発行日 2015.8.20 みなさんこんにちは。大垣徳洲会病院 医療情報誌 です。 臨床工学科が発行する PCPS管理時の循環について PCPSでは、脱血管は右心房付近に、送血菅は下行大動脈に 留置されています。 という事は脱血管が右心房付近にあることから前負荷は減 少します。 →脱血により前負荷の軽減と、うっ血状態の改善が期 待できます。 送血管が下行大動脈にあることから、自己心拍出とは逆行 性に血流が流れてしまいます。 よって、後負荷は増大します。 右房 下大静脈 脱血カニュラ →これにより、左室拡大や左心不全に伴い、肺水腫と なるおそれがあります。 呼吸管理時はPEEPを高めに保つことや、覚醒時 Bi-PAPの使用も肺へのダメージ 軽減に役立ちます。 さらにIABPの併用が大切になってきます。 IABPはPCPS使用による後負荷の軽減と左室仕事量 の軽減、および冠血流量の増加による循環を補助す ることができます。 ★IABPの循環補助効果は自己心拍出量の10~15%程度です。 大動脈 送血カニュラ 人工肺 熱交換器 動脈側 遠心ポンプ 静脈側 Medical partners ◆POINT 1 心臓が動き出すと、自己心拍出とPCPSの逆行性血流が戦ってしまうこ とです。心臓が動きだすときを見逃さず観察することが大切です。 では何で評価するのか?という疑問に対して 一番は心エコーで評価が適切と考えます。 何を根拠にDrへ心エコーを依頼・相談するか? ABGによる酸素化で評価しましょう。 ABGでの比較POINT 右RAとPCPS側のABGでpao2を比較します。 右RAは自己の心肺機能での酸素化を表すことになります。 PCPSの人工膜は約3日(製品にもよりますが)が寿命です。 例えば、右RAのpao2が200から100に変化したとする。「心臓が動いて きたかなぁ~」と思うが、単に人工膜の性能が落ちただけの場合もある ので、比較が大切となります。 ちなみに、Spo2は右の指で測定します。その理由も、自己での酸素化が 右上肢に一番現れやすいからというのが根拠です。 POINT 2 ◇補助流量は3~3.5L/minで開始し、ABGでacidosisが改善していなければ補 助流量を増やしていく。初期設定はメディカルパートナーズのPCPS初級編を見て ください。 理想は補助流量が最小限である方が後負荷は少ないため、心機能の回復が早く なる。 人間の血液量は体重の1/13です。60kgなら4.6Lとなります。ほかの考え方とし ては、 SV×Wtで70×60kg=4.2Lがあります。もう一つ加えると、SV×HR=COでもい いです。 ※SV基準値=60~130ml。 何が言いたいかと言うと、PCPSの補助は50~70%です。 (正常人60kgの血液量)4.2×70%≒3Lとなります。 患者の状態やDrの判断もよりますが、だいたい2~3L/minでの管理が多いです。 血圧はMAP≧60mmHgで管理します。 Page 2 Medical partners POINT 3 PCPSでは拍動はありません。NiBPで管理する必要がありますか? PVCは脱血による影響からあまり指標にはなりません。 SGカテーテルに血行動態パラメーターでは、脱血による影響からCOも目安になりません。PAは脱血不良を予 防するため、収縮期20~30mmHgを目標にします。 Svo2≧60%を目標に。 PCPS使用時はCVP、CO、PAPはあまり指標になりません。Svo2は指標になりますが、PCPSでは拍動がないた め末梢までの灌流少なくなっていますので注意しましょう。 ◇出血や血管外への水分の漏出による循環血液量の減少に注意します。 →NsIより)PCPSは遠心ポンプのため患者にvolumeがないと引くことができませんので、inをしっかり入れなく てはいけません。2~3日(患者の状態によるが)して、心臓が動きだしたりリフィリングを迎えたりすると、outが 増えるためinoutの観察が大切になります。 心エコーにてIVC呼吸変動の確認やB-Xpによる画像も評価しましょう。 立位でのB-Xp撮影ではない為、LVの評価よりはPVコントラストの評価をみると良いでしょう。 ◆遠心ポンプってなに? ローラーポンプ 一般的なポンプといえばローラー型をイ メージしますが、PCPSは大量の血液 (1分間に3000~4000ml)を循環させ ます。 これがローラーポンプであれば血球が破 壊され生命代行どころでは無くなりま す。それをこの遠心ポンプが血球を破壊 せずに代行しているのです。 ただ血液を抗凝固しておく必要があり ますのでACT(活性凝固時間)を確認し 300秒±50秒に設定しておかなければ なりません。 Page 3 遠心ポンプ ◆人工肺ってなに? 酸素流量/濃度設定のできるブレンダーと膜型人工肺があります。 酸素流量を上げる事でPaO2は上昇しPaCO2が低下します。 酸素濃度を上げる事でPaO2は上昇しPaCO2は変化しません。 これは人工呼吸器の設定と同じですね。 右の写真にあるのが膜型人工肺になります。 膜型人工肺の劣化に気をつけなければなりま せん。 血漿(血清)リーク現象 →人口肺に血中蛋白などが付着しガス流路内 に血漿成分が漏出する現象、ガス交換能が著 しく減少する。早めの回路交換をしましょう。 Wet lung現象 →人工肺のガス流路に結露が貯留する現象 で、ガス交換能率が低下。O2フラッシュで対応 します。 ◆合併症について ①血栓塞栓症、空気塞栓 ②出血、カテーテル刺入部からの出血、血腫形成 ③下肢の動脈虚血 ④感染 ⑤血小板減少 ⑥送血管挿入時の動脈壁の損傷、解離、穿孔など が挙げられます。 それを予防する為にも、看護師が行う観察のポイントもお伝えします。 Page 4 ◆病棟看護のポイント ・PCPS特有の管理 →遠心ポンプの回転数確認 →PCPS Flow(トータルフロー以上か?) →人工肺の酸素濃度、流量(Spo2でも判断できますね) →送・脱血管の色調差(黒い場合は何が起こっているのか?) 酸素化出来ていない事が目視でも分かりますよね。 →無停電電源からの電源供給(MEに連絡&手回しを行います) 何もしないのは心マをしないのと同じ扱いです。 →回路内血栓(適切なACT管理で予防できます。) →送・脱血管の屈曲(回路の曲り=大事故と考えてください) →刺入部のガーゼ汚染の有無などを確認 →ACT目標300秒±50秒 ・患者の観察 →血行動態:BP、HR、SvO2、PCWP、CVP、RAP、不整脈、尿量、 →出血 →血栓塞栓症 →感染兆候 →意識レベル、鎮静レベル →末梢循環:足背動脈触知、冷感、皮膚の色、疼痛の有無 →挿入部の出血と腫脹の有無などなど →褥瘡 →X線写真(送脱血管の位置の把握とASOの有無を確認) 今月はPCPSという生命維持管理装置の最後の砦をお伝えしま した。 心臓カテーテルを担当される病棟看護師は必ず看護のポイント を押さえておくようにして下さい。 問い合わせ先 2015年8月号 いざ、PCPS開始!となって「分かりません」とならないように 普段から管理ポイントの把握に努める事が大切になってきます。 臨床工学科 内線 制作・編集担当 2037 中野 久富 路子 俊宏
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