H1資料/1.11MB - 全国地域包括・在宅介護支援センター協議会

相談データを地域の課題解決に活用 ~GISで地域の課題を見える化・共有をしよう~
横浜市六角橋地域ケアプラザ
村上 佳宏
長谷川 幾子
神奈川県横浜市は人口371.9万人、高齢化率は22.5%です。市内全18区あり、各区に4~
12か所の地域ケアプラザ(地域包括支援センター併設)が設置されており、現在138か所
あります。
原島 隆行
金 美羽
山岡 悦子
課題と取り組み
横浜市六角橋地域ケアプラザの概要
【地域の概況】
長井 久美子
MMシステムの活用と成果
【課題1】相談ケースが埋もれる
初回の相談では大きな困りごとはないが、再度相談に
来るときは困難なケースとなっていることも少なくありま
せんでした。困りが小さい内に予防的な関わりを行うこ
とで、ご利用者様がより長く住み慣れた地域で暮らし続
けて行くことができるのではないかと考えました。
【課題2】相談業務がデータとして活用されていない
包括支援センターの業務の一つとして、行政への実績
数値報告があります。横浜市においては四半期ごとの
報告がありますが、相談データという地域の困りごとが
分かる一種のビッグデータを報告のみに使うのはもった
いないと考え、活用できる方法はないかと考えました。
【課題3】地域課題が共有されにくい
エリア課題を把握しても分かりやすい表現方法がない
ということがありました。そこで自分たちのまちについて
興味を持って頂けて、課題解決の取組に対する意欲を
引き出せるようなものがないかと考えました。
データ入力システム
集計・分析システム
マップ化システム
・単なる集計だけでなく、業務分析としても活用できる
・相談内容、その原因となっている困りごとを項目化して
データ入力しているので、個別ケースの経年分析、地域
単位での量的分析ができる
・相談件数等の数データを地図上で色分け表示できる
・イメージで共有できるため、地域住民、関係機関、行
政担当者など様々な立場の人でも共有しやすく、議論
が活発になる
横浜市六角橋地域ケアプラザは市内東部の神奈川区にあり、古くから栄える商店街、総
合大学などがあり賑やかなエリアと山坂の多い密接した住宅地エリアなど多様な3つのエ
リアを担当しています。
【担当エリア】
・3連合町内会を担当
・人口:35,993人(区全体:231,975人)
・高齢化率:24.1%(区平均:21.0%)
●六角橋連合町内会
人口:13,172人
高齢化率:23.7%
介護認定率:21.2%
●白幡連合町内会
人口:12,263人
高齢化率:24.4%
介護認定率:19.4%
・担当でなくても支援内容のフォローが素早くできる
・データに必要なフラッグを立て埋もれない仕組み
・出力方法をカスタマイズでき業務効率化できる
独自のシステムとして「MMシステム」を作成しました!
MMシステムとは
【利点2】データの集計・分析
●神北連合町内会
人口:10,558人
高齢化率:24.0%
介護認定率:20.4%
①相談データ集計表の作成
相談データを自動的に集計してくれる仕組み。相談データを町ごとに数的に捉えることができる。ま
た集計したデータをもとに、クロス集計などの分析を行うことができる。
②エリア課題を明確化
エリア課題を明確にするために、相談票に『困りごと』項目を追加し
分析できるようにした。地域ケア会議等で使いやすいデータを集め
ることができる。
③外部報告との連動
集計表のデータを外部への数値報告に活用する。
横浜市においては四半期報告という相談件数等の数値報告があり、
データ集計と四半期報告を連動させることができるため、業務の効率
化につながる。
【地域包括支援センターの体制】
横浜市六角橋地域ケアプラザは、包括支援センター、地域活動交流事業、居宅介護支
援事業の3つの事業を行っています。
<包括支援センター>
看護職・主任CM・社会福祉士各1名と非常勤プランナー3名
<地域活動・交流事業>
【利点3】GISを活用した相談データのマップ化
コーディネーター1名と非常勤サブコーディネーター5名
<居宅介護支援事業所>
主任CM1名、CM3名、非常勤CM3名
横浜市の地域ケアプラザの特徴として、多目的ホールや調理室、ボランティアルームを
有し、地域福祉保健活動の場としての活用や、年間を通じて担い手育成や自助グループ
育成などの自主事業を展開しています。また、子育て支援や障がい児・者支援など、高齢
者に限らず地域のお住いの方の『福祉のよろず相談所』としての機能があります。
【活動実績(H26年度)】
・予防プラン 350件 ・自主事業数
252回
・相談件数 1,748件 ・延べ参加者 9,169人
・貸館利用数
2,611回
・延べ利用者数 46,416人
【利点1】相談ケースのデータベース化
①入力しやすく、誰でも素早く対応できる
約1,700件の相談データをデータベース化。紙ファイルをパソコン上で管
理するようになり、探す手間を省くことができ、担当でなくても素早く対応す
ることが可能。
②ケースが埋もれず、掘り起こしてくれる
一定の期間経過記録等の情報が更新されていないデータは色が変わり、
データベース上部にあがってくる。継続的な予防支援を可能にする。
①イメージを共有しやすい
担当エリアにはどのような困りごと(=暮らしづらさ)があるかを
明確にし、困り具合を共有しやすくなる。不足している資源を検
討し、まちに『あったらいいね』というサービスなどの資源開発に
つながる。
②入力している情報は全てマップ化が可能
集計表のデータを分析し、分析後のデータを町ごとに数的に捉
える。分析後のデータをマップ化する。データベースにある情報
は何でもマップ化が可能となる。
1.包括支援センター職員内での情報共有
約1,700件の個別ケースの相談情報をすべてデータベース化することで、職員間での情
報共有が効率的に行えるようになった。
また、データ化することにより定量的・定性的な分析が容易に行えるようになり、包括支
援センター(地域ケアプラザ)としての事業方針を検討することができた。例えば認知症に
ついての相談が多い地区には、町会等と協力し認知症サポーター養成講座の開催を予定
したり、地域課題に焦点をあてて地域ケア会議を開催したり、効率的かつ効果的な包括支
援センター業務を行うことにつながった。
2.地域ケア会議(まちふく会議)等での活用
①地域住民と共通認識を持つ
そのまちの困りごとをマップ化して地域ケア会議の際に
提示することで、参加者で情報共有しやすく共通認識を持
つことができ、活発な検討が行われた。
②他町内会等の状況との比較
他のまちとの比較も容易にできるため、参加者自身のま
ちについてより関心を持ち、共通の課題については協同して検討することにもつながった。
③まちの課題解決の検討を盛り上げる
課題を「自分たちのこと」として捉え、解決に向けた検討・
取組を活性化させることにつながった。地域ケア会議での
検討の結果、「介護保険のサービスだけではなく、日常生
活のちょっとした困りごとを解決できるインフォーマルサー
ビスの一覧があれば便利ではないか」との意見がまとまり、
地域住民と包括支援センターが協力し、地域の生活支援
サービスの一覧を作成し、高齢独居・高齢者世帯への配布
を行った。
3.地域福祉保健計画(地域別計画)の検討での活用
地域別計画(連合町内会単位)の検討において、独自の困りごとマップを提示し、地域に
どんな相談・困りごとが多いのか関心を持って頂ける機会となりました。実際の会議の場
で、「交通の便が悪い地域だが、相談件数を見ても移動・外出困難の困りごとが突出して
いる。コミュニティバスやバスの本数を増やすなどの検討が必要では」など地域住民と行
政担当者との間で活発な意見交換が行われました。
今後の課題と展望
1.技術面
GISやVBを扱うため、それなりの知識と技術がないと、システムの開発や改良が大変難
しい。今後は、マップの色分けに加えてグラフ等を重ねるなど定量データを重ねて表示で
きないかを検討している。
2.データ分析
エリアの地域包括ケアシステム実現のために活用できるデータとなるよう、困りごとなど
集計するデータの分類が妥当であるか、また分析をどう行うかの丁寧な検討が必要。
3.MMシステムの展開
他のケアプラザでも展開するなど、他エリアとの比較・検討等を行うことができれば、より
地域特性の把握や資源開発につながるのではないかと考えています。