オーディオブック主要企業の戦略を考える。 3 年は様子見が無難の様子 2015 年 12 月 24 日 日本オーディオブック制作社協会 2015 年は日本におけるオーディオブックの歴史において、多くの出来事があったと思い ます。結果としては参入見送りになったと思われますが、楽天が市場に興味を少しだけ抱い たこと、オトバンクが主導して出版社との連絡会を作った日本オーディオブック協議会、 Amazon が海外で展開しているサービスを輸入してきたオーディブルのサービス開始です。 楽天については、電子書籍の時のようになりふり構わぬ市場開拓策を取る様子は微塵も 見られず、楽天は市場性が無い事を見極めて、見送った可能性が高いです。オーディオブッ ク業界で言われるマラケシュ条約や TPP が反映された著作権法で市場がどう動くかを判断 するのも決して遅くないと思います。 オトバンクが手を打った日本オーディオブック協議会ですが、正直活動しているのかも 不透明なので、何とも言えません。情報発信が出来るほどの成果をまだ挙げられていないと 考えるのが無難だと思います。全ての出版社が参加した際には有意義な議論も出来ると考 えますが、今の所は大手出版社の参加が目立つばかりで、他の出版社は様子を見ている状態 だと思います。日本オーディオブック協議会も著作権法改正後にどう動くかが気になる所 だと思います。 Amazon については、他でも書いていますが、やる気はあるが、成果が全く出ていないと いう感じだと思います。ソーシャルメディアでもアフィリエイトや自演の呟きみたいなの が多く、利用者が 100 人台でも驚かない状態です。オーディオブックと互換性が高いラジ オがスマートフォン向けアプリ Radiko などで利用者が伸びていて、オーディブルが伸びな いというのは何かが違うから伸びないのだと思います。一つは有料である事。これは、コン テンツ事業社としては、お金を取らないと収益が上げられないので譲れない事項ですが、正 直 Amazon が利益を取り過ぎていると思うので、Amazon の利益を減らしてでもサービス の価格を下げるべきだと思います。海外は 15 ドルで提供されていますが、今のサービスだ と割高で利用したいと思う人はいないでしょう。Amazon Prime Video の価格がベンチマ ークだろうと思います。 二つ目はコンテンツの質です。Amazon の担当がラジオで 10000 コンテンツあると言っ ていましたが、その中で質の高いコンテンツが幾らあるかです。正直、素人の朗読に金を払 うかと言われれば、そんな希有な人は少ないでしょう。Amazon の戦略としては、売れてい る声優や役者は起用せず、売れていないけど実力のある朗読者を積極的に起用し、第二の市 場を作るという話をしていましたが、朗読者も売れたら第一の市場に移るでしょうし、オー ディブルが声優事務所と組んで、学生で声優を目指す人のオーディションに協賛していた 1 りしますが、役者を目指す人で売れたくないという人もいないと思うので、微妙な戦略とい うか、考えだと思います。Amazon 専属で朗読者を付けるなら分かりますが、そこまでリス クを負う考えは持ち合わせてないみたいなので、厳しいでしょう。 三つ目は真剣かどうかです。Amazon は頭が悪いので、著名人の起用=質の高いコンテン ツだと思っているみたいですが、著名人と朗読が上手いは別次元です。著名人を起用したこ とで、ファンが聞く可能性があるかも知れませんが、それは一過性のものなので、無料期間 に聞き終われば、サービス利用を終わらせると思います。日本の市場特性を全く理解出来て いないマーケティング担当しかいないみたいなので仕方ないですけど、赤字事業はとっと と撤退して頂いた方が、日本のオーディオブック市場としては有り難いとは思います。 オーディブルの厄介な点は、iTunes でオーディオブックの独占販売権を持っているので、 iTunes の流通を通すとなると、必ずオーディブルと契約をしなければならず、コンテンツ は自然と集まるはずでした。Apple が定額聞き放題の音楽サービスを全世界で展開した都 合で、オーディオブックの項目が重要度を落とされたことによって、一番流通網として期待 されていた iTunes は期待しない方が良いと言う事です。 最後に、日本のオーディオブックを広義の定義で括れば、ドラマ CD やラジオドラマのコ ンテンツがかなり膨大な数が眠っているのですが、日本における声優やナレーターなどの 声の商売をしている人達の権利がとても強く、再利用の場合は費用が発生するため、制作時 に包括契約をして、作っていた物しか現在は配信が出来ません。配信をしたい場合は、新規 ほどでは無いにしても、出演者に相応の費用が発生します。 一部、オーディブルで女性向けのコンテンツがありますが、法的に訴えたら恐らく負ける ものが紛れている可能性が高いです。 2016 年においては、コンテンツの充実よりも、業界の法律遵守やルールを作る事が最前 の普及策であると考えますが、オーディオブック業界は人材が豊富ではないので、現時点で はかなり厳しい状態であると考えます。 以上 2
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