有事のルール-:「多面化するファーイースト」 [迫りくる法改正の荒波-22]

有事のルール-:「多面化するファーイースト」 [迫りくる法改正の荒波-22]
●クリミア…南北…戊辰。それぞれ場所や背景、時期も異なるこの三つの戦争を
繋ぐ共通要素は、「生産技術の発展と余剰製品の在庫処理問題」であり、それこ
そが日本をファーイーストと化す根本要因の一つだった訳ですが、今日もなお
様々に形を変えながら、その構図は維持され続けている様に思われます。それを
端的に表現すれば、覇権主義的資本主義=株主資本主義=勢力による、福祉・
平等型資本主義社会の制圧、支配と言い換える事ができそうです。●一般に、こ
のような構図を存続させるには外圧だけでは足りず、身内に手引きし呼応する者
=いわゆる漢奸=が不可欠-とされており、この通説に従うと、思い当たる事案
が幾つか浮かんで参ります。例えば日本郵政・ゆうちょ・かんぽの上場でしょうか。
10年前、米国政府要望書の要求をそっくり受け入れて解散総選挙を行い、郵政民
営化の先鞭をつけた「小泉-竹中」コンビが、そもそも意図していた郵政3社の全
株式売却の第一弾が愈々始まった、という見方もある今回の措置。極論すれば、
日本郵政が一般事業会社(民営)化すると、様々なルートを使って株を入手し、筆
頭株主の座を得た米国(物言う株主)が総会を支配する‥その結果、郵貯の資産
(当時のレートで約350兆円と云われた日本国民の財産)は、利回りの低い国債か
ら米国債購入に充てられ、トドのつまり米国に移し替えられる-。今の処、その段
階には至っていない様ですが、事実上それに準ずる動きは出てきています。●日
銀による大規模な国債買入れの煽りを受け、資金の運用先として米国債の保有
高を増やさざるを得ないゆうちょやかんぽ。そして運用先比率を大幅に見直し、国
内債券を60%から30%に引下げる一方、外債に振り向ける比率を11%から15%
に引上げたGPIF=私達の年金資産を管理する機関=の方針転換。これらを図式
化すると、次の様になりそうです。①GPIFの方針転換→国債の大量放出→日銀
による引き受け→それを元手とするGPIFによる外債(米国債)購入②日銀による
国債の大量購入→国債利率の大幅低下→「ゆうちょやかんぽ」の資産運用先変
更(米国債購入)。日銀の国債購入は、本来、市中金融機関に資金=円貨=を大
量に供給し、それが事業活動に回る事で緩やかなインフレを生じさせ、デフレから
脱却する起爆剤にしようという、国内景気回復策の一環として唱えられた理屈=イ
ンフレターゲット論=で、これが機能すれば2%成長は確実に達成される-と、メ
ディアで繰り返し流され、俗にいう異次元緩和も度々行われたのですが、今ではヨ
イショしたマスコミすら、このカンフル剤の効き目について、後ろ向きの論調を展開
し始めている有様。●デフレ脱却のシナリオ自体が狂言(実際は米国への上納
金)ではなかったのか-。図式の様に、供給された資金は米国債の購入に充てら
れている、又はそう解釈せざるを得ない状況になっています。国内景気の回復の
為の資金が、米国経済を支える原資として利用されている、というべきでしょうか。
幕末に極めて偏った交換レートによる商取引で金銀を吸い取られたのと同様、国
民の財産は結局米国の手に-という構図は今も歴然とあるのではないか-という
疑問が拭えません。●一方、法人税減税と消費税増税の動きからは、当局の明
治以来変わらぬ姿勢が窺えます。近代国家成立の礎である徴税権を各藩から取
り上げ、中央政府が掌握する為実施された廃藩置県。それでも明治の租税は地
租(年貢)であり、納税者は農民という構図。折からの士族による反乱=西南戦争
=に専念すべく、大口納税者たる農民反乱予防策として政府が行った減税(78年
地租改正)は、結局国家財政の疲弊を招きます。財界を慮り、法人税減税を断行
しようとする現政府は、何より歴史に学ぶべき筈なのですが-。