図に表すことを目的にした授業 〜6年生「速さ」の実践を通して〜 和歌山大学教育学部附属小学校 1 図に表そうとしない子どもたち 「問題を与えると,すぐに立式して答え 小谷 祐二郎 「問題文はこれだけだよ。」と言うと,さ らに子どもの声は大きくなる。 を出そうとするんです。」 「なかなか図がか 子ども:えっ,何求めんの? けないんです。 」という声をよく耳にする。 子ども:何も求めるものないやん。 図をかく目的は2つあると言われている。 そこで「この自転車が時速 20km で6時 1つは問題解決のためであり,もう1つは 間走ると 120km 進むということを表して 解を説明するためである。とすると,図を よ。」と問いかけると,図や表にし始める。 かかなくても問題解決ができ,解を説明す る学習活動がなかったり, 「答えは求められ るけど説明はちょっと…。 」と言ったりする 子どもに,図をかく必然はない。そんな子 どもは図がかけなくてもいいのかとなると, もちろんそれは違う。やはりどの子どもに も図はかけるようになってほしい。 2 図に表すことを目的にした授業 どの子どもも図に表さざるを得ないよう にするために,最近,図に表すことを目的 にした授業を取り入れている。もちろん教 科書によっては,問題場面をテープ図や面 積図に表すことを目標にした構成ページが あるものもある。しかしその問題であって も,子どもにとっては面積図がかけるよう になるかどうかではなく,解を求めること に意識が向く。そこで,子どもの意識が向 く「解」をなくせばいいのではと考え,以 下のような実践に取り組んでいる。 3 6年生「速さ」の実際 授業冒頭次のような問題を提示した。 4 図やグラフが分かりやすいをめざして とりわけ速さにおいては「み・は・じ」 という先行知識をもった子どもが,速さな んて簡単という意識をもっている。それら の子どもが問題解決の際,図を使おうとす ることは考えにくい。しかし,この実践を 時速 20km で進む自転車が 6 時間走る 通して, 「み・は・じ」を知っている子ども と 120km 進みました。 から「グラフが一番分かりやすいかも。」と 問題を写している子どもから自然と声が聞 こえ始める。 子ども:そうよなぁ。120km 進むよね。 子ども:何を求めるの? 子ども:まだ続きがあるんじゃない? いう声が聞こえてきた。この学習経験の積 み重ねが,未知の問題に出会った時,立式 の前に問題場面を図に表そうとする子ども たちの姿につながることを信じて,実践を 続けていく。
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