。 1 9 9 4年 6月に知的 にすることもできょう。要は たとえば,資産リスクでは,財物の損壊リス 財産権訴訟費用保験という費用保険が開発され クは物保険で担保されているが,異常減髄リス たが,これは訴訟関係費用等の出費をてん補す ク(通常以上の予定外の減価が発生する 1 )スク るものであって,賠償金自体をてん補するもの のこと)の保険化は日本ではなされていない。 ではない。 このように,企業の抱える純粋リスクについ 米国では,リース期間終了時のリース資産価値 の異常減少について,残存儲値保険 (residual て,必ずしも十分な保険商品化はなされていな value insurance)として既に商品化がなされて い。今後ますます企業の摺えるリスクが拡大し, いる 37)。 また,企業のリスク・マネジメントがやがて一 層洗練されていくことと併せ考えれば,保険業 3 5 ) 非常時サープラス・ノート発行方式とは,保険会 社が信託口座を設立して投資を募る。保険会社はオ プション料を借託口座に支払う代わりに,非常時に はサープラス・ノート(米毘の相互会社に発行が認 められている劣後債の一種。保険(業法)会計原則 ( S A P ;s t a t u t o r ya c c o u n t i n gp r i n c i p l e s ) においては, 貸借対照表の資本の部に計上される)を発行して, 一定条件で信託口疫に引き受けてもらうことを約す ものである。 企業会計原則(一般に公正妥当と認められる会計 e n e r a l l ya c c e p t e da c c o u n t i n gp r i n c i p l e s ) 原則。 GAAP;g の適用を受けない棺互会社には有用で、ある。たとえ ば¥ネーションワイド社 ( N a t i o n w i d e I n s u r a n c e G r o u p . この会社は棺互会社である)や,アークライ ト相互保険会社 ( A r k w r i g h tM u t u a lI n s u r a n c e )が利 用している o 3 6 ) 非常時増資プットとは,保険会社が{言託口康を設 立して投資を募る。保険会社はオプション料を信託 口座に支払う代わりに,非常時には優先株を発行し て,一定条件で信託口康に引き受けてもらうことを 約すものである。 企業会計原票Ijの適用を受ける株式会社に有用であ IC o r p o r a t i o n ) が利用し る。たとえば, RLI社 ( RL ている。 3 7)結局,この残存価値保険は資産所有者の資産減価 リスクをヘッジするものである。 界がこのまま腕を扶いていると,企業は保険か ら逃げ始め,保険代替市場でのリスク・ファイ ナンスを推進していくことになろう。 4. 純粋リスクの保験化と保険キャパシティ これまで純粋リスクの保険化が十分には進ま なかった原因は種々考えられる。自由な商品設 計・料率設定ができなかった規制の問題もあろ うし,新たな商品化に積極的に取り組まなくと も一定の利益が確保できた保険業界の構造問題 異常減耗,事故減価,陳腐化などに備えることが できるし,また,会計・税務における資産減価基準 と実態との主主離を埋めることもできょう。さらには, 製造業者にとっても,一定使用期間経過後の下取り 価格を保障できれば,製品の販売促進にもつながろう。 136 企業のリスク・ファイナンスと保険[序] もあろう。けれども,こうした問題は自由化の 価リスクの危険測定はなかなか図難である。 時代を迎えて解治されつつあるので,保険会社 こうしたキャパシティ不足の対処方法として としては積極的に商品開発を行って,企業の抱 保険業界で従来から採られてきた方法はリ える純粋リスクを広範に,かつ,安定的にカバー スク保有と保険の組み合わせ」と する保険を供給する努力を続けるべきであろ リスクの再移転」である o そしてまた,これら つ 。 の対処方法は新たな発展段階を迎えている。 この課題の実現にあたって現在遺されている r 保険引受 (1)保有と保険の組み合わせ 最大の課題は,キャパシティ ( c a p a c i t y 保険引 リスク保有と保険の組み合わせとは,企業(保 受能力のこと)の不足である。保険化が進んで 険契約者)と保険会社がリスクを分担する方法 いないのは,臣大なリスクや,単独では巨大な である。たとえば,総支払限度額を設けたり 40) リスクではないが集積して大きなリスクになる 縮小てん捕条件(損害額に一定割合を乗じたも ものや,これまで保険会社の引受経験が乏しい のを保険金として支払うこと)を設定したりし がために,引受条件や料率の決定のための十分 て,損害額の一部を保険契約者に負担してもら な統計資料を持ち合わせていないリスクなどで うものである。保有と保険の組み合わせによっ ある。こうしたリスクは,保険会社としては, て,単に企業と保険会社の両方のキャパシティ なかなかその全部を引き受けることができな を利用できるだけでなく,保険化しにくいリス い。たとえば,地震リスクは巨大であり,かつ, クの保険化が可能となる。典型的には,当該リ 東京湾岸にリスクが集積しているし(1995年の スクについて保険会社が十分に情報を持ち得な 兵庫県南部地震を参照 38)),台風リスクは日本 い場合(たとえば,商品取引における信用リス 中で集積する可能性がある ( 1 9 9 1年の台風 1 9号 クを担保する取引信用保験),保険事故の発生 を参照 39))。また,環境汚染リスクや財物の減 や損害額の拡大に被保険者の意図が介在するよ うな場合(たとえば,製品の 1 )コール費用を担 3 8 )兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災。 1 9 9 5年 1月 1 7 日。マグニチュード 7 . 2 ) では, 1 , 0 0 0 { 意ドル以上の 物的被答が発生した。 ただ,保険金で支払われたのは,そのうちの約 3 % ( 2 5億ドル)である。他方,そのちょうど 1年前に 9 4年 1月 1 7臼 。 米国で発生したノースリッジ地震(19 マグニチュード 6 .8 )では物的被害の 40%にあたる 1 2 5億ドルが保後金で支払われた。 R e f ., [ B o o t h1 9 97 ] p p 2,5,2 6 . 両者の差違は保険の付保率・付保内容によるとこ )スク ろが大きいが,東京湾岸では阪神地方よりも 1 が集積しており,かつ,地震リスクの付保割合も高 いので,東京湾岸に大震災が発生すると,兵庫県南 部地震よりも大きな保険損害が予想される(ただし, 家計地震については政府再保険が用意されている o 地震保険に関する法律 3条 ) 。 3 9 )1 9 9 1年 9月に日本を縦断した台風 1 9号で,損害保 険会社は 5,6 70億円(約 5 7億ドル)を支払った。そ のため,こうした大災害に備えて積み立てていた奥 常危険準備金を取り崩したが,過去連綿と積み立て てきた異常危険準備金(火災保険分)が 4割強も減 少することになった。損害保険会社はその後,異常 危険準備金の積立に努めたが,台風 1 9号到来夜前の 9 9 7年 3月末であり,田復に 5年 水準を超えたのは 1 間を要している。 異常危険準備金(火災保険分)の 1 9 8 0年 3月末以 来の推移については,末尾の「表:異常危険準備金 (火災保険)の積立残高推移」を参照(インシュア 0年版。 ランス損答保険統計号(昭和 56年版 平成 1 保倹研究所)を基に作成した)。 なお, El本の充受損害保険会社の嵐災リスクに関 する出再率が低いので,強力な台風が日本を襲った ときには,損害保験会社の資本や異常危険準備金に e f .,[ S w i s sRe 1 9 9 7②)pp13 与える影響が大きい oR 1 5 . 4 0 ) 地震保険に関する法律(昭和 4 1年法律 7 3号)基づ いて 1 9 6 6年ピ創設された地震保険制度は,家計分野 の地震リスクを担保するものである。民営損害保険 )スクを抱えきれないので政府再保険 会社のみでは 1 を組み込んだ制度となっているが,さらに,リスク 負担総額を一定限度にするため総支払限度額が設定 されている(19 99年 4月に増額改定されて 4 .1 兆円 になっている)。 137 - 経 済 学 研 究 第 6 6巻 第 2号 は,リスクが移転しない部分の方が大きい 45)), 保する生産物回収費用保険)である。 こうした保有と保険の組み合わせで,最近発 企業と保険会社問でのプ口フィット・シェアリ 展 し て き た も の に フ ァ イ ナ イ ト 保 験 ( 五nite ングの特徴を有する(保険成績の結果が良けれ i t e ), insurance)41)がある。これも限定的に(五n ば保険料の一部が企業に払い庚されたり,逆に 企業が保険会社にリスクを移転するものである 悪ければ保険料の追加支払の義務が生じたりす ので,保有と保険の組み合わせの一種と言える。 る ) 。 具体的には,オーダーメイド 42)の長期保険契 このファイナイト保険は,企業から保険会社 約で,保険料収受から保険金支払までの間の保 へのリスク移転は限定的であるにもかかわら 険会社の保険料投資収益の発生を前提に保験料 ず,企業にとって実に有用な保険商品である。 まず第一に,従来の保険では得られないよう が割り引かれており,保険引受リスクが移転す る部分と移転しない部分 43)との組み合わせから なカバーを実現することができる。たとえば, 構成されていることが多く 44)(保険料の構成割合 従来の保険形態では保険会社に引き受けてもら 41)金融再保険 ( f i n a n c i a lr e i n s u r a n c e )の 発 展 形 態 で 9 6 0年代のロイズのタイ ある。金融再保険の歴史は 1 ム・アンド・ディスタンス ( t i m ea n dd i s t a n c e )と いう商品に溜る。なお,金融再保険については, ( R i c e ., 1R e-14-19, (吉津 1 9 9 4 ]9 3頁以下, 1 9 9 2 ] Vol [ B u n n e r1 9 9 5 ] 参照。 この金融再保険は臼本でも監督当局によって保険 として認められた(出再保険会社の財務状態改善が 目的であるためか,名称は「財務再保険 j とされて 997年 1 2汚 2 5臼 大 蔵 省 銀 行 局 長 通 達 ・ 蔵 銀 いる。 1 2 7 9 9号,および,向内容を改めて規定した 1 9 9 8年 6 月 8日大蔵省告示 2 3 3号を参照)。そして,東邦生命 1 9 9 8年 4月の G Eブアイナンシャル・ア の事例 ( シュアランスとの合弁による G Eキャピタル・エジ ソン生命の設立に際してにおよび,第百生命の事 例(19 9 8年 3月の財務内容改善に際して,および, 1 9 9 9年 4月のマニュライフ・ブァイナンシャルとの 合弁によるマニュライフ・センチュリ一生命の設立 に際して)で用いられた。 ただし,金融再保険の本来の g的は,再保険料投 資収益を出再考に還元しつつ長期のリスク移転を行 うことによって,より広い 1 )スクのカバーをを安定 的に供給することにあるが,この財務再保険では出 湾保険会社の財務内容の短期的改善に主眼があるよ うである(なお,東邦生命は財務内容の改善に努め 9 9 9年 6月に破綻した)。 たが, 1 なお,金融再保険も含めたファイナイト保険全般 M o n t i&B a r i l e1 9 9 5 ],[ S w i s sRe の形態、については [ ] , [日吉(信)1 9 9 8④,⑤]を参照 1 9 9 7① 4 2 ) ファイナイト保険は倒別企業毎のオーダーメイド 商品であるため,キャプティヴ保険と相性が良いと 言える。 4 3 ) 保険引受リスクが移転しない部分についても,タ イミング・リスク ( t i m i n gr i s k,a c c e l e r a t i o nr i s ko r e a r l y payment r i s k )や投資リスクや信用リスクが保 険会社に移転している。 4 4 ) 但し,リスク移転部分とリスク非移転部分とで, 3I J できるとは限らない。 常に保険料を峻 5 えなかった特殊なリスクや巨大なリスクの保険 化ができるし 46) 全く別種の稜数のリスクを担 保する (multil i n e )保険の設計もできるし,さ 旬 らには, リスクが顕在化して事故が既に発生し たもの(ただし,事故による損失負担額が未確 定のもの)についても遡及的に保険化が可能で ある 47)。これは,リスクの移転が摂定的だから こそ可能となった商品設計であるとも言えよう 0 - 138 - 4 5 ) したがって,一般の保険商品に比べて,企業は保 険会社の信用 1 )ス ク を よ り 多 く 負 担 す る こ と に な る 。 4 6 ) たとえば,米国には,特定のプロジェクト全体の )スク,為替リスクなど) リスク(返済保証,金利 1 d e b tf u n do r を包括的に担保するデット・ファンド ( c o n t r a c tf a c i l i t a t i o n )という保険商品も存在するよう である。 4 7)たとえば,米国ラスベガスの M G Mグランドホテ J L-火災(19 8 0年 1 1月。死者 8 5名)では,ホテルは, 事故発生後に賠償責任リスク(具体的には,賠償金 b a c kd a t e d 支払)を担保する保験期間遡及保険 ( i n s u r a n c e )を手配した。 この保険は,事故発生を知った後に,保険震任開 始臼を事故発生前に遡及させて事故発生ベース ( o c c u n ' e n c eb a s i s )の 保 険 契 約 ( こ こ で は 賠 償 責 任 保険)を締結するものである。これは,保険料の収 受から賠償保険金支払までに相当の長期間を要し (損害賠償請求訴訟の決着に時間がかかるためにそ の間に保険会社は受領した保険料(保険経理上は支 払備金となっている)を高利回りの投資に回して運 用益を稼げると判断したものであり,保険料は見込 Iり引かれていた。詳細は[金 み支払額よりも大幅に害J 9 87 )2 8 3 2頁を参照。 光 1 企業のリスク・ファイナンスと保険{序] (リスクがフルに保険会社に移転するのであれ ア・キャプティヴ (pure c a p t i v e or s i n g l e ω p a r e n t ば,到嵐,保険会社としては保険化ができない 白 リスクである)48)。 レンタ・キャプティヴ ( r e n t合司c a p t i v e )50)といっ 第二に,長期契約であるので,企業は安定的 な保険カバーを得られる。 p t i v e ),グループ・キャフ。ティヴ ( g r o u pc a p t i v e ), たものがあるが,最近,セル・キャプティヴ ( c e l 1 c a p t i v e )という新しい形態も出現してい 第三に,貸借対照表や損益計算書の内容が改 る。たとえば, 1997年 2月にはガーンジー (The するし,また,長期契約であるので収益や p r o t e c t e d ChannelI s l a n do fGuernsey)で PCC ( キャッシュ・フローの変動を最小限に抑えるこ c e l lcompany)として立法化され,また, 1998年 とができる。 5月 に は ケ イ マ ン (Cayman I s l a n d s )で SPC また,ファイナイト保険とは別に,古くから リスク・ファイナンスの方法のーっとして存在 ( s e g r e g a t e dp o r t f o l i o company)として立法化さ れた 51)。 するキャプティヴ保険会社も 49) 一種の保有と 以上のように,保有と保険の組み合わせでは, 保険の組み合わせで、あることが多い。リスクは, てん補限度額や縮小てん補条件の設定といった 企業(キャプティヴ保険会社の親会社)からフ 伝統的方法とは別に,欧米ではファイナイト保 口ンティング保険会社(企o n t i n gcompany.主に, 険とキャプティヴ保険会社が重要な位置を占め 企業所在閣における海外直接付保規制を回避す つつある(特に,キャフティヴ保険会社は米英 る目的で,出再を前提に保険を引き受ける企業 5 0 ) レンタ・キャプティヴとは,単独ではキャプティ 所在閣の保険会社のこと)へ,そしてフ口ンティ ヴ保険会社の設立が困難な中小事業者向けに,キャ プティヴ保険会社の仕組みをレンタルするものであ る。このレンタ・キャプティヴへの参加方法は,議 決権なき優先株の引受による。 9 9 9年 5月にレン なお,米国ヴァーモント州でも 1 タ・キャブティヴを認めるに去ったが,個々のセル (レンタ・キャプティヴへの参加者)単位では親会 社以外の第三者のリスクの引き受けな禁じているた め,‘ s p o n s o r e dc a p t i v e ' と呼んでいる。 5 1)セル・キャプティヴとは,中心となるコア・セル ( c o r ec el 1o ru m b r el 1 ac o m p a n y )の下に,複数の従属 セル ( s u b s i d i a r yc el1)を設けるものであるが,セル・ e g a l e n t i t y ) キャプティヴ全体で一つの法的主体 O となる。資産は,コア・セルの資産と従属セルの資 産とに分かれる。そして,各従属セルの活動は独自 になされ,また,各従属セルの資産は他の従属セル の活動の影響を受けない。つまり,従属セルの債権 者は当該従属セルやコア・セルの資産に請求してい くことはできるが,他の従属セルの資産に請求して いくことはできない。 B u t t e r wOlth ガ ー ン ジ ー の PCC については, [ 1 9 9 8 )[ B u t t e r wOlth 1 9 9 9 )[ G u a r d r i s k1 9 9 9 ][ B I 1 9 9 9 ]p p 2 5 3 0を参照。また,ケイマンの SPCにつ いては, [ K i l t a t t i c k1 9 9 9 ] を参照。 なお,ガーンジーやケイマンのように制定法で制 度を創設し,その規定に従ってセル・キャプティヴ を設立するのではなく,南アフリカやジブラルタル ( G i b r a l t a r)のように,特別な制定 j 去を持たずにコ モン・ローに基づく契約でセル・キャプティヴを設 立する所もある。 ング保険会社からキャプティヴ保険会社へと, それぞれ保険形態および帯保険形態で移転され る 。 これだけでは企業グループ全体として見れば リスクの保有であるが,けれども実際には,フ 口ンティング会社が一部のリスクを出再せずに 保有したり,キャプティヴ保険会社で保有でき ないリスクを再々保険として他の再保険会社に 再出再したりしており,保有と保険の組み合わ せになっているのである。 キャプティヴ保険会社の形態としては,ピュ 4 8 )1 )スクがフルに保険会社に移転しないという点で も,ファイナイト保険はキャプティヴ保険と相性が 良いと言える o そのため,キャプティヴ保険会社か ら出再する再保険形態としてファイナイト保険が用 e , . f [ G o r d o n1 9 9 2 )p p 1 4 3 いられることがある。 R 1 4 6 . 4 9 ) キャブティヴ保険会社の始まりは, 1 9 1 9年のブリ ティッシュ・ペトロリアム社が設立したタンカ一保 T a n k e rI n s u r a n c e ) であると言われている。 険会社 ( 1 3 9- 経済学研究 第 6 6巻 第 2号 ではかなり浸透している)。日本においても, 移転手段ではあるが,さらに安定的で豊富な すでにキャプティヴ保険会社を所有している企 キャパシティを確保する必要がある。具体的に 業が数十社あるが,今後,キャプティヴ保険会 は,保険市場よりもはるかに資金量が豊富な資 社とファイナイト保険 52)はリスク・ファイナン 本市場へとリスクを再移転するのである 55)。資 スの重要な手設になっていくものと考えられ 本市場にとっても,高い 1 )ターンが期待できた る。そうして,企業と保険業界とで企業リスク り,他のリスク(金利リスク,為替リスクなど) をうまく分担し合う仕組みを構築するのである。 とは異種のリスクであるがため,資産ポート ( 2 ) 保険引受リスクの再移転 ブオリオの一つに組み込むのに適していたり 保険引受リスクの再移転とは,保険会社が保 と,メリットカtある 56)。 こうして保険引受リスクを資本市場へとつな 険で引き受けたリスク(保険引受 1 )スク。 underwriting r i s k )をさらに第三者に移転する ぐことが必要となるが,既にいくつかの手段が 方法である。伝統的にこのリスクの再移転は再 考案・実施されている。その中でも特に有用と 保険という形態で行われてきた。 思われるのが,上場されている保険オプション しかしながら,再保険は世界の保険業界内部 でのリスク移転にすぎず,十分なキャパシティ がある訳ではない。特に,自然災害リスクの再 (insurance o p t i o n )と保険引受リスクの証券化 ( s e c u r i t i z a t i o n )商品である 57)。 上場されている保険オプションとは,具体的 移転を考えると,海外の再保険者に出再する必 要があり(国内の再保険取引で保験引受リスク を消化しでも,結局は日本の保験業界にリスク が集積してしまい,リスク分散の観点からは不 適当である),梅外の再保険市場のキャパシティ を当てにする他ない。また,再保険についても 保険サイクルが存在するため 53) 保険会社は安 定的な再保険手配ができず,ひいては企業への 安定的な保険カバーも提供できなくなる慎れが ある 54)。 もちろん,今後も再保険は有用なりスクの再 5 2 ) ファイナイト保険は,日本では,財務再保険とし て,再保険形態でのみ認められたことについては前 掲注 4 1参照。 5 3 ) 現在は,再保験料率が比較的抵いソフト・マー s o 仕 m a r k e t )の状態にある。 ケット ( 5 4 ) さらに,湾保険という制度では出障者は得保険者 の信網リスクを負担することになる(保険事故が発 生したときに得保険者から湾保険金を回収できない かもしれない)。これに対し,保険オプションでは 取引所規則によって履行が確保されているし,また, 証券化では保険会社が証券化商品の発行代金を担保 イヒすることができて,逆に投資者が信用リスクを負 - 1 4 0 うことになる(ただし,証券化商品では保険会社の 信用リスクについて,適当な信用補完措置が講じら れるであろう)。 5 5 ) [吉津 1 9 9 4 ) は,こうした観点から問題提起を行 い,その手段として保険先物・保険オプション ( in s u r a n c ef u t u r 巴s / o p t i o n s )と金融再保険を紹介する とともに,日本への導入可能性を検討したものである。 また,こうした資本市場へのリスク移転の観点か ら警かれたものとして [ S w i s sRe 1 9 9 6②) (後藤 1 9 9 7 c ) を参照。 5 6 ) 保険引受リスクを伝統的再保険ではなくて資本市 場へと移転する意義は,本文で述べたように,資本 市場の巨大なキャパシティを利用できたり,投資者 )スクと無関係なリスクをポー にとっても他の金融 1 トフォリオに組み込めたりすることが挙げられるこ とが多い。 しかしながら,そうでなくて,存保険制度に非効 率性が存在すること(すなわち,再保険制度に存在 するモラル・ハザードを回避せんがために,一般に, 長期的かつコスト高な存保険関係を構築しなければ )ス ならないこと)に開題の所在があり,保険引受 1 クを資本市場へと移転することの意義は,この非効 ee, 率性を税却することにあると唱える説もある。 S ( D o h e r t y1 9 97 ]p p 7 1 5 7 1 6,(Ha n 'i n g t o n1 9 97 ]p p 7 2 0 . 7 21 5 7 ) 上場保険オプションや保険引受リスクの証券化の 古頭デ 1 )パティブとしてのオプションや金 他にも, J 利スワップが照いられることがある。たとえば,三 井海上火災は 1 9 9 8年 3月に金利スワップの方法で地 )スク奇資本市場へ移転した。 震に関する保険引受 1 企業のリスク・ファイナンスと保険〔序} には,シカゴ商品取引所 (CBOT;ChicagoBoard るオプションである。両者とも,保険会社から o f Trade)58)やバミューダ商品取引所 (BCOE; 資本市場へと保険引受リスクを移転するために Bermuda Commodities Exchange)59)に上場され 開発された商品である(ただし,単なる投機と ているデリパティブのことである。 しても利用することができる)。 具体的には, CBOTの高品の場合には,米国 他方,保険リスクの証券化とは,保険引受リ の大災害 60)による保険会社の見込み損害額であ スクを証券化して資本市場で販売し,保険引受 る PCS指数 6])を指標とするオプションであり, 1 )スクを資本市場へ移転するものである 65)。一 BCOEの商品の場合には,米国の大気関連リス 般的には,元受保険会社(あるいは,キャプティ ク (atmosphericr i s k s )6 2 )による,住宅所有者総 ヴ保険会社)が海外(タックス・ヘイブン等) 合保険 (homeownersm u l t i ω p e r i li n s u r a n c e )63)の に特別自的再保険会社 (SPRC; s p e c i a l purpose 対象物件の損率 Ooss-to-value or damage r a t e ) r e i n s u r a n c e company)を設立し,再保険業務の であるガイ・カーペンタ一大災害指数 (GCCI; 認可を取得させる。元受保険会社は SPRCに証 GuyCarpenterCatastrophel n d e x )64)を指標とす 券化の対象となる保険引受リスクを出再したう えで,この SPRCが証券化商品を発行している。 5 8 ) CBOTの保険デリバティブは,まず 1 9 9 2年 1 2月に また,元受保険会社と SPRCとの間に再保険会 保険先物および保険オプションとして上場された。 その後, 1 9 9 5年 9月に商品内容が変更されオプショ ンのみとなって現在に至っている。 詳織は, ( 吉j 翠 1 9 9 4 ]7 1頁以下, [CBOT 1 9 9 5 ) [高尾 1 9 9 5 ],[高毘 1 9 9 6 , ] [後藤 1 9 97 ]4 8頁以下, [高毘 1 9 9 8 ]7 2頁以下を参照。 5 9 ) BCOEは1 9 9 6年に設立され, 1 9 9 7年 1 1汚から保険 オプションの取引が開始された。 BCOE 保険オプ ションの詳細については, (後藤 1 9 9 9③]を参照。 BCOE の 保 険 オ プ シ ョ ン も 基 本 的 な 考 え 方 は CBOTのものと同一であるが,受け渡しされる金額 が損率に比例せずに一定額であること,リスクが大 気関連リスクに限定されていること,損率算定の対 象となる保険種怠が住宅所有者総合保険に限定され ていること,などといった点が異なっている。 6 0 ) BCOEのような特定の災害事由に限定されず,保 ,5 0 0万米国ドル以上の保険金支払損 険対象物件に 2 害を生じた大災害を全て対象にしている。 61 ) PCS 指 数 は , 米 国 保 険 サ ー ビ ス ・ グ ル ー プ 社 ( A m e r i c a nI n s u r a n c eS e r v i c eG r o u pl n c.)の一部門で P r o p e r t yC l a i m s S巴r v i c e s )という非営利 ある PCS ( の機関が算出している。 9 9 2年の上場当時は I S O( In s u r a n c eS e r v i c e s なお, 1 O f f i c e )に特定の保険会社から報告された損害額を用 いていたが,ノースリッジ地震(19 9 4年 1月)の損 9 9 5年 9月に 害額反映が十分ではなかったため, 1 PCS指数に変更された。 6 2 )大気関連リスクとは,ハリケーン,竜巻 ( t o r n a d o ), 雷雨 ( t h u n d e rs t o r m ),暴風 ( w i n ds t o r m ),電 ( h a i J ), 冬の嵐 ( w i n t e rs t o r m )などである。 6 3 ) 米国の住宅所有者向けの総会保険であり,住宅や 住宅内の動産の財物 1 )スクと,個人の賠償責任リス クとをカバーする保倹である。 6 4 ) ガイ・カーペンタ一大災答指数は,再保険ブロー 社が介在することも多い 66)。 さらに,米国では海外の SPRCを経由せずに, 元受保険会社がオンショアで(米国内で)証券 化商品を発行する方法が制度化されつつある。 全米保険庁長官会議 (NAIC;NationalAssociation o fI n s u r a n c eCommissioners)では, 1999 年 3月に 誼接発行を可能とするモデル・口一 (Protected C e l l Company Model Law) の草案を作成して カーであるガイ・カーペンタ一社 ( G u y C a r p e n t e r l n c.)の子会社であるインデックス社 O ndex C o . )が算出している。 6 5 ) これまでに擦害保険リスクの証券化の実例で判明 しているものは, 20~30 件程度である。 なお,証券化全般については, ( S w i s sRe 1 9 9 6 ②)(後藤 1 9 9 7 ),(日吉(信)1 9 9 8⑨⑩@)(武田 1 9 9 8 ] を参照。 6 6 ) 特に証券化においては,再保険者には,保険号 i 受 )スクの評価, 1 )スク引 リスクの引受および、移転, 1 受のキャパシティの提供(保険カバーの追加,ベー )スクや為替リスクのヘッジ),再保険カバー シス・ 1 の復元等々といった種々の役割が期待されている。 &Co 吋 S e e,( M u n i c hRe1 9 9 9 ]. なお,保険代替市場全般の発展においては,元受 保険会社よりも再保険会社の方が一歩リードしてい ることについては, B u s i n e s sl n s u r a n c e,A u g .3 1, 1 9 9 8,p 8を参照。 1 4 1- 経 済 学 研 究 いる。この草案では,保験会社の中に保護セル ( p r o t e c t e dc e l l )を設置して, SPRC と同様に証 第 6 6巻 第 2号 関する証券化も期待されるとことである。たと えば,農業関係のリスク,航空・海上リスク, 券化対象資産を分離して保全を図る仕組みとなっ 環境汚染リスク,予定よりも高頻度の受診によ ている 67)。また,イリノイ州の非免許保験者 る長期の就業不能保険 ( d i s a b i l i t y insurance)の ( n o n .admitted i n s u r e r )である INEX ( I nsurance 引受保険会社のリスク,気象関係のリスク,新 開 1998年 1 1月にイリノイ州保険庁 種保険(会社役員賠償責任保険,専門職業人賠 から,保険引受 1 )スクの証券化をオンショアで 償責任保険,労災保険など)の引受保険会社の 行う認可を初めて得た。その方法とは, INEX 1 )スク,生命保険や自動車保険の引受保険会社 に特別目的シンジケート ( S P L S ;specialpurpose のリスク,信用 1 )スクといったものが証券化の Exchange)は , SPRC と同様に 可能性のあるリスクとして挙げられている7ll。 証券化対象資産を分離して保全を図る仕組みと 以上のように,保験引受リスクの移転では, l i m i t e ds y n d i c a t e )を設置して, 。 なっている 68)問 再保険制度という伝統的方法とは別に,保険オ )スクは,今のところ自 設券化の対象となる 1 プションと証券化高品が注目されている。日本 然災害が中心であるが 70) 今後は他のリスクに においても,保険引受リスクの証券化は実施さ れているが 72) 今後も積極的に保険引受リスク 6 7)この草案に基づいてロード・アイランド州とイリ 再保険を用意したのは米国の著名な投資家であるパ フェット氏 ( Bu 妊' e , t W.)が率いるパークシャー・ハ ザウェイ社 ( B e r k s h i r eH a t h a w a y ) である)。 71 ) Re , . f[ M c L e a d1 9 9 8 J p 4,[ W i n s t o n& S o u t 巴 r 19 9 8 ] p 4 8 . 実際,欧米では生命保険の証券化が始まった。 米国では, 1 9 9 6年から 1 9 9 7年にかけて,スカンディ ア生命(Ame r i c a nS ca n d i aL i f eA s s u r a n c eC o r p o r a t i o n ) が総額2 . 4 5 億米国ドルの4 本の証券化商品を発行した。 9 9 8年にドイツのハノーヴァ一再保険 欧州では, 1 (Hannov 巴rR e )が期間 3年 , 1億 DM ( 5,5 6 0万米 国ドル)の証券化商品を,同年に英国のナショナル・ プロピデント・インスティテューション ( N P I ; N a t i o n a lP r o v i d e n tI n s t i t u t i o n .相互会社)が期間 2 5年 超 , 2 . 6億ポンド ( 4 .1 6億米国ドル)の証券化商品 を発行した。 Re , . f [ B e a t t y1 9 9 8 ) ,[ D o l a n1 9 9 9 ] p p 4 0 4 1, [ R a e1 9 9 9 ] . また, ド イ ツ の ゲ ー リ ン グ (Ge r 1 i n g C r e d i t I n s u r a n c e G r o u p ) が1 9 9 9年 3月に信用 1 )スクの証 券化を行っている。 7 2 ) 東京海上火災が 1 9 9 7年 1 1月に南関東の地震リスク の証券化を行い,これにより企業向け地震保険の キャパシティを長期的に確保した。具体的には,東 京海上火災が地震保険をスイス再保険へ,そしてさ らに特別目的保険会社に出再し,この特別目的保険 会社が期間 1 0年,額商 l信、米国ドルのキャット・ボ ンドを発行する。このキャット・ボンドは元本保証 の有無により 2つのトランシェに分かれ,南関東の 一定地域に発生する地震のマグニチュー r の大小に より償還条件が異なっている。 また,安田火災海上は 1 9 9 8年 7月に,日本全体の )スクの証券化を行い,これにより風災リスク 風災 1 のキャパシティを長期的に確保した。具体的には, 安回火災海上が火災保険をミュンヘン再保険へ,そ ノイ州では立法化が進められ,ロード・アイランド 州では法案が成立し, 1 9 9 9年 6月には州知事の署名 もなされて即日発効した(イリノイ州では,法案は 1 9 9 9年 5月に成立したが ( S .B .1 1 1 5 ),州知事の署 名が未だなされていなしサ。 R e f .,B u s i n e s sI n s u r a n c , 巴 J u n .7 ,1 9 9 9, p 2 . 6 8 ) この方法を用いて,世界で初めてのオンショアで のキャット・ボンド(地震の保険引受リスクが対象) が 1999年 3 尽 に 発 行 さ れ た 。 R e f ., B u s i n e s s I n s u r a n c e, Ma r .2 9, 1 9 9 9, p p 1…2, B u s i n 巴s sI n s u r a n c e, A p r .5, 1 9 9 9, p p 1, 2 9, TheReview, May1 9 9 9, p 8 . 6 9 ) このように,オンショアでの証券化商品の発行環 境が整うと,そうした地域では再保険者の役割は現 在よりも小さくなるかもしれない。 さらに一歩進むと,一定規模のリスクがあれば, 保検会社を全く経由しないでも,このキャット・ボ ンドを企業自身が発行することも可能である(こう した債券は‘ c o r p o r a t eb o n d ' と呼ばれている)。た とえば,オリエンタル・ランドの地震リスクの キャット・ボンド発行(前掲注目参照)では保険会 社を通していない(したがって,キャット・ボンド は,正確には,自然災害などの大災害 1 )スクを証券 化した債券のことであり,大災害に関する保険引受 リスクを証券化した債券に限定されるものではない)。 7 0 ) た と え ば , カ リ フ ォ ル ニ ア 州 地 震 公 社 (CEA; C a l i f o m i aE a r t h q u a k eA u t h o r i t y .1 9 9 6年 1 2月発足) )スクの一部をヘッジする手段 が,引き受けた地震 1 と し て , キ ャ ッ ト ・ ボ ン ド の 一 種 で あ る ERB ( e a r t h q u a k er i s kb o n d )の発行を計画したことが有名 である(償還期間 1 0年,地震担保期間 4年,元本保 証,地震発生の場合は無利息)0 Re , . f( S w i s sR巴1 9 9 6 ②] p p I 2 1 4 .ただし,この証券化は実現しなかった (再保険の手配の方が安価だ、ったため。なお,この 1 4 2- 企業のリスク・ファイナンスと保険[序] を資本市場につないでいくことで,保険業界の 台風(気象庁の定義による 7 4 ))の数や,地震の キャパシティ不足を解消することが必要だと思 特定地域における一定のマグニチュード(気象 われる。 庁発表)75)といった,客観性の高いインデック これまで,保険市場と資本市場との交流はほ スの方が好まれよう。 とんど、なかった。今後,保険引受リスクを資本 当然,保険会社はベーシス・リスク ( b a s i s 市場に流していくためには,資本市場の常識に r i s k )76)をかかえることになり,再保険のよう 合致し,かつ,魅力のある商品作りが保険業界 には保険引受リスクを完全にへッジすることは に求められている。両市場の文化はあまりにも できない(ただし,逆に再保険では,出再者た 違うため,相互理解の進展が必要であるが,保 る保険会社は再保険者の信用リスクを抱えるこ 険引受 1 )スクを資本市場に流すには,資本市場 とになる)。しかしながら,それは保険業界の 側の常識に沿った商品企画が不可欠である。た 側で工夫すべきことであり,資本市場の常識の とえば,ブアイナイト保険のような保険形態の 範間内で,ベーシス・リスクが最小限となるよ ままで資本市場に保険引受リスクを流すことに うな商品設計をすればよいのであるし,一定の は抵抗があろうが 73) デリパティブや証券化商 指標と実際の損害額との関係について調査・研 品であれば資本市場に馴染みが深い。また,開 究を進めればよいのである 77)。 示・透明性(モラル・ハザードを回避すること 7 4 ) 気象庁によると,台風とは,熱帯低気圧のうち, 最大瞬間風速が 1 7 .2 m/ s (=6 2 km/b)以上のもので ができる)や商品内容の分かり易さも重要であ ある。 7 5 ) オリエンタル・ランドの地震リスクのキャット・ ボンド(前掲注 1 4参照)でも,マグニチュードを指標 として用いている(舞浜のオリエンタル・ランドを 中心として,半径 1 0キロ以内でのマグニチュード 6.5 以上の地震,半径 5 0キロ以内でのマグニチュード 7 . 1 以上の地震,半径 75キロ以内でのマグニチュード 7.6 以上の地震がトリガーとして規定されている)。 入場者減少による収入減少 1 )スクに備えるために 債券を発行したのだが,入場者の減少数を指標とす るものではないのは,客観性のある分かり易い指標 の方が投資者に好まれるからである。 東京海上火災が仕組んだ、キャット・ボンド(前掲 7 2参照)でも,マグニチュードを指様として用いて いる(他方,安出火災海上が仕組んだ、キャット・ボ 2参照)では,保険金支払額という顕 ンド(前掲注 7 在化したリスクの実額を指標として用いている)。 7 6 ) ベーシス・リスクとは,ヘッジ取引における本線 的資産の価格と派生商品の価格の差のことである が,ここでは,保険引受リスクのヘッジを行う保険 会社自身に発生した損害額と,デリパティブや証券 化商品の利用によって保険会社が回収できる金額と の差を指している。 7 7 ) CBOT の保険オプションでは, PCS 指数(前掲 注6 1参照)という保険会社の見込み損害額を用いて いる。この PCS指数はハリケーンの強度などといっ た客観性の高いインデクッスではないものの,やは り個々の保険会社における実際の損害額との聞に ベーシス・リスクが存在する。この PCS指数のベー シス・リスクの程度に関する研究として, [ H a n ' i n g t o n &Niehaus 1 9 9 9 ) (州レベルの PCSt 旨 るため,保険会社の損害額や損害率といった指 標よりは,特定地域を通過した一定強度以上の 1 してさらに特別目的保倹会社に出再し,この特 3 J E l 的保険会社が期間 5年(議長 7年),額面 8 , 000万米 国ドルのキャット・ボンドを発行する d このキヤツ ト・ボンドは元本保証がなく,安田火災海上の風災 保険金支払実額が一定額を上回ると,元利の全部ま たは一部が没収される。 7 3 ) ファイナイト保険の形態で保険引受リスクを資本 市場に流すことは,単に資本市場側に心理的な抵抗 感があるのみならず,この荷品の買い手自身が再保 険者にならなければならないという欠点もある。 けれども,自然災害の保険料率が高騰した 1992 ~93 年にはいくつかの金融機関が参画してパミュー ダに財産保険の大災害リスク専門の湾保険会社を設 立しており,金融業界の再保険事業への直接的な参 入は既に始まっている。 たとえば,ミッド・オーシャン再保険 CMid-Ocean 巴. 1 9 9 2年 8fl設立。資本金 700百万ドル。 R e i n s u r a n c J Pモ ル ガ ン が 参 画 ), セ ン タ ー ・ キ ャ ッ ト 社 ( C e n t r eCat . 1993年 5月設立。資本金 312百万ドル。 モルガン・スタンレーが参画),ルネッサンス碍保 険( R e n a i s s a n c eR e i n s u r a n c e .1 9 9 3年 6月設立。資本 4 0百万ドル。 G E,ウオーパーグ・ディロン・ 金2 1 )ード証券が参画),グローパル・キャピタル再保 G l o b a lC a p i t a lR e i n s u r a n c e .1 9 9 3年 6月設立。 険 ( 2 5百万ドル。ゴールドマン・サックスが参 資本金 4 画)などといった再保険会社が設立された。 14i Aせ q δ 経 済 学 研 究 第 6 6巻 第 2号 ( 3 ) ファイナイト保険(またはキャプティヴ 保験引受リスクの一部を資本市場へさらに移転 する作業を一度に行うものである。 保険会社)と証券化の組み合わせ 保険キャパシティ不足の解決策には, 1 1 )ス また,伝統的保険をキャプティヴ保険会社が ク保有と保険の組み合わせ J (企業と保険業界 引き受けて,それをブアイナイト保険(+超過 との 1 )ス ク 分 担 ) と 保 険 引 受 リ ス ク の 再 移 損害額再保険 (excessoflossreinsurance)80)) 転 J (保険業界から資本市場へのリスク移転) で出再したり,ブアイナイト保険をキャプティ の方法があり,それぞれの分野で最近発展して ヴ保険会社が引き受けて,そのままファイナイ いる方策として,ブアイナイト保険およびキャ ト保検として出再することも考えられるのであ プティヴ保険会社と,保険オプションおよび証 る81)。 券化とがあることは述べたとおりである。 5. 総合的なリスク・ファイナンス これらの方法は,個別に実施することもでき るが,いくつかを組み合わせてリスク・ファイ ナンスを行うことも可能である。たとえば,ブア 以上のような方法でキャパシティ不足が解消 イナイト保険で引き受けたリスクを証券化して できれば,あとは企業の管理可能リスクを担保 (あるいは,保険オプションを舟いて)資本市 する保険萌品をどのような形で開発するかである。 場に流したり 78) キャプティヴ保験会社が引き ところで,企業の管理可能リスクは純粋リス 受けたリスクを証券化して(あるいは,保険オ クと投機的リスクに分けられ,一般に前者は保 プションを用いて)資本市場に流したりするの 険化の可能性があるが,後者は保険化の対象に である 79)。つまり,まず企業リスクを企業と保 はならないと言われており,そのため純粋リス 険業界とで分担し,次に保険業界が引き受けた クの保険化のみをこれまで検討してきた。しか しながら,企業にとっては,純粋リスクと投機 的リスクの区間は必ずしも本質的なものではない。 数のデリパティブは有効なヘッジになることを論註 M a j o r1 9 9 9 ) (州レベルよりも郵便 している)や, ( 番号単位の方がよりベーシス・リスクが小さくなる と論じているが,メージャー氏がガイ・カーペン タ一社(前掲注 6 4参照)の副社長であることを割り 引いて評価する必要がある)を参照。 )スクに関して,保険業 なお,米国南東部の風災 1 界全体の損害額 (PCS社の算出数字による)と特 定の再保険会社の損筈額との差を交換する商品 ( b a s i ss w a p ) をスイス湾保険会社が開発したとの ことである o S e e,( P r i n c e1 9 9 8 ]p p 2,6 0 . これは, まさに CBOT の保険オプションのベーシス・リス クを解消する商品であると言えよう o 7 8 ) ファイナイト保換と証券化の組み合わせ箆品の石I 能性については,以前に指摘したことがある。{吉 j 翠1 9 9 4 ]1 5 4頁参照。 現実に米国では, BFIRST( B le n d e dF i n i t eI n s u r 加 c e a n dR i s kS e c u r i t i z a t i o n )などといった名称で商品化 されている。 7 9 ) (臼吉(浮 ) 1 9 9 8 ]9 5 9 7頁以下参照。ただし,キャ )スクの証 プティヴ保険会社が引き受けた保険引受 1 券化はまだ実際には行われていないようである R e f .,[ B I1 9 9 9 ]p 1 2 . 企業はその抱える管理可能リスクの全体を把 握したうえで,まずリスク・コントロールを実 施する。このリスク・コント臼ーんは,倍加の リスク毎にそのリスク内容に応じた対策を講じ なければならない。 次に, 1 )スク・コント口一 ) vで処理できな かったリスクについて,今度は総合的なリス ク・ファイナンスの計画を立てることになる 8 2 )。 8 0 ) 一定の保有損害額を超える保検損害が発生したと きにのみ発動する再保険形態のこと。 81)前掲注 4 2,4 8参照。また, [日吉(淳)19 9 8 ]9 3貰以 下参照。 8 2 )R e f ., ( S w i s sRe 1 9 9 6①]p p 6 7,[ S w i s sRe 1 9 9 8 ] . また,亀井教授は,リスク・マネジメントにおい ては投機的リスクも含めた全企業危険を対象分野と O 1 4 4 食業のリスク・ファイナンスと保険[序] 1 )スク・ファイナンスは結簡は金銭の問題なの ( m u l t iy e a r ) のリスク・ファイナンス計画を で,個々のリスク毎に対策を講じるのではなく てた方がコストは安くなるし,保険サイクルの て,総合的なリスク・ファイナンスを検討・ 影響を受けにくい安定的なりスク・ファイナン 施した方が,安価かつ効率的で柔軟性がある。 スが手配できることになるお)。 嶋 一般に,麗々のリスクが全て一時に顕在化する こうした総合的なリスク・ファイナンスの場 ことはないので,総合的にリスクを管理した方 面では,企業にしてみれば,純粋リスクか投機 がリスク・ファイナンスのコストは安くなるた 的リスクかで処理を別にする必然性はない。む めである 83)。 しろ,リスク・ファイナンスの手段としてどの ような商品が実際に存在するかが重要である。 また,単独のリスクの顕在化ならば経営上の 支障はないが,二つのリスクが同時に顕在化す 保験制度はリスク・ファイナンス商品のーっと ると経営上の影響が大きい,という場合には, して考えられているが,理念的に保険引受可能 ニつのリスクの同時発生を発動要件とするリス 性が存在するか否かではなくて,実際に保険商 ク・ファイナンスを手配すればよい 84)。 品が存在して,企業が適当な価格で安定的に入 手可能か否かの方が重要なのである。 さらに,臣大リスクが毎年連続して現実のも のとなる可能性は低いため,リスク・ファイナ 純粋リスクであっても,入手可能な保険が存 ンス手当ての手間等を勘案すると,多数年 在しなければ,純粋リスクを投機的リスクと区 別する有用性に乏しい。逆に,投機的リスクで すべきである。したがって,企業リスクを純粋 1 )ス クと投機的リスクに分類するよりも,経営内部 1 )ス クと経営外部リスクに分類すべきだとする。〔亀井 9 5 ]1 3 2 1 3 3頁参照。また,前掲注目参照。 ただし,従来からのリスク・マネジメントに関す る議論では,その対象分野を純粋リスクに限定して e f .,[ V a u g h a n&Vaughan 1 9 9 5 ]p 2 9 . また, いる o R 9 87 ]1 4 1頁 , 1 5 7頁注 4を参照。 〔武井 1 8 3 ) 複数の 1 )スクを個別にヘッジするよりも,統合的 9 9 9 ] 8 にヘッジした方がコストが低くなるべ森本 1 1 4買参照。 た と え ば 米 国 に は , 複 合 保 険 証 券 (COIN; CommodityEmbeddedI n s u r a n c e )という,為替,一 次産品(卑金属,黄金!嵩,石油,天然ガス,室電力), 利子率といったエクスポージャーと,多数年・多稜 自の保険を組み合わせた商品があるようである。 n e y w e l lI n c . )は,財産 実際に,ハネウェル社(Ho 保険,賠償資任保険,会社役員賠償責任保徐に,さ らに海外収益の為替変動リスクを担保する内容を組 9 9 7年 7月に A I G社から鱗入した み込んだ、保険を 1 ee,(Geer 1997 , ]B u s i n e s s と報じられている。 S c t . 2 0,1 9 9 7,p p 3,2 8 . I n s u r a n c e,O 8 4 ) こうした保険は全く別々のてん補要件がニつ必要 d u a l t 1 i g g e r ) とされているため,二重てん補要件 ( と呼ばれている。たとえば,湾保険分野ではあるが, CLM保険基金 (CLM I n s u r a n c e Fund)は,保険成 績の悪化と株式指標の箸しい下落の両方の発生をて ん 補 要 件 と し た 再 保 検 を 手 配 し た し , CSAA ( C a l i f o m i aS t a t 巴A u t o m o b i l eA s s o c i a t i o n )は,大災害 発生と特定株式の指標の下落の両方の発生をてん補 要件とした再保険を手配した。 も保険化が可能なものもあるかもしれない 86)。 これまで純粋リスクには主に保険商品が対応し )スクには主に金融商品が対 てきたし,投機的 1 8 5 ) 複数年の保険契約であれば,保険会社にとっても 保険成績が安定することになる。 8 6 ) 理論的には,損失発生可能性は全て保険化が可能 S e e,[ V a u g h a n& Vaughan 1 9 9 5 )p 2 4 ),投 であり ( 機的リスクの保倹化も可能であるとされている ( S e e,[ G r e e n ee t .a l1 9 9 2 ]p 4 9 )。 また,亀井教授は,国営保険の形態をとれば投機 )スクの保険化が可能なこともあるとし,その例 的1 として,貿易保険の中の為替変動保険(貿易保険法 2 0 悶 ~22条。現在は保険引受を停止中)を挙げている。 〔亀井 1 9 9 5 ]1 3 9頁参照。また,姉崎教授も投機的 リスクは保険可能性を閤難にすると指橋するが,保 険化が不可能であるとは述べていない。{姉崎 1 9 9 2 ] 5 8 5 9頁参照。 実際に,米国ではバランス・シート・プロテク ション ( b a l a n c es h e e tp r o t e c t i o n )や 収 益 プ ロ テ ク ション ( e a m i n g sp r o t e c t i o n )といった保倹商品が販 売されてい石ょうである。 See ,[ Z o l k o s 1999Jp p ,2 7 . 2 そもそも,純粋リスクと投機的リスクは相互に関 連しており ( ( W i l l i a m se t .a l1 9 9 5 ]p 8 ),両者を峻 山 別できるか君子かについても疑問がある(同旨, [ 口 1 9 9 8 ]5 6頁 ) 。 たとえば,燃物の減価1)スクを考えてみる。通常 1 4 5 第 6 6巻 第 2号 経 済 学 研 究 応してきたが,それは利用者である企業側が積 的1 )スクかを問うことなく,当該企業にとって 極的に望んだ結果ではない。 最適となる総合的なリスク・ファイナンス手法 また,保険商品と金融商品の融合や競争が進 を提案・実現することこそが,保険業界(広く めば,高品内容や商品価格が重視されて,購入 苦えば,金融業界全体)に課された使命と認識 する商品が保険であるか否かについては一次的 して,新たな商品開発に取り組むべきである 90)。 には問題とはならなくなるかもしれない(副次 これは,リスクの統合管理 (combined risks, 的には,会計処理の問題や,誰から購入できる i n t e g r a t e dr i s k s or h o l i s t i cr i s k s )と呼ばれてい か,といった事需により,利用者たる企業にとっ る 。 ても保険か杏かが問題となる 87))。実際に保険 そして,このリスクの統合管理のための手段 商品と金融商品の融合が起こり始めているの として保険商品を提供することになる。たとえ は,天候リスク 88) 信用リスク,政治的 1 )スク ば,複数のリスクをカバーする (blendedcover) (sovereign or p o l i t i c a lr i s k )89)といった分野で ようなファイナイト保険で,これまで保険引受 ある。 不能リスクと考えられてきた政治的リスクや金 融市場のリスクも保険化が可能であると言われ したがって,今後の方向性としては,リスク・ コントロールを経でもなお残存する複数の管理 ている 91)。保険会社にとっても,これまでほと 可能リスクについて,それが純粋リスクか投機 んど引受経験のない分野であるので,保険収益 を安定させるためにこれは長期的な契約となろ う(企業にとっても,安定的な保険カバーが得 の減価償却を大幅に上回る異常減価や陳腐化リスク 7参照), は純粋リスクとも考えられるが(前掲注 3 もしこれを純粋リスクと捉えるとなると,逆に,通 常の減価償却を大幅に下回る減価しかしておらず, むしろ従前の価値維持がなされる場合もあることを 考膚すると,財物の減価リスクは本来的に投機的リ スクであると雷えるかもしれない。 8 7 ) 保険商品と金融商品の根本的な違い(爺者には被 保険利益の存在を要するが,後者には必要ない)と, その相違がもたらす効果についての解明が今後必要 である。 8 8 ) 異常気象リスクについては, 1 9 9 9年 5月に損害保 6参照)として商品 険会社が異常気象保険(前掲注 2 化したが,翌月には臼本興業銀行は金融商品である 天候デリパティブ ( w e a t h e rd e r i v a t i v e ) を発売し た。この天候デリパティブは,平均気温の標準値か らの偏差 ( d e g r e ed a y ) を指標とするが,米国では 既に 2年前から商品化されていたものである。 Re , . f [ S e d g w i c k1 9 97 ]p 1 2 . また, [後藤 1 9 9 9③]1 8 0 1 8 2 貰参照。 ただし,この天候デリパティブは米国でも会計処 3 3号 (SFAS 理が確立されておらず(財務会計基準警 1 N o . 1 3 3,A c c o u n t i n gf o rD e r i v a t i v eI n s t r u m e n t sa n d H e d g i n gA c t i v i t i e s )の適用対象とはならない),財務 会計基準審議会 ( F A S B ;F i n a n c i a lA c c o u n t i n gS t a n d a r d s B o a r d )の新規発生問題専門委員会 ( E I T F ;E m e r g i n g I s s u e sTaskF o r c e )で検討対象となっている(Is s u e N o . 9 9 2, A c c o u n t i n gf o rWeatherD e r i v a t i v e s )。 8 9 ) 政治的リスクとは,通貨交換制限や資産の没収・ 収用・国有化などの I Jスクのことである。 られることになる)。つまり,多数年・多種目 ( m u l t i y e a rm u l t i l i n e )の保険である 92)。 そもそも,本当に純粋リスクしか保険化が可 能でないのかどうかを再検討する必要があるが幻 9 0 ) ただし,特定リスクに対する低統的保険の有用性 やニーズがなくなる訳ではない。 91 ) Re , . f [ S w i s sRe 1 9 9 7 ①] p p 3,2 6,31 . 9 2 ) ただし,保険として認められるかどうかは,各国 の保険制度・会計制度・税務等に照らし合わせて判 断する必要がある。また,前掲注 8 3参照。 9 3 ) 前掲注 8 6参照。 なお,少なくとも,純粋リスクを担保する保険の てん補条件(保険で担保されるリスクか苔かに関す るてん補要件(前掲控 8 3参照)ではなく,免資金額, てん補眼度額,縮小てん補割合などといった保険金 算出における条件)を,金利,為替,路品相場等と いった指標の動向に 1 )ンクして変動するものとして も,保険としての性格は失われないと考えるべきで あろう。 たとえば,石油元売会社の火災保険の免黄金額が 原油価格と為替に連動して変動する方式を想定して みる。この方式では,原油価格が低く,かつ,円高 のときには企業のリスク負担能力が高まるので,火 災保険の免責金額が連動して高くなり,逆に,原油 価格が高く,かつ,円安のときには企業のリスク負 ρhU Aせ 企業の 1 )スク・ファイナンスと保険{序} 表 異常危険準備金(火災保険)の積立残高推移 6 0 0, 0 0 0 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 … … 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 5 0 0, 0 0 0ト 一 一一一一一一一一一…一一一一…一一一一一一一 もし仮に,純粋リスクしか保険商品として保険 のリスク処理に最適な商品の開発・提供に努め 化できないとすれば,保険商品と金融商品との るべきである則。 融合商品(セット商品)として実現すればよい のである 94)。 また,見方を変えれば,i 呆験蕗品と金融調品 の融合は,銀りのある世界のリスク・キャピタ こうした動きを推し進めることによって,顧 客のニーズに合致したリスク・ファイナンス手 ルを有効活用することにつながるものと言えよ つ 。 法を幅広く提供することができるようになる。 そもそも,保険会社(あるいは,広く言えば金 融業界)は,単に保険商品(あるいは,金融商 品)を顧客に売るのではなくて,顧客のニーズ 参考文献 {姉崎 1 9 9 2 ] 姉崎義史「リスクマネジメントの類型 j 亀井利明編『保険と 1 )スクマネジメントの理論』 ( 19 9 2 )法律文化社 に応じた保険商品(や金融商品)を提供するの が本業の筈である。保険業界にとっては r 顧 客のニーズ」とは顧客の抱えるリスクの処理で あり,そのために必要な商品やサービスを提供 するのが保険事業の経営の原点となる。提供す る商品は保険形態をとることが多いとは思われ るが,保険商品に間執するべきではなく,顧客 担能力が低下するので,火災保険の免黄金額が連動 して抵くなるのである。 R e f .,[ S e d g w i c k1 9 9 7 ]p pl O 1 1, ( Z o l k o s1 9 9 8 ]. 9 4 ) 山口 1 9 9 8 ]2 5 7頁(注) 2 9参照。 r もちろん,純粋な保険商品ではないとすると,業 法,会計,税務などの問題を整理しなければならな - 1 4 7 9 5 ) オリエンタル・ランドの地震リスクの証券化取引 (前掲注 1 4参照)は,保険会社ではない一般企業が 地震リスクを証券化した初めての事例だと盟、われる が,保険会社が顧客ニーズに合致する保険務品を適 当な価格で案内できなかった結果,企業として独自 にリスク・ファイナンスを手配した行動であるとも 雷えるかもしれない。 なぜなら,適当な保険が存在することが前提では あるが,証券化に際して必要となる莫大な発行コス トを勘案すると,企業としてはリスクを資本市場に 流すよりも保険を購入する方が安価であると言われ ており ( S e e :r Z o l k o s1 9 9 9 ]p 2 7 ),オリエンタル・ ランドとしても保険を購入した方が安価だ、ったと考 えられるからである。また,オリエンタル・ランド としては,地震発生時に証券化商品から得られる利 益と地震による実際の損害額とに差額が生じるリス ク(ベーシス・リスク)を抱えることになるからで ある。 経済学研究 第 6 6巻 第 2号 [井口=福島 1 9 9 9 ] 井口富夫=福島欣一「損害保険市 [臼吉(信) 1 9 9 8④]日吉信弘 fART 入門 j 保険毎日新 場の新しい展開 J 植 草 益 編 F現代日本の損害保険産 9 9 8 / 5 / 8 間(損保版) 1 {日吉(信) 1 9 9 8⑤] B吉信弘 fART 入門 j 保険毎日新 業~ ( 1999)NTT出版 [亀井 1995] 亀井利明『危機管理と保険理論~ ( 19 9 5 ) 開(損保版) 1 9 9 8 / 5 / 2 9 [日吉(信) 1 9 9 8⑥}日吉信弘 rA RT 入門」保険毎日 法律文化社 {金光 198 7]金光良美『米国の保険危機~ ( 19 8 7 ) 保険 毎 B新開社 [後藤 1 9 9 5 ] 後藤和慶「損保デリパティブ j 保険毎日 新聞(損保版) 1 9 9 5 / 3 / 1 6 新聞(損保版) 1 9 9 8 / 6 / 1 2 {日吉(信) 1 9 9 8⑦]日吉信弘 rART 入門 J 保険毎臼新 9 9 8 / 6 / 2 6 間(損保版) 1 [日吉(信) 1 9 9 8⑧]臼吉信弘 rART 入門 J保険毎日新 {後藤 1 9 97]後藤和慶「保険金支払い資金の資本市場 9巻 3号(19 9 7 ) からの調達 j 損害保検研究 5 関(援保版) 1 9 9 8 / 7 / 1 0 〔日吉(信) 1 9 9 8⑨]日吉{言弘 r A I 汀入門」保険毎日新 〔後藤 1 9 9 8 ] 後藤和慶「リスク移転代替手段 (ART) の現状と将来一保険市場と金融市場の融合 9 9 8 / 7 / 2 4 間(損保版) 1 [日吉(信) 1 9 9 8⑮}臼吉信弘 rART 入門 J保険毎日新 MMRQ u a r t e r l yReview,M a r .1 9 9 8 〔後藤 1 9 9 9①}後藤和慶 fART の概要と特徴(上)Jイ 開(援保版) 1 9 9 8 / 8 / 2 1 {日吉(信) 1998@] 臼吉信弘 rART 入門」保険毎日新 9 9 9 / 1 / 1 ンシュアランス 1 〔後藤 1 9 9 9② } 後 藤 和 康 弘RT の概要と特徴(下)Jイ 間(損保版) 1 9 9 8 / 9 / 1 1 〔日吉(f 言) 1 9 9 8⑫]日吉信弘 rART 入門 j 保険毎日新 9 99 /1 / 7 ンシュアランス 1 [後藤 1 9 9 9③]後藤和康「オープン市場における保険 ARTの利用と検討事項 - J 損 リスクの価格形成 聞(損保版) 1 9 9 8 / 9 / 2 5 {日吉(信) 1 9 9 8⑬]日吉信弘 rART 入門 J保険毎臼新 9 9 8 / 1 0 / 1 6 開(損保版) 1 害保険研究 6 0巻 4号(19 9 9 ) [後藤 1 9 9 9④〕後藤和慶「統合リスクマネジメントの [日吉 言) 1 9 9 8⑬]日吉信弘 rART 入 F 引保険毎日来r I 基礎的な概念一保険リスクと金融・財務リスクの統 合 管 理 -JMMRQ u a r t e r l yR e v i巴w,M a r .1 9 9 9 {高尾 1 9 9 5 ] 高尾厚「地震危険への新たな対処法一金 融ハイテクによる地震保険改良試案 - J 国民経済雑 7 1巻 6号(19 9 5 ) 誌1 [高培 1 9 9 6 ] 高尾j 享 fCATの構造について一集積リス ク対応の新機軸 J保険学雑誌 5 5 5号(19 9 6 ) [高尾 1998] 高尾厚『保険とオプション~ ( 19 9 8 ) [武井 1987] 武井勲『リスク・マネジメント総論~ ( 19 87 ) 中央経済社 9 9 6 ] 武田祐一「最近の欧米金融・保険業をめ {武田 1 ぐる動向について j 保険研究 4 8集(19 9 6 ) 〔武田 1 9 9 8 ] 武田祐一「保険会社と機関投資家を結ぶ 自然災害リスクの証券化 j 金融財政事情 1 9 9 8 / 3 / 3 0 [日吉(淳) 1 9 9 6 ] 日吉浮「わが国における『キャプティ ブ保険会社』の展望 Jj a p a nR e s e a r c hR e v i 巴w 1 9 9 6 / 1 1 〔日吉(浮) 1 9 97]日吉淳「損害保険市場の規制緩和と F 代替保険市場』に関する考察 J j a p a nR e s e a r c hR e v i 巴W 1 9 9 7 / 8 〔臼吉(淳) 1 9 9 8 ] B吉淳「日本企業におけるリスクヘッ ジ戦略の新たな展開ーレンタキャプティブの活用お よ び 資 本 市 場 に お け る 非 常 時 の 資 金 調 達 Jj a p a n R e s e a r c hR e v i巴w 1 9 9 8 / 7 [B古(信) 1 9 9 8①]日吉信弘 fART 入門 J 保険毎日新 開(撮保版) 1 9 9 8 / 3 / 1 3 [1ヨ吉(信) 1 9 9 8②]日吉信弘 fART 入門 J保険毎日新 9 9 8 β / 2 7 聞(損保版) 1 {日吉(信) 1 9 9 8③]日吉信弘 fART 入門 J保険毎日新 開(擦保版) 1 9 9 8 / 4 / 1 0 u 関(擦係版) 1 9 9 8 / 1 0 / 3 0 {森宮 1997] 森宮康『キャプティヴ研究~ ( 19 97)損答 保険事業総合研究所 〔山口 1998] 山口光恒『現代の J) スクと保険~ ( 19 9 8 ) 〔森本 1 9 9 9 ] 森本給可 f 金融と保険の融合について j IMES D i s c u s s i o nP a p e rN o . 9 9 j 1 3( 19 9 9 )日本銀行金 融研究所 [吉津 1 9 9 4 ] 吉津卓哉「集積損害による保検ヲ!受 J )ス クのヘッジについて一保険先物と金融再保険を中心 J損害保険研究 5 6巻 1号(19 9 4 ) に 日本ヱヱ湯 J I !1998] 林(りん)悲符・湯川慶子「キャプティ a p a nR e s e a r c h Review 1 9 9 8 / 7 ブ戦略の現状と課題 Jj . A ., C a p t i v e I n s u r a n c e [ B a w c u t t 1997) B a w c u t t, P 仰 i e s ,4 t he d .,1 9 9 7,With 巴r b y& C o .( 第 3版の Comp 邦訳:日吉信弘 z 驚藤尚之『キャブティヴ保険会社 3 ( 19 9 6 )保険毎日新聞社) [ B巴a t t y1 9 9 8 ]B e a t t y,A .,S e c u r i t i z a t i o ns t a r t st omakei t s mark,r e i n s u r a n c e ,May1 9 9 8 [ B e n e t t1 9 9 2 ]B e n e t t,C .,D i c t i o n a t ツo fI n s u r a n c e,1 9 9 2, P i t m a nP u b l i s h i n g (邦訳: W 保険辞典~ ( 19 9 6 )損害保 検事業総合研究所 [ B I1 9 9 9 ]B u s i n e s sI n s u r a n c, 巴 C a p t i v eRepOlt,B u s i n e s s ,A p r i l1 2,1 9 9 9 I n s u r a n c e .,M a n a g i n gC a t a s t r o p h eR i s k,1 9 9 7, [ B o o t h1 9 9 7 ]Booth,G FTF i n a n c i a lP u b l i s h i n g ., The New F a c e o ft h 巴 [ B o w e r s1 9 9 9 ] Bowers, b A l t 巴m a t i v eMarket,BES T' SREVIEW'P/C ,F巴b .1 9 9 9 ( B u n n e r1 9 9 5 ]Bunner,B .A .,F i n a n c i a lR e i n s u r a n c e :New P r o d u c t s f o r a New E n v i r o n m e n t, G a s t e l, R .e d, F i n a n c i a l R e i n s u r a n c e : ・ F u n d a m e n t a l s and New 148 - 企業のリスク・ファイナンスと保険{序〕 C h a l l e n g e s ,3 r d e d ., 1 9 9 5, I n s u r a n c e I n f o r m a t i o n I n s t i t u t eP r e s s e c u r i t y [ B u t t e r w o r t h1 9 9 8 ]B u t t e r w o r t h,S Maximums r e i n s u r a n c e ,J a n . 1 9 9 8 c e l l s, ( B u t t e r w o r t h1 9 9 9 ]B u t t e抑 制h,S .,PCCsB l i d g i n gaGap n s u r a n c eG r o u p ), PCCs i nt h eMarket,RIRG( R i s k& I &R e n tG C a p t i v e s,1 9 9 9 [CBOT 1 9 9 5 ]C h i c a g oB o a r do fT r a d e,A U s e r ' sG u i d e 吋 句 四 但 戸h eI n s u r a n c eO p t i o n s ,1 9 9 5 PCSC a t a s t r o [ C r a n e1 9 8 4 ]C r a n e, F . G ., I n s u r a n c e : P r i n c φl e s a n d ,2nde d .,1 9 8 4, J o h nW i l e y& S o n s P r a c t i c e s ( D o h e r t y1 9 9 7 ]D o h e r t y,N . A .,I n n o v a t i o n si nManaging o u r n a l0 1RiskandInsurance4, C a t a s t r o p h eR i s k,6 4j 1 9 9 7 ( D o l a n1 9 9 9 ]D o l a n,V . F .,I n s u r a n c eS e c u r i t i z a t i o n,1 5ON , 1 9 9 9 THERISK1 [Dowding 1 9 9 7 ] Dowding, T ., G l o b a lD e v e l o p m e n t si n ,1 9 9 7,FTF i n a n c i a lP u b l i s h i n g C a p t i v eI n s u r a n c e [ E c o n o m i s i t1 9 9 4 ]AS u r v 巴yo fI n s u r a n c e,T h eE c o n o m i s t , D e c .3 r d,1 9 9 4 (Geer 1 9 97 )Geer ,C .T .,Whon e e d sd e r i v a t i v e s ?F o r b e s , A p r .2 1,1 9 9 7 R i s kF i n a n c i n g ,1 9 9 2,W i t h e r b y [ G o r d o n1 9 9 2 ]Gordon,A ., &C o . t .a l1 9 9 2 ] G r e e n ε,M.R.,T r i e s c h m a n n, ] . S .a n d [ G r e e n ee G u s t a v s o n, S . G ., R i s k&I n s u r a n c e ,8 t he d .,1 9 9 2, S o u t h WesternP u b l i s h i n g [ G u a r d r i s k 1999] G u a r d r i s k I n s u r a n c e C o ., PCC L e g i s l a t i o n- S a f e t yNeto rF a l s eS e n s eo fS e c u r i t y ?, n s u r a n c eG r o u p ),PCCs & R e n t a RIRG ( R i s k& I ,1 9 9 9 C a p t i v e s [ H a r r i n g t o n1 9 97 )H a r r i n g t o nふE .,I n s u r a n c eD e r i v a t i v e s, n dt h eF u t u r eo ft h eI n s u r a n c eI n d u s t r γ ,64 TaxP o l i c y,a j o u r n a l0 1Riskαnd1 : 附 u r a n c e4,1997 [ H a r r i n g t o n& N i e h a u s1 9 9 9]H a r r i n g t o n,S . E .a n dN i e h a u s, G ., B a s i s R i s kw i t h PCS C a t a s t r o p h eI n s u r a n c e D e r i v a t i v eC o n t r a c t s,6 6j o u r n a l0 1RiskandInsurance 1 ,1 9 9 9 . 1 S e g r e g a t e d P o r t f o l i o [ K i l p a t r i c k1 9 9 9 ]K i l p a t r i c k,, C o m p a n i e s,RIRG( R i s k& I n s u r ; ヨ n c eG r o u p ),PCCs& R e n t a C a p t i v e s ,1 9 9 9 [ M a j o r1 9 9 9 ]M a j o r,J 人 , I n d e x Hedge P e r f o r m a n c e : e n e t r a t i o na n dB a s i sR i s k,F r o o t,K .A . I n s u r e rMark巴tP h eF i n a n c i n g0 1Catastrophe Risk, 1999,The e d .,T U n i v e r s i t yo fC h i c a g oP r e s s u n d a m e n t a l so l I n s u r a n c e,2nd (Mehr 1 9 8 6 ] Mehr,R . , . IF 巴d .,1 9 8 6,R i c h a r dD. Ir w i nI n c . 9 6 3 ]Mehr,R .I .a n dHedges,B .A ., R i s k [Mehr& Hedges1 9 6 3,R i c h a r せD . M a n a g e m e n ti nt h eB u s i n e s sE n t e r p r i s e,1 I r w i n,I n c . (Mehre t .a l1 9 8 5 ] Mehr,R . I . , Cammack,E .C .a n dRose, T .,P r i n c かl e s0 1Insurance,8thed.,1985,Richard D. - 1 4 9 I r w i nI n c . D ., Movingbeyondc a tb o n d skey (McLead 1998]McLead, t og r o w t ho fm a r k e t,B u s i n ι s sI n s u r a n c e ,S e p . 2 1,1 9 9 8 a r i l e1 9 9 5 ]M o n t i,R . G .a n dB a r i l e,A .,A [ M o n t i& B P r a c t i c a l G u i d e t o F i n i t e R i s k I n s u r a n c e and ,1 9 9 5, J o h nW i l e y& S o n s R e i n s u r a n c e [Mowbraye t .aI1969]Mowbray,A . H .,B l a n c h a r d, R . H .a n d n s u r a n c e ,6 t he d .1 9 6 9,M c G r a w H i l l W i l l i a m s,C . A .,I BookCompany ( M u n i c hRe1 9 9 9 ]MunichRe,TheR o l eo ft h eR e i n s u r e r R i s k i naS u c c e s s f u lS e c u r i t i z a t i o nT r a n s a c t i o n,RIRG( & I n s u r a n c e R e s e a r c h G r o u p ), K < δl n c o ηf e r e n c e ,1 9 9 9 s u p p l e m e n t ( O s t e r m i l l e r1 9 9 8 )O s t e r m i l l e r,M.,S h a r i n gt h eR i s k, BEST'SREVIEWP/C ,A u g .1 9 9 8 )O u t r e v i l l e,J . F .,T h e o r yandP r a c t i c e0 1 [ O u t r e v i l l e1 9 97 I n s u r a n c e ,1 9 9 7,KluwerAcademicP u b l i s h e r s [ P r i n c 巴 1 9 9 8 )P r i n c e,M.,S w i s s Re d o e sb a s i s swap, B u s i n e s sI n s u r a n c e ,A u g . 3 1, l9 98 ( R a e1 9 9 9 ]Rae,D .,L i f e I o n gs e c u r i t i e s,r e i n s u r a n c ιApr . 1 9 9 9 d a,G忍 . ,P r i n c 伊l e s0 1RiskManagement ( R e j d a1 9 9 8 ] R巴j ,1 9 9 8,A d d i s o n W e s l e y a n dI n s u r a n c e [ R i c e1 9 9 2 ]R i c e,P . W .e d .,RF& S ( T h eR i s kF u n d i ηg &S e l f I n s u r a n c e )u l l e t i n s ,1 9 9 2,N a t i o n a lU n d e r w r i t e r ( S e d g w i c k1 9 97 )S e d g w i c k,n e wd e a l s ;a l t e r n a t i v er i s k α1m a r k e t ,1 9 9 7, t r a n ゆrand i n s u r a n c ei nt h ec a p i t S e d g w i c k ( S w i s sRe 1 9 9 6①] S w i s sR巴,R e t h i n k i n gr i s kf i n a n c i n g , 1 9 9 6 [ S w i s sRe1 9 9 6②] S w i s sRe, s i g m aN o . 5 / 1 9 9 6 ,I n s u r a n c e , d e r i v a t i v e sa n ds e c u r i t i z a t i o n :Newh e d g i n gp e r s p e c t i v e s 先e t ? ,S w i s sR巴 l o rt h eUSc a t a s t r o p h ei n s u r a n c emar [ S w i s sRe1 9 9 7①]S w i s sRe, s i g m aN o . 5 / 1 9 9 , 7A l t e r n a t i v e . s たrv i aβn i t er i s ki n s u r a n c e :a ne ! J もc t i v e r i s kt r a n c o n t r i b u t i o nω t h es t a b i l i t y0 1t h ei n s u r a n c ei n d u s t η 1 , S w i s s Re (邦訳:ブアイナイトリスク研究会。損保 企画7 0 4号 , 7 0 5号 。 1 9 9 9 ) ( S w i s sRe1 9 9 7②] S w i s sRe,s i g m aN o . 7 / 1 9 9 7 ,T o ol i t t l e r e i n s u r a n c e0 1naturald i s a s t e r si nmanym a r k e t s ,S w i s s Re M u l t i l i n em u l t i y e a ra g r e e m e nお [ S w i s sRe1 9 9 8 ]S w i s sRe, Ag u i d el o rt h ed r a f t e ra n dn e g o t i a t o η1998,S w i s sRe [ S w i s sRe 1 9 9 9 ]S w i s sRe,s i g m aN o . 2 / 1 9 9 9 ,A l t e r n a t i v e )f o rc o ゆo r a t i o n s :ap a s s i n gl a s h i o no r r i s kt r a n s l e r(ART r i s km a n a g e m e n tl o rt h e2 1 s tc e n t u r y ? ,S w i s sRe 9 9 5 ) V a u g h a n,E . ] .a n dVaughan,T . [ V a u g h a n& Vaughan1 M.,E s s e n t i a l s0 1Insurance: A Risk Management ,1 9 9 5, ] o h nW i l e y&S o n s P e r s p e c t i v e t .a l1 9 9 5 ]W i l l i a m s,C . A .,S m i t h,M.L .a n d ( W i l l i a m se Young,P . C .,R i s kM a n a g e m e n tandI n s u r a n c e ,7 t h巴d ., c G r a w ω H i l l 1 9 9 5,M 経 済 学 研 究 第 6 6巻 第 2号 e v e r y o n e,B u s i n e s sI n s u r a n c e ,May1 1,1 9 9 8 ., S e e k i n g more a l t e m a t i v e s, [ Z o l k o s1 9 9 9 )Z o l k o s, R B u s i n e s sI n s u r a n c e ,A p r .5,1 9 9 9 ( W i n s t o n& S o u t 巴r1 9 9 8 ]W i n s t o n,P . D .a n dS o u t e r,G ., I n d u s t r yi n c r e a s i n g l ye m b r a c e ss e c u r i t i z a t i o n,B u s i n e s s ,A u g .3 1,1 9 9 8 I n s u r a n c e .,I n t e g r a t e dr i s kf i n a n c i n gn o tf o r [ Z o l k o s1 9 9 8 ]Z o l k o s,R 〔九州大学経済学部客員助教授〕 1 5 0
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