マルタさんの物語 ID:73290

マルタさんの物語
水天宮
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︻あらすじ︼
特典付き神様転生でマルタさんになって。
本来あるはずのない友情きずいて。
何か死後変な英霊として祀り上げられて。
﹂
※微妙な恋愛要素あり。
基本緩めの物語、はじまります。
﹁えっこれ僕が悪いの
?
※シリアスだったりギャグだったり。
※ちょっと宗教系の話混じる。
※他作品の設定が混ざってる。
1/18
運営から警告とか受けたので大幅改変しました。
といっても流れは変わっていないのでご安心ください。
目 次 1:マルタさんの生前ダイジェスト ※:マルタさんの設定 ││││
通常四次
3:マ ル タ さ ん ル ー ラ ー で す ② 2:マルタさんルーラーです │
24
29
1
43
│
そういうものだと思う。今社会全般で信仰されているオリュンポス他の神々同様、彼ら
別に主たる存在を盲信している訳ではない。なんというか、太陽とか月とか星とか、
一度抱いた信念というものはなかなか捨てきれない。
扱いである。それはしゃーないよね。ただ、
﹁彼﹂には弟を蘇らせてもらった恩もあり、
クも鎮めてそれなりに経った頃。やはりこの時代、一神教はぶっちゃけカルトみたいな
そんなこんなですでに立川の聖人︵こうとしか表現できなくてww︶も死してタラス
とかがもらえるようになるんだってさ。
ずい﹂らしいんだよね。その辺はよく分からん。だから生きていくうちにそういう能力
あと、色々と転生特典で能力とかもらえるんだけど、何でも﹁いきなり能力付与はま
ね。マルタになることだけは決定されてた。
リストと知り合いで妹にマリア、弟にラザロ。まぁなんやかんやの神様転生って奴だ
あのーあれだよタラスクっていう竜を祈りだけで屈服させた女の人だよ。イエス・キ
⋮⋮いやそこ、﹁何言ってんだこいつ﹂みたいな顔するなよ、ホントだって。
僕の名前はマルタ。聖女である。
1:マルタさんの生前ダイジェスト
1:マルタさんの生前ダイジェスト
1
2
は﹁見守っている﹂んだと僕は思う。僕が生きている様子を主も神々もそれをしっかり
見ているのだから。堕落した生活は出来ない。このあたり日本人ぽいよね。たとえ誰
も見ていなくてもお天道様は見ているぞー的な。大体そんな感じ。
僕が信じるのは僕自身。それは誰にも、主にも神々にも揺らがせない。
あと別に信仰する対象が違っていてもいいんだと思うんだよ。人が美しい、と感じる
何 で だ っ て 格 好 い い じ ゃ ん。花 は 小 さ く て 可 憐 だ け ど
ものだって人によって異なる。ちなみに僕は、石畳の隙間に生える名前も知らない野花
が 美 し い と 思 う ね。え
?
だよ。
│││あぁ。今になって結論が出るなんて。そうだ、
﹁みんなちがってみんないい﹂ん
ど﹁人﹂も﹁小鳥﹂も﹁鈴﹂もそれぞれが美しい。違うからこそ素晴らしい。
に体をゆすっても綺麗な音は出ないけど、鈴は人のように歌を歌うことはできない。け
小鳥のように空を飛べないけど、小鳥は人のように地面を速く走れない。人は鈴のよう
⋮⋮うーん、なんていうかさ。﹁人﹂と﹁小鳥﹂と﹁鈴﹂って、違うじゃないか。人は
う。
人間は﹁全く違う﹂生き物。そして同時に﹁全く同じ﹂生き物でもあるんだと僕は思
ルの整った女の人が美しいと思う人、いろいろいっぱいいると思うんだよ。
根っこは強く大地に根差している。良いよね。他にも青い空が美しいと思う人、スタイ
?
そして僕はそんな﹁違い﹂を探したい。素晴らしい﹁違い﹂を見つけたい。だからこ
そ旅をする。布教⋮⋮とはちょっと違うかな。﹁あの人﹂の話はしたくなったらすれば
いいのだから。﹁違い﹂を見つけ、
﹁美しい﹂ものを見つけ。そんなものでいっぱいになっ
たら。
世界は、一体どれだけ素晴らしくも美しいのだろう。
と思うものを聞かせてくれませ
"
"
﹂
?
﹁││││││解け﹂
んなものになるのだろう。
える夢。彼女が語るように、人それぞれで異なる美しさで世が満たされたら。それはど
目の前の聖女は語る。縄で縛られ、鞭打たれながらも捨てなかった信念。眩しくも思
んか
﹁故に、陛下│││私を処刑する前に、貴方の 美しい
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﹁陛下
﹂
﹂
信仰の是非なぞ関係あるまい。余は
ですが陛下、この女は世を乱す異教徒ですぞ
﹁それは⋮⋮⋮⋮﹂
﹂
!
念。それをゆめはき違えるな﹂
﹁陛下⋮⋮寛大なる処置、誠に感謝いたします﹂
﹁うむ、深く感謝するがよい。それでマルタ、どうかそなたの話を聞かせてくれぬか
そなたの考える美しいものを、な﹂
﹁│││分かりました。では、陛下の思う美しいものも、お聞かせください﹂
﹁当然よ﹂
?
﹁マルタよ。余はそなたらの教義を認めたわけではない。余が認めたのはそなたの信
ないなら皇帝たる己がやらずしてなんとする。
瞬かせていた。きつく縛られた縄に手をかけ、手際よく解いていく。周囲の臣下がやら
玉座に坐していた小さな人影が聖女へと駆け寄る。当の聖女は当惑したように目を
﹁えぇい、皇帝たる余の命令を聞かない奴め
!!
﹁縄を解けと言っている。はやくせぬか﹂
﹁なっ⋮⋮
﹁貴様はあやつの話を聞いていなかったのか
!
ただ⋮⋮マルタの語る世界を見てみたいと思った﹂
?
?
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本来相容れぬ存在である二人。キリスト教徒を迫害し後に﹁暴君﹂と悪名をあげた
ローマ皇帝ネロ・クラウディウス。魔術に武術を修め、ついには天災すらも鎮め英雄に
勝るとも劣らずの信を得た聖女マルタ。この時こそ、二人の奇跡ともいえる友情が始
まった瞬間である。
***
登場人物紹介
・マルタさん
神様転生。今の所もってる特典は﹁魔術﹂のみ。今後増える。
ローマ軍に捕まって皇帝様のもとに引っ張り出されたけど何か仲良くなった人。
・皇帝様
暴君こと赤セイバー。つまりネロ・クラウディウス。美しいものが好き。
多分マルタさんには頭が上がらなくなるんじゃないかな。
・セネカ殿
出てこないけど一応いる。多分死亡フラグは折れた。
爆走するネロ帝のストッパー役としてマルタさんと仲良くなると思われ。
***
6
いやぁ⋮⋮まさか赤セイバーさんとお友達になっちゃうとか人生何が起こるか分か
らんなぁ。こんなときどんな顔すればいいの。ただ、やはりというべきかなんというべ
きか。カルト宗教扱いなのは変わらないために迫害弾圧はちょっと弱くなった程度で
ある。赤セイバーさんも﹁みんなちがってみんないい﹂という僕の考えに賛同してくれ
たのか、若干優しくなってくれたことは僥倖といえるだろう。その代わりに帝国のお偉
いさんから睨まれるようになったけどね しゃーないのは分かるけど結構へこむん
だよこっちは
で。
!
な
それが暴風雨を起こして集落のみんなが困っているとかなんとか。これは僕の出番か
随分とボロボロだったから傷を治療したりしたよ。なんでもでっかい竜がいるらしい。
ローマの都にやってきたとある男性。辺境からはるばるやってきたらしい。何だか
!
﹁はい。タラスクはレヴィアタンの子供とも呼ばれていました。⋮⋮撲殺されました
﹁しかし竜か⋮⋮。マルタ、そなたは確かタラスクという竜を屈服させておったな﹂
ど近い所になるのかな。
というわけで結構遠いトコ来ました。現代の地理的にはスペインの南部、地中海にほ
!!!
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が﹂
﹁教徒のいう悪魔、か﹂
﹁ですが、今回暴風雨を起こしているという竜は悪魔とも怪物とも異なる⋮⋮どちら
そなたが神と申すか﹂
かと言えば神と言えるかと﹂
﹁ほう
﹁目的地に近付いているのでしょう。やはり少人数で来て正解でしたね﹂
﹁⋮⋮雲行きが怪しくなってきたな﹂
してあげたい。そんな甘い人間だよ、僕は。
けれども負けていられない。困っている人は助けたいし、誰かが苦しんでいるなら癒
⋮⋮。
に は ご 退 場 願 え と の こ と だ。僕 は 人 か な。相 手 は 地 か な ぁ。相 性 悪 そ う で つ ね。は ぁ
象相手には打ち負かされる自信がある。だが某雷電王さん曰く天と地の属性を持つ者
⋮⋮改めて感じる。相当高位の存在だと。如何に僕が聖女と呼ばれていても自然現
らが神としてカタチを成したものが此度の相手という訳か﹂
﹁なるほどな。⋮⋮天を覆う暗雲、荒れ狂う大嵐、降り注ぐ豪雨、空を奔る雷鳴。それ
例えるならオリュンポスの神々に近いですね﹂
﹁遥か遠く東方の国では龍は自然現象、天災の権現として崇められているそうです。
?
8
﹁うむ。ただでさえ嵐で食糧やらが不足している状態だからな﹂
とりあえずそんな気がする。直感か
﹁長居もしないほうがいいかと。万一、危険になったら避難を勧めましょうか﹂
問題の竜さんがついてきたら意味ないがな
暮れていたから。だがしかし獲得には制限があるとか。まず自力で特典を一つ修得、そ
典を新たに解放するらしい。これは心強い。相手は竜種、しかも神格もちで内心途方に
そしたら夢で僕を転生させた神様になんか会ったよ。曰く、ここで僕が頼んだ転生特
目に。
げたかったけどローマ皇帝に同行している客人という立場だから何もできずに寝る羽
た故、今日はまだ竜をどうにかしないことで決定。正直村の人たちのために色々してあ
んで、大変なのに丁重にお出迎えしてもらって。昔を思い出す。すでに日が暮れてい
そして暮らしてる人達に早いところ平穏を取り戻してあげたいな。
啓 示 か 知 ら ん が そ ん な 気 が す る。だ か ら こ の 集 落 で 決 着 を つ け た ほ う が い い だ ろ う。
!
れを用いて相手の神竜を屈服させろとのこと。マジかYO そうすればまた特典を
一つ解放するってさ。なにその飴と鞭
!
でも頑張らないとね。
?
1:マルタさんの生前ダイジェスト
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はい朝です。天気も相まって若干憂鬱です。善は急げとも言うし、早速当の神竜の元
﹂らしいけどそれで何があったら
へ 行 く こ と に。僕 一 人 の は ず だ っ た け ど 何 故 か 赤 セ イ バ ー さ ん つ い て き ち ゃ っ た よ。
本人は﹁皇帝たる余がこれを見届けずにいられるか
ま れ 随 分 と 暗 い け ど 直 感 か 啓 示 の お か げ で 進 め る こ と に は 進 め る。足 元 悪 い け ど ね。
どうするんだって言ったら反省してくれた。集落からほんの少し離れた森。木々に囲
!
ソレ は﹁猛威﹂という概念がそのまま体当たりしてくる
若干疲れはじめたころ、開けた場所に出た。前方には湖。台風の中心である目は風が弱
いと言うが、原因がである
"
?
ある竜がいた。
﹁││││││っ、はは⋮⋮この余が、畏れているだと⋮⋮⋮⋮
﹂
ような気さえした。つまり、圧倒的で絶対的。存在そのものが反則級。暴風雨の神格で
"
ソレ
の視線は僕と赤セイバーさんを捉えて離さない。
﹁陛下、やはりお戻りいただいた方が│││いえ、もう遅いでしょうね﹂
すでに
"
"
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︿│││人の子よ。なにゆえ、我の前に現れた﹀
﹁それを貴方に聞きたい。暴風と豪雨の体現者よ、何故あなたは嵐を起こすのです﹂
冗談にしては笑えんぞ。余たちは貴殿と対話をしに来た﹂
︿なるほど。我を討たんと勇んできたか﹀
﹁貴殿をか
る
﹀
︿対話、対話か⋮⋮久方ぶりに骨のありそうものが来たと思えば、片腹痛いにも程があ
?
│││では、貴方は⋮⋮﹂
﹀
同じ星から出づる生命であるというのに、己こそ
!
が偉大で崇高であると信じて疑わない
﹁っ
!!
︿元はと言えば貴様ら人どもが
する気がしていた。恐怖に足が震える。それでも、負けない。
気さえした。それでも僕は目を離さない。この神竜と対話する機会を逃せば、一生後悔
轟、と辺りが鳴る。樹木がミシミシと軋む。空気が敵意を持って僕たちに襲い掛かる
!
流す
それを滅ぼさずして何とするのか
﹀
貴様ら醜悪な汚物を地上から一人残さず一掃する
﹀
!
!!
﹁⋮⋮ああ。確かに│││それは、余たちが悪だ﹂
︿ならばそこを除け
!!!
そが我が使命、あるべき運命
!!
それこ
︿幾度と我が同胞を狩り、小さくも強く生きる生命を潰し、ついには同じ人同士で血を
!
!
1:マルタさんの生前ダイジェスト
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恐らく、この神竜はむしろ精霊種に近いのだろう。真祖の姫君的な感じのアレ。まさ
か生きてるうちに遭遇するなんて。余りにも強い憤怒には息をのむほどの悲哀を感じ
た。きっと、人を深く愛している。じゃなきゃここまで怒るもんか。
﹀
﹁だがな⋮⋮貴殿は一つ間違えている﹂
︿何を
﹀
!
る台詞、あの言葉を目の前にいる神竜に送りたい。人の悪しき心や欲望を目の当たりに
た時は感動したよ。歌詞も素敵だと思う。途中の歌詞にあるマオがラプランカにかけ
そうして歌い上げるのは恵みの大樹。いいよね、生前⋮⋮というか前世でゲームやっ
イ ン プ ラ ン タ
﹁私と話せ、とは言いません。ただ、私の声を聴いていただけますか﹂
︿殺されたいか。ならば今ここで│││﹀
﹁さて、どうしてでしょう⋮⋮変ですね、涙が止まらないのですよ﹂
︿何故だ⋮⋮何故貴様が涙を流す﹀
をのむ。寧ろ美しいとまで感じるほどだ。あ、実際綺麗だね。羽毛っぽいのあるし。
ら。意外と浅くてびっくり。どうやって入ったし。近くで見れば、その雄大な威容に息
膝まで浸かっている。それも当然、だって僕は神竜が座する湖に入っているのだか
︿ふざけた口を││││││貴様⋮⋮
﹁人は何も醜悪なだけではない。貴殿は、人というものを見くびっているようだ﹂
!!!
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したからこその行動なのだろう。それを否定する気はない。けれど、どうか知ってほし
い。人にもまた善き心があるということ│││人とは可能性、人の数だけ心がある。そ
して人は未来を紡ぐものだということを。
︿⋮⋮そうか、我は⋮⋮﹀
﹁分かるか、偉大なる神の竜よ。人が絶望を齎すなら、希望を示すのもまた、人だ﹂
︿我は│││我は、何と愚かなことをしていたのだろうか﹀
﹁⋮⋮ふと思ったのだが。貴殿はいささか思い込みと突っ走りが激しいのではないか
﹂
・武術
今回の神竜調伏で水と風が強くなった。けど一応全部使える。
五大属性│空。つまり四大属性。それっぽい名前を付けるならエレメンツ。
・魔術
マルタさんのスペック
***
気が付けば、空は青く晴れ渡っていた。
?
基本グーパンだけど剣槍斧その他の武器も自衛できる程度に扱える。
けど素手で殴る。杖貰ってからは杖でも殴る。聖女なのに。不思議だね。
・詩魔法↑New
アルトネリコより拝借。ぶっちゃけただの対話用言語みたいなもん。
修羅神仏の類から惑星意思まであらゆる想念に有効。神代魔術の一種。
・星竜の加護↑New
今回のご褒美。権能の極小規模行使。竜を従えたのに竜殺しは天敵。不思議だね
!
知ってた
!
しかし、色んな人に出会った
さらに年月経ちまして。赤セイバーさんに出会って何年たったよ。月日が経つのは
***
性過多。
通 称 セ イ。親 は 零 獅 姫。ツ ン デ レ。思 い 込 み が 激 し く 暴 走 属 性。一 応 男。も は や 属
困る。
精霊種というよりむしろ地属性の惑星意思。何してんだ星の子と言われると答えに
・静天豊命︵シーテンフ︶
できることは﹁飛行﹂
﹁天撃﹂
﹁神竜召喚﹂など。あと身体能力が若干高かったりする。
!
!
早いですね。教徒の扱いは変わらんがな
!!
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ま ぁ そ も そ も 歴 史 も 神 話 も あ ん ま し 詳 し く な い が な
F a t e
よ。いつの間にか僕の知る史実で起きるべき事柄が起きたりしないんだよ。これ人理
焼けないよね
!
で、またまた竜案件ですよ奥さん 前回は現代でいうスペイン南部だったけど今回
た竜│││セイに人の希望を見せたいからね。
も相変わらずお偉いさんに睨まれながら沢山の人のために頑張っている。あの時従え
だってGOしかやってない。赤セイバーさんがEXTRAで何したとか知らない。僕
?
打って変わって大軍隊を率いるそうだ。本当に大丈夫か
原作通り使うと大幅に弱くなっちゃうんだよ、幼児化してさ。一々細かい。
だよ。これも転生させた神様が何かやったのだろうか。だって天撃使えるんだよ
けどなんか違う。例えるならノゲノラの天翼種、ととモノのセレスティア。つまり羽毛
いいね。確かにサラマンダーよりずっと以下略。竜の翼というと皮膜を思い浮かべる
そんなこんなで僕はセイの加護で手に入れた翼でさっさと単独入りをした。気持ち
?
するなぁ。何はともあれこの案件は帝国としても見過ごせないようで、セイの時とは
たりそれはまぁ色々とやっているらしい。僕の内なる底に潜むセイが怒り狂って気が
うな。すまない、手におえなさそうだ。本当に略。辺り一帯に呪い振り撒いたり人殺し
なんでも人を苦しめているらしい。タラスクに近いね。世間では邪竜と呼んでいるそ
はガリア近郊、つまりドイツまで行くよ。前より近いけどそれでもこの時代では遠い。
!
?
1:マルタさんの生前ダイジェスト
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感じます⋮⋮強い怨念ですね。こんな生物が地上にいるなんて⋮⋮﹂
多くね 邪竜百年戦
手を伸ばし、強い風をワイバーンの翼に薙ぎ払うよ
?
﹁
千と数百年早いよ
というか眷属っぽいの飛んでるよ。なにあれワイバーン
争開催中
?
直感か啓示かはわからないけど山間の洞窟に行けと言われている気がする。なるほ
アレだよね。
どうでもいいけど彼見た目は格好いいけどダビデの息子だと思うとなんというか⋮⋮
それが分からないのかなあのソロモンとか言うのは。何故人理を焼却したのか。⋮⋮
戻らない。だからこそ過去は美しく未来は眩しい。惑星は尊く人類は強い。やれやれ、
も未来があったはずなのに、それが断たれてしまったのだから。消えた生命は、二度と
を変えることは出来ない。だからこそ過去は尊い。正直ちょっと心に刺さる。彼らに
散らされた命に僕が出来ることと言えば安らかな眠りを祈るだけ。悲しいかな、過去
﹁ガリアは全滅ですか⋮⋮主よ。どうか彼らに安息を与え給え│││﹂
都であった。
分厚い雲を突っ切り、地上を目指す。眼前に広がったのは退廃と崩壊がただよう死の
ためにも速度は落とせない。
のまま勢いに任せ空を駆ける。まるで僕自身が彗星になったようだ。飛竜を振り切る
うに当てる。そんなに落ちないけど突破する程度には減らすことが出来た。そしてそ
?
?
!
ど、そこに問題の邪竜さんが待ち構えている訳だね。早期決着早期決着、今日中に解決
させるつもりで生命の息吹が感じられない街並みの上空を高速で通り過ぎる。はやく
しないと。近付けば近付くほどに冷や汗が流れ、肌を撫でる風に蒸発する。その風も嫌
に生ぬるい。心臓が早鐘を打つ。どんな邪がいるのだろうか。
﹂
セイに希望を見せたかったのに蓋を開けたら邪
?
る。
入った。足裏が石の質感を伝える。杖で支えながらもよっこいよっこいと歩みを進め
い 人 と 出 会 っ た ん だ。だ か ら き っ と 大 丈 夫。そ う し て 震 え る 脚 に 鞭 打 っ て 洞 窟 へ と
が相手でも、心があるのならば話はきっと通じるよ。ソースは僕自身。過去に結構すご
気怨念でした解せぬ。けど頑張る。だって僕はマルタさん。たとえ悪と罵られる存在
すかこれ。こんなの地上にあるの
思わず素が出るくらいにはおぞましかったよ。なぁにこれぇ⋮⋮いや本当になんで
﹁到着⋮⋮うん、進みたくないね。僕、生きて帰れるかなぁ
?
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│││││││
﹂
は生きてはならない存在だ。
は、僕とは分かり合えない存在だ。先
"
コレ
"
は人とも星とも相容れぬ存在だ。
視界に入れた刹那、骨の髄まで知らされた。 コレ
コレ
"
"
竜は悪性情報の塊。人に災いをなし、星を討たんとする汚物。何故世に生きているのか
の世全ての悪をかき集めた存在に何ができる。一刻も早く討滅せねばならない。この
まで﹁心があれば話は通じる﹂と言っていたことが馬鹿馬鹿しい。杏里繭でないけど、こ
"
"
!!!!!
﹁GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA│││││
理。余りにも不公平。余りにも│││違反。
たない民草からすればもはや死の概念そのものとしか言いようがない。余りにも不条
世界に厄災をもたらすもの。おとぎ話では英雄に討伐される悪役であるが、何の力を持
然の体現にして権現であるものとは概念と異にし、一線を画す存在。竜とは即ち、人に
確かにそれは竜である。だが、過去に従えた静天豊命のような空・地・海という大自
﹁││││││嘘﹂
1:マルタさんの生前ダイジェスト
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不思議。
︿どうするのだマルタ。今ここで相手するのは⋮⋮﹀
﹀
﹁相手するに決まってるじゃないか。明日存在しちゃいけない竜だよ
︿だが、それでは貴様が
﹂
?
ために。高らかに謳おう、救済の詩を。今
した分身を作り出したことで生き延びたとされている。邪竜の討滅は、成されなかっ
し、まるで太陽が地上に在るかのようだったという。⋮⋮ただその邪竜は極度に弱体化
言われている。そしてなにより、その詩を謳い終わった暁には眩く輝く光が辺りを照ら
詩は一面の大地にこびり付いた邪竜の呪いを祓い、みどり溢れる豊かな地に再生したと
悪しき邪竜を討つために謳った救済の詩である。世界と人類への愛を謳いあげたその
│││││││││後世、奇跡の聖女と呼ばれるマルタを語るうえで欠かせないのが
!
さあ、行こうか。今こそこの命を懸けるとき。大切なモノのために。大好きなモノの
しみ給え。⋮⋮逝く不敬をお許しください、陛下﹂
﹁うん。│││神々よ、人に明日を。主よ、人に愛を。母なる惑星よ、どうか人類を慈
!
た。
謳うは救済。願うは守護。光は刃となりて、魔を討たんと切っ先を向ける。
﹁Ah│││││││││﹂
筋肉、内臓、神経、血管。すべてを魔力回路に疑似変換。細胞の一つ一つ、活動で魔
力 を 精 製 し そ れ を ま た 疑 似 回 路 に 通 し て い く。そ の 力 は ⋮⋮ 確 か、﹁ツ ヴ ァ イ フ ォ ー
ム﹂、と聞いている。⋮⋮根差す木のように大地踏みしめ、心を静め大自然と一体にな
フ
リッ
プ・
ア
ル
ファー
ジ
﹂
り、惑星と心を同調させる。まるで自分が自分じゃないようだ。
ドクン、と ナニカ
!!!
が入り込むのを感じた。もしかしたら邪竜が消されることを察
"
死んだと思ったら神様に出会って解放形式の特典貰って転生して、神の子に出会って
これまで、多くの出来事があった。
あぁ││││││意識が遠のいてきた。
念が揺らぐとでも思っているのか。生ぬるいよ、邪竜。
が、それが何だというのか。気にすることはない。呪いがどうした、その程度で僕の信
したのかもしれない。呪詛か何かをかけたのか。息苦しいような、頭が重いような。だ
"
﹁原初の愛よ、清め給え││││││
1:マルタさんの生前ダイジェスト
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杖貰って、皇帝様に会って神竜邪竜と対峙して。前世は平々凡々と呼べ⋮⋮るわけでは
ないけれど。けど今は違う。波乱万丈、たくさんの人に関わり多くのものを瞳に映した
人生であった。後悔はない。だって、生前から探していた美しいものを見つけたのだか
ら。今際の際になって、探していた美しいものが何かやっとわかった。
すなわち、ココロ。
人の数だけ存在し、ただの一つとして存在しないモノ。善を良しとする者がいれば悪
こそが最上という者がいるだろう。他人の悲哀に共感する者がいれば愉悦を感じる者
だっているだろう。⋮⋮⋮⋮あ、結局僕本来の結論に戻ったね。うん、
﹁みんなちがって
﹂
みんないい﹂│││これが、僕の二度の人生においての結論だ。
﹁│││ん、あれ⋮⋮へーか⋮⋮⋮⋮
﹁あぁ、余だ。そなたの友であるローマ皇帝、ネロだ﹂
?
1:マルタさんの生前ダイジェスト
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﹁そっか⋮⋮ぼく、もう│││﹂
聖女はすでに己の死期を察していた。傍らの皇帝も、それを感じ取っていた。互い
に、これが永遠の別れとなることを理解していた。
﹁陛下⋮⋮んーん、ネロさま。ぼくがおもう美しいもの、わかったよ﹂
ココロ
⋮⋮だと、思う﹂
﹁そうか。では聞かせよ、そなたが思うこの世で最も美しいものを﹂
﹁えっとね│││その、
"
﹁⋮⋮それは、あるかも⋮⋮﹂
かったであろうな﹂
﹁し か し。現 に 皇 帝 ネ ロ と 聖 女 マ ル タ は 友 情 を 結 ん だ。そ な た の 友 も、予 測 し え な
﹁⋮⋮ん﹂
と。全くもってありえん﹂
﹁本来、余とそなたは相容れぬもの。皇帝が聖女の最期を看取るなど、あるはずないこ
するたびに喉に激痛が走る。けど、会話をやめない。
噛みしめるように、言葉を交わす。聖女は邪竜の呪いに侵され息も絶え絶え、声を発
﹁結論⋮⋮あぁ、
﹁みんなちがってみんないい﹂、という。うむ、全くもってその通りだ﹂
﹁うん、ぼくのはじめの結論にもどったよ⋮⋮﹂
﹁ココロか。確かに、美しいな。人のココロも、神のココロも﹂
"
22
﹁余は永遠を信じぬ。人の心は移ろいゆくもの⋮⋮だが、これだけは言える。
そなたこそ│││最も美しい﹂
今
"
ではないのか、と。
余│││否。私もそなたと出会い、友となったことを誇りに思う
﹁ネロさま⋮⋮ぼく、あなたとであえて⋮⋮⋮⋮ほんとうに、よかった⋮⋮﹂
﹁っ、ああ
、
﹂
傍らにいた兵たちは思う。彼女たち二人の友情こそ、世に二つとない最も美しいもの
"
!
に一人の少女。密かに花嫁に憧れを持っていた﹂とのこと。白は好きな色だそうだ。
の花嫁衣裳を纏っていたらしい。用意したのは友の皇帝ネロ。曰く﹁奴は聖女だが同時
することと言えば、棺に納められたマルタの遺体は、この時代には珍しいと言える純白
ちも、彼らを迫害する軍人も区別なく。天地の神々すらもその死を悼んだという。特筆
くの生命に惜しまれながらもこの世を去った。彼女の葬儀には、異教徒と蔑まれる者た
そうして、
﹃奇跡の聖女﹄マルタは救済の詩による消耗と邪竜による呪詛を原因に、多
﹁│││⋮⋮⋮⋮あり、がと││││││﹂
!
1:マルタさんの生前ダイジェスト
23
聖女が死んでも、世界は続く。
やはりというべきかなんというべきか。皇帝ネロは反対勢力による反乱が起きたの
ち、その命を自ら絶ち後世で﹁暴君﹂と呼称される。教義が公認となり、帝国が滅び。繁
栄と衰退を繰り返しながら、人は神を脱し、自らの力でその歴史を刻んでいく。
そこには、聖女と皇帝が見込んだ美しさがあったのかもしれない。
神様転生。タラスクを屈服させた聖女に特典つきで転生させられた。ただし生きて
天敵:ジークフリート
苦手なもの:思考が読めない人
好きなもの:穏やかな日常
特技:家事全般と喧嘩の仲裁
イメージカラー:晴れ渡った空の色
性別:女性
属性:秩序・善・星
地域:欧州
出典:史実、新約聖書、聖マルタ記
身長:160cm/体重:47kg
真名:マルタ
マルタさん
※:マルタさんの設定
24
※:マルタさんの設定
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いるうちに解放されるという仕様。
本来の一人称は﹁僕﹂で喋り方も中性的。聖女としては﹁私﹂で敬語口調。ただし考
えは変わらない。原作と同じくフィルターの違い。命と心を愛する聖女様。何事にも
敬意を忘れない。だって﹁みんなちがってみんないい﹂んだから。この辺カルナさんに
近いかも。ローマ皇帝と仲良しなある意味異端と言えるけど本人的にはどうでもいい
模様。このことで責められてもだから何だと呆れ顔である。丁寧な物腰、もしくはお
ちゃらけた態度だけど実は内心ビビり。一度覚悟を決めると強いけどそれまで葛藤が
長い。が、顔には出さない。
人との関わりを好む。一人でいることもあるがどちらかといえば誰かと共にいるこ
とが多い。これはマルタさんが人類を愛しているからでもあるが、根底には﹁孤独への
恐怖﹂がある。生前の詳細はあまり覚えていないけれど、基本的に誰からも見放されて
孤独だったことにトラウマがある。転生して多くの者と関わったことで大分癒された
がそれでも人の本能としての孤独忌避は根強い。きっとSG。
実はこの世界では知名度がびっくりするほど高い。神様のせい。そしてAUO同様、
惑星意思によって生み出された存在で、救済の概念英霊である。アルトネでいう半神。
この場合、親は咲夜琉命。竜の加護を持っているが竜に呪い殺されているために竜の因
子と竜殺しの素質を持つ者に弱い。ジークフリートが天敵なのは彼がこの二つの要素
を兼ね備えているため。あと﹁思考が読めない奴﹂
﹁未知の人種﹂が苦手。これに当ては
まる人物は結構多い。
性格を参考にした人
・咲@アルトネリコ3
・アクア@ファイアーエムブレムif
・ティリア@アルトネリコ3
・とがめ@刀語
︵魔︶:陣地作成B 道具作成B
クラススキル︵騎︶:対魔力│ 騎乗A++
神性C ⋮原作と変わらず。
聖女の叡智A ⋮便利な万能スキル。
奇跡B ⋮生前色々やらかしたため上昇。
保有スキル:星竜の加護EX ⋮これがあるため対魔力はない。
ステータス:筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A+
適正クラス:ライダー、キャスター︵ルーラー︶
︻ステータス︼
26
タ
ラ
ス
ク
︵裁︶:真名看破A 神明裁決A
宝具:愛知らぬ哀しき竜よA+︵対軍︶
フ
リッ
プ・
ア
ル
ファー
ジ
⋮ご存知苦労人のタラスクさん。主に多人数を載せるときに使う移動手段。
尊き原初の愛よ、清め給えEX︵対界︶
⋮ も ら っ た 杖 は 神 造 兵 装 で し た。ぶ っ ち ゃ け 天 撃。最 大 火 力 は 自 爆 宝 具 に な
る。
*アルトリア・ペンドラゴン
きっとこの先も縁がある。
な る も 謎 の 直 感 で 踏 み 留 ま っ て い る。物 理 思 考 が 伝 染 し て い る が 気 づ い て い な い。
他四人同様に評するなら﹁見守る者﹂だと思う。仲は良好。時折一線踏み越えそうに
*岸波白野
がって芸術センスが直ってる。
係でもさっぱりと雌雄を決するために戦うと思う。この話での彼女は頭痛スキルが下
奇跡的な友情を育んだ仲。花嫁衣裳は恥ずいけど別にいいかなって。たとえ敵対関
*ネロ・クラウディウス
︻関係者各位︼
※:マルタさんの設定
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28
何か色々と縁がある騎士王。鎬を削ったり口論したり食卓を争ったり。こんな間柄
だけど結構仲良し。互いに互いの信念を認めている。士郎君とアヴァロンで再会した
後ひょっこり会いに来るんじゃないかな。
*ギルガメッシュ
何か色々と縁がある英雄王。マルタさん知らないけど実は征服王みたいに認められ
て る。た ま に 気 が 合 う。も し バ ト る こ と に な っ た ら お 互 い に 遠 慮 も 慢 心 も し な い よ。
対界vs対界。
⋮他多数、今後増える。
通常四次
私に気を使うことはありません、存分に決闘なさってくださ
2:マルタさんルーラーです
﹁どうかしましたか
い﹂
そして始まる唐突な勧誘。眼前で繰り広げられていた戦士の戦いに感動したのか、マ
現界した﹂
﹁我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て
しかし、剣戟は雷鳴が強制的に止める。
を割いていた。
言葉に勧められ、戦闘を再開するも二人の騎士は意識のほんの一部を静かに観戦する女
聖杯戦争で他サーヴァントは注意すべき存在であるため警戒を拭えなかった。彼女の
警戒心をあらわにしていた。たおやかな笑み。清廉とした人柄であることが伺えるが、
いつの間にかそこにいた長髪の女に先程まで斬りあっていたセイバーとランサーは
?
︻倉庫街で初顔合わせ︼
2:マルタさんルーラーです
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30
スターの制止も聞かずに朗々と口上を述べる。やはりと言うべきか、セイバー、ラン
この世に現界している以上、聖杯にかける願いがある
サー両名から拒絶される。漫才のような光景を謎の女は苦笑いしながら眺めていた。
﹂
﹁ではそこのお主はどうだ
のだろう
?
﹁何と あの奇跡の聖女と名高きマルタがお主か
﹂
?
ルー
ラー
それも支配者の位とは⋮⋮こ
﹁俺も、主を裏切ることは出来ない。悪いが引き下がってくれ﹂
か﹂
﹁何 度 言 え ば 分 か る。私 に 譲 れ ぬ 矜 持 と 信 念 が あ る。そ れ を 解 さ ず し て 王 を 名 乗 る
﹁むぅ⋮⋮報酬は応相談だが。そなたらも、な
の勧誘、真に光栄ですが謹んで辞退申し上げます﹂
﹁私の役割は聖杯戦争を公平に、民衆が被害を被らぬよう執り行うこと。征服王から
の聖杯戦争、面白くなりそうだ﹂
!!
﹁私はマルタ、ただのマルタです。クラスはルーラー。願いは、ありません﹂
乗りを上げる。
とぶっ飛び過ぎてマジヤベェよ⋮⋮﹂とビビりながらもそれを一切顔に出さず静かに名
当然と言わんばかりに征服王は女に声をかける。女は内心で﹁戦車男ヤベェ⋮⋮色々
﹁│││まず、私の自己紹介から始めましょうか﹂
?
!
2:マルタさんルーラーです
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三人のサーヴァントから向けられる視線。込められている感情は違えど、共通して明
確に﹁拒絶﹂を宿していた。
ものは試し
﹂
と言うではないか﹂
﹁ら、い、だぁぁぁ⋮⋮どーすんだよぉ、征服とか何とか言いながら結局総スカンじゃ
ないかよぉ⋮⋮﹂
﹁いや、まぁ、
﹁ものは試しで真名バラしたんかい
"
ントも煽った結果。
﹁我を差し置いて王を名乗る不埒m﹁ふぇくちゅっ
る我の至言を遮るなど、首を狩られたいか﹂
﹁えっ、ごめんなさい﹂
!
﹂
余より偉そうな男の口上をくしゃみでを遮るとは意外と肝
があるのう、奇跡の聖女よ
!!!
﹁別に私が聖女であることは関係ないと思いますが﹂
!
﹁フハハハハハハハハ
うー寒っ⋮⋮﹂おい貴様、王た
で、師たる男からなじられて。傍らのライダーが男を挑発して。ついでに他サーヴァ
額をはじかれる。彼はもう、この場にいる全員に憐みを持たれていた。
笑まれたからか、少年は照れて顔を赤くしていた。そして契約しているサーヴァントに
頑張ってるなぁ少年、と聖女から生暖かい視線を向けられる。そんな人物に︵多分︶微
!?
"
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ルー
ラー
﹁ふん。本来聖杯戦争を取り仕切る支配者は真の英雄にして天上天下ただ一人の王で
あるこの我こそがふさわしいが、まあよい﹂
そんな聖杯戦争絶対にぶっ壊れるよ、というのがサーヴァントとマスターの総意であ
るのだが黄金の男は気にも留めない。ライダーとアーチャーの舌戦の末、激昂した弓兵
は 複 数 も の 宝 剣 の 類 を 背 面 に 現 出 さ せ る が い つ の 間 に か い た 狂 戦 士 に 狙 い を 変 え る。
だが彼のマスターに令呪で止められたのか、最終的に彼は去っていったのであった。今
宵の戦いで集ったサーヴァントは一部⋮⋮キャスターとアサシンを除いたサーヴァン
ト全員。
で、お開きになったのである。
﹂
﹁特に被害はない⋮⋮ですよね。強いて言うなら修繕費でしょうか、聖堂教会も大変
ですね﹂
﹁ルーラーはそのようなことも気にするのですか
﹂
冬木の聖杯は救世主の血を受けたとかワインを注いだとか逸話があるもので
はないのか
﹁む
んな街中で奪い合うなんて腹立たしいですが﹂
﹁単に私の気分ですよ。正直言って、贋作聖杯を何の関係もない多くの人が暮らすこ
?
﹁んなわけねーよ、二百年前に遠坂とマキリとアインツベルンがつくった単なる魔術
?
?
礼装だよ
﹂
⋮⋮ル、ルーラー⋮⋮
マジふざけんな
﹁⋮⋮えっ
﹂
?
!
求める価値はあると思いますよ﹂
四人のサーヴァントはそんな会話を交わし、別れた。
***
何はともあれまずは倉庫街。
一応顔知られておいた方がいいよね、と考えた。
***
?
おぞましい
とは
"
﹂
?
?
なければなりませんね﹂
﹁│││それにはまず﹃何故冬木の聖杯が願いを叶えるのか﹄という段階から説明をし
"
﹁一体それはどういうことですか 冬木の聖杯が偽物であることは知っていますが
ど、私にありません﹂
﹁⋮⋮初めに申し上げましたが。あのような模造品、おぞましい儀式にかける願いな
﹁まずルーラー。否、聖女マルタよ。お主は聖杯に如何な願いをかける
﹂
﹁おっと失礼│││こほん。ですが、願いを叶えられるだけの能力は有しているので
?
!
︻聖杯問答︼
2:マルタさんルーラーです
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34
佇まいを正す聖女。それにつられてセイバーも姿勢を整えた。他二名はそのまま。
﹁六十年に一度冬木に現れる、あらゆる願望をかなえると言われる万能の器。それが
冬 木 の 聖 杯 で あ る こ と は 知 っ て の 通 り で し ょ う。一 応 は 贋 作 に あ た る の で す か サ ー
小聖杯
"
は表向きの聖
"
ヴァント召喚という奇跡を示しており魔術協会にとっては優れた魔術品、聖堂教会に
小聖杯
と名がついている以上、監視対象になります。この聖杯は
"
という二つの機構によって成り立っています。
聖杯
"
"
大聖杯
"
とっては
と
"
﹁﹁﹁
﹂﹂﹂
ません﹂
どの魔力が満ち溢れた﹂モノ。その魔力とは即ち、脱落したサーヴァントの魂に他なり
・・・・・・・・・・・・
勝賞品ですね。アインツベルンが鋳造した器に﹁おおよそあらゆる願いを叶えられるほ
杯。令呪を持つ外来の魔術師とサーヴァントが求める、言い換えるのなら聖杯戦争の優
"
ン本人が優勝賞品ではないかと﹂
ホムンクルスとしたようですね。おそらく、アイリスフィール・フォン・アインツベル
⋮⋮この第四次聖杯戦争では小聖杯が破壊された前回の反省からか、思考能力を持った
組の参戦者を排除して降霊した聖杯こそが﹁願望機﹂としての完成品であり、優勝賞品。
﹁聖杯戦争においてサーヴァントが脱落していく過程こそが聖杯降霊の儀式。ほか六
三人の王は、聖女の言葉に耳を傾ける。
!!!
2:マルタさんルーラーです
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﹁アイリスフィール⋮⋮
﹂
﹁ここからは、現代の魔術師たちがまず第一に優先すべき目標が
根源の到達
であ
"
英霊も見下すアホ思考﹂
﹁ルーラーお主、二重人格なのか
システム
﹂
大聖杯
は聖杯戦
"
?
﹁違うけど │││こほん。話を戻しますが、もう一つの機構
"
﹁典型的な魔術師だねー。人類が培った科学技術も見下して、濃密な神秘の塊である
﹁だろうな。あやつは恭順の姿勢こそとっておるが真の忠義とは程遠い﹂
あります。⋮⋮遠坂時臣氏は自害させる気満々のようですが﹂
りますが、根源に至るのであれば令呪を以って自身のサーヴァントを自害させる必要が
争の真の目的。そのために必要なのが七騎分の魂。﹁願望機﹂としてならば六騎で事足
分体を一気に開放することにより極大の孔を開けて根源に至る⋮⋮それこそが聖杯戦
をあける手段として、サーヴァントの魂を一時的に留めておく器。﹁座﹂に帰ろうとする
達。事実、聖杯自体がそのために製作されました。小聖杯本来の用途は根源に通じる孔
ることは存じていらっしゃる前提で話します。│││本来の目的はやはり根源への到
"
!
れようともこれさえ無事であるならば新たに器を用意すればいいため何度でも聖杯降
一を想定して私のように中立サーヴァントのルーラーを召喚したり。小聖杯が破壊さ
争を滞りなく行うための機能ですね。マスターにふさわしい人物に令呪を授けたり、万
!?
36
霊儀式は行えます。⋮⋮以上で、冬木の聖杯に関する説明を終了します。﹂
空気が重い。
王とはいかなるものか
﹂
﹁んん⋮⋮こんな重苦しい宴にするつもりはなかったのだが。よし明るい話題にしよ
う。ずばり、
"!!!
王
﹂
?
﹁帰っていい
﹂
そんなこと知らないよ﹂
﹁な││││││﹂
﹁さあ
﹁ルーラー⋮⋮貴方にも問いたい。私の王道は、願いは。間違っているのだろうか﹂
滅んだ故国を救う。財宝は須くわがものに。願いも語る。
ど。論争舌戦は激しくなっていく。受肉して誰でもない一人の人間として世を統べる。
纏っている。征服王から始まり、王道は欲を極めること、理想に殉じようとすること、な
先程まで神妙に聖杯戦争の真実を語っていた聖女は形無し、完全に緩まった雰囲気を
﹁ノリが悪いぞお主﹂
﹂
が三人も、加えて奇跡と謳われる聖女が揃ったのだ。己が信念を、王道を
"
語るのも一興であろう
﹁折角
﹁あっこれ僕関係ないね、帰っていい
﹁ほう。この我に王道を語らせるか、雑種﹂
"
?
!
"
?
2:マルタさんルーラーです
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明日の天気を告げるように返された言葉。余りにも冷徹に聞こえた。
﹁僕はルーラーだから皆の真名を把握してる。だから貴方たちが築き上げた功績も、
貴方たちが生き抜いた世界もちゃんと知っている。そもそも三人が三人とも、時代、地
域、文明、国民、文化⋮⋮何もかもが違う。そんなバラバラの世を治めた人物の王道な
そもそも比べる事柄じゃない
ってことかな﹂
んて、違って当然だ。この国の言葉を使うなら十人十色。だからこそ人は美しい。僕個
人の意見をいうなら、
"
に優劣などありませんから。ですが⋮⋮﹂
﹁聖女としてのマルタも、町娘としてのマルタも、貴方たちの願いを尊重します。願い
けられる。
騎士王からは、憧憬を。英雄王からは、興味を。征服王からは、尊敬を。それぞれ向
れるのだな﹂
﹁なるほどな。確かに、ただ王という事実だけで測ることは出来んか。聖女は頭も切
﹁貴方は、不思議な人だ。冷酷な物言いをしながら、真実とても優しさに満ちている﹂
ないい﹂なんだけどなぁ﹂
﹁後世の出来事を僕に言われても⋮⋮そもそも僕の座右の銘は﹁みんなちがってみん
つが﹂
﹁異なることを是とするか、雑種。貴様の信ずる宗教は異端を排除してきた歴史を持
"
38
﹂
英霊
としてのマルタは、貴
"
﹁ルーラー
﹁│││うん、言っちゃおう。ごめんセイバー。ただ、
方の願いを否定しなければならない﹂
﹂
!
﹂
焼却することなんです。私という
﹁っ、何故⋮⋮
英霊
は、そのことを、絶対に見過ごせない﹂
"
﹁そうですね、貴方の国は│││良くも悪くも、影響力が強い。その興亡一つとって
!
"
救う﹄ということは人類が築いた結晶を全て破壊し、この先人類がいつか迎える希望も
を指します。⋮⋮厳しいこと言うかもしれませんが、セイバー。﹃ブリテンを滅びから
人類がこれまで積み重ねた歴史であり、人類がこのから歩んでいくだろう未来そのもの
栄させるための理│││即ち、人類の航海図。簡単に言えば、神代が終わり西暦を経た
﹁星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの。人類をより長く、より確かに、より強く繁
て。理想の王の願いを否定するために言葉を紡ぐ。
辟易しながらも救済概念の英霊として、惑星意思の代弁者、人類の絶対的守護者とし
ね。⋮⋮今日はなんか解説が多いなぁ﹂
﹁それにはまず、魔術世界で言われる﹃人理﹄というものを説明しなければなりません
﹁⋮⋮何故、ですか⋮⋮⋮⋮
後に、まるで死刑宣告のように感じられたと青い剣士は語る。
"
?
2:マルタさんルーラーです
39
も、世界を、人類を揺るがすことなのです﹂
﹁だから、私は願いを叶えてはいけないと
﹂
あの時、私は人
い え、私 の 願 い が 人 類 に 仇 な す も の で あ る こ と は 分 か り ま し た。
⋮⋮未来が消滅することは私の望むところではない。│││けれど
﹁で す が ⋮⋮
静かに語る聖女。その顔は哀愁を露わにしていた。
てほしい﹂
﹁別に貴方の願いが悪いわけではありませんよ。ただ⋮⋮そのことを、どうか分かっ
?
それが今
!
ただ騎士たちと国のため民のため、共に在りたかった
!!!
うのか
﹂
のに。 宮 廷が愛おしかった。だからそこにいたかった。それを願うことすら悪だとい
キャメロット
て、滅んでしまったのだって
になっても私を苛み続ける⋮⋮私が悪いのだと。私の、私のせいでみんな死んでしまっ
トとの視線を覚えている、私に叛逆したモードレッドの叫びを覚えている
の心が分からないと言ったトリスタンの声を覚えている、不義を許した時のランスロッ
!
!
初めて聞いたのが円卓の騎士でも王妃でもなく、ウルクの英雄王とマケドニアの征服
ブリテンの騎士王の本心。
﹁⋮⋮教えてください⋮⋮⋮⋮どうして、私はこんなにも苦しいのですか⋮⋮﹂
﹁セイバー﹂
!!!
40
王、奇跡の聖女であるとは何の因果であろうか。
﹂
﹁答えてやるがよい、奇跡の聖女﹂
﹁征服王
﹂
?
メ
セイバーは目を見開いて眼前の聖女を見つめている。他の二人も、感嘆したように息
サー王﹂
それらすべてが、たまたまその時だけ、かみ合わなかっただけの話なのですよ⋮⋮アー
ら な か っ た さ さ や か な 未 来 の 夢 も。貴 方 の 民 を は じ め と し た 人 間 達 が 求 め た 希望 も。
ユ
﹁然り。貴方自身の選択も。貴方を取り巻く環境も。貴方が良しとしながらも手に入
﹁│││⋮⋮間が、悪かった⋮⋮
ただ│││間が悪かっただけでございます﹂
﹁何故悪行を犯していないのに苦しいのか。それは誰のせいでもありません。それは
女。
俯きながらも大粒の涙を流す王の少女。相対するは奇跡の体現にして救済概念の聖
か﹂
﹁⋮⋮ は い。過 去 の マ ス タ ー と 契 約 し て い た 時 に 出 会 っ た 男 の 文 言 を 借 り ま し ょ う
だ、教え導くは聖人の役割であろう﹂
﹁お主が過去に出会った人物の言葉を借用してもよい。王でもない一人の小娘の本心
?
2:マルタさんルーラーです
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を漏らしている。言葉にすれば冷酷。突き放しただけの結論。けれどそこには始めに
語ったという顔も知らない男と実際にこの場で言葉にしたマルタの胸をうつほどに暖
間が悪かっただけだと
?
かで優しい肯定に満ちていた。
﹂
﹁│││そんな、間に合わせの理屈で済まされない⋮⋮
それでは人間は、やりきれない
!
こうとする人々がいますから。恐れることはありません。貴女が歩んだ足跡は、誰かの
な花を咲かすことでしょう。心配はいりません。今現在もこの社会のために変えてい
けでも、叶えたい願いを、目指したい目的を持って歩き続ければ、いつか最後に、大き
力を人は持っています。胸に灯る願いに、目的に貴賤はありません。小さくとも一つだ
の哀悼はありますが、案ずることはありません。そこに道があるのなら、歩いていける
﹁いつだって困難と理不尽に塗れているのが人の生きる道。失われてしまったものへ
﹁ルーラー⋮⋮﹂
過程にも、喜びがあったはず﹂
悲しむことも多いですが、だからと言って悲観することはないでしょう。貴方が生きた
人間もほんの少し悪かった。要は全て、何もかもが少しずつ悪かった。人生においては
そ人は懸命に生きるしかない。セイバー、貴女もほんの少し悪かった。ですが、周囲の
﹁えぇ。ですが⋮⋮それが現実です。無意味で、デタラメで、やりきれない。だからこ
!!
42
笑顔に繋がったことでしょう﹂
三人の王はたった今ようやく理解した。奇跡と謳われ救済の体現と崇められるこの
聖女は、途方もないほどに人を愛しているのだと。
***
セイバーにガトーさんの話を聞かせてあげたかった。
あとザビエルの最期の言葉も聞かせてあげたかった。
⋮⋮正直、円卓は本当に間が悪すぎると思うんですよ。
3:マルタさんルーラーです②
︻キャスター戦in未遠川︼
﹂
﹁あぁ本当に腹立たしい⋮⋮ちょっと僕イライラしてきたなぁ。わるいけどとどめ刺し
ていい
てやるよ﹂
﹁冗談ですよ、とどめはセイバーさんでしたか なら僕は周囲の海魔を適当に駆逐し
ぶんぶんと杖を回すマルタ。口元は笑っているが目は完全に冷え切っている。
﹁落ち着いてくれルーラー、意味が分からん﹂
?
?
も残さん﹂
!
ら﹂
﹁あ ぁ 大 丈 夫 大 丈 夫。本 当 は ラ ン ク E X 対 界 宝 具 だ け ど 威 力 思 い っ き り 弱 く し ま す か
﹁待てルーラー⋮⋮おい、おい
﹂
﹁聖女も列記とした人間だよランサーさん。あははは⋮⋮雨生ぶっ殺すキャスターは塵
﹁聖女が使う物言いじゃないぞルーラー﹂
3:マルタさんルーラーです②
43
ランサーたちの制止を完全に無視して杖を肩に担ぎ足を進めるマルタ。何処からど
う見てもこの時代一定数以上いたであろうレディースの総長である。 全くもって今
の状態に似合わないとても美しい詩を紡ぎ始めた。
フ
リッ
プ・
ア
ル
ファー
ジ
杖を掲げる。純白の光が集束する。そこには、背から翼が生えた聖女がいた。
本当に待て
いします﹂
﹁待て
いほう
﹂
しんめいか
それじゃあみなさん、あとはよろしくおねが
﹂
だからしかたがないのですよ。
その、何故幼児になっている
しよう
のちょくごはちからがでないのとおなじです﹂
"
﹂
﹁みなさんが
すよ
?
﹂
!!?
にこうどうしてくれれば、わたしのおしごとはへりま
"
!
りょうしんてき
"
できないだろう
﹁いや、そういうレベルを超越していないか というか、それではルーラーとして行動
"
!?
?
"
!
﹁なぜといわれても、そういう
"
!!
﹁んー⋮⋮だいたいくちくできたかな
当な負担になるのか、マルタの姿は様変わりしていた。
まって周囲の海魔を消し去るに十分の火力である。だが基本的にこういった攻撃は相
叩きつけられる光の槍。弱めとはいえ神造兵装、惑星意思の補助と彼女自身の力も相
﹁│││いくぜ天撃。﹃尊き原初の愛よ、清め給え﹄
!!!!!
44
マルタ︵幼︶はふわふわと背中の翼で飛びながらランサーの常識的なツッコみに受け
答える。戦場にあるまじきゆるい空気となっているが、事態が解決したわけではない。
キャスターがいる巨大海魔は未だにその外形を保っており、泰然と川に居座っている。
しんめいさいけつ
つかいます﹂
﹁あ、そうだ。ついでだし、いりょくあげますね。ちょっとあのくそたこゆるせないんで
すよ。
"
﹁はーい。るーらーとっけん、
﹂
しんめいさいけつ
せいばー、ほうぐをつかいなさい﹂
﹁│││ええ。決着をつけましょう
│││れいじゅをもってめいずる。
"
***
この後聖剣で青髭の旦那が退場します。
別名:天撃の無駄遣い。
***
そうして、人類の希望の結晶が、儚くも尊きユメの光が、眩く天と地を照らした。
!
"
﹁それは構わないのだが⋮⋮では、我が聖剣の煌めき、お見せしよう﹂
"
﹁そう思うか
私としては随分と心持が好いのだがな﹂
﹁⋮⋮アサシンのマスター、随分と雰囲気が変わりましたね﹂
︻言峰綺礼と︼
3:マルタさんルーラーです②
45
?
冬木教会。対峙する二つの影。片方はこの聖杯戦争におけるルーラーのサーヴァン
ト。名はマルタ。彼女が歩んだ道程はまさしく﹁奇跡﹂に満ちていた。片方は表向き脱
落しているアサシンのマスター。その名は言峰綺礼。信ずる心と己自身が持つ価値観
の不一致に悩む男⋮⋮だったのだが。
﹁何か答えを見つけましたか 以前の貴方は何かに悩んでいたようだった。話が聞け
46
もとより人とは全て同じのようで違うもの。私はその﹁違い﹂が愛おしくてたまらない。
それが善であれ悪であれ、情を抱き言葉として伝えるのは、人類の最も美しい面の一つ。
の。時に笑い、時に怒り、時に泣き、時に慈しみ、時に恐怖し、時に⋮⋮奇跡を起こす。
﹁│││ただのマルタが答えましょう、私が思う尊きモノはすなわち、人のココロそのも
して人生に幕を下ろした﹂
﹁一応聞いておこうか、奇跡の聖女。お前は何を信条としてその人生を歩み、何を答えと
実この男は己の苦悩を昇華させた⋮⋮最悪な方向で。
ていた。それを一目見てマルタは感じる。まさしく遅かった、間が悪かったのだと。事
物言いは残念がるように、しかしその口元は痛快な喜劇でも観ているように歪められ
ば、私はまた別の答えを得ていたのかもしれない﹂
﹁そうだな、確かにお前は私と話をするのが遅かったのだろう。先にお前と話していれ
るなら聞きたかったのですが⋮⋮遅かったようで﹂
?
│││うん、﹁みんなちがってみんないい﹂んだよ﹂
どれだけ心情をぶちまけても、それがこの男にはもはや届かないことをマルタは分
かっていた。彼はすでに﹁答え﹂を得ているのだから。言峰の言葉がどれだけ鋭くとも、
マルタが揺らがないように。
﹁やはりお前も私と同じだ。醜い人の心を美しいと評するか﹂
なんだろう。それは別に構わない。僕は貴方の価値観を否定なん
﹁それは貴方が知らないからだ。確かに貴方は多くを見て回り、苦悩に次ぐ苦悩をした。
ソレ
その結果が
"
"
聖
女
明
最後に土産を残して、マルタは霊体となり姿を消した。
探しなさい。それが僕⋮⋮聖女マルタからの最初で最後の宿題だ、頑張ってね﹂
解
答
分の力で、自分の目と耳と頭と心で、そこに至る過程│││あるいは、全く別の発見を
証
ておくが、他人から答えだけを与えられても無意味だよ。それはただのカンニング。自
うかな。そうすれば、また別の答えが見つかるかもしれない。⋮⋮言峰綺礼。一応言っ
にはまだ早い。│││そうだね。聖杯戦争が終わったら改めて世界を見て回ったらど
だってみんなちがってみんないいんだから。けれど、そこで終わらせる
かしないよ
?
﹁ふん⋮⋮我の言葉を不正と評するのはあやつだけよな﹂
るを得ないな﹂
﹁│││宿題、か。はは⋮⋮マルタからの宿題では、さしもの私も、真面目に取り組まざ
3:マルタさんルーラーです②
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﹁その割には随分機嫌がよさそうではないか英雄王。彼女に何か感じることでも
﹂
?
ヌ
マ・
エ
リ
シュ
の だ が。ア ー チ ャ ー の 宝 具 で あ る 乖 離 剣 エ ア ⋮⋮ 真 名 開 放 に よ る 天地乖離す開闢の星
エ
て風景が砂漠と変じ、そこに彼の配下たちが集いアーチャーを討たんと牙をむいた⋮⋮
をつけようとしていた。見届けるのはルーラー。ライダーの固有結界、王の軍勢によっ
そこではライダーとアーチャー、征服王イスカンダルと英雄王ギルガメッシュが決着
大橋。
﹁⋮⋮まさか、余の固有結界そのものが破壊されるとはな⋮⋮﹂
﹁││││││﹂
︻アーチャーvsライダー︼
***
別の答えだすのか結局戻るのか。
ラスボスに宿題出す系聖女。
***
二人の男は語り合う。その瞳に、確かに地獄を映しながら。
だそれだけのことだ﹂
﹁何、あの女には言っていないがな│││奇跡の聖女は我が自らその命を刈り取る。た
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から発せられる赤い斬風がそれを空間ごと駆逐した。軍勢たちは消滅し、元の宵闇と水
音が支配する大橋へと戻った。
ら﹂
﹁世 界 を 斬 り 裂 い た と 呼 ば れ る だ け は あ り ま す ね ⋮⋮ 権 能 に な っ た ら ど う な る こ と や
﹁む、そうさなルーラー。お前の命を刈り取るときは天の理を使うのもよいかもしれぬ﹂
相変わらず楽しそうだなお主らは。よし、そろそろ決着をつ
﹁地球が滅びますからやめてください、本気で﹂
﹁ハハハハハハハハハ
けるぞ英雄王よ﹂
とも彼は強く生きるだろう⋮⋮と、マルタは少し思っていた。
バー・ベルベットもいる。どうやら最後の会話は済ませたらしい。この先、何があろう
愛 馬 ブ ケ フ ァ ラ ス に 騎 乗 し た マ ケ ド ニ ア の 王。傍 ら に は 目 つ き の 変 わ っ た ウ ェ イ
!!!
す﹂
!
悠然と立つ黄金。ニヤリと笑う赤。
﹁⋮⋮いざ、尋常に││││││始めっ
﹂
﹁では、これよりのアーチャー対ライダー決戦⋮⋮私、ルーラーが見届けさせて頂きま
﹁応とも﹂﹁然り﹂
﹁お二方、準備はよろしいですね﹂
3:マルタさんルーラーです②
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振り下ろされる手。同時に駆けだす征服王。雄叫びと馬蹄音が夜の闇に響く。英雄
王の背後に波紋が広がる。一つ一つから古今東西ありとあらゆる財宝がその姿を見せ、
最果ての海を夢見る男を殺そうと降り注ぐ。刃の一つ一つがライダーの体を傷つける
も、だからと言ってライダーが疾走を遅める⋮⋮ましてや止めることなどない。
﹂
そうして、英雄王に迫り、その顔に剣を振り下ろそうとした瞬間。
﹁│││
﹁│││ライダー、消滅を確認。これによりイスカンダル及びウェイバー・ベルベットは
一つのモノを得た少年。
た。静寂が降りかかる。今この場にいるのは勝利した黄金の王、見届けた聖女、そして
何かに納得した⋮⋮否、安心したかのように安らかな呟きを残して、征服王は消滅し
﹁おぉ│││そりゃあ、いいな⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
どうやらこの二人は何やら話しているらしい。
は、決した。
チャーは静かに乖離剣を取り出し、もはや無防備となってしまった体を貫いた。勝敗
縛る鎖、天の鎖にその肢体を拘束されていた。あと少し、というところであった。アー
ぎゃりぎゃり、と金属特有の摩擦音が耳に入る。それもそのはず。ライダーは神性を
﹁全く、お主は⋮⋮次から次へと、珍妙な物を││││││﹂
!
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敗退と認定します﹂
﹁⋮⋮⋮⋮っ﹂
﹂
物言いこそ厳しいけれど、確かな激励に満ちているとマルタは感じていた。そして、
﹁│││忠道、大義である﹂
締めとなったのは。
うして、言葉を交わす人類最古の英雄王と、脆弱な才しか持たぬ少年。
めるべきであろうが、この二人の男の目つきには止めてはならない心を感じとった。そ
金属音を立てながら先程倒した男の元主に足を進めるアーチャー。本来であれば止
﹁今後の処遇についてですが教会に│││アーチャー
?
少年⋮⋮ウェイバー・ベルベットの人生はここからが本番であると思っていた。それだ
けのものを、彼は得たのだから。
***
﹂っていうの格好いいよね。
とがめちゃんモチーフ。
!
﹁│││ルーラーか⋮⋮﹂
︻衛宮切嗣と︼
***
﹁はじめっ
3:マルタさんルーラーです②
51
﹁その子も生き残りですか
﹂
﹁僕 を 誰 だ と 思 っ て る の
傷があるなら見せてください、治療しますから﹂
﹂
あ ん た が 絶 望 し て い る 間 に ざ っ と 二 百 人 ぐ ら い 助 け た よ
﹁⋮⋮他にも、まだ、生き残りがいるのかい
?!
!!?
という姿そのものであった。
聖剣の鞘を使いましたか⋮⋮よろしいのですか
味方
﹁
﹁それでも、今ここにいるこの子を救えるのなら﹂
﹂
正義の
﹁⋮⋮そうですか、なら私から言うことはありません。こちらへ急いでください、早く
?
"
い道を歩むことになりますよ﹂
!
"
恐らく、茨ってレベルじゃな
と数字を述べ、改めて真実彼女こそ救済の概念⋮⋮衛宮切嗣がかつて目指した
初めてその姿を見たとき感じた清らかな雰囲気は見る影もない。血気迫る顔で堂々
﹁あぁ⋮⋮そうか、そうなのか⋮⋮﹂
!
?
52
1994年冬、第四次聖杯戦争と、とある男の信念が終わりを迎えた。
る。
ボロボロの二人を引っ張るようにして腕をとり、火の手から逃れるために足を急がせ
!
﹁あ
﹂
いらっしゃいマルタねぇ﹂
﹁マルター
﹁こんにちは士郎君、イリヤちゃん。また見ないうちに大きくなった
た元々の体は丁重にドイツのアインツベルンへ送り返した。
﹂
は蒼崎橙子の協力により人形の体で生活している。ちなみに聖杯としての機能を備え
加わる暖かな家庭であった。小聖杯として調整を受けた体であったイリヤスフィール
ここでは切嗣とイリヤスフィール、士郎の三人家族が暮らし、時折マルタや藤村大河が
深山町、衛宮邸。二人の子供に迎えられてマルタは日本風の邸宅に足を踏み入れる。
?
!!
!
とも第五次聖杯戦争⋮⋮つまり、あの大火災から最低十年の寿命を保障していたがそれ
呪いに侵された故か、風が吹けば崩れる薄氷のような命。マルタの治療により、少なく
間柄だったがそれでも円満だった。十年前まで魔術師殺しとして名を馳せたこの男も
かつて微妙な関係であった二人も互いに挨拶をする。家族三人も含めて、実に奇妙な
﹁そう呼ばれるのも慣れましたね⋮⋮こんにちは、切嗣さん﹂
﹁⋮⋮あぁ、マルタちゃん。よく来たね﹂
3:マルタさんルーラーです②
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も危うい。
その夜。
﹂
?
﹁ああ。本当に、しょうがない﹂
﹁そうだな。それじゃしょうがない﹂
﹁ふうん⋮⋮もっと早く気付ければよかったわね﹂
を分かっていた。
口からこぼれるように話す切嗣も、何も言わずに聞き入るマルタも、互いにそのこと
いた。
まだこの場で彼は死なない。それでも、着実にその死が近づいていることは分かって
んだ﹂
﹁うん、残念ながらね。ヒーローは期間限定で⋮オトナになると名乗るのが難しくなる
﹁憧れてたって⋮⋮諦めたのかよ﹂
﹁なぁにそれ。キリツグ、いきなりどうしたの
﹁│││子供のころ、僕は正義の味方に憧れていた﹂
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しょうがない。しょうがないのだ。子供の夢想を抱いたまま、大人になることは出来
ない。その実、傍らの聖女は本当に立派な人格者である。全ては守れないことを自覚し
ていながら、それでも人類を深く愛しているのだから。だからどうか、諦めてくれ。夢
はしょせん夢であり、掴んでも掴めない。水面に映る月の様に、あると思ってもない。
だというのにこの少年は。
﹁うん、しょうがないから│││俺が代わりになってやるよ﹂
輝かしい笑顔で、そう、言ったのだ。
﹁爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ﹂
俺だってやればできるんだから﹂
﹁えぇー キリツグに無理なら、シロウにだって無理よ。きっとキリツグみたいに大
失敗﹂
の第一歩
﹂
﹁なら、シロウが失敗しないように、私が見ていてあげるわ。一人だけで頑張るのは失敗
む。
きゃらきゃらと愉快そうに見せて笑うイリヤ。意気をそがれたように士郎の声が沈
!
?
﹂
﹁本当
?
⋮⋮だと、思う⋮⋮﹂
﹁本当
!
﹁なっ、そんなの分かんないだろ
3:マルタさんルーラーです②
55
!
その道はきっとつらいものですよ、きっと誰かに強く
﹁む⋮⋮それなら、まあ、いいか⋮⋮﹂
﹂
否定されることでしょう﹂
﹁ふふっ。よろしいのですか
﹁誰か、って⋮⋮誰だよ
﹂
﹄って宣言してやるよ﹂
切嗣さんのように、正義の味方を目指して大失敗したどこかの誰かさんじゃ
ないですか
?
﹁約束
﹂
という誰でもない貴方を大切に思っている誰かが必ずいる、とい
"
﹂
?
命が危険になってしまったら、心配だし悲しくて、何より自分を大切にしろって怒るだ
悲しませないでほしい。君だって、家族が別の誰か⋮⋮まして自分のために怪我したり
﹁切嗣さんもイリヤちゃんも大河も僕も。君のことが大切だ。どうか、大切な人たちを
﹁誰でもない、俺
うことをどうか忘れないで下さい﹂
"
?
﹁はい。
衛宮士郎
﹁ですが士郎。正義の味方を目指す前に、一つだけ、約束してください﹂
いる、大河がいる。もっともっと、多くの人に支えられている。
あぁ、これなら大丈夫だ。士郎は一人じゃない。イリヤスフィールがいる、マルタが
﹁そんなときは、﹃俺とお前は違うから一緒にするな
!
?
﹁さぁ
?
?
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ろう
﹂
﹁││││││
﹂
﹂
シロウが無茶したら私が怒るもの。それに、絶対に一人ぼっちに
しない。私はシロウの味方になるわ
!
・セイバー、アーチャー、言峰綺礼
第五次聖杯戦争における乖離予定事項
・衛宮士郎の理想が若干変わる
・死者五百人↓三百人
・イリヤスフィールは衛宮邸で生活
・衛宮切嗣は生存
最終的な乖離事項
***
空は高く、月は清く、光は澄んでいる。
!
﹁大丈夫よマルタ
﹁うん、分かってるようでなにより。そのことをしっかり覚えていてくれ﹂
!
?
﹁そうか。ああ│││安心した﹂
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・アインツベルン陣営
次は乖離五次。
切嗣生きてるけどそんなに変わらん気が⋮⋮。
***