2016 年度税制改正速報

Japan Tax Update
2016 年度税制改正速報
Issue 116, December 2015
In brief
自由民主党・公明党両党は、2015 年 12 月 16 日に、平成 28 年度税制改正大綱(以下「2016 年度税制改
正大綱」)を決定しました。 2016 年度の税制改正は、2020 年度の財政収支黒字化目標を達成すべく、経済
再生と財政健全化の両立がわが国の最重要課題であることを踏まえ、2015 年度に着手した成長志向の法人
税改革を更に推進し、法人実効税率の引下げと、課税ベースの拡大の措置が盛り込まれています。又、ロー
カル・アベノミクスの更なる浸透による経済の活性に向けた「地方創生」推進の措置や、2015 年 10 月に最終
報告書が公表された、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトを踏まえた
国際課税の見直し等、いずれも 2015 年度の税制改正の流れをくむものです。今後は、改正法案が 2016 年
1 月に開会が予定される国会に提出され、2016 年度税制改正の内容が確定することになります。なお、今後
の審議等の状況によっては、内容に変更がある可能性がありますのでご留意ください。
In detail
2016 年度税制改正大綱のうち、法人関連の改正項目を中心に解説します。
1. 2016 年度税制改正大綱の概要
2. 法人税改革関連
(1) 法人税率の引下げ
(2) 課税ベースの拡大
(3) 欠損金の繰越控除制度の見直し
(4) 減価償却制度の見直し
(5) 租税特別措置の見直し
(6) 地方税の見直し
3. 中小法人関連
4. その他の法人税関連
(1) 組織再編税制の適格要件等の見直し
(2) 適格現物出資の見直し
(3) 役務提供の対価として譲渡制限株式を交付した場合の取扱い等
(4) その他
5. 地方創生関連
(1) 地方拠点強化税制の拡充
(2) 地方創生応援税制の創設
(3) 国家戦略特区における所得の特別控除
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6. 金融関連
(1) 先物取引差金等決済
(2) 日本版スクークに係る利子等非課税制度
(3) 投資法人に係る課税の特例
(4) その他
7. 国際課税関連
(1) 日台民間租税取決め
(2) 移転価格税制の文書化
(3) 外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)
(4) 帰属主義への変更の円滑な実施
8. 消費税関連
(1) 消費税の軽減税率制度の導入
(2) 消費税の中小企業者に対する特例措置
(3) 事業者向け電気通信利用役務提供に係る消費税の内外判定基準の見直し
9. その他の間接税
(1) 登録免許税
(2) 固定資産税・都市計画税
10. 個人所得税関連
(1) 国外転出課税制度の見直し
(2) その他
11. 納税環境整備
(1) 加算税・延滞税等の見直し
(2) 納税義務等の見直し
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1. 2016年度税制改正大綱の概要
2016 年度税制改正は、アベノミクス第 2 ステージとして、経済の好循環の拡大のため、成長志向の法人税改
革を推進し、企業収益の拡大等による経済再生を進めるとともに、財政健全化を着実に実施することを掲げ
ています。
成長志向の法人税改革として、法人実効税率(現行 32.11%)については 2016 年度に 29.97%、2018 年度に
29.74%に 2 段階で引き下げる一方、外形標準課税の拡大や、建物附属設備や構築物の償却方法を「定額
法」に統一する減価償却の見直し、生産性向上設備投資促進税制の期限どおりの廃止等による課税ベース
の拡大が盛り込まれています。
欠損金繰越控除の見直しや外形標準課税制度の拡大は、2015 年度税制改正で既に措置されたものですが、
2016 年度税制改正では、更なる見直しが行われました。一方で中小法人課税、公益法人課税については、
引き続き検討を行うとして改正が見送られました。
東京への過度な集中の是正と地方創生のため、2015 年度税制改正で導入された地方拠点強化税制につい
ては、2016 年度税制改正でもその拡充等が盛り込まれています。
社会保障・税一体改革に関連して、経済再生と財政健全化を両立するため、2017 年 4 月 1 日からの消費税
率 10%への引上げ時期に合わせて、消費税の軽減税率制度導入も決定されました。又、複数税率制度に対
応した仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)が 2021 年 4 月 1
日より導入されます。
国境を越えた取引等に係る課税の国際的調和に向けた取組みとしては、BEPS プロジェクトの議論を踏まえ、
国際的な租税回避を防止し適正な課税を確保するため、移転価格税制の文書化制度が整備されています。
2. 法人税改革関連
(1) 法人税率の引下げ
法人税の税率(現行 23.9%)について、2016 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度は 23.4%、2018 年 4 月 1
日以後に開始する事業年度は 23.2%と段階的に引き下げられます。
外形標準課税の所得割の税率は、2015 年度税制改正により、2016 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度は
4.8%に引き下げられましたが、2016 年度税制改正により 2016 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から
3.6%に引き下げられることとされます。この結果、外形標準課税適用法人について、法人実効税率(注 1)は
現行の 32.11% (東京都 33.06%)から 2016 年度は 29.97%、2018 年度は 29.74%に引き下げられます。
現行
事業年度開始日
改正案
2015 年 4 月 1 日~
法人税率
年 800 万
円以下
(注 3)
年 800 万
円超
大法人
2016 年 4 月 1 日~
実効税率
23.9%
32.11%
33.06%
(東京都)
法人税率
年 800 万
円超
2018 年 4 月 1 日~
実効税率
年 800 万円
以下(注 3)
23.4%
29.97%
30.86%
(東京都)
(注 4)
法人 税率
年 800 万
円超
実効税率
年 800 万円
以下
23.2%
29.74%
30.62%
(東京都)
(注 4)
中小法人、人格な
き社団(注 2)
23.9%
15%
34.33%
35.36%
(東京都)
23.4%
15%
33.80%
34.81%
(東京都)
23.2%
-
33.59%
34.59%
(東京都)
公益法人、協同組
合、特定医療法人
19%、 22%
15%
-
19%、 22%
15%
-
19%、 22%
-
-
法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率
(注 1) 実効税率算定式: (
1+事業税率
) (事業税率には地方法人特別税が含まれる)
(注 2) 中小法人(普通法人のうち、期末の資本金の額等が1億円以下であるもの又は資本等を有しないもの(大法人の 100%子法人を
除く))、公益法人、協同組合、人格なき社団等をいう(以下同じ)
(注 3) 租税特別措置法により 2015 年 4 月 1 日から 2017 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度に適用される税率
(注 4) 2016 年度以後の東京都の大法人における実効税率は未定であるため、標準税率の 1.05 倍として試算している
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(2) 課税ベースの拡大
2016 年度税制改正では法人実効税率を約 2.37%(2018 年度分まで)引き下げることとし、その財源としては、
欠損金の繰越控除の更なる見直しと赤字法人課税の強化(外形標準課税の外形部分の課税強化)が盛り込
まれましたが、減価償却制度については、企業の積極的な投資への影響に鑑み、部分的な見直しとなってい
ます。中小法人等の課税制度については、次年度以後の検討として、2016 年度での改正は見送られました。
2015 年度税制改正で対応
欠損金の繰越控除制度の見直し
2016 年度税制改正で対応
欠損金の繰越控除制度の見直し
受取配当等の益金不算入制度の見直
し
地方法人課税の見直し
(法人事業税を中心に)
減価償却制度の見直し
(建物付属設備、構築物等)
地方法人課税の見直し
(法人事業税を中心に)
租税特別措置の見直し
(研究開発税制等)
租税特別措置の見直し(生産性向上設備
投資促進税制、所得拡大促進税制等)
2017 年度以降に検討を見送り
中小法人、公益法人課税等の見直し
(3) 欠損金の繰越控除制度の見直し
欠損金の繰越控除制度は 2015 年度税制改正で既に見直しが行われましたが、2016 年度税制改正で実効
税率の引下げが盛り込まれたことを受け、財源確保と改革に伴う企業経営への影響の平準化の観点から、更
に見直しが行われました。
改正により、控除限度割合が 2016 年度以後、5%ずつ段階的に引き下げられ、青色申告書を提出した事業
年度の欠損金の繰越期間等を 10 年(現行 9 年)に延長する措置が 1 年遅れて適用されることとなります。
事業年度開始日
2015 年 4 月 1 日~ 2016 年 4 月 1 日~
2016 年 3 月 31 日
2017 年 3 月 31 日
65%
65%
60%
9年
2017 年 4 月 1 日~ 2018 年 4 月 1 日~
2018 年 3 月 31 日
50%
55%
50%
10 年
控除限度割合(中小法人
現行
等を除く)
改正案
繰越控除期間
現行
欠損年度の帳簿保存期間
改正案
9年
欠損金額の更正期限/更
正の請求期間
(注) 2018 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用
10 年 (注)
(4) 減価償却制度の見直し
2016 年 4 月 1 日以後に取得をする建物附属設備及び構築物並びに鉱業用の建物の償却方法について、
定率法が廃止されます。建物附属設備及び構築物は、定額法のみとなり、鉱業用減価償却資産(建物、建
物附属設備及び構築物に限る)については、定額法と生産高比例法の選択制とされます。なお、リース期間
定額法、取替法等は存置されます。
資産区分
建物
建物附属設備、構築物
機械装置、工具器具備品、
車両運搬具、船舶、航空機
鉱業用減価償却資産
建物、建物附属
設備、構築物
それ以外
無形資産
国外リース資産
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1998 年 4 月 1 日~
旧定額法
旧定額法 又は旧定
率法
旧定額法、旧定率法、
又は 旧生産高比例
法
資産の取得時期
2007 年 4 月 1 日~
2012 年 4 月 1 日~
定額法
定額法 又は 250%定
定額法 又は 200%定
率法
率法
定額法、250%定率法、
又は 生産高比例法
定額法、200%定率法、
又は 生産高比例法
2016 年 4 月 1 日~
定額法
定額法 又は 200%定
率法
定額法、又は 生産
高比例法
定額法、200%定率
法、又は 生産高比
例法
旧定額法
旧国外リース期間定
額法
定額法
国外リース期間定額法
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(5) 租税特別措置の見直し
2015 年度税制改正と同じく、政策税制の内容により、期限到来により廃止されるもの、内容を見直した上で期
限を延長するもの、政策的重要性から期限を延長するもの等に区別し、対応を図っています。
適用期限の定めのある政策税制について、期限到来により廃止されるもの(抜粋)
政策税制名
生産性向上設備投資促進税制
適用期限等
2017 年 3 月 31 日までに取得・事業供用(即時償却及び税
額控除率の上乗せ措置は、2016 年 3 月 31 日期限)
政策の重点化や対象の見直し等が行われるもの(抜粋)
政策税制名
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の
特例)
国家戦略特別区域、国際戦略総合特別区域において機械等
を取得した場合の特別償却等又は法人税額の特別控除制度
雇用促進税制
エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別
償却または税額控除制度
改正案
対象となる中小企業を見直し、適用期限を 2 年延長
繰越税額控除制度を廃止する等の見直し、適用期限を 2 年
延長
適用要件を見直し、適用期限を 2 年延長
適用要件を見直し、適用期限を 2 年延長
政策的重要性が高い措置の拡充・延長(抜粋)
政策税制名
交際費等の接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人
に係る損金算入の特例
改正案
適用期限を 2 年延長
(6) 地方税の見直し
税率引下げの財源としての赤字法人課税の強化策として、外形標準課税制度の税率が見直される一方、地
方偏在是正のための施策として、地方法人税の税率引上げ(法人住民税法人税割の税率の引下げ分)、地
方法人特別税の廃止と法人事業税への復元が行われます。又、法人事業税の税率の改正に伴い、2015 年
度税制改正と同様に、付加価値割・資本割の負担変動の軽減措置が手当されています。
(a) 法人事業税の税率及び地方法人特別税の税率の改正
資本金 1 億円超の普通法人に適用される外形標準課税の税率及び、地方法人特別税の税率が見直されま
す。
法人事業税所得割の税率を現行の 60%程度まで引き下げ(2015 年度改正前の 2014 年度比では 50%程
度)、外形標準課税は現行の 1.67 倍(2015 年度改正前の 2014 年度比では 2.5 倍)まで拡大され、2016 年
4 月 1 日以後に開始する事業年度から適用されます。
地方法人特別税の税率は現行の 93.5%から 414.2%に引き上げられ、2016 年 4 月 1 日以後に開始する事業
年度から適用されます。なお、地方法人特別税は 2017 年 4 月 1 日以後開始事業年度から廃止され、法人
事業税に復元されます。
PwC
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改正前後の法人事業税の税率及び地方法人特別税の税率は以下のとおりです(超過課税が行われる場合
には、それぞれに超過税率が付加されます)。
事業年度開始日
付加価値割
資本割
所
年 400 万円以下の所得
得
年 400 万円超 800 万円以
割
下の所得
年 800 万円超の所得
2015 年度改正前
2014 年 4 月 1 日~
0.48%
0.2%
3.8% (2.2%)
5.5% (3.2%)
現行(2015 年度税制改正)
2015 年 4 月 1 日~
0.72%
0.3%
3.1% (1.6%)
4.6% (2.3%)
改正案
2016 年 4 月 1 日~
1.2%
0.5%
1.9% (0.3%)
2.7% (0.5%)
7.2% (4.3%)
6.0% (3.1%)
3.6% (0.7%)
地方法人特別税の税率
67.4%
93.5%
所得割のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率
(注) 地方法人特別税は 2017 年 4 月 1 日以後開始事業年度から廃止され、法人事業税に復元
414.2%(注)
(b) 法人事業税の税率の改正に伴う負担変動の軽減措置
2016 年 4 月 1 日から 2019 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度に係る付加価値額が 40 億円未満の
法人については、前年度に比して事業税額の増加額に一定割合を乗じた金額を適用年度の事業税額から
控除する措置が講ぜられます。
増加負担額がある場合に事業税額から控除する金額
2016 年 4 月 1 日以後開始事業 2017 年 4 月 1 日以後開始事
2018 年 4 月 1 日以後開始事
年度
業年度
業年度
30 億円以下
増加負担額(注) X 75%
増加負担額 X 50%
増加負担額 X 25%
30 億円超 40 億円未
増加負担額の一定割合(最大
増加負担額の一定割合(最大
増加負担額の一定割合(最大
満
75%)
50%)
25%)
(注) 増加負担税額 = 当該事業年度の法人事業税額 – 当該事業年度の課税標準に前年度の税率を乗じて算定した法人事業税
額
付加価値額
(c) 地方法人税、法人住民税法人割の税率の改正
地方法人課税の偏在是正のため、2017 年 4 月 1 日開始事業年度より、地方法人税率を引き上げる一方で、
法人住民税住民割の税率が引き下げられます。
現行
道府県民税法人税割
市町村民税法人税割
地方法人税
3.
標準税率
3.2%
9.7%
改正案(2017 年 4 月 1 日開始事業年度)
制限税率
4.2%
12.1%
4.4%
標準税率
1.0%
6.0%
制限税率
2.0%
8.4%
10.3%
中小法人関連
① 中小企業者等(注1)の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象となる法人か
ら常時使用する従業員の数が 1,000 人を超える法人を除外した上、その適用期限が 2 年延長されます。
② 中小企業者の事業再生に伴い、特定の組合財産(注 2)に係る債務免除等がある場合の評価損益等の
特例(措法 67 の 5 の 2、資産の評価益の額又は評価損の額の益金又は損金算入)について、対象とな
る中小企業者の範囲や確定申告書の添付書類の記載事項を見直した上で、その適用期限が 3 年延長
されます。
③ 中小企業の生産性向上に関する法律(仮称)の中小企業者等(注1)が、同法の施行から 2019 年 3 月 31
日までの間に、認定生産性向上計画(仮称)に記載された生産性向上設備(仮称)のうち一定の機械・装
置(注 3)を取得した場合には、固定資産税の課税標準を最初の 3 年間、価格の 2 分の 1 とする措置が
講じられます。
④ 交際費等の接待飲食費に係る損金算入の特例(飲食のために支出する費用(社内接待費を除く)の額
の 50%の損金算入)及び中小法人に係る損金算入の特例(800 万円の定額控除額の損金算入)の適用
期限を 2 年延長されます。
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(注 1) 次に掲げる法人をいう。
(i) 資本金の額又は出資金の額が 1 億円以下の法人
ただし、同一の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の 2 分の 1 以上を所有されている法人及
び 2 以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の 3 分の 2 以上を所有されている法人を除く。
(ii) 資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が 1,000 人以下の法人
(注 2) 2 以上の金融機関等が有するその中小企業者に対する債権が債務処理に関する計画によって特定投資事業有
限責任組合契約に係る組合財産となる場合に限る
(注 3) 販売開始から 10 年以内のもの、旧モデル比で生産性が年平均 1%以上向上するもの、1台・1基の取得価額が
160 万円以上のもの、の要件をすべて満たすもの
4. その他の法人税関連
(1) 組織再編税制の適格要件等の見直し
株式交換又は株式移転(以下「株式交換等」)に係る税制適格要件のうちの役員継続要件は、他の組織再編
の役員継続要件に比べて厳格であると考えられ、2016年度税制改正で見直しが行われます。又、親法人が
取得する子法人株式(子法人の株主が50人以上の場合)の取得価額の見直しも行われます。
現行
改正案
共同事業要件のうちの役員継続要
株式交換等前の特定役員のいずれかが
株式交換等前の特定役員の全てがその
件(法令4の3⑯二、⑳二)
その株式交換等に伴って退任をする株式
株式交換等に伴って退任をする株式交換
交換等でないこと
等でないこと
適格株式交換等により親法人が取
株式交換等完全子法人の当該株式移転
株式交換等完全子法人の直前の申告に
得する子法人株式の取得価額(子
完全子法人の簿価純資産価額(適格株式
おける簿価純資産価額にその後の資本
法人の株主の数が50人以上の場
交換等の直前の資産の帳簿価額から負
金等の額等の増減を調整した金額
合)(法令119①九ロ、十一ロ)
債の帳簿価額を減算した金額をいう)に相
当する金額
新設合併・新設分割・株式移転に係る税制適格要件(株式継続保有要件)の明確化等の措置が講じられます。
(2) 適格現物出資の見直し
現行の適格現物出資の規定では、以下の現物出資は適格現物出資から除かれることとなっています(法法 2
十二の十四)。
① 外国法人に国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債(国内にある不動産、国内
にある不動産上の権利、鉱業権、採石権、その他国内事業所帰属の資産(外国法人の25%以上保
有株式を除く)・負債)の移転を行うもの
② 外国法人が内国法人に国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債(国外事業所
に帰属する資産(国内にある不動産、国内にある不動産上の権利、鉱業権、採石権を除く)又は負
債)の移転を行うもの
PwC
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2016年度税制改正により、以下の現物出資の取扱いが見直されることとされました。
現物出資法人
被現物出資法人
内国法人
外国法人
外国法人
外国法人
内国法人
外国法人
外国法人
外国法人
外国法人
内国法人
外国法人
外国法人
出資対象資産・負債
税制適格・非適格
国内にある不動産、国内にある不動
産上の権利、鉱業権、採石権、その
他国内事業所帰属の資産・負債
現行では税制非適格
⇒移転する国内資産をすべて外国法人の
国内PEに直接帰属させる場合には税制
適格 (但し、現物出資後、一定の国内資
産について内部取引により国外本店等へ
の移転がないことが見込まれている場合
に限る)
上記以外の資産・負債
現行では税制適格
⇒現物出資の日以前 1 年以内に当該内
国法人の本店等から内部取引により国外
事業所資産となった資産(現金、預貯金、
棚卸資産、有価証券を除く)を外国法人の
国内PE以外に直接帰属させるものは税
制非適格
現行では税制適格
国外事業所に帰属する資産(国内に
ある不動産、国内にある不動産上の
権利、鉱業権、採石権を除く)又は負
債
現行では税制非適格
現行では税制適格
⇒移転する国外事業所帰属資産を外国
法人の国内PEに直接帰属させる場合に
は税制非適格
(3) 役務提供の対価として譲渡制限株式を交付した場合の取扱い等
① 法人が個人から受ける将来の役務提供対価として、一定の譲渡制限付株式を交付した場合には、当該
役務提供に係る費用の額は、原則として、その譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日の属する事
業年度の損金に算入される措置が講じられます。
上記の改正は、2016 年 4 月 1 日以後に交付の決議がされる譲渡制限付株式について適用されます。
②
③
法人の支給する役員給与について、役員から受ける将来の役務の提供の対価として交付する一定の譲
渡制限付株式による給与については、事前確定の届出が不要とされます。
損金算入が認められる利益連動給与の算定指標の範囲に ROE(自己資本利益率)その他の利益に関
連する一定の指標が含まれることが明確化されます。
(4) その他
① 交際費等の損金不算入制度について、その適用期限が 2 年延長されるとともに、接待飲食費に係る損
金算入の特例の適用期限も 2 年延長されます。
② 中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限が 2 年延長さ
れます。
5. 地方創生関連
(1) 地方拠点強化税制の拡充
2015年度税制改正において、地域再生法の改正法の施行の日から2018年3月31日までの間に地方拠点強
化実施計画について承認を受けたものが、その地方拠点強化実施計画に従って移転又は新増設をした特
定施設である事業所において、雇用を増加させた場合の税額控除制度(増加雇用者数(法人全体の増加雇
用者数を上限とする)に最大で80万円を乗じた金額)が創設されました。 2016年度税制改正では、上記の
雇用促進税制のうち、地方活力向上地域特定業務施設整備計画に係る措置について、所得拡大促進税制
の重複適用が認められることとなります。重複適用の場合は、所得拡大促進税制適用の基礎となる「雇用者
給与等支給増加額」から、雇用促進税制適用の基礎となる「増加雇用者に対する給与等支給額」として一定
の方法により計算した金額を控除して、税額控除の金額を算定します。
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(2) 地方創生応援税制の創設
地域再生法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人が、地域再生法の改正法の施行の日から2020年3
月31日までの間に、地域再生法の認定地域再生計画に記載された同法の地方創生推進寄附活用事業(仮
称)に関連する寄附金を支出した場合には、現行の損金算入措置に加えて、その支出した寄附金の額の合
計額の一定額を法人税、法人事業税及び法人住民税から控除する地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)
が創設されます。
(3) 国家戦略特区における所得の特別控除
国家戦略特別区域法の改正により法人の指定制度が創設されることを前提に、青色申告書を提出する法人
で一定のものが、国家戦略特別区域法の改正法の施行の日から2018年3月31日までの間に、国家戦略特別
区域担当大臣の指定を受けた場合は、その設立の日から5年間、所得の20%の控除が出来ることとされます。
6. 金融関連
(1) 先物取引差金等決済
先物取引にかかる雑所得等の課税の特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除について、適
用対象となる先物取引の範囲から次に掲げる取引を除外することとなります。
・商品先物取引業者以外の者を相手方として行う店頭商品デリバティブ取引
・金融商品取引業者等(注)以外の者を相手方として行う店頭デリバティブ取引
(注)金融商品取引業者のうち第一種金融商品取引業を行う者、または登録金融機関をいう
上記の改正は、平成 28 年 10 月 1 日以後に開始する先物取引について適用することとなります。
(2) 日本版スクークに係る利子等非課税制度
イスラム金融に関する税制措置として、資産流動化法上の特定目的信託が発行する社債的受益権(日本版
スクーク)について、次に掲げる措置の適用期限を 3 年延長することとなります。
・非居住者又は外国法人が振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権について受ける利子等の
非課税制度
・特定の社債的受益権に係る特定目的信託の終了に伴い信託財産を買い戻した場合の所有権の移
転登記等に対する登録免許税の免税措置
(3) 投資法人に係る課税の特例
① 投資法人に係る課税の特例及び特定投資信託に係る受託法人の課税の特例について、特定の資産
の割合が総資産の50%を超えていることとする要件における特定の資産のうち匿名組合契約等に係る権
利を、主として有価証券、不動産等に対する投資として運用することを約するものに限ることとなります。
② 特定の資産の割合が総資産の50%を超えていることとする要件について、特定の資産の範囲に再生可
能エネルギー発電設備を含めることができる期間を再生可能エネルギー発電設備を最初に賃貸の用に
供した日から20年(現行:10年)以内に終了する各事業年度とすることとなります。
③ 投資法人の支払配当等の額が配当可能利益の額の90%を超えていることとする要件における配当可能
利益の額について、原則として純資産控除項目の額のうち前期繰越利益の額を超える部分の金額を控
除する等の調整措置を講ずることとなります。
(4) その他
金融商品取引業等に関する内閣府令の改正を前提に、店頭デリバティブ取引に係る証拠金の利子の非課
税本制度の対象となる店頭デリバティブ取引の範囲について見直しを行うこととなります。
PwC
9
Japan Tax Update
7.
国際課税関連
(1) 日台民間租税取決め
2015 年 11 月 26 日に、公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間で「所得に対する租税に関する二重
課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め」」(略称「日
台民間租税取決め」)が署名されたことを受け、当該取決めの内容の実施に係る国内法の整備が行われます。
台湾とわが国の居住者・内国法人に対する相互主義を条件として、わが国が締結している租税条約と同様の
取扱いとするべく、以下の項目について措置が講じられます。
・双方居住者の振り分けルール
・台湾居住者等の所得に対する所得税・法人税の非課税等
1) 事業所得に対する所得税又は法人税の非課税(PE無ければ課税なし)
2) 配当等に対する所得税又は法人税の軽減又は非課税(配当については 10%、一定の利子に
ついては免税)
3) 資産の譲渡所得に対する所得税又は法人税の非課税
4) 人的役務提供対価等に対する所得税の非課税
・台湾における移転価格課税に係る対応的調整
・国税庁長官の確認があった場合の更正の請求等の特例等
・台湾の租税に関する権限のある機関への情報提供
(2) 移転価格税制の文書化
2015 年 10 月に BEPS 行動計画の最終報告書が公表されたことを受け、行動 13(移転価格関連の文書化の
再検討)の勧告を踏まえ、経済界のコンプライアンスコストに配慮しつつ、多国籍企業グループの透明性を高
める観点から、多国籍企業グループの活動状況に関する情報について、BEPS プロジェクトで合意された様
式による報告書提出制度が今般の税制改正に織り込まれました。
文書の種類
国別報告書
事業概況報告
書(マスターファ
イル)
独立企業間価
格算定書類(ロ
ーカルファイル)
記載内容
提出期限等
適用関係
事業を行う国ごとの収入、税前
利益、納付税額等のデータ
企業グループの組織構造、事業
概要、財務状況等
最終親事業体会計年度終了の
日の翌日から 1 年以内に e-Tax
により提出
2016 年 4 月 1 日以後開始する
最終親事業体会計年度に係る国
別報告事項について適用
国外関連取引に係る独立企業間
価格算定に必要な書類
確定申告書提出期限までに作成
して 7 年間保存
2017 年 4 月 1 日以後開始する
事業年度分の法人税について適
用
(3) 外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)
日本企業の海外での健全な事業活動における税制面でのリスクやコストを低減し、海外展開の推進及び国
際競争力の向上を図るため、2015 年度税制改正で、トリガー税率、適用除外基準及び合算対象金額の改正
が行われました。2016 年度税制改正においても、英国ロイズ市場で保険業を行う特定外国子会社(CFC)に
係る適用除外基準の見直しその他が盛り込まれています。
適
用
除
外
基
準
外
国
税
額
控
除
PwC
改正項目
一の内国法人の 100%子法人たるCFC(英国ロイズ市場
で保険業を営む場合に限る)に係る実体基準又は管理
支配基準の判定
一の内国法人の 100%子法人たるCFCに係る非関連者
基準の判定
改正内容
CFC の本店所在地国において実体基準又は管理支配基
準を満たす場合は、CFC税制の適用において、実体基準
又は管理支配基準を満たすものとする。
一の内国法人の 100%子法人たるCFC間で行う取引につ
いては、関連者取引に該当しないものとする。
CFC税制適用上の、外国税額控除の対象となる外国法
控除対象外国法人税=CFCの納付した外国法人税額×
合算割合
【改正事項】
合算割合(合算対象所得金額/CFCの所得金額)の計算
上、CFCが子会社から受ける配当等のうち外国法人税の
課税標準に含まれないものは、CFCの所得から控除す
る。
人税の計算
コーポレート・インバージョン対策合算税制適用上の、外
国税額控除の対象となる外国法人税の計算
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Japan Tax Update
上記の改正は、特定外国子会社等の 2016 年 4 月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
(4) 帰属主義への変更の円滑な実施
2014 年度税制改正で導入された国際課税原則の総合主義から帰属主義への変更(2016年4月1日以後開
始事業年度より適用)について、2015年度税制改正に引き続き、2016年度税制改正においても、以下の取扱
いが規定上明確化されます。
・内国法人の外国税額控除における国外所得金額の計算上、①国外事業所等帰属所得金額が零未満であ
る場合には、当該金額を国外所得金額とし、②国外所得金額(=国外事業所等帰属所得+その他の国外源
泉所得)が零未満である場合には、国外所得金額は零とする。
・日本支店等の恒久的施設(PE)を有していた外国法人が適格合併等により日本に恒久的施設を有すること
となった場合は、従前有していた恒久的施設に係る欠損金の繰越控除は認めない。
上記の改正は地方税についても適用されます。
8.
消費税関連
(1) 消費税の軽減税率制度の導入
2017年4月1日からの消費税率引上げに伴い、軽減税率制度が導入されます。又、複数税率制度に対応した
仕入税額控除の方式として、2021年4月1日より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。軽
減税率制度の開始からインボイス制度導入までの期間は、区分経理に対応するための措置が講じられます。
軽減税率は8%とし、対象とされるのは、飲食料品の購入(外食サービスを除く)及び定期購読契約に基づく週
2回以上発行される新聞の購読です。インボイス制度が導入されるまでの期間は、仕入税額控除について現
行の請求書等保存方式が維持されますが、軽減税率適用の課税仕入れには当該資産である旨その他の記
載を請求書等に記載することとされます。なお、異なる税率の区分経理が困難な場合には簡便法が認められ
ます。
インボイス制度導入以後は、現行の請求書等保存方式に替えて、適格請求書発行事業者(仮称、注)から発
行された適格請求書(仮称)の保存が仕入税額控除の要件とされます。
(注)免税事業者以外の事業者で、納税地を所轄する税務署長への申請により、適格請求書(適格請求書発行事業者の
登録番号、適用税率、消費税額等の一定の事項が記載された請求書等)が交付できる事業者として登録を受けた事業
者
(2) 消費税の中小企業者に対する特例措置等
簡易課税制度の適用を受けていない課税事業者が、以下のいずれかに該当する場合は、高額資産の仕入
れ等から 3 年間、免税点制度及び簡易課税制度の適用が認められないこととされます。
取引等
免税点等不適用期間
一取引単位の支払対価が税抜1、000万円以上の棚卸資産
仕入等の日の属する課税期間の初日以後3年経過日の属す
又は調整対象固定資産の課税仕入れ、又は輸入を行った場
る課税期間
合
自家建設資産の費用の額が税抜1、000万円以上である場合
費用の額が税抜1、000万円以上となった日の属する課税期
間から当該建設等が完了した日の属する課税期間の初日以
後3年経過日の属する課税期間
上記の改正は、2016年4月1日以後行われる高額資産の仕入等について適用されます。ただし、2015年12月
31日までに締結した契約に基づき、2016年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合には、適用され
ません。
PwC
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Japan Tax Update
(3) 事業者向け電気通信利用役務提供に係る消費税の内外判定基準の見直し
2015 年度税制改正で、電気通信利用役務の提供に係る消費税の判定は、仕向地主義(役務の提供を受け
る者の住所地等)によることとされました。 事業者向け電気通信利用役務の提供については、内国法人の国
外支店や外国法人の日本支店での2017年1月1日以後の特定仕入について、以下の通り見直しが行われま
す。
特定仕入
国内事業者が国外支店等で受ける特定仕入のうち、国外において行う資産の譲渡
内外判定
国外(不課税取引)
等にのみ要するもの
国外事業者が国内支店等で受ける特定仕入のうち、国内において行う資産の譲渡
国内(課税取引)
等に要するもの
9.
その他の間接税
(1) 登録免許税

産業競争力強化法に規定する認定事業再編計画等又は認定中小企業承継事業再生計画に基づき行
う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置につき、認定事業再編計画等の適用期限のみが 2 年延
長されます。

信託会社等が地方公共団体との信託契約に基づき建築する特定施設に係る土地等の信託登記に対
する登録免許税の税率の軽減措置は適用期限の到来により廃止されます。
(2) 固定資産税・都市計画税

流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の認定を受けた事業者が、総合効率化計画に基
づき取得した特定倉庫に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準を最初の5年間は価格の2分の1
とし、特定倉庫の附属機械設備に係る固定資産税の課税標準を最初の5年間は価格の4分の3とする減
免措置が講じられます。
10. 個人所得税関連
(1) 国外転出時課税制度等の見直し
2015年度税制改正により創設された国外転出時課税制度及び贈与等時課税制度(2015 年7月1日以後の
国外転出等について適用)について、以下の見直しが行われます。






PwC
2016年分以後の所得税について、対象資産からストックオプション等の行使により所得の一部又は全部
が国内源泉所得となるものを除く。
納税猶予の期限の満了に伴う納期限が、国外転出の日・贈与の日・相続開始の日から5年4カ月経過す
る日(現行5年経過する日)とする(2016年1月1日以後の納税猶予期限満了日が到来する場合について
適用)。
贈与等時課税制度の適用後に、2016年1月1日以後に遺産分割等の事由により非居住者に移転した対
象資産について当初申告と異なることとなった場合には、事由が生じた日から4月以内に修正申告義務
を負い、又は更正の請求が認められることとなります。
国外転出時等において、国外転出時課税制度又は贈与等時課税制度の適用を受けていない者が、
2016年1月1日以後に帰国等をした場合は、(対象資産の取得価額について)国外転出時等の価額をも
って取得したものとみなす措置等は適用されません。
国外転出時課税制度で納税猶予の適用を受けている者が、国外転出後に有価証券等の譲渡をした場
合(2016年1月1日以後の譲渡等に限る)には、①納税猶予の適用を受けていない有価証券、②納税猶
予を受けている有価証券のうち先に取得した有価証券、の順で譲渡したものと取り扱われます。
NISA口座を開設している居住者等が出国により当該口座を廃止し、NISA口座の上場株式等が国外転
出時課税の対象となる場合で確定申告までに納税管理人の届出を行っていないときは、出国日の3月
前の日の価額により譲渡し、かつ再取得したものとして譲渡所得等の非課税措置を適用することとされ
ます。
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Japan Tax Update
(2)その他
① 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる上場株式等の範囲に、国外転出時
課税制度の適用により、譲渡を行ったものとみなされた上場株式等が加えられます。
②
外国親法人等から付与されたストックオプション等の経済的利益の供与に係る調書記載の対象者に、
以下の者が加えられます。
・外国法人の子会社である内国法人等の役員又は使用人であった居住者
・外国法人の子会社である内国法人等の役員又は使用人である非居住者で、国内源泉所得となる
経済的利益の供与等を受けた者
③
2016 年1月1日以後に受けるべき通勤手当についての非課税限度額が、月15万円(現行10万円)に引
き上げられます。
④
下の適用期限が2年延長されます。
・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等
・特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等
11. 納税環境整備
(1)
①
加算税・延滞税等の見直し
現行の加算税(過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税)の規定では、修正申告の提出又は、
源泉所得税の納付が、その申告等に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更
正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用されない又は5%に軽減されます。(通則法65
⑤、66⑤、67②)。改正により、過少申告加算税、無申告加算税について、調査の事前通知から更正予
知までの間に提出された修正申告又は期限後申告の加算税及び延滞金が見直されます。
事前通知等前
申告・納付
事前通知等後
調査開始後
更正予知前申告・納付
更正予知後申告・納
現行
改正案(注)
過少申告加算税
0%
0%
無申告加算税
5%
5%
不納付加算税
5%
5%
付
5%、10%
10%、15%
10%、15%
15%、20%
10%
(注)調査対象を区分する場合(事前通知での納税者の同意により移転価格調査を区分する場合、一部の連結子法人について調査
対象としない場合)で、調査対象とならない部分に係る修正申告、他の税目における更正の請求に基づく減額更正に伴い、調査対象
税目において必要となる修正申告等、相続税又は贈与税について、遺産分割確定等で任意に行う修正申告等は対象とされない。
上記の改正は、2017 年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税及び地方税について適用されます。
② 更正予知後に、期限後申告又は仮装・隠蔽に基づく修正申告を行った者並びに更正・決定を受けた
者が、過去 5 年以内に更正予知による無申告加算税又は重加算税を賦課されていた場合は、無申告
加算税(15%、 20%)、又は重加算税(35%、40%))を 10%加重する措置が講じられます。
上記の改正は、2017 年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税及び地方税について適用されます。
③ 相続税に係る平成 26 年 12 月 12 日の最高裁判決( 延滞税納付債務不存在確認等請求事件、平成
25(行ヒ)449)を受けて、申告後に減額更正が行われ、その後更に増額更正又は修正申告があった場合
の延滞税について、下記の通り見直しが行われます。

増額更正等により納付すべき税額について、その申告により納付すべき税額(減額更正前に納付され
た部分に限る)の納付日から増額更正等までの間は、延滞税を課さない(2017 年1月1日以後の期間に
対応する延滞税、延滞金について適用)。
PwC
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
増額更正等により納付すべき税額(その期限内申告があった場合に申告税額に達するまでの金額に限
る)については、加算税を課さないことを明確化(2017 年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税
及び地方税について適用)。
(2) 納税義務等の見直し
① 法人の分割又合併(分割等)の無効判決が確定した場合には、分割等をした法人は、分割等の日後に
納税義務の成立した国税・地方税について、連帯納付義務を負うこととされます。
上記の改正は、2017 年1月1日以後に行われる分割等について適用されます。
②



事業を譲り受けた者の第二次納税義務について、以下の見直しが行われます。
第二次納税義務の対象となる者は、納税者と生計を一にする親族等又は特定支配関係同族会社
(一株主グループの所有株式数が会社の発行済株式数の 50%超の会社)に限る。
事業の譲受人が同一とみられる場所において事業を営んでいることの要件を廃止。
第二次納税義務は譲受財産の価額を限度とする。
上記の改正は、2017 年1月1日以後に事業を譲り受け、当該事業について滞納となった国税・地方税につい
て適用されます。
PwC
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