上 原 賞 受 賞 者 (五十音順) 受賞者氏名: 豊島 近(トヨシマ チカシ)理学博士 所属機関および役職:東京大学分子細胞生物学研究所教授 生年月日 昭和29年7月17日生 略 昭和53年 3月 歴 東京大学理学部物理学科卒業 55年 3月 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了 58年 3月 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了 59年 1月 東京大学理学部物理学教室 助手 61年 7月 米国スタンフォード大学細胞生物学教室 博士研究員 63年 4月 英国 MRC 分子生物学研究所 研究員 平成 元年 7月 理化学研究所 国際フロンティア研究員 2年 1月 東京工業大学理学部(生命理工学部) 助教授 6年 5月 東京大学分子細胞生物学研究所 教授 20年 4月 カリフォルニア大学・バークレー校 Hitchcock Professor(兼任) 21年 8月 22年 7月 国立台湾大学 Distinguished Research Chair Professor(兼任) 東京大学分子細胞生物学研究所附属高難度蛋白質立体構造 解析センター長 受賞対象となった研究業績 「イオンポンプによる能動輸送機構の原子構造による解明」 生命活動に極めて重要な膜蛋白質であるイオンポンプに関して、数々の結晶構造解析に成功し、イオ ンの能動輸送機構やイオン選択のメカニズムを解明した。結晶化に際して脂質を加えるという常識を破 る方法で筋小胞体カルシウムポンプ(Ca2+-ATPase)を結晶化し、陽イオンポンプとして初めての原子構 造を決定した。その後、カルシウムポンプの反応サイクルをほぼ完全に網羅する9つの中間体構造を 次々に決定して、10 本の膜貫通ヘリックスと3つの細胞質ドメインの再配置により大規模な構造変化が 起こることを示し、濃度勾配に逆らってイオンを能動輸送する複雑な作動機構を原子レベルで解明し た。更に、ナトリウム・カリウムポンプの作動機構の構造的解明に取り組み、ナトリウムイオンを厳密に選 択する精密なメカニズムを明らかにした。イオンポンプの機能とその制御機構を構造的に解明した先駆 的かつ画期的な研究業績である。 水島 昇博士 受賞者氏名: 水島 吉森 保博士 昇(ミズシマ ノボル)博士(医学) (共同受賞) 所属機関および役職:東京大学大学院医学系研究科教授 生年月日 昭和41年6月30日生 略 平成 3年 3月 歴 東京医科歯科大学医学部医学科卒業 8年 3月 東京医科歯科大学大学院医学研究科修了 8年 4月 日本学術振興会特別研究員(PD) 10年10月 岡崎国立共同研究機構 基礎生物学研究所 非常勤研究員 11年10月 科学技術振興事業団さきがけ研究 21 研究員 14年 4月 岡崎国立共同研究機構 基礎生物学研究所 助手 16年 4月 東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所 副参事研究員(室長) 18年 9月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科細胞生理学分野 教授 24年10月 東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野 教授 受賞者氏名: 吉森 保(ヨシモリ タモツ)医学博士(共同受賞) 所属機関および役職:大阪大学大学院生命機能研究科・医学系研究科 大阪大学特別教授 生年月日 昭和33年9月3日生 略 昭和56年 3月 歴 大阪大学理学部生物学科卒業 58年 3月 大阪大学大学院医学研究科医科学専攻修士課程修了 61年 3月 大阪大学大学院医学研究科博士課程中退 61年 4月 平成 5年 7月 8年 7月 関西医科大学生理学第一講座 助手 (~平成8年6月) ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL・ドイツ) 博士研究員 (~平成7年) 岡崎国立共同研究機構 基礎生物学研究所 助教授 14年 3月 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 教授 18年 2月 大阪大学微生物病研究所 教授 22年 4月 大阪大学大学院生命機能研究科・医学系研究科 教授 26年 7月 大阪大学 特別教授 受賞対象となった研究業績 「哺乳類オートファジーの分子機構と生理機能の研究」 オートファジーとは、細胞内のたんぱく質や小器官をリソソームへ輸送して分解する主要な細胞内分解システ ムである。大隅良典博士による出芽酵母の先駆的研究において、遺伝学的解析によりオートファジーに必須 な多種類の遺伝子が発見された。その後、哺乳類オートファジーの研究においては、吉森保・水島昇両博士 によって、哺乳類オートファジー因子の同定、オートファゴソームマーカーの特定、オートファゴソーム蛍光標 識マウスの作製など共同して行われた。更に、吉森博士は、オートファジーの分子機構と膜創生の解明、オー トファゴソーム形成場の特定、病原性細菌や損傷リソソームを除去する選択的オートファジーの発見と疾患に おける重要性を見出し、水島博士は、機能欠損マウスを初めて作製し、オートファジー遺伝子の機能解析、オ ートファジーの生理学的・病態生理学的意義を解明した。オートファジー研究を飛躍的に発展させた世界を先 導する独創性の高い研究業績である。
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