マルタさんの物語 ID:73290

マルタさんの物語
水天宮
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︻あらすじ︼
特典付き神様転生でマルタさんになって。
本来あるはずのない友情きずいて。
﹂
何か死後変な英霊として祀り上げられて。
﹁えっこれ僕が悪いの
といっても流れは変わっていないのでご安心ください。
運営から警告とか受けたので大幅改変しました。
1/18
※他作品の設定が混ざってる。
※ちょっと宗教系の話混じる。
※シリアスだったりギャグだったり。
※微妙な恋愛要素あり。
基本緩めの物語、はじまります。
?
目 次 1:マルタさんの生前ダイジェスト │││││││││││
※:マルタさんの設定 │││││││││││││││││
通常四次
2:マルタさんルーラーです ││││││││││││││
3:マルタさんルーラーです② │││││││││││││
1
16
19
28
1:マルタさんの生前ダイジェスト
僕の名前はマルタ。聖女である。
⋮⋮いやそこ、
﹁何言ってんだこいつ﹂みたいな顔するなよ、ホント
だって。
あのーあれだよタラスクっていう竜を祈りだけで屈服させた女の
人 だ よ。イ エ ス・キ リ ス ト と 知 り 合 い で 妹 に マ リ ア、弟 に ラ ザ ロ。
まぁなんやかんやの神様転生って奴だね。マルタになることだけは
決定されてた。
あと、色々と転生特典で能力とかもらえるんだけど、何でも﹁いき
なり能力付与はまずい﹂らしいんだよね。その辺はよく分からん。だ
から生きていくうちにそういう能力とかがもらえるようになるん
だってさ。
そんなこんなですでに立川の聖人︵こうとしか表現できなくてw
1
w︶も死してタラスクも鎮めてそれなりに経った頃。やはりこの時
代、一神教はぶっちゃけカルトみたいな扱いである。それはしゃーな
いよね。ただ、
﹁彼﹂には弟を蘇らせてもらった恩もあり、一度抱いた
信念というものはなかなか捨てきれない。
別に主たる存在を盲信している訳ではない。なんというか、太陽と
か月とか星とか、そういうものだと思う。今社会全般で信仰されてい
るオリュンポス他の神々同様、彼らは﹁見守っている﹂んだと僕は思
う。僕が生きている様子を主も神々もそれをしっかり見ているのだ
か ら。堕 落 し た 生 活 は 出 来 な い。こ の あ た り 日 本 人 ぽ い よ ね。た と
え誰も見ていなくてもお天道様は見ているぞー的な。大体そんな感
じ。
僕が信じるのは僕自身。それは誰にも、主にも神々にも揺らがせな
い。
あと別に信仰する対象が違っていてもいいんだと思うんだよ。人
が美しい、と感じるものだって人によって異なる。ちなみに僕は、石
何
?
だって格好いいじゃん。花は小さくて可憐だけど根っこは強
畳の隙間に生える名前も知らない野花が美しいと思うね。え
で
?
く大地に根差している。良いよね。他にも青い空が美しいと思う人、
スタイルの整った女の人が美しいと思う人、いろいろいっぱいいると
思うんだよ。
人間は﹁全く違う﹂生き物。そして同時に﹁全く同じ﹂生き物でも
あるんだと僕は思う。
⋮⋮うーん、なんていうかさ。﹁人﹂と﹁小鳥﹂と﹁鈴﹂って、違う
じゃないか。人は小鳥のように空を飛べないけど、小鳥は人のように
地面を速く走れない。人は鈴のように体をゆすっても綺麗な音は出
ないけど、鈴は人のように歌を歌うことはできない。けど﹁人﹂も﹁小
鳥﹂も﹁鈴﹂もそれぞれが美しい。違うからこそ素晴らしい。
│ │ │ あ ぁ。今 に な っ て 結 論 が 出 る な ん て。そ う だ、﹁み ん な ち
がってみんないい﹂んだよ。
そして僕はそんな﹁違い﹂を探したい。素晴らしい﹁違い﹂を見つ
けたい。だからこそ旅をする。布教⋮⋮とはちょっと違うかな。﹁あ
信念。眩しくも思える夢。彼女が語るように、人それぞれで異なる美
しさで世が満たされたら。それはどんなものになるのだろう。
﹂
﹁││││││解け﹂
﹁陛下
2
の人﹂の話はしたくなったらすればいいのだから。﹁違い﹂を見つけ、
﹁美しい﹂ものを見つけ。そんなものでいっぱいになったら。
と思うものを
世界は、一体どれだけ素晴らしくも美しいのだろう。
美しい
"
﹂
﹁故に、陛下│││私を処刑する前に、貴方の
聞かせてくれませんか
"
目の前の聖女は語る。縄で縛られ、鞭打たれながらも捨てなかった
?
﹁縄を解けと言っている。はやくせぬか﹂
?
﹁なっ⋮⋮
ですが陛下、この女は世を乱す異教徒ですぞ
﹂
﹁貴様はあやつの話を聞いていなかったのか 信仰の是非なぞ関
!!
﹁それは⋮⋮⋮⋮﹂
かせてくれぬか
そなたの考える美しいものを、な﹂
﹁うむ、深く感謝するがよい。それでマルタ、どうかそなたの話を聞
﹁陛下⋮⋮寛大なる処置、誠に感謝いたします﹂
たのはそなたの信念。それをゆめはき違えるな﹂
﹁マルタよ。余はそなたらの教義を認めたわけではない。余が認め
てなんとする。
よく解いていく。周囲の臣下がやらないなら皇帝たる己がやらずし
惑したように目を瞬かせていた。きつく縛られた縄に手をかけ、手際
玉座に坐していた小さな人影が聖女へと駆け寄る。当の聖女は当
﹁えぇい、皇帝たる余の命令を聞かない奴め
﹂
係あるまい。余はただ⋮⋮マルタの語る世界を見てみたいと思った﹂
?
!
・皇帝様
良くなった人。
ローマ軍に捕まって皇帝様のもとに引っ張り出されたけど何か仲
神様転生。今の所もってる特典は﹁魔術﹂のみ。今後増える。
・マルタさん
登場人物紹介
***
る。
ルタ。この時こそ、二人の奇跡ともいえる友情が始まった瞬間であ
め、ついには天災すらも鎮め英雄に勝るとも劣らずの信を得た聖女マ
と悪名をあげたローマ皇帝ネロ・クラウディウス。魔術に武術を修
本来相容れぬ存在である二人。キリスト教徒を迫害し後に﹁暴君﹂
﹁当然よ﹂
ださい﹂
﹁│││分かりました。では、陛下の思う美しいものも、お聞かせく
?
暴君こと赤セイバー。つまりネロ・クラウディウス。美しいものが
3
!
好き。
多分マルタさんには頭が上がらなくなるんじゃないかな。
・セネカ殿
出てこないけど一応いる。多分死亡フラグは折れた。
爆走するネロ帝のストッパー役としてマルタさんと仲良くなると
思われ。
***
いやぁ⋮⋮まさか赤セイバーさんとお友達になっちゃうとか人生
何が起こるか分からんなぁ。こんなときどんな顔すればいいの。た
だ、やはりというべきかなんというべきか。カルト宗教扱いなのは変
わらないために迫害弾圧はちょっと弱くなった程度である。赤セイ
バーさんも﹁みんなちがってみんないい﹂という僕の考えに賛同して
くれたのか、若干優しくなってくれたことは僥倖といえるだろう。そ
たらしい。何だか随分とボロボロだったから傷を治療したりしたよ。
なんでもでっかい竜がいるらしい。それが暴風雨を起こして集落の
みんなが困っているとかなんとか。これは僕の出番かな
の南部、地中海にほど近い所になるのかな。
﹁しかし竜か⋮⋮。マルタ、そなたは確かタラスクという竜を屈服
させておったな﹂
﹁は い。タ ラ ス ク は レ ヴ ィ ア タ ン の 子 供 と も 呼 ば れ て い ま し た。
⋮⋮撲殺されましたが﹂
﹁教徒のいう悪魔、か﹂
4
の代わりに帝国のお偉いさんから睨まれるようになったけどね
しゃーないのは分かるけど結構へこむんだよこっちは
で。
!
ローマの都にやってきたとある男性。辺境からはるばるやってき
!
というわけで結構遠いトコ来ました。現代の地理的にはスペイン
!!!
﹁ですが、今回暴風雨を起こしているという竜は悪魔とも怪物とも
そなたが神と申すか﹂
異なる⋮⋮どちらかと言えば神と言えるかと﹂
﹁ほう
?
﹁遥か遠く東方の国では龍は自然現象、天災の権現として崇められ
ているそうです。例えるならオリュンポスの神々に近いですね﹂
﹁なるほどな。⋮⋮天を覆う暗雲、荒れ狂う大嵐、降り注ぐ豪雨、空
を奔る雷鳴。それらが神としてカタチを成したものが此度の相手と
いう訳か﹂
⋮⋮ 改 め て 感 じ る。相 当 高 位 の 存 在 だ と。如 何 に 僕 が 聖 女 と 呼 ば
れていても自然現象相手には打ち負かされる自信がある。だが某雷
電王さん曰く天と地の属性を持つ者にはご退場願えとのことだ。僕
は人かな。相手は地かなぁ。相性悪そうでつね。はぁ⋮⋮。
けれども負けていられない。困っている人は助けたいし、誰かが苦
しんでいるなら癒してあげたい。そんな甘い人間だよ、僕は。
﹁⋮⋮雲行きが怪しくなってきたな﹂
﹁目的地に近付いているのでしょう。やはり少人数で来て正解でし
たね﹂
そうすればまた特
5
﹁うむ。ただでさえ嵐で食糧やらが不足している状態だからな﹂
とりあえずそんな
﹁長居もしないほうがいいかと。万一、危険になったら避難を勧め
ましょうか﹂
問題の竜さんがついてきたら意味ないがな
手の神竜を屈服させろとのこと。マジかYO
得には制限があるとか。まず自力で特典を一つ修得、それを用いて相
は竜種、しかも神格もちで内心途方に暮れていたから。だがしかし獲
僕が頼んだ転生特典を新たに解放するらしい。これは心強い。相手
そしたら夢で僕を転生させた神様になんか会ったよ。曰く、ここで
行している客人という立場だから何もできずに寝る羽目に。
正直村の人たちのために色々してあげたかったけどローマ皇帝に同
でに日が暮れていた故、今日はまだ竜をどうにかしないことで決定。
んで、大変なのに丁重にお出迎えしてもらって。昔を思い出す。す
ころ平穏を取り戻してあげたいな。
で決着をつけたほうがいいだろう。そして暮らしてる人達に早いと
気がする。直感か啓示か知らんがそんな気がする。だからこの集落
!
!
典を一つ解放するってさ。なにその飴と鞭
でも頑張らないとね。
﹂らしいけどそれで何があったらどうするんだっ
ソレ
"
は﹁猛威﹂という概念がそのまま体当たりしてくるような気さえし
は湖。台風の中心である目は風が弱いと言うが、原因がである
足元悪いけどね。若干疲れはじめたころ、開けた場所に出た。前方に
囲まれ随分と暗いけど直感か啓示のおかげで進めることには進める。
て言ったら反省してくれた。集落からほんの少し離れた森。木々に
けずにいられるか
セイバーさんついてきちゃったよ。本人は﹁皇帝たる余がこれを見届
早速当の神竜の元へ行くことに。僕一人のはずだったけど何故か赤
はい朝です。天気も相まって若干憂鬱です。善は急げとも言うし、
?
である竜がいた。
﹁││││││っ、はは⋮⋮この余が、畏れているだと⋮⋮⋮⋮
﹂
?
ソレ
の視線は僕と赤セイバーさんを捉えて離さない。
﹁陛下、やはりお戻りいただいた方が│││いえ、もう遅いでしょう
ね﹂
すでに
"
冗談にしては笑えんぞ。余たちは貴殿と対話をしに
?
腹痛いにも程がある
﹀
︿対話、対話か⋮⋮久方ぶりに骨のありそうものが来たと思えば、片
来た﹂
﹁貴殿をか
︿なるほど。我を討たんと勇んできたか﹀
を起こすのです﹂
﹁それを貴方に聞きたい。暴風と豪雨の体現者よ、何故あなたは嵐
︿│││人の子よ。なにゆえ、我の前に現れた﹀
"
!
6
!
た。つまり、圧倒的で絶対的。存在そのものが反則級。暴風雨の神格
"
轟、と辺りが鳴る。樹木がミシミシと軋む。空気が敵意を持って僕
たちに襲い掛かる気さえした。それでも僕は目を離さない。この神
﹀
同じ星から出づる生命であると
竜と対話する機会を逃せば、一生後悔する気がしていた。恐怖に足が
震える。それでも、負けない。
︿元はと言えば貴様ら人どもが
│││では、貴方は⋮⋮﹂
いうのに、己こそが偉大で崇高であると信じて疑わない
﹁っ
同じ人同士で血を流す
それを滅ぼさずして何とするのか
︿ならばそこを除け
!!
﹀
貴様ら醜悪な汚物を地上から一人残さず一
それこそが我が使命、あるべき運命
!!
︿何を
﹀
﹁だがな⋮⋮貴殿は一つ間違えている﹂
る。じゃなきゃここまで怒るもんか。
憤怒には息をのむほどの悲哀を感じた。きっと、人を深く愛してい
感じのアレ。まさか生きてるうちに遭遇するなんて。余りにも強い
恐らく、この神竜はむしろ精霊種に近いのだろう。真祖の姫君的な
掃する
﹀
︿幾度と我が同胞を狩り、小さくも強く生きる生命を潰し、ついには
!!
!
﹁⋮⋮ああ。確かに│││それは、余たちが悪だ﹂
!
!!!
ているようだ﹂
!
イ ン プ ラ ン タ
そうして歌い上げるのは恵みの大樹。いいよね、生前⋮⋮というか
か﹂
﹁私と話せ、とは言いません。ただ、私の声を聴いていただけます
︿殺されたいか。ならば今ここで│││﹀
﹁さて、どうしてでしょう⋮⋮変ですね、涙が止まらないのですよ﹂
︿何故だ⋮⋮何故貴様が涙を流す﹀
ほどだ。あ、実際綺麗だね。羽毛っぽいのあるし。
近くで見れば、その雄大な威容に息をのむ。寧ろ美しいとまで感じる
入っているのだから。意外と浅くてびっくり。どうやって入ったし。
膝まで浸かっている。それも当然、だって僕は神竜が座する湖に
︿ふざけた口を││││││貴様⋮⋮
﹀
﹁人は何も醜悪なだけではない。貴殿は、人というものを見くびっ
!!!
7
!
!
前世でゲームやった時は感動したよ。歌詞も素敵だと思う。途中の
歌詞にあるマオがラプランカにかける台詞、あの言葉を目の前にいる
神竜に送りたい。人の悪しき心や欲望を目の当たりにしたからこそ
の行動なのだろう。それを否定する気はない。けれど、どうか知って
ほしい。人にもまた善き心があるということ│││人とは可能性、人
の数だけ心がある。そして人は未来を紡ぐものだということを。
︿⋮⋮そうか、我は⋮⋮﹀
﹁分かるか、偉大なる神の竜よ。人が絶望を齎すなら、希望を示すの
もまた、人だ﹂
︿我は│││我は、何と愚かなことをしていたのだろうか﹀
﹂
﹁⋮⋮ふと思ったのだが。貴殿はいささか思い込みと突っ走りが激
しいのではないか
気が付けば、空は青く晴れ渡っていた。
***
マルタさんのスペック
・魔術
五大属性│空。つまり四大属性。それっぽい名前を付けるならエ
レメンツ。
今回の神竜調伏で水と風が強くなった。けど一応全部使える。
・武術
基本グーパンだけど剣槍斧その他の武器も自衛できる程度に扱え
る。
け ど 素 手 で 殴 る。杖 貰 っ て か ら は 杖 で も 殴 る。聖 女 な の に。不 思
議だね。
・詩魔法↑New
ん。
修羅神仏の類から惑星意思まであらゆる想念に有効。神代魔術の
一種。
8
?
アルトネリコより拝借。ぶっちゃけただの対話用言語みたいなも
!
・星竜の加護↑New
知って
しかし、色んな人に出会ったよ。いつの間にか僕の知る史実で
!
Fate
起きるべき事柄が起きたりしないんだよ。これ人理焼けないよね
た
月日が経つのは早いですね。教徒の扱いは変わらんがな
さらに年月経ちまして。赤セイバーさんに出会って何年たったよ。
***
一応男。もはや属性過多。
通 称 セ イ。親 は 零 獅 姫。ツ ン デ レ。思 い 込 み が 激 し く 暴 走 属 性。
言われると答えに困る。
精霊種というよりむしろ地属性の惑星意思。何してんだ星の子と
・静天豊命︵シーテンフ︶
干高かったりする。
できることは﹁飛行﹂
﹁天撃﹂
﹁神竜召喚﹂など。あと身体能力が若
敵。不思議だね
今回のご褒美。権能の極小規模行使。竜を従えたのに竜殺しは天
!
せたいからね。
で、またまた竜案件ですよ奥さん
前回は現代でいうスペイン南
のために頑張っている。あの時従えた竜│││セイに人の希望を見
とか知らない。僕も相変わらずお偉いさんに睨まれながら沢山の人
だってGOしかやってない。赤セイバーさんがEXTRAで何した
!
るそうだ。本当に大丈夫か
ても見過ごせないようで、セイの時とは打って変わって大軍隊を率い
セイが怒り狂って気がするなぁ。何はともあれこの案件は帝国とし
殺したりそれはまぁ色々とやっているらしい。僕の内なる底に潜む
い、手におえなさそうだ。本当に略。辺り一帯に呪い振り撒いたり人
い。タ ラ ス ク に 近 い ね。世 間 で は 邪 竜 と 呼 ん で い る そ う な。す ま な
いけどそれでもこの時代では遠い。なんでも人を苦しめているらし
部だったけど今回はガリア近郊、つまりドイツまで行くよ。前より近
!
そんなこんなで僕はセイの加護で手に入れた翼でさっさと単独入
?
9
!
まぁそもそも歴史も神話もあんまし詳しくないがな
?
!!
り を し た。気 持 ち い い ね。確 か に サ ラ マ ン ダ ー よ り ず っ と 以 下 略。
竜の翼というと皮膜を思い浮かべるけどなんか違う。例えるならノ
ゲノラの天翼種、ととモノのセレスティア。つまり羽毛だよ。これも
転生させた神様が何かやったのだろうか。だって天撃使えるんだよ
原 作 通 り 使 う と 大 幅 に 弱 く な っ ち ゃ う ん だ よ、幼 児 化 し て さ。
千と数百年早いよ
多く
感じます⋮⋮強い怨念ですね。こんな生物が地上にいるなん
邪竜百年戦争開催中
手を伸ばし、強
?
じられない街並みの上空を高速で通り過ぎる。はやくしないと。近
ね。早期決着早期決着、今日中に解決させるつもりで生命の息吹が感
気がする。なるほど、そこに問題の邪竜さんが待ち構えている訳だ
直感か啓示かはわからないけど山間の洞窟に行けと言われている
の息子だと思うとなんというか⋮⋮アレだよね。
却したのか。⋮⋮どうでもいいけど彼見た目は格好いいけどダビデ
それが分からないのかなあのソロモンとか言うのは。何故人理を焼
こそ過去は美しく未来は眩しい。惑星は尊く人類は強い。やれやれ、
断たれてしまったのだから。消えた生命は、二度と戻らない。だから
正直ちょっと心に刺さる。彼らにも未来があったはずなのに、それが
悲しいかな、過去を変えることは出来ない。だからこそ過去は尊い。
散らされた命に僕が出来ることと言えば安らかな眠りを祈るだけ。
│﹂
﹁ガリアは全滅ですか⋮⋮主よ。どうか彼らに安息を与え給え││
壊がただよう死の都であった。
分厚い雲を突っ切り、地上を目指す。眼前に広がったのは退廃と崩
切るためにも速度は落とせない。
任せ空を駆ける。まるで僕自身が彗星になったようだ。飛竜を振り
けど突破する程度には減らすことが出来た。そしてそのまま勢いに
い風をワイバーンの翼に薙ぎ払うように当てる。そんなに落ちない
ね
というか眷属っぽいの飛んでるよ。なにあれワイバーン
て⋮⋮﹂
﹁
一々細かい。
?
付けば近付くほどに冷や汗が流れ、肌を撫でる風に蒸発する。その風
10
?
?
!
?
﹂
も嫌に生ぬるい。心臓が早鐘を打つ。どんな邪がいるのだろうか。
﹁到着⋮⋮うん、進みたくないね。僕、生きて帰れるかなぁ
セイに希望
思わず素が出るくらいにはおぞましかったよ。なぁにこれぇ⋮⋮
いや本当になんですかこれ。こんなの地上にあるの
AAA││││││││││││
コレ
﹂
コレ
は生きてはな
は人とも星とも相容れぬ存在だ。
"
コレ
﹁GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
条理。余りにも不公平。余りにも│││違反。
すればもはや死の概念そのものとしか言いようがない。余りにも不
ぎ話では英雄に討伐される悪役であるが、何の力を持たない民草から
一線を画す存在。竜とは即ち、人に世界に厄災をもたらすもの。おと
地・海という大自然の体現にして権現であるものとは概念と異にし、
確かにそれは竜である。だが、過去に従えた静天豊命のような空・
﹁││││││嘘﹂
がらもよっこいよっこいと歩みを進める。
に鞭打って洞窟へと入った。足裏が石の質感を伝える。杖で支えな
すごい人と出会ったんだ。だからきっと大丈夫。そうして震える脚
があるのならば話はきっと通じるよ。ソースは僕自身。過去に結構
る。だって僕はマルタさん。たとえ悪と罵られる存在が相手でも、心
を見せたかったのに蓋を開けたら邪気怨念でした解せぬ。けど頑張
?
"
11
?
"
"
!!!!!
視界に入れた刹那、骨の髄まで知らされた。
らない存在だ。
"
は、僕とは分かり合えない存在だ。先まで﹁心があれば話は通じる﹂と
"
言っていたことが馬鹿馬鹿しい。杏里繭でないけど、この世全ての悪
を か き 集 め た 存 在 に 何 が で き る。一 刻 も 早 く 討 滅 せ ね ば な ら な い。
この竜は悪性情報の塊。人に災いをなし、星を討たんとする汚物。何
故世に生きているのか不思議。
︿どうするのだマルタ。今ここで相手するのは⋮⋮﹀
﹂
﹀
﹁相手するに決まってるじゃないか。明日存在しちゃいけない竜だ
よ
︿だが、それでは貴様が
﹁うん。│││神々よ、人に明日を。主よ、人に愛を。母なる惑星
よ、どうか人類を慈しみ給え。⋮⋮逝く不敬をお許しください、陛下﹂
さ あ、行 こ う か。今 こ そ こ の 命 を 懸 け る と き。大 切 な モ ノ の た め
に。大好きなモノのために。高らかに謳おう、救済の詩を。今
力は⋮⋮確か、
﹁ツヴァイフォーム﹂、と聞いている。⋮⋮根差す木の
つ一つ、活動で魔力を精製しそれをまた疑似回路に通していく。その
筋肉、内臓、神経、血管。すべてを魔力回路に疑似変換。細胞の一
向ける。
謳うは救済。願うは守護。光は刃となりて、魔を討たんと切っ先を
﹁Ah│││││││││﹂
されている。邪竜の討滅は、成されなかった。
その邪竜は極度に弱体化した分身を作り出したことで生き延びたと
を照らし、まるで太陽が地上に在るかのようだったという。⋮⋮ただ
る。そしてなにより、その詩を謳い終わった暁には眩く輝く光が辺り
邪竜の呪いを祓い、みどり溢れる豊かな地に再生したと言われてい
世界と人類への愛を謳いあげたその詩は一面の大地にこびり付いた
で 欠 か せ な い の が 悪 し き 邪 竜 を 討 つ た め に 謳 っ た 救 済 の 詩 で あ る。
│││││││││後世、奇跡の聖女と呼ばれるマルタを語るうえ
!
ように大地踏みしめ、心を静め大自然と一体になり、惑星と心を同調
12
!
?
リッ
プ・
ア
ル
ファー
ジ
﹂
させる。まるで自分が自分じゃないようだ。
フ
ナニカ
が入り込むのを感じた。もしかしたら邪竜が
﹁原初の愛よ、清め給え││││││
ドクン、と
!!!
﹁│││ん、あれ⋮⋮へーか⋮⋮⋮⋮
﹂
││これが、僕の二度の人生においての結論だ。
結局僕本来の結論に戻ったね。うん、
﹁みんなちがってみんないい﹂│
共感する者がいれば愉悦を感じる者だっているだろう。⋮⋮⋮⋮あ、
する者がいれば悪こそが最上という者がいるだろう。他人の悲哀に
人の数だけ存在し、ただの一つとして存在しないモノ。善を良しと
すなわち、ココロ。
かった。
のだから。今際の際になって、探していた美しいものが何かやっとわ
た。後悔はない。だって、生前から探していた美しいものを見つけた
乱万丈、たくさんの人に関わり多くのものを瞳に映した人生であっ
世は平々凡々と呼べ⋮⋮るわけではないけれど。けど今は違う。波
神の子に出会って杖貰って、皇帝様に会って神竜邪竜と対峙して。前
死んだと思ったら神様に出会って解放形式の特典貰って転生して、
これまで、多くの出来事があった。
あぁ││││││意識が遠のいてきた。
でも思っているのか。生ぬるいよ、邪竜。
にすることはない。呪いがどうした、その程度で僕の信念が揺らぐと
息苦しいような、頭が重いような。だが、それが何だというのか。気
消 さ れ る こ と を 察 し た の か も し れ な い。呪 詛 か 何 か を か け た の か。
"
﹁あぁ、余だ。そなたの友であるローマ皇帝、ネロだ﹂
?
13
"
﹁そっか⋮⋮ぼく、もう│││﹂
聖女はすでに己の死期を察していた。傍らの皇帝も、それを感じ
取っていた。互いに、これが永遠の別れとなることを理解していた。
﹁陛下⋮⋮んーん、ネロさま。ぼくがおもう美しいもの、わかった
よ﹂
ココロ
⋮⋮だと、思う﹂
﹁そうか。では聞かせよ、そなたが思うこの世で最も美しいものを﹂
﹁えっとね│││その、
﹁⋮⋮それは、あるかも⋮⋮﹂
も、予測しえなかったであろうな﹂
﹁しかし。現に皇帝ネロと聖女マルタは友情を結んだ。そなたの友
﹁⋮⋮ん﹂
ど、あるはずないこと。全くもってありえん﹂
﹁本来、余とそなたは相容れぬもの。皇帝が聖女の最期を看取るな
絶え絶え、声を発するたびに喉に激痛が走る。けど、会話をやめない。
噛みしめるように、言葉を交わす。聖女は邪竜の呪いに侵され息も
もってその通りだ﹂
﹁結論⋮⋮あぁ、
﹁みんなちがってみんないい﹂、という。うむ、全く
﹁うん、ぼくのはじめの結論にもどったよ⋮⋮﹂
﹁ココロか。確かに、美しいな。人のココロも、神のココロも﹂
"
今
、そなたこそ│││最も美しい﹂
い最も美しいものではないのか、と。
﹁ネロさま⋮⋮ぼく、あなたとであえて⋮⋮⋮⋮ほんとうに、よかっ
た⋮⋮﹂
余│││否。私もそなたと出会い、友となったことを
﹁っ、ああ
﹁│││⋮⋮⋮⋮あり、がと││││││﹂
﹂
誇りに思う
!
14
"
﹁余は永遠を信じぬ。人の心は移ろいゆくもの⋮⋮だが、これだけ
は言える。
"
傍らにいた兵たちは思う。彼女たち二人の友情こそ、世に二つとな
"
!
そうして、
﹃奇跡の聖女﹄マルタは救済の詩による消耗と邪竜による
呪詛を原因に、多くの生命に惜しまれながらもこの世を去った。彼女
の葬儀には、異教徒と蔑まれる者たちも、彼らを迫害する軍人も区別
なく。天地の神々すらもその死を悼んだという。特筆することと言
えば、棺に納められたマルタの遺体は、この時代には珍しいと言える
純 白 の 花 嫁 衣 裳 を 纏 っ て い た ら し い。用 意 し た の は 友 の 皇 帝 ネ ロ。
曰く﹁奴は聖女だが同時に一人の少女。密かに花嫁に憧れを持ってい
た﹂とのこと。白は好きな色だそうだ。
聖女が死んでも、世界は続く。
やはりというべきかなんというべきか。皇帝ネロは反対勢力によ
る反乱が起きたのち、その命を自ら絶ち後世で﹁暴君﹂と呼称される。
教義が公認となり、帝国が滅び。繁栄と衰退を繰り返しながら、人は
神を脱し、自らの力でその歴史を刻んでいく。
そこには、聖女と皇帝が見込んだ美しさがあったのかもしれない。
15
※:マルタさんの設定
マルタさん
真名:マルタ
身長:160cm/体重:47kg
出典:史実、新約聖書、聖マルタ記
地域:欧州
属性:秩序・善・星
性別:女性
イメージカラー:晴れ渡った空の色
特技:家事全般と喧嘩の仲裁
好きなもの:穏やかな日常
苦手なもの:思考が読めない人
天敵:ジークフリート
神様転生。タラスクを屈服させた聖女に特典つきで転生させられ
た。ただし生きているうちに解放されるという仕様。
本来の一人称は﹁僕﹂で喋り方も中性的。聖女としては﹁私﹂で敬
語口調。ただし考えは変わらない。原作と同じくフィルターの違い。
命と心を愛する聖女様。何事にも敬意を忘れない。だって﹁みんなち
がってみんないい﹂んだから。この辺カルナさんに近いかも。ローマ
皇帝と仲良しなある意味異端と言えるけど本人的にはどうでもいい
模様。このことで責められてもだから何だと呆れ顔である。丁寧な
物腰、もしくはおちゃらけた態度だけど実は内心ビビり。一度覚悟を
決めると強いけどそれまで葛藤が長い。が、顔には出さない。
人との関わりを好む。一人でいることもあるがどちらかといえば
誰かと共にいることが多い。これはマルタさんが人類を愛している
からでもあるが、根底には﹁孤独への恐怖﹂がある。生前の詳細はあ
まり覚えていないけれど、基本的に誰からも見放されて孤独だったこ
とにトラウマがある。転生して多くの者と関わったことで大分癒さ
れたがそれでも人の本能としての孤独忌避は根強い。きっとSG。
16
実 は こ の 世 界 で は 知 名 度 が び っ く り す る ほ ど 高 い。神 様 の せ い。
そしてAUO同様、惑星意思によって生み出された存在で、救済の概
念英霊である。アルトネでいう半神。この場合、親は咲夜琉命。竜の
加護を持っているが竜に呪い殺されているために竜の因子と竜殺し
の素質を持つ者に弱い。ジークフリートが天敵なのは彼がこの二つ
の要素を兼ね備えているため。あと﹁思考が読めない奴﹂﹁未知の人
種﹂が苦手。これに当てはまる人物は結構多い。
性格を参考にした人
・咲@アルトネリコ3
・アクア@ファイアーエムブレムif
・ティリア@アルトネリコ3
・とがめ@刀語
︻ステータス︼
適正クラス:ライダー、キャスター︵ルーラー︶
ステータス:筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A
+
保有スキル:星竜の加護EX ⋮これがあるため対魔力はない。
奇跡B ⋮生前色々やらかしたため上昇。
聖女の叡智A ⋮便利な万能スキル。
神性C ⋮原作と変わらず。
クラススキル︵騎︶:対魔力│ 騎乗A++
︵魔︶:陣地作成B 道具作成B
タ
ラ
ス
ク
︵裁︶:真名看破A 神明裁決A
宝具:愛知らぬ哀しき竜よA+︵対軍︶
リッ
プ・
ア
ル
ファー
ジ
⋮ ご 存 知 苦 労 人 の タ ラ ス ク さ ん。主 に 多 人 数 を 載 せ る と き
フ
に使う移動手段。
尊き原初の愛よ、清め給えEX︵対界︶
⋮ も ら っ た 杖 は 神 造 兵 装 で し た。ぶ っ ち ゃ け 天 撃。最 大 火
力は自爆宝具になる。
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︻関係者各位︼
*ネロ・クラウディウス
奇跡的な友情を育んだ仲。花嫁衣裳は恥ずいけど別にいいかなっ
て。たとえ敵対関係でもさっぱりと雌雄を決するために戦うと思う。
この話での彼女は頭痛スキルが下がって芸術センスが直ってる。
*岸波白野
他四人同様に評するなら﹁見守る者﹂だと思う。仲は良好。時折一
線踏み越えそうになるも謎の直感で踏み留まっている。物理思考が
伝染しているが気づいていない。きっとこの先も縁がある。
*アルトリア・ペンドラゴン
何か色々と縁がある騎士王。鎬を削ったり口論したり食卓を争っ
たり。こんな間柄だけど結構仲良し。互いに互いの信念を認めてい
る。士郎君とアヴァロンで再会した後ひょっこり会いに来るんじゃ
ないかな。
*ギルガメッシュ
何か色々と縁がある英雄王。マルタさん知らないけど実は征服王
みたいに認められてる。たまに気が合う。もしバトることになった
らお互いに遠慮も慢心もしないよ。対界vs対界。
⋮他多数、今後増える。
18
通常四次
私に気を使うことはありません、存分に決
2:マルタさんルーラーです
︻倉庫街で初顔合わせ︼
﹁どうかしましたか
闘なさってください﹂
いつの間にかそこにいた長髪の女に先程まで斬りあっていたセイ
バーとランサーは警戒心をあらわにしていた。たおやかな笑み。清
廉とした人柄であることが伺えるが、聖杯戦争で他サーヴァントは注
意すべき存在であるため警戒を拭えなかった。彼女の言葉に勧めら
れ、戦闘を再開するも二人の騎士は意識のほんの一部を静かに観戦す
る女を割いていた。
しかし、剣戟は雷鳴が強制的に止める。
﹁我 が 名 は 征 服 王 イ ス カ ン ダ ル。此 度 の 聖 杯 戦 争 に お い て は ラ イ
ダーのクラスを得て現界した﹂
そして始まる唐突な勧誘。眼前で繰り広げられていた戦士の戦い
に感動したのか、マスターの制止も聞かずに朗々と口上を述べる。や
はりと言うべきか、セイバー、ランサー両名から拒絶される。漫才の
この世に現界している以上、聖杯に
ような光景を謎の女は苦笑いしながら眺めていた。
﹁ではそこのお主はどうだ
ラー
﹂
!!
ません﹂
ルー
﹁何 と
あ の 奇 跡 の 聖 女 と 名 高 き マ ル タ が お 主 か そ れ も
﹁私はマルタ、ただのマルタです。クラスはルーラー。願いは、あり
らもそれを一切顔に出さず静かに名乗りを上げる。
男ヤベェ⋮⋮色々とぶっ飛び過ぎてマジヤベェよ⋮⋮﹂とビビりなが
当然と言わんばかりに征服王は女に声をかける。女は内心で﹁戦車
﹁│││まず、私の自己紹介から始めましょうか﹂
かける願いがあるのだろう
?
?
19
?
支配者の位とは⋮⋮この聖杯戦争、面白くなりそうだ﹂
!
﹁私の役割は聖杯戦争を公平に、民衆が被害を被らぬよう執り行う
﹂
こと。征服王からの勧誘、真に光栄ですが謹んで辞退申し上げます﹂
﹁むぅ⋮⋮報酬は応相談だが。そなたらも、な
﹁いや、まぁ、
ものは試し
﹂
と言うではないか﹂
結局総スカンじゃないかよぉ⋮⋮﹂
﹁ら、い、だぁぁぁ⋮⋮どーすんだよぉ、征服とか何とか言いながら
違えど、共通して明確に﹁拒絶﹂を宿していた。
三人のサーヴァントから向けられる視線。込められている感情は
﹁俺も、主を裏切ることは出来ない。悪いが引き下がってくれ﹂
して王を名乗るか﹂
﹁何度言えば分かる。私に譲れぬ矜持と信念がある。それを解さず
?
いでに他サーヴァントも煽った結果。
!
﹁えっ、ごめんなさい﹂
ラー
ターに令呪で止められたのか、最終的に彼は去っていったのであっ
出させるがいつの間にかいた狂戦士に狙いを変える。だが彼のマス
アーチャーの舌戦の末、激昂した弓兵は複数もの宝剣の類を背面に現
スターの総意であるのだが黄金の男は気にも留めない。ライダーと
そんな聖杯戦争絶対にぶっ壊れるよ、というのがサーヴァントとマ
下ただ一人の王であるこの我こそがふさわしいが、まあよい﹂
﹁ふん。本来聖杯戦争を取り仕切る支配者は真の英雄にして天上天
ルー
﹁別に私が聖女であることは関係ないと思いますが﹂
!
﹁フハハハハハハハハ
﹂
余より偉そうな男の口上をくしゃみでを
⋮⋮﹂おい貴様、王たる我の至言を遮るなど、首を狩られたいか﹂
﹁我 を 差 し 置 い て 王 を 名 乗 る 不 埒 m﹁ふ ぇ く ち ゅ っ
う ー 寒 っ
で、師たる男からなじられて。傍らのライダーが男を挑発して。つ
場にいる全員に憐みを持たれていた。
そして契約しているサーヴァントに額をはじかれる。彼はもう、この
な人物に︵多分︶微笑まれたからか、少年は照れて顔を赤くしていた。
頑張ってるなぁ少年、と聖女から生暖かい視線を向けられる。そん
﹁ものは試しで真名バラしたんかい
"
遮るとは意外と肝があるのう、奇跡の聖女よ
!!!
20
!?
"
た。今宵の戦いで集ったサーヴァントは一部⋮⋮キャスターとアサ
シンを除いたサーヴァント全員。
で、お開きになったのである。
﹂
﹁特 に 被 害 は な い ⋮⋮ で す よ ね。強 い て 言 う な ら 修 繕 費 で し ょ う
か、聖堂教会も大変ですね﹂
﹁ルーラーはそのようなことも気にするのですか
﹂
冬木の聖杯は救世主の血を受けたとかワインを注いだとか
逸話があるものではないのか
﹁む
くの人が暮らすこんな街中で奪い合うなんて腹立たしいですが﹂
﹁単に私の気分ですよ。正直言って、贋作聖杯を何の関係もない多
?
﹂
﹁んなわけねーよ、二百年前に遠坂とマキリとアインツベルンがつ
﹂
マジふざけんな
⋮⋮ル、ルーラー⋮⋮
くった単なる魔術礼装だよ
﹁⋮⋮えっ
?
!
!
﹂
は知っていますが
おぞましい
冬木の聖杯が偽物であること
﹂
?
?
とは
"
﹁一体それはどういうことですか
式にかける願いなど、私にありません﹂
﹁⋮⋮初めに申し上げましたが。あのような模造品、おぞましい儀
ける
﹁まずルーラー。否、聖女マルタよ。お主は聖杯に如何な願いをか
︻聖杯問答︼
***
一応顔知られておいた方がいいよね、と考えた。
何はともあれまずは倉庫街。
***
四人のサーヴァントはそんな会話を交わし、別れた。
は有しているので求める価値はあると思いますよ﹂
﹁おっと失礼│││こほん。ですが、願いを叶えられるだけの能力
?
二名はそのまま。
佇まいを正す聖女。それにつられてセイバーも姿勢を整えた。他
段階から説明をしなければなりませんね﹂
﹁│││それにはまず﹃何故冬木の聖杯が願いを叶えるのか﹄という
"
21
?
?
?
﹁六十年に一度冬木に現れる、あらゆる願望をかなえると言われる
万 能 の 器。そ れ が 冬 木 の 聖 杯 で あ る こ と は 知 っ て の 通 り で し ょ う。
聖杯
一応は贋作にあたるのですかサーヴァント召喚という奇跡を示して
おり魔術協会にとっては優れた魔術品、聖堂教会にとっては
小聖杯
"
"
"
という二つの機構によって成り立っています。
小聖
"
"
と名がついている以上、監視対象になります。この聖杯は
大聖杯
と
"
﹂﹂﹂
!!!
﹂
ツベルン本人が優勝賞品ではないかと﹂
﹁アイリスフィール⋮⋮
であることは存じていらっしゃる前提で話します。│
﹁ここからは、現代の魔術師たちがまず第一に優先すべき目標が
!
﹁だろうな。あやつは恭順の姿勢こそとっておるが真の忠義とは程
⋮⋮遠坂時臣氏は自害させる気満々のようですが﹂
れば令呪を以って自身のサーヴァントを自害させる必要があります。
の魂。﹁願望機﹂としてならば六騎で事足りますが、根源に至るのであ
⋮⋮それこそが聖杯戦争の真の目的。そのために必要なのが七騎分
する分体を一気に開放することにより極大の孔を開けて根源に至る
として、サーヴァントの魂を一時的に留めておく器。﹁座﹂に帰ろうと
製作されました。小聖杯本来の用途は根源に通じる孔をあける手段
││本来の目的はやはり根源への到達。事実、聖杯自体がそのために
根源の到達
"
スとしたようですね。おそらく、アイリスフィール・フォン・アイン
小聖杯が破壊された前回の反省からか、思考能力を持ったホムンクル
機﹂としての完成品であり、優勝賞品。⋮⋮この第四次聖杯戦争では
霊の儀式。ほか六組の参戦者を排除して降霊した聖杯こそが﹁願望
﹁聖杯戦争においてサーヴァントが脱落していく過程こそが聖杯降
三人の王は、聖女の言葉に耳を傾ける。
﹁﹁﹁
なりません﹂
ち溢れた﹂モノ。その魔力とは即ち、脱落したサーヴァントの魂に他
・・・・・・・・・・・・
が鋳造した器に﹁おおよそあらゆる願いを叶えられるほどの魔力が満
める、言い換えるのなら聖杯戦争の優勝賞品ですね。アインツベルン
は表向きの聖杯。令呪を持つ外来の魔術師とサーヴァントが求
杯
"
"
22
"
遠い﹂
﹁典型的な魔術師だねー。人類が培った科学技術も見下して、濃密
な神秘の塊である英霊も見下すアホ思考﹂
﹂
システム
│││こほん。話を戻しますが、もう一つの機構
﹁ルーラーお主、二重人格なのか
﹁違うけど
は聖杯戦争を滞りなく行うための機能ですね。マスターに
"
?
明るい話題にしよう。ずばり、
王とはいかなるものか
﹂
﹂
"!!!
﹂
が三人も、加えて奇跡と謳われる聖女が揃ったのだ。
﹂
﹁ノリが悪いぞお主﹂
﹁帰っていい
己が信念を、王道を語るのも一興であろう
王
?
た。
そんなこと知らないよ﹂
明日の天気を告げるように返された言葉。余りにも冷徹に聞こえ
﹁な││││││﹂
﹁さあ
いるのだろうか﹂
﹁ルーラー⋮⋮貴方にも問いたい。私の王道は、願いは。間違って
を救う。財宝は須くわがものに。願いも語る。
く。受肉して誰でもない一人の人間として世を統べる。滅んだ故国
こと、理想に殉じようとすること、など。論争舌戦は激しくなってい
緩まった雰囲気を纏っている。征服王から始まり、王道は欲を極める
先程まで神妙に聖杯戦争の真実を語っていた聖女は形無し、完全に
!
﹁折角
﹁あっこれ僕関係ないね、帰っていい
﹁ほう。この我に王道を語らせるか、雑種﹂
"
﹁んん⋮⋮こんな重苦しい宴にするつもりはなかったのだが。よし
空気が重い。
了します。﹂
聖杯降霊儀式は行えます。⋮⋮以上で、冬木の聖杯に関する説明を終
これさえ無事であるならば新たに器を用意すればいいため何度でも
サーヴァントのルーラーを召喚したり。小聖杯が破壊されようとも
ふさわしい人物に令呪を授けたり、万一を想定して私のように中立
大聖杯
!?
"
?
23
"
"
?
﹁僕はルーラーだから皆の真名を把握してる。だから貴方たちが築
き上げた功績も、貴方たちが生き抜いた世界もちゃんと知っている。
そもそも三人が三人とも、時代、地域、文明、国民、文化⋮⋮何もか
もが違う。そんなバラバラの世を治めた人物の王道なんて、違って当
そもそも比べる事柄じゃない
ってこと
然 だ。こ の 国 の 言 葉 を 使 う な ら 十 人 十 色。だ か ら こ そ 人 は 美 し い。
僕個人の意見をいうなら、
かな﹂
尊重します。願いに優劣などありませんから。ですが⋮⋮﹂
﹂
英霊
"
﹁ルーラー
﹁│││うん、言っちゃおう。ごめんセイバー。ただ、
てのマルタは、貴方の願いを否定しなければならない﹂
﹂
後に、まるで死刑宣告のように感じられたと青い剣士は語る。
﹁⋮⋮何故、ですか⋮⋮⋮⋮
とし
﹁聖女としてのマルタも、町娘としてのマルタも、貴方たちの願いを
敬を。それぞれ向けられる。
騎士王からは、憧憬を。英雄王からは、興味を。征服王からは、尊
か。聖女は頭も切れるのだな﹂
﹁なるほどな。確かに、ただ王という事実だけで測ることは出来ん
さに満ちている﹂
﹁貴方は、不思議な人だ。冷酷な物言いをしながら、真実とても優し
んなちがってみんないい﹂なんだけどなぁ﹂
﹁後世の出来事を僕に言われても⋮⋮そもそも僕の座右の銘は﹁み
してきた歴史を持つが﹂
﹁異なることを是とするか、雑種。貴様の信ずる宗教は異端を排除
"
に言えば、神代が終わり西暦を経た人類がこれまで積み重ねた歴史で
かに、より強く繁栄させるための理│││即ち、人類の航海図。簡単
﹁星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの。人類をより長く、より確
絶対的守護者として。理想の王の願いを否定するために言葉を紡ぐ。
辟易しながらも救済概念の英霊として、惑星意思の代弁者、人類の
ければなりませんね。⋮⋮今日はなんか解説が多いなぁ﹂
﹁それにはまず、魔術世界で言われる﹃人理﹄というものを説明しな
!
24
"
"
?
あ り、人 類 が こ の か ら 歩 ん で い く だ ろ う 未 来 そ の も の を 指 し ま す。
⋮⋮厳しいこと言うかもしれませんが、セイバー。﹃ブリテンを滅び
英霊
は、
から救う﹄ということは人類が築いた結晶を全て破壊し、この先人類
がいつか迎える希望も焼却することなんです。私という
﹂
そのことを、絶対に見過ごせない﹂
﹁っ、何故⋮⋮
"
﹁だから、私は願いを叶えてはいけないと
﹂
興亡一つとっても、世界を、人類を揺るがすことなのです﹂
﹁そうですね、貴方の国は│││良くも悪くも、影響力が強い。その
"
いえ、私の願いが人類に仇なすものであることは
あの時、私は人の心が分からないと言ったトリスタ
それが今
!
ただ騎士たちと国
になっても私を苛み続ける⋮⋮私が悪いのだと。私の、私のせいでみ
ている、私に叛逆したモードレッドの叫びを覚えている
ンの声を覚えている、不義を許した時のランスロットとの視線を覚え
│││けれど
分かりました。⋮⋮未来が消滅することは私の望むところではない。
﹁ですが⋮⋮
静かに語る聖女。その顔は哀愁を露わにしていた。
を、どうか分かってほしい﹂
﹁別に貴方の願いが悪いわけではありませんよ。ただ⋮⋮そのこと
?
﹂
!!!
﹁征服王
﹂
﹁答えてやるがよい、奇跡の聖女﹂
マケドニアの征服王、奇跡の聖女であるとは何の因果であろうか。
初めて聞いたのが円卓の騎士でも王妃でもなく、ウルクの英雄王と
ブリテンの騎士王の本心。
ですか⋮⋮﹂
﹁⋮⋮教えてください⋮⋮⋮⋮どうして、私はこんなにも苦しいの
﹁セイバー﹂
からそこにいたかった。それを願うことすら悪だというのか
のため民のため、共に在りたかったのに。 宮 廷が愛おしかった。だ
キャメロット
んな死んでしまって、滅んでしまったのだって
!!!
一人の小娘の本心だ、教え導くは聖人の役割であろう﹂
25
!
!
!
﹁お主が過去に出会った人物の言葉を借用してもよい。王でもない
?
﹁⋮⋮はい。過去のマスターと契約していた時に出会った男の文言
を借りましょうか﹂
俯きながらも大粒の涙を流す王の少女。相対するは奇跡の体現に
して救済概念の聖女。
﹁何故悪行を犯していないのに苦しいのか。それは誰のせいでもあ
﹂
りません。それはただ│││間が悪かっただけでございます﹂
﹁│││⋮⋮間が、悪かった⋮⋮
﹁然り。貴方自身の選択も。貴方を取り巻く環境も。貴方が良しと
ユ
メ
しながらも手に入らなかったささやかな未来の夢も。貴方の民をは
じめとした人間達が求めた希望も。それらすべてが、たまたまその時
だけ、かみ合わなかっただけの話なのですよ⋮⋮アーサー王﹂
セイバーは目を見開いて眼前の聖女を見つめている。他の二人も、
感嘆したように息を漏らしている。言葉にすれば冷酷。突き放した
だけの結論。けれどそこには始めに語ったという顔も知らない男と
﹂
間が悪
!
実際にこの場で言葉にしたマルタの胸をうつほどに暖かで優しい肯
定に満ちていた。
それでは人間は、やりきれない
﹁│││そんな、間に合わせの理屈で済まされない⋮⋮
かっただけだと
!!
れない。だからこそ人は懸命に生きるしかない。セイバー、貴女もほ
んの少し悪かった。ですが、周囲の人間もほんの少し悪かった。要は
全て、何もかもが少しずつ悪かった。人生においては悲しむことも多
いですが、だからと言って悲観することはないでしょう。貴方が生き
た過程にも、喜びがあったはず﹂
﹁ルーラー⋮⋮﹂
﹁いつだって困難と理不尽に塗れているのが人の生きる道。失われ
てしまったものへの哀悼はありますが、案ずることはありません。そ
こに道があるのなら、歩いていける力を人は持っています。胸に灯る
願いに、目的に貴賤はありません。小さくとも一つだけでも、叶えた
い願いを、目指したい目的を持って歩き続ければ、いつか最後に、大
きな花を咲かすことでしょう。心配はいりません。今現在もこの社
26
?
﹁えぇ。ですが⋮⋮それが現実です。無意味で、デタラメで、やりき
?
会のために変えていこうとする人々がいますから。恐れることはあ
りません。貴女が歩んだ足跡は、誰かの笑顔に繋がったことでしょ
う﹂
三人の王はたった今ようやく理解した。奇跡と謳われ救済の体現
と崇められるこの聖女は、途方もないほどに人を愛しているのだと。
***
セイバーにガトーさんの話を聞かせてあげたかった。
あとザビエルの最期の言葉も聞かせてあげたかった。
⋮⋮正直、円卓は本当に間が悪すぎると思うんですよ。
27
3:マルタさんルーラーです②
︻キャスター戦in未遠川︼
﹂
﹁あぁ本当に腹立たしい⋮⋮ちょっと僕イライラしてきたなぁ。わる
いけどとどめ刺していい
﹁落ち着いてくれルーラー、意味が分からん﹂
なら僕は周囲の海
ぶんぶんと杖を回すマルタ。口元は笑っているが目は完全に冷え
切っている。
﹁冗談ですよ、とどめはセイバーさんでしたか
魔を適当に駆逐してやるよ﹂
﹁聖女が使う物言いじゃないぞルーラー﹂
すキャスターは塵も残さん﹂
﹁待てルーラー⋮⋮おい、おい
﹂
﹁聖女も列記とした人間だよランサーさん。あははは⋮⋮雨生ぶっ殺
?
女がいた。
様変わりしていた。
フ
リッ
プ・
ア
ル
ファー
ジ
﹂
﹂
それじゃあみなさん、あと
だが基本的にこういった攻撃は相当な負担になるのか、マルタの姿は
彼女自身の力も相まって周囲の海魔を消し去るに十分の火力である。
叩きつけられる光の槍。弱めとはいえ神造兵装、惑星意思の補助と
﹁│││いくぜ天撃。﹃尊き原初の愛よ、清め給え﹄
!!!!!
杖を掲げる。純白の光が集束する。そこには、背から翼が生えた聖
美しい詩を紡ぎ始めた。
ディースの総長である。 全くもって今の状態に似合わないとても
ル タ。何 処 か ら ど う 見 て も こ の 時 代 一 定 数 以 上 い た で あ ろ う レ
ランサーたちの制止を完全に無視して杖を肩に担ぎ足を進めるマ
り弱くしますから﹂
﹁あぁ大丈夫大丈夫。本当はランクEX対界宝具だけど威力思いっき
!
その、何故幼児になっている
!?
?
28
?
﹁んー⋮⋮だいたいくちくできたかな
本当に待て
!!
はよろしくおねがいします﹂
﹁待て
!
しんめいかいほう
しよう
だからしかたがないのです
"
りょうしんてき
﹂
にこうどうしてくれれば、わたしの
ルーラーとして行動できないだろう
﹁みなさんが
﹂
"
しんめいさいけつ
つかいます﹂
"
﹁はーい。るーらーとっけん、
しんめいさいけつ
│││れいじゅ
"
﹂
!
﹁そう思うか
私としては随分と心持が好いのだがな﹂
﹁⋮⋮アサシンのマスター、随分と雰囲気が変わりましたね﹂
︻言峰綺礼と︼
***
この後聖剣で青髭の旦那が退場します。
別名:天撃の無駄遣い。
***
地を照らした。
そうして、人類の希望の結晶が、儚くも尊きユメの光が、眩く天と
﹁│││ええ。決着をつけましょう
をもってめいずる。せいばー、ほうぐをつかいなさい﹂
"
﹁それは構わないのだが⋮⋮では、我が聖剣の煌めき、お見せしよう﹂
こゆるせないんですよ。
﹁あ、そうだ。ついでだし、いりょくあげますね。ちょっとあのくそた
だにその外形を保っており、泰然と川に居座っている。
るが、事態が解決したわけではない。キャスターがいる巨大海魔は未
なツッコみに受け答える。戦場にあるまじきゆるい空気となってい
マルタ︵幼︶はふわふわと背中の翼で飛びながらランサーの常識的
おしごとはへりますよ
!
というか、それでは
のちょくごはちからがでないのとおなじ
﹁なぜといわれても、そういう
よ。
です﹂
"
﹁いや、そういうレベルを超越していないか
"
"
男⋮⋮だったのだが。
その名は言峰綺礼。信ずる心と己自身が持つ価値観の不一致に悩む
跡﹂に満ちていた。片方は表向き脱落しているアサシンのマスター。
ラーのサーヴァント。名はマルタ。彼女が歩んだ道程はまさしく﹁奇
冬木教会。対峙する二つの影。片方はこの聖杯戦争におけるルー
?
29
?
"
!!?
"
﹁何か答えを見つけましたか
以前の貴方は何かに悩んでいたよう
だった。話が聞けるなら聞きたかったのですが⋮⋮遅かったようで﹂
﹁そうだな、確かにお前は私と話をするのが遅かったのだろう。先に
お前と話していれば、私はまた別の答えを得ていたのかもしれない﹂
物言いは残念がるように、しかしその口元は痛快な喜劇でも観てい
るように歪められていた。それを一目見てマルタは感じる。まさし
く遅かった、間が悪かったのだと。事実この男は己の苦悩を昇華させ
た⋮⋮最悪な方向で。
﹁一応聞いておこうか、奇跡の聖女。お前は何を信条としてその人生
を歩み、何を答えとして人生に幕を下ろした﹂
﹁│││ただのマルタが答えましょう、私が思う尊きモノはすなわち、
人のココロそのもの。時に笑い、時に怒り、時に泣き、時に慈しみ、時
に恐怖し、時に⋮⋮奇跡を起こす。それが善であれ悪であれ、情を抱
き言葉として伝えるのは、人類の最も美しい面の一つ。もとより人と
は全て同じのようで違うもの。私はその﹁違い﹂が愛おしくてたまら
ない。│││うん、﹁みんなちがってみんないい﹂んだよ﹂
どれだけ心情をぶちまけても、それがこの男にはもはや届かないこ
とをマルタは分かっていた。彼はすでに﹁答え﹂を得ているのだから。
言峰の言葉がどれだけ鋭くとも、マルタが揺らがないように。
﹁やはりお前も私と同じだ。醜い人の心を美しいと評するか﹂
ソレ
だってみんな
なんだろう。それは別に構
﹁それは貴方が知らないからだ。確かに貴方は多くを見て回り、苦悩
に次ぐ苦悩をした。その結果が
わない。僕は貴方の価値観を否定なんかしないよ
"
ね﹂
明
解
答
い。それが僕⋮⋮聖女マルタからの最初で最後の宿題だ、頑張って
頭と心で、そこに至る過程│││あるいは、全く別の発見を探しなさ
証
無意味だよ。それはただのカンニング。自分の力で、自分の目と耳と
⋮⋮言峰綺礼。一応言っておくが、他人から答えだけを与えられても
たらどうかな。そうすれば、また別の答えが見つかるかもしれない。
い。│││そうだね。聖杯戦争が終わったら改めて世界を見て回っ
ちがってみんないいんだから。けれど、そこで終わらせるにはまだ早
?
"
30
?
聖
女
最後に土産を残して、マルタは霊体となり姿を消した。
﹁│││宿題、か。はは⋮⋮マルタからの宿題では、さしもの私も、真
面目に取り組まざるを得ないな﹂
﹁ふん⋮⋮我の言葉を不正と評するのはあやつだけよな﹂
﹂
﹁その割には随分機嫌がよさそうではないか英雄王。彼女に何か感じ
ることでも
﹁何、あの女には言っていないがな│││奇跡の聖女は我が自らその
命を刈り取る。ただそれだけのことだ﹂
二人の男は語り合う。その瞳に、確かに地獄を映しながら。
***
ラスボスに宿題出す系聖女。
別の答えだすのか結局戻るのか。
***
︻アーチャーvsライダー︼
﹁││││││﹂
﹁⋮⋮まさか、余の固有結界そのものが破壊されるとはな⋮⋮﹂
大橋。
そこではライダーとアーチャー、征服王イスカンダルと英雄王ギル
ガ メ ッ シ ュ が 決 着 を つ け よ う と し て い た。見 届 け る の は ル ー ラ ー。
ライダーの固有結界、王の軍勢によって風景が砂漠と変じ、そこに彼
の 配 下 た ち が 集 い ア ー チ ャ ー を 討 た ん と 牙 を む い た ⋮⋮ の だ が。
アーチャーの宝具である乖離剣エア⋮⋮真名開放による天地乖離す
開闢の星から発せられる赤い斬風がそれを空間ごと駆逐した。軍勢
たちは消滅し、元の宵闇と水音が支配する大橋へと戻った。
﹁世界を斬り裂いたと呼ばれるだけはありますね⋮⋮権能になったら
どうなることやら﹂
﹁む、そうさなルーラー。お前の命を刈り取るときは天の理を使うの
もよいかもしれぬ﹂
﹁地球が滅びますからやめてください、本気で﹂
﹁ハハハハハハハハハ 相変わらず楽しそうだなお主らは。よし、
!!!
31
?
そろそろ決着をつけるぞ英雄王よ﹂
愛馬ブケファラスに騎乗したマケドニアの王。傍らには目つきの
変わったウェイバー・ベルベットもいる。どうやら最後の会話は済ま
せたらしい。この先、何があろうとも彼は強く生きるだろう⋮⋮と、
マルタは少し思っていた。
﹁お二方、準備はよろしいですね﹂
﹁応とも﹂﹁然り﹂
﹂
﹁では、これよりのアーチャー対ライダー決戦⋮⋮私、ルーラーが見届
けさせて頂きます﹂
悠然と立つ黄金。ニヤリと笑う赤。
﹁⋮⋮いざ、尋常に││││││始めっ
振り下ろされる手。同時に駆けだす征服王。雄叫びと馬蹄音が夜
の闇に響く。英雄王の背後に波紋が広がる。一つ一つから古今東西
ありとあらゆる財宝がその姿を見せ、最果ての海を夢見る男を殺そう
と降り注ぐ。刃の一つ一つがライダーの体を傷つけるも、だからと
言ってライダーが疾走を遅める⋮⋮ましてや止めることなどない。
﹂
そうして、英雄王に迫り、その顔に剣を振り下ろそうとした瞬間。
﹁│││
ぎゃりぎゃり、と金属特有の摩擦音が耳に入る。それもそのはず。
ライダーは神性を縛る鎖、天の鎖にその肢体を拘束されていた。あと
少し、というところであった。アーチャーは静かに乖離剣を取り出
し、もはや無防備となってしまった体を貫いた。勝敗は、決した。
どうやらこの二人は何やら話しているらしい。
﹁おぉ│││そりゃあ、いいな⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
何かに納得した⋮⋮否、安心したかのように安らかな呟きを残し
て、征服王は消滅した。静寂が降りかかる。今この場にいるのは勝利
した黄金の王、見届けた聖女、そして一つのモノを得た少年。
﹁│││ライダー、消滅を確認。これによりイスカンダル及びウェイ
バー・ベルベットは敗退と認定します﹂
﹁⋮⋮⋮⋮っ﹂
32
!
﹁全く、お主は⋮⋮次から次へと、珍妙な物を││││││﹂
!
﹁今後の処遇についてですが教会に│││アーチャー
﹂
金属音を立てながら先程倒した男の元主に足を進めるアーチャー。
本来であれば止めるべきであろうが、この二人の男の目つきには止め
てはならない心を感じとった。そうして、言葉を交わす人類最古の英
雄王と、脆弱な才しか持たぬ少年。
締めとなったのは。
﹁│││忠道、大義である﹂
物言いこそ厳しいけれど、確かな激励に満ちているとマルタは感じ
ていた。そして、少年⋮⋮ウェイバー・ベルベットの人生はここから
が本番であると思っていた。それだけのものを、彼は得たのだから。
***
﹂
傷があるなら見せてください、治療し
﹂っていうの格好いいよね。
とがめちゃんモチーフ。
﹁はじめっ
***
︻衛宮切嗣と︼
﹁│││ルーラーか⋮⋮﹂
﹁その子も生き残りですか
ますから﹂
﹁⋮⋮他にも、まだ、生き残りがいるのかい
ぐらい助けたよ
﹂
!!?
衛宮切嗣がかつて目指した
正義の味方
﹁それでも、今ここにいるこの子を救えるのなら﹂
恐 ら く、
という姿そのものであっ
聖 剣 の 鞘 を 使 い ま し た か ⋮⋮ よ ろ し い の で す か
た。
﹁
"
でください、早く
﹂
﹁⋮⋮そうですか、なら私から言うことはありません。こちらへ急い
?
"
血気迫る顔で堂々と数字を述べ、改めて真実彼女こそ救済の概念⋮⋮
初 め て そ の 姿 を 見 た と き 感 じ た 清 ら か な 雰 囲 気 は 見 る 影 も な い。
﹁あぁ⋮⋮そうか、そうなのか⋮⋮﹂
!
!
33
?
﹁僕を誰だと思ってるの あんたが絶望している間にざっと二百人
?
?!
!
茨ってレベルじゃない道を歩むことになりますよ﹂
!
ボロボロの二人を引っ張るようにして腕をとり、火の手から逃れる
ために足を急がせる。
﹂
いらっしゃいマルタねぇ﹂
1994年冬、第四次聖杯戦争と、とある男の信念が終わりを迎え
た。
﹁あ
﹁マルター
﹂
﹁こんにちは士郎君、イリヤちゃん。また見ないうちに大きくなった
!!
!
深山町、衛宮邸。二人の子供に迎えられてマルタは日本風の邸宅に
足を踏み入れる。ここでは切嗣とイリヤスフィール、士郎の三人家族
が暮らし、時折マルタや藤村大河が加わる暖かな家庭であった。小聖
杯として調整を受けた体であったイリヤスフィールは蒼崎橙子の協
力により人形の体で生活している。ちなみに聖杯としての機能を備
えた元々の体は丁重にドイツのアインツベルンへ送り返した。
﹁⋮⋮あぁ、マルタちゃん。よく来たね﹂
﹁そう呼ばれるのも慣れましたね⋮⋮こんにちは、切嗣さん﹂
かつて微妙な関係であった二人も互いに挨拶をする。家族三人も
含めて、実に奇妙な間柄だったがそれでも円満だった。十年前まで魔
術師殺しとして名を馳せたこの男も呪いに侵された故か、風が吹けば
崩れる薄氷のような命。マルタの治療により、少なくとも第五次聖杯
戦争⋮⋮つまり、あの大火災から最低十年の寿命を保障していたがそ
れも危うい。
その夜。
﹁│││子供のころ、僕は正義の味方に憧れていた﹂
34
?
﹁なぁにそれ。キリツグ、いきなりどうしたの
﹁憧れてたって⋮⋮諦めたのかよ﹂
﹂
﹁うん、残念ながらね。ヒーローは期間限定で⋮オトナになると名乗
るのが難しくなるんだ﹂
まだこの場で彼は死なない。それでも、着実にその死が近づいてい
ることは分かっていた。
口からこぼれるように話す切嗣も、何も言わずに聞き入るマルタ
も、互いにそのことを分かっていた。
﹁ふうん⋮⋮もっと早く気付ければよかったわね﹂
﹁そうだな。それじゃしょうがない﹂
﹁ああ。本当に、しょうがない﹂
しょうがない。しょうがないのだ。子供の夢想を抱いたまま、大人
になることは出来ない。その実、傍らの聖女は本当に立派な人格者で
ある。全ては守れないことを自覚していながら、それでも人類を深く
愛しているのだから。だからどうか、諦めてくれ。夢はしょせん夢で
あり、掴んでも掴めない。水面に映る月の様に、あると思ってもない。
だというのにこの少年は。
﹁うん、しょうがないから│││俺が代わりになってやるよ﹂
輝かしい笑顔で、そう、言ったのだ。
俺だってやればできるんだから﹂
キリツグに無理なら、シロウにだって無理よ。きっとキ
﹁爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ﹂
﹁えぇー
リツグみたいに大失敗﹂
﹁なっ、そんなの分かんないだろ
うに士郎の声が沈む。
﹂
﹁なら、シロウが失敗しないように、私が見ていてあげるわ。一人だけ
で頑張るのは失敗の第一歩
﹁ふふっ。よろしいのですか
その道はきっとつらいものですよ、
﹁む⋮⋮それなら、まあ、いいか⋮⋮﹂
!
?
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?
きゃらきゃらと愉快そうに見せて笑うイリヤ。意気をそがれたよ
!
?
﹂
﹁本当
?
⋮⋮だと、思う⋮⋮﹂
﹁本当
!
﹂
きっと誰かに強く否定されることでしょう﹂
﹁誰か、って⋮⋮誰だよ
﹂
﹄って宣言して
切嗣さんのように、正義の味方を目指して大失敗したどこ
られている。
がいる、マルタがいる、大河がいる。もっともっと、多くの人に支え
あぁ、これなら大丈夫だ。士郎は一人じゃない。イリヤスフィール
やるよ﹂
﹁そんなときは、
﹃俺とお前は違うから一緒にするな
かの誰かさんじゃないですか
﹁さぁ
?
﹂
衛宮士郎
という誰でもない貴方を大切に思っている誰か
﹁ですが士郎。正義の味方を目指す前に、一つだけ、約束してくださ
い﹂
﹁約束
﹁はい。
"
﹂
?
﹁││││││
﹂
心配だし悲しくて、何より自分を大切にしろって怒るだろう
﹂
か⋮⋮まして自分のために怪我したり命が危険になってしまったら、
か、大切な人たちを悲しませないでほしい。君だって、家族が別の誰
﹁切 嗣 さ ん も イ リ ヤ ち ゃ ん も 大 河 も 僕 も。君 の こ と が 大 切 だ。ど う
﹁誰でもない、俺
が必ずいる、ということをどうか忘れないで下さい﹂
"
?
くれ﹂
﹁大丈夫よマルタ
対に一人ぼっちにしない。私はシロウの味方になるわ
﹁そうか。ああ│││安心した﹂
空は高く、月は清く、光は澄んでいる。
***
最終的な乖離事項
!
!
・衛宮切嗣は生存
﹂
シロウが無茶したら私が怒るもの。それに、絶
﹁うん、分かってるようでなにより。そのことをしっかり覚えていて
!
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!
?
?
?
・イリヤスフィールは衛宮邸で生活
・死者五百人↓三百人
・衛宮士郎の理想が若干変わる
第五次聖杯戦争における乖離予定事項
・セイバー、アーチャー、言峰綺礼
・アインツベルン陣営
次は乖離五次。
切嗣生きてるけどそんなに変わらん気が⋮⋮。
***
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