Title Author(s) Citation Issue Date URL Enzymes in bacterial amine degradation : biochemical and electrochemical characterization of quinohemoprotein amine dehydrogenase and histamine dehydrogenase( Abstract_要旨 ) Fujieda, Nobutaka Kyoto University (京都大学) 2006-03-23 http://hdl.handle.net/2433/78169 Right Type Textversion Thesis or Dissertation author Kyoto University 【546】 ふじ 氏 名 のぶ たか えだ 藤 枝 伸 宇 学位(専攻分野) 博 士(農 学) 学位記番号 農 博 第1557号 学位授与の日付 平成18年 3 月 23 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第1項該当 研究科・専攻 農学研究科応用生命科学専攻 学位論文題目 Enzymes in Bacterial Amine Degradation:Biochemical and Electrochemical Characterization of Quinohemoprotein Amine Dehydrogenase and Histamine Dehydrogenase (アミン分解細菌が産生する酵素:キノへモプロテインアミン脱水素酵素と ヒスタミン脱水素酵素の生化学・電気化学的特性評価) (主 査) 論文調査委員 数 授 加 納 健 司 教 授 宮 川 恒 教 授 井 上 囲 世 論 文 内 容 の 要 旨 アミン酸化還元酵素は共有結合性のフラビンやキノン骨格を持つ化合物を酸化還元コファクタとして持つことが報告され, 注目を集めている。特に微生物由来のアミン脱水素酵素は特殊な生育条件におけるエネルギー代謝に関与している。そのた め,これらの酵素に関連する電子伝達鎖やその酵素自身の電子移動能に関する研究は,生体におけるエネルギー変換機構の 解明だけでなく,バイオセンサやバイオ電池へ応用する基礎となる。一方,近年,微生物由来の新規なアミン脱水素酵素で あるキノへモプロテインアミン脱水素酵素(QH−AmDH)とヒスタミン脱水素酵素(HmDH)が報告されている。前者は 特殊なキノンコファクタであるCTQ(システイントリプトフィルキノン)と2つのヘムcを持ち,タンパク質における電 子移動能の研究対象として注目されている。また,後者はヒスタミンに対して非常に特異性が高く,ヒスタミン定量におけ る有用性が指摘されているが,新たなキノンコファクタの存在も示唆されている。 本論文では,このような2つのアミン脱水素酵素QH−AniDHとHmDHを取り上げ,それらの特性を電気化学的および 生化学的手法を軸に多面的に評価することを目的とした。まず,分光電気化学的手法によりQH−AmDHが有する3つの 酸化還元中心の酸化還元電位を決定し,QH−AmDH内での電子移動について検討した。また,QH−AmDHと2つの金属 タンパク質(アミシアニンとウマ心筋由来シトクロムc)の電子移動速度を測定し,等電点,酸化還元電位および構造情報 をあわせてタンパク質問電子移動について検討した。さらに,QH−AmDHに非常に類似したヘムタンパク質を見出し,そ の活性化および特性評価を行った。HmDHについては,本酵素をコードする遺伝子配列,コファクタ構成を明らかにした。 また,大腸菌内での組換え体酵素の大量発現と,その特性評価,およびそのヒスタミンセンサへの応用を検討した。 第1章では,構造情報に基づき,QH−AmDHが含有する2つのヘム cとCTQに関して電気化学的評価を行い,酸化還 元コファクタのいくつかの物理化学的パラメータを決定した。メデイエータ型カラム電解法を用い,2つのヘムcについて のスペクトル変化を平衡論的および速度論的に解析した。一方で,QH−AmDHのγサブユニットを単離することにより, サブユニット内のCTQの酸化還元挙動を電気化学法により直接観察できることを示した。この特性を利用してCTQの酸 化還元反応および酸解離反応に関するいくつかの熱力学的パラメータを決定した。これらのパラメータを基に,QH− AmDH内部の電子移動経路を明らかにした。 また,2つのキノブロティンから3つの金属タンパク質への電子移動速度を電気化学的に測定し,電子伝達鎖及び電子受 容体選択性について検討した。QH−AmDHは生理的電子受容体であるシトクロムc55。のみならず,メチルアミン脱水素酵 素の生理的電子受容体であるアミシアニンにも非常に速く電子伝達できることを示した。さらに,膜画分を用いて再構成し た電子伝達鎖の酸素消費速度から,QH−AmDHから末端酸化酵素への電子伝達速度は,シトクロムc55。経由でもアミシア ニン経由でも非常に速いことを明らかにした。以上のことを踏まえて,タンパク質問電子移動に関する酸化還元電位や等電 点の影響を論じるとともに,QH,AmDHを初発酵素とする電子伝達鎖に関して新たな経路の存在の可能性を提唱した。 −1285− さらにQH−AmDHに類似したヘムタンパク質を発見し,その活性化と構造決定を目的として,本ヘムタンパク質の諸 特性を検討した。QH−AmDHの基質としてのアミン類やジチオナイトにより,本ヘムタンパク質が還元的に活性化される ことを明らかにし,本タンパク質が不活性型QH−AmDH(sQH−AmDH)であることを証明した。さらに,5QH−AmDH のコファクタの酸化還元挙動,γサブユニットのスペクトル特性,および分子量からCTQがオキシム体になっていること を解明し,SQH−AmDHの生理的役割について考察した。 第2章では,HmDHのPCRクローニングを行い,紫外可視吸収スペクトルなどの物理化学的特性と共にHmDHの酸 化還元中心の構造について検討した。ゐ∽d遺伝子配列は2073bpであり,翻訳されたアミノ酸配列は690残基であること, またトリメチルアミン脱水素酵素(TMADH)と非常に高い相同性(40%)を示すことを明らかにした。さらに,この遺 伝子をpET26b(+)ベクターを用いE.coliを宿主として発現させ,菌体抽出液でHmDH活性を確認し,この遺伝子が HmDHをコードすることを実証した。TMADHは3つのコファクタ:6−S−システイニルFMN,【4Fe−4S]鉄硫黄クラ スタおよびADPを持っていることが報告されていることから,HmDHも同様のコファクタ構成であると推測し,それら の存在を定量的に示した。さらに,構造の分子モデリングにより,活性中心と考えられるフラビン近傍の構造および基質特 異性について解析した。 また,大腸菌内で生産させた組換え体HmDHについて活性測定,スペクトル解析,コファクタ同定により,野生株由来 の酵素との比較および検討を行った。さらにこの酵素を用いてヒスタミンセンサ作製を試みた。ポリビニルイミダゾールに 配位させたオスミウム錯体存在下で,HmDHがヒスタミンの電気化学酸化反応の良好な触媒となることを見出し,かつ, 本電極反応系では低い動作電圧でヒスタミン濃度を電流値として観測できること明らかにし,数十〃Mまで線形応答するセ ンサを構築できることを実証した。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 アミン脱水素酵素は特殊なコファクタを含有することやエネルギー代謝の鍵酵素であるといった基礎的観点から,生体電 子移動研究の対象酵素として注目され,そのコファクタ形成に関する研究も多い。また,多種多様な生理活性アミンが存在 することから,機能性触媒分子,センサ素子としての利用法など,応用研究も重要な課題となっている。 本論文は電気化学的および生化学的な手法を用いて近年発見された2つのアミン脱水素酵素,キノへモプロテインアミン 脱水素酵素(QH−AmDH)とヒスタミン脱水素酵素(HmDH)について多面的な特性評価を試みたものであり,その評価 できる点は以下の通りである。 1.QH−AmDHの含有する3つのコファクタについて分光電気化学法を用いて酸化還元電位を決定した。すなわち,スペ クトル特性が類似する2つのヘムcに関しては,スペクトル変化の平衡論的解析により2つの電位を分離評価し,速度論的 解析により各電位をそれぞれのヘムcに帰属した。一方,CTQに関しては,サブユニットを単離することにより,その酸 化還元挙動を電気化学法で直接検出できることを示し,電位測定を行った。このように決定した熱力学的パラメータを基に, CTQから2つのヘムcへのQH−AmDH分子内電子移動経路を提唱した。 2.QH−AmDHと金属タンパク質の電子移動速度を電気化学的手法によって測定することに成功した。また,この電子移 動速度は金属タンパク質の酸化還元電位や等電点にはほとんど無関係であることを示した。さらに,電子伝達鎖の再構成に より,QH−AmDHを初発酵素とする電子伝連鎖は,シトクロムc550経由だけでなく,アミシアニンを経由する経路も存在 する可能性を示した。 3.不活性なQH−AmDHを単離し,その活性化に成功し,活性型QH−AmDHとの相違点を示した。さらに,この不活 性型QH−AmDHでがCTQがオキシム体になっていることを明らかにし,それがQH−AmDHの前駆体である可能性を 示した。 4.HmDHの遺伝子配列を決定し,そのアミノ酸配列がトリメチルアミン脱水素酵素と相同性が高いことを示した。また, その酸化還元コファクタがトリメチルアミン脱水素酵素と同じく,6−S−システイニルFMN,【4Fe−4S]鉄硫黄クラスタで あることを定量的に示した。さらに,分子モデリングによってフラビン近傍のアミノ酸残基がトリメチルアミン脱水素酵素 と異なることを示した。 一1286− 5.大腸菌内で産出された組換え体HmDHが野生株由来のHmDHとほぼ同一の活性を持つこと,および同一のスペクト ル特性であることを示した。さらに,大腸菌内で産生された組換え体HmDHでも,イソアロキサジン環の6位炭素とシス テインの共有結合が完全に形成されることを明らかにした。 6.HmDHを用いた低動作電圧のアンペロメトリックヒスタミンセンサが構築可能であることを示した。ポリビニルイミ ダゾールに配位させたオスミウム錯体とHmDHがスムースな電子移動反応を行うことを示し,比較的容易に固定化が可能 であることを示した。 以上のように本論文は,微生物由来の2つの新規なアミン脱水素酵素について,生体電子移動に関する熱力学・速度論的 な知見を得るとともに特殊なコファクタの同定など基礎的特性評価を行い,また,応用研究の例としてヒスタミンセンサの 可能性を明らかにしており,分析化学,酵素化学,微生物学の発展に寄与するところが大きい。 よって,本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認める。 なお,平成18年2月9日,論文ならびにそれに関連した分野にわたり試問した結果,博士(農学)の学位を授与される学 力が十分あるものと認めた。 −1287−
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