誌面見本

安保法制審議の大詰めで会談を終え記者会見する野党5党の代表者。右から社民・吉田忠智党首、維新・松野
頼久代表、民主・岡田克也代表、共産・志 位和夫委員長、生活・玉城デニー幹事長(9月18日午前/東京・
国会内)提供時事
安倍政治の暴走を止めるためには、
の安倍政治支持勢力です。したがっ
橋下徹おおさか維新の会は、野党内
野党統一は不可能だと考えています。
うなことになれば、安倍首相は大独
2016年夏の参院選で自民党を大
て、参院選における全野党共闘は、
安倍政治への批判者のほとんどは、
常選挙が、日本の歴史において非常
裁者になり、米国政府の指示があれ
敗北させる以外に道はないと考えて
ほとんど困難なのです。
2016年夏の参院選で大勝するよ
に重要な国政選挙だ、ということは、
ば中国に戦争を仕掛けるおそれが大
います。参院選で自民党を敗北させ
2016年の第 回参議院議員通
政治に関心をもつほとんどの国民が
きくなる、と本気で心配している高
そこで、野党各党がめざしている
強く認識している、と私は思ってい
のは、橋下徹おおさか維新の会を除
るためには、野党がまとまらなけれ
政治評論家/山東大学名誉教授
齢者は少なくないのです。
ばならないという考え方でも一致し
く野党の一本化です。たしかにこの
実現の可能性はあります。しかし、
ています。
安倍政治の暴走を止めたいと考え
治を終わらせたいとの願いをもつ
とんどの人々が悲観的です。安倍政
ことになると、野党一本化を望むほ
統一は本当にできるのか?﹂という
う余地はありません。しかし、﹁野党
の実現を望んでいます。この点は疑
民主党の大勢は両党解党による新党
党
維新の党側は民主党・維新の党の解
が、参議院では簡単ではありません。
派結成ですが、衆議院ではできます
ている民主党と維新の党との統一会
まず、最も可能性が高いとみられ
障害は多いのです。
人々は、いまやるせない気持ちを抱
結成に反対です。この対立を残した
ているすべての人々は、野党の統一
きながら、野党統一の実現を祈って
ままでは、統一会派を結成しても強
新党結成を求めていますが、
いるのです。しかし現実は非常に厳
い同志関係が生まれる可能性は低い
と考えられます。その上で、共産党
との選挙協力を模索することになり
ますが、民主党は共産党の提唱する
の総選挙で実現した300以上の議
しかとることできませんでした。2
自由主義、市場原理主義、競争至上
だ 台前半の議席です。
を増やすことができましたが、いま
自由主義の根底の思想は﹁自分さえ
主義、弱肉強食主義でした。この新
20
森田 実
ます。安倍政権がいまの勢いのまま、
民主党は2016年夏の参議院議員選挙に向けて
「およそ事業に必要なのは、する力ではなく、
やりとげようとする決心である」
(リットン)
野党をまとめることが できるか
︱
しい状況です。
大新聞記者たちの見方
共産党の国民連合政府構想が撤回さ
国民連合政府構想を受け入れません。
野党選挙協力は困難だ、と考えてい
れない限りは、民主・共産の選挙協
ほとんどの大新聞の記者たちは、
ます。大新聞の記者たちの一致した
力は難しいのです。
ないと思います。
は、野党側は意識を変えなけばなら
これらの諸々の障害を突破するに
見方の底にあるのは、次のような認
識です。
おおさか維新の会の指導者である
橋下前大阪市長が存在している以上、
す。橋下徹らおおさか維新の会も安
倍首相らと同じです。野党はどうで
いまの日本を んでいる最大のも
席から激減してしまいました。20
しょうか。民主党は2009年8月
のは﹁自分さえよければ思想﹂です。
12年 月の総選挙では 台の議席
「自分さえよければ思想」
からの脱却
1970年代後半に起こったサッ
チャー革命と1980年代初期に起
014年 月の総選挙では約 議席
50
きたレーガン革命がめざしたのは新
12
12
民主党再建のためには、2009
命、1980年代初期のレーガン革
1970年代末のサッチャー革
過去の対立をすべて水に流して大同
団結の方向を打ち出すべきでした。
政治家に団結回復を呼びかけ、大同
年8月末に民主党員だったすべての
命から今日まで 年が経過し、新自
よければ思想﹂
です。
70
団結する以外に民主党復活の道はな
しかし、2016年夏の歴史的決
由 主 義 革 命 は 破 綻 し ま し た。サ ッ
差の時代に変わってしまいました。
戦を前にして、いまのままの民主党
いと、私は何度か民主党に行って口
いまは弱肉強食主義時代への反省
では安倍自民党に太刀打ちできませ
チャー・レーガン革命が生み出した
期ですが、しかし、﹁自分さえよけれ
ん。2009年8月の300名を超
説いたのですが、真面目に相手にさ
ば思想﹂は人間社会の隅々まで浸透
えたすべての衆議院議員に復党を呼
のは極端な格差社会であり、平和共
してしまっています。政治家も﹁自
びかけるべきです。このためには民
れませんでした。私の努力は空振り
分さえよけば思想﹂のとりこになっ
主党がまず自らを捨てる必要があり
存秩序の破壊でした。第二次大戦後
てしまっています。
はかるべきです。2009年秋以後
に終わりました。
日本の政治はどうでしょうか? 安倍政権も自民党も﹁自分さえよけ
の党内抗争によって起きた分裂をす
ます。民主党を解党し、大同団結を
れば思想﹂で固まってしまっていま
の平和共存の世界は戦争と紛争と格
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2
もりた・みのる 1932年、静岡県生まれ。政治評論家。東日本国際大学客員教授。日本評論社出版部長、
『経済セミナー』編集長を
経て現在。主な著書に『森田実 時代を斬る』
『独立国日本のために』
『森田実の言わねばならぬ名言123選』
『「橋下徹」ニヒリズムの研
究』
『森田実の一期一縁』など多数。
2016.1
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