5 kW,64 ns 大電力高速パルス・ブースタの シミュレーション設計

LTspice
はどこまで
使える?
定番マルチバイブレータ IC と
ブレッドボードで誰でも簡単製作!
5 kW,64 ns!
大電力高速パルス・ブースタの
シミュレーション設計
大塚 康二
Ohtsuka Kohji
Tr1
1μ
33Ω
147Ω
Tr2
D1
15Ω
Tr3
電流
モニタ
1m
Tr3:2N2905AまたはBCW68Fまたは2N3906×2並列
D1:PRLL5817(NXP)または11EQS03L(日本インター)
60Ω
28200μ
4.7Ω
1S10
22n
47Ω
ダミー負荷
PSMN1R
530BLE
0.47Ω
(NXP)
IPA030N
1S10
10N3
(インフィ
ニオン)
1μ
Tr5
100Ω
15Ω
4.7Ω
4.7Ω
Tr4
0.33n 1μ
14
1CX
13
1
1A 1Q
GND
IC1
8 パルス・ジェネ
CD74HC
レータをつなぐ
123E
Tr1:2N3019または2N3904×3並列
Tr2:2N2905Aまたは2N3906×3並列
DC15V
(リチウム・イオン蓄電池
3.7V×4セルの4値)
4.7Ω
内部
トリガ
300Ω
トリガ
入力
47p
1k
16
2
1B VCC
3
1R
15
1RX CX
1k
5k
100μ
100p
0.1μ
3k
7805
5V
電源
レギュ
レータ
680μ
単安定マルチバイブレータIC
可変電源
0∼100V
1μ
共通グラウンド
(a)回路(最終)
図 1 フリーの無制限電子回路シミュレータ LTspice を利用して
大電力高速パルス・ブースタ(5 kW,64 ns)の設計に成功!
● SPICE シミュレータは高速パルス発生回路の設計
にどこまで使える?
広く利用されている電子回路シミュレータ SPICE
は,超短パルス波形の詳細まで解析できると期待する
のは無理と言うべきです.SPICE は,半導体物理で
起こる現象を等価回路やカーブ・フィッテングなどで
つじつま合わせをしているからです.
私はこれまで,高速過渡特性の解析には,SPICE
シミュレーションは現実との乖離が大きすぎて役に立
たないと決めつけていました.ところが,50 ns 程度
までの短パルス回路であれば使えることが分かったの
でここに紹介します.
私は, 無 制 限 で フ リ ーの電子回路シミュレータ
LTspice とその標準モデルを利用して「64 ns,5 kW
の高出力パルス・ジェネレータ」を設計しました.さ
らに入手しやすい半導体素子に置き換えてより特性改
善した回路開発に成功しました.その完成した回路を
図 1 に,仕様を表 1 に示します.写真 1 はブレッドボ
ードに組み立てたところです.
2015 年 12 月号
1CX
1 1A
2 1B
14
1CX
1RX
15
1RX CX
ワンショット・パルスを発生する
単安定マルチバイブレータ1
VCC
1Q 13
1Q 4
3 1R
11 2R
9 2A
10 2B
ワンショット・パルスを発生する
単安定マルチバイブレータ2
2CX
6
2RX CX
7
2Q 5
2Q 12
VCC
2RX
2CX
(b)CD74HCT123Eの内部ブロック(大電力高速パルス・
ブースタに使用したワンショット・パルス信号発生用IC)
50 ns ぐらいまでのパルス回路なら
SPICE は設計に使える
● 例題回路の説明
図 2 に示す回路を例にして,SPICE シミュレータが
高速パルス発生回路の設計に利用できるかどうかを検
証しました.実際とシミュレーションが一致すれば,
労力と時間を大幅に節約できます.使用したシミュレ
ータは LTspice です.
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