NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 系統の異なるシオミズツボワムシの形態および増殖適温 Author(s) 伊藤, 史郎; 坂本, 久; 堀, 正和; 平山, 和次 Citation 長崎大学水産学部研究報告, v.51, pp.9-16; 1981 Issue Date 1981-08 URL http://hdl.handle.net/10069/30506 Right This document is downloaded at: 2015-12-29T15:45:54Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 長 崎 大 学 水 産 学部 研 究 報 告 9 第51号9∼16(1981) 系 統 の異 な る シ オ ミズツ ボ ワム シ の形 態 お よび増 殖 適 温 伊 藤 堀 Morphological the Growth 史 郎*・ 坂 本 正 和 ・平 山 Characteristics of Several Shiro ITO, and of the Rotifer, lorica width, Kazutsugu Temperature Brachionus from various places were morpholog- 3 parts of lorica: Lorica length, maximal lorica width and minimal Suitable temperature was judged by the values of two indices: were cultured separately in many test tubes each containing to obtain Net reproduction time of observation. for the growth rate Many first-laid intervals (marine type of Chlorella sp. ; 277 × 104 cells/ml) (1~3 by Birch's computational and eggs and were times/day), was renewed at every From the data of survival rate and fecundity thus obtained, of two indices were calculated (R0) two or three individuals the survival rate and fecundity at a regular while food suspension plicatilis HORI intrinsic rate of population increase (r) obtained at various temperatures. observed for HIRAYAMA at the growth stage of biological minimum. of each strains 次 SAKAMOTO , Masakazu Ten strains of the rotifer, Brachionus plicatilis collected ically studied by measuring 和 and Suitable Strains Hisashi 久** the values method. Results obtained are as follows. The strains used in this studies can be divided into two groups, according to Ogami. shape of occiput Even in the strains belonging spines differ slightly with different strains. considered as the intermediate so-called L- and S-types, to the same group, however, the size and There are some strains to be form between two types. On the basis of the values of Ro and r, the suitable temperature for the growth of the strains belonging to S-type is estimated as around 30°C, and the upper limit of temperature for the growth may be over 35°C. For the strains of L-type, relatively low temperature is suitable compared with S-type, and they can grow even at 16°C. These facts support Ogami's results that the strains of S-type is adaptable to higher temperature in the strains belonging to the same type, than those of L-type. the suitable temperature But, even for the growth is somewhat different. 下ワ ダイ を初 め多 くの 有 用 魚類 の 種苗 生産 用 初 期 餌 料 と し ム シ と略)は 大 き さや形 態 が 稚仔 魚 の餌 料 と して適 当 て 不 可欠 な もの で あ る.一 方,稚 仔 魚 の 摂 取 し うる餌 で あ る うえ,短 期 間 に大 量 生 産 が 可能 な こ とか ら,マ 料 生物 の大 き さの範 囲 は,そ の 口径 に よ って 定 ま る の シオ ミズ ツ ボ ワム シBrachionus plicatilis(以 *現 所 属:佐 賀 県東 松 浦 郡 鎮 西 町 名 護 屋,佐 賀県 栽 培 漁 業 セ ンタ ー **現 所 属:高 松市 尾 島 東 町 字 間 家75-5,香 川県水産試験場 10 伊藤・坂本・堀・平山:シオミズツボワムシの形態と増殖適温 で(代田,1970),ワムシの大きさの変異は,その増 ムシが形成した耐久卵を,日野明徳氏(東京大学農学 殖生理とともに,種苗生産上の大きな検討課題である 部)より分譲され研究室にて艀化させたもの. と云いうる. 〔玉野〕:1978年4月瀬戸内海栽培漁業協会玉野事 現在,ワムシの大量培養は主として屋外の大型培養 業所にて大量培養中のワムシの中から安田公昭氏(宮 槽で実施されており,季節によって,単一系統群のワ 崎大学農学部)により採取され,分譲. ムシでも,その体長組成に変化が生じ,高水瞬時には 〔大矢野〕:1978年4月熊本県水産試験場大矢野支 体長は小さく,逆に低水立時には大きくなる傾向があ 場より分譲. ることが報告されている(福所・岩本,1978). 〔伊豆L,伊豆S〕:1978年10月静岡県水産試験場 ワムシの形態変異についてはRylov(1935) によ 伊豆分場にて大量培養中のワムシの中から大上皓久氏 って2変種にわけて記載されており,それぞれ被甲の (静岡県水産試験場)によって採取され,分譲.大上 形態から長型 (Verlangerte Form),広型(Breite Form)と名付げられている.一方,日本各地で培養 (1976)によってそれぞれL型,S型と仮称されたも の. されているワムシについても大きさにかなりの変異が 〔Salton〕:米国, Cali fornia, Salton Seaより採 あり,大型のものを生ずる系統と小型のものを生ずる 取され,1978年11月,W. T. Yang氏(The Univer− 系統が存在することが報告されている(日野・平野, sity of Texas Medical Branch)より分譲. 1973).さらに,大上(1976)は静岡県水産試験場伊 〔McKay〕:1980年4月米国, Florida, McKay 豆分場のワムシについて,被甲の大きさ,形態が明ら Bayより採取され, T. W. Snell氏(The Univer− かに異なる2つのタイプの存在を認め,大型のものを sity of Tampa)より分譲. L型,小型のものをS型と仮称して区別している。さ 〔協和〕:大分マリンバレスより協和発酵KKに分 らに,大上(1977)によると,250C以上の高水温で 与され,長期間にわたり油脂酵母(同KK製)で飼育 はS型がL型を上まわる幽間増殖率を示し,逆に低水 されていたので,油脂酵母によく適応していると考え 温々ではし型の下間増殖率がS型のそれよりも高くな られるもの,1980年10月分譲. り,これらの2っのタイプは増殖に好適な温度にも著 〔甑〕:1978年5月鹿児島県上甑島貝池にて松山通 しい違いがあるとしている. 郎氏(長崎大学水産学部)により採取され,分譲. 以上のことから,L型ワムシとS型ワムシとでは明 被甲の形態の測定はこれら10系統について行ない, らかに異なった生理特性をもっていると考えられる. 増殖と温度との関係を求める実験は 〔伊豆L〕, しかし,同型のワムシでも生息域によって環境条件に 〔Salton〕, 〔協和〕, 〔甑〕の4系統について行な も違いがあることから,系統によって形態や生理特性 った.なお〔長崎〕については,ほぼ同様の実験方法 に違いがあると考えられる.そこで本研究ではこの点 でH:irayama and Kusano (1972)によりすでに求 に着目し各地より入手した多くの系統について,被甲 められているのでこの結果を引用した. の形態の比較を行ない,さらにこれらのうちの数系統 形態の比較 について増殖と温度との関係を求め,各系統の増殖適 各系統のワムシについてクPレラを十分与えて抱卵 温について検討したのでここに報告する. させ,多数の卵を採取し,その内で艀化直前と思われ る単為生殖卵を選び,この卵が艀化して最初に卵をつ 材料及び方法 けたとき被甲の形態測定を行なった.すなわち,クロ 実験に用いたワムシは各地より入手後,1個体から し,それにえられた悪化直前の単為生殖卵を数個ずつ 単為生殖を重ねて増殖させ,単一系統の群としたもの 入れて,室温23QCで飼育し,このワムシ卵が艀化し で,予備培養は煮沸済海水中で海産Chlorella sp.(以 て生物学的最小形(最初の卵をつけた時)となったと レラ懸濁液(150×104ce11s/ml)を試験管多数に分注 下,クロレラと略)を投与し230Cで行なった.投算 き天丼の形態の測定を行なった.測定部位は甲長,最 したクロレラは一部組成を改変したErd−schreiber型 大甲巾,最小甲巾の3ケ所である.Fig,1には〔長崎〕 培養液を用いて通気培養した. と〔甑〕の2系統について被甲の典型的な形態と測定 それぞれのワムシの入手日,「入手経路は次に示す通 りである.各系統は産地に基く略号で示した. 部位を示した. 測定は各系統それぞれ20個体ずつ, 20∼30%ホルマリン液で固定した後,24時間以内に光 〔長崎〕:1969年長崎県水産試験場より分譲,以後 学顕微鏡下でミクロメーターを使用して行なった. 実験室にて累代飼育を続けてきたもの. 増殖と温度との関係 〔浜名〕:1978年4月静岡県浜名湖で採取されたワ 増殖適温は次の操作でえられた指標値を比較するこ 11 長崎大学水産学部研究報告 第51号(1981) Max. lorica width Min.[oricawidth £2Φ剛巴℃2 Nagasaki Koshiki Fig. 1. Typical shape of lorica of two strains of the rotifer, tt Nagasaki” and tt Koxhiki” and lorica parts measured for morphological comparison. とによって求めた.すなわち,所定の温度でワムシを ずつ収容し,一定時間おきに初産卵から艀化した親虫 個別に多数飼育し,一定時間おきにそのワムシの生死 の生死,親電がつけている加数,仔虫数,親虫から分 および前回の観察以後に出産された卵数を調べ,飼育 離した卵数を記録し,その際に親虫のみそれがつけて 経過に伴う生残率の推移および1個体当りの平均産卵 いる卵とともに新しい海産Chlore11a懸濁液に移しか 数の推移を求めた.これらの観察結果(生残率と産卵 えるという操作を全親虫が死亡するまで繰返すことに 数)からBirch(1948)の方法により純繁殖率(Net よって行なった. reproduction rate:Ro)および内的自然増加率(ln− それぞれの系統について各温度でこのような操作を trinsic rate of population increase:r)を求め,増 行なったが,その1例として〔甑〕について観察ごと 殖に関する指標値とした.純繁殖率とは親虫一個体が の生残率,産卵数の推移を示すと,Fig.2, Fig.3, 一生の間に産む平均総産卵数を示し,内的自然増加率 のようになる.なお観察は23。C以下では,24時間お ・とは個体群の齢構成が安定しており環境が制限的でな き,25。Cから280Cまでは12時間おき,30。C以上 い場合,Nを個体数, tを時間としたときの増殖を示 では8時間おきに行なった.また,実験期間中,両性 す関係式dN/dt=rNのrとして表わされる. rの値 生殖は認められれかった. が高いほどその個体群は単位時間に増殖する割合が大 きいことを示している. 結 果 実験は活力のあるワムシ群がら得られた初産卵を用 いた.すなわち,多数のワムシを実験開始1週間前よ 被甲の形態 り所定の温度で餌料のクロレラを十分与えて飼育し, 後頭棘の形状:S型はL型に比べて6本の後頭棘が 多数の個体が抱卵したとき,この卵を採取し,そのう いずれも鋭角的であるとの大上(1976)の報告に基い ち8時間から24時間以内に艀化した活力のある仔虫を て分類を行なった結果, 〔浜名〕, 〔玉野〕, 〔大 クロレラ懸濁液(277×104cells/ml)を分注した試験 矢野〕, 〔伊豆L〕, 〔長崎〕の5系統が:L型に, 管多数に2∼3個体ずつ収容した.これらのワムシの 〔Salton〕 〔McKay〕,〔協和〕, 〔伊豆S〕, 〔甑〕 成熟をまち,初めてつけた卵を多数採取し,その中か の5系統がS型に属することがわかった.L型系統の ら贈化直前と思われるものを選び実験に用いた. うち〔浜名〕は6本の棘の先端が幾分鋭くなっている 実験はクロレラ懸濁液(277×104cells/m1)を数mI 点が他の4系統と違っていた.S型系統では, 〔協 ずつ分注した試験管多数にこれらの初産卵を2∼3個 和〕,〔Salton〕,〔McKay〕の3系統が〔伊豆S〕よ 12 90 ︵。、。︶増6﹂一 80 70 へ ix 100 魯 脳駄 伊藤・坂本・堀・平山:シオミズツボワムシの形態と増殖適温 60 鳶ジ >O 50 \忌 ○ ∩︶ ムマ ︵﹂ 噂σ﹀ちの ・壽, 窟◇ 翼 20 10 秘 IASOA一・N.. ’i VVoo.oo. AAA o 2 4 6 8 10 ag 12 14 Cutture period in days Fig. 2, Survivorship o f {C Koshiki” strain o f the roti fer cultured at various temperatures. 資 丈 被 儀 ︵器∈でσ.祈N=oO9︶者で5り£ つの 糖猷 ジ b・v’%. △礼緊 o 2 . ◇ひ 褒σ 4 6 8 10 12 Cutture period in days Fig. 3. Fecundity of tt Koshiki” strain of the rotifer cultured at various temperatures. 14 13 長崎大学水産学部研究報告 第51号(1981) e9 十 ‘も旧≧頓5り[﹂〇一.X而Σ、‘も葦8℃2ご順Σ● , 150 £O⊂り一σり旧﹂O﹂、£で一︾︾6り旧﹂2茶∼Σ◎ O 200 8 7 ハり ・ e 計 ∼ O十 ÷ g ●こ 、 £O⊂望 ゐO Q O O ÷ ポ 1+恥/ soo ︶ んO 十 両鋤 ︵ 鋤 50 裡τ T Hamana Tamano l zu L Oyano Nagasaki Salton McKay I zu S Kyowa Koshiki Fig. 4. Morphological characteristics in lorica of ten strains of the roti fer. りも6本の棘が著しく鋭角であり,特に〔協和〕は両 ついて各温度でえられた純繁殖率と内的自然増加率と 端の2本の棘が他のS型に比べ長く尖っていた. の関係はFig.7に示した. 被甲の形状:各系統の甲長,最大甲巾に対する最小 Fig.5にみられるように各系統の純繁殖率の最高値 甲巾の割合, および甲長に対する最大甲巾の割合は は〔長崎〕では16。Cのとき16.4, 〔伊豆L〕では Fig.4に示した.甲長の大きいものから順に配列す 20。Cのとき24.9, 〔甑〕では28。Cのとき24.2, ると〔浜名〕〉〔玉野〕〉〔伊豆L〕〉〔大矢野〕〉 〔協和〕と 〔Salton〕とは共に33。Cのとき22.7と 〔長崎〕〉〔McKay〕〉〔Salton〕〉〔協和〕〉〔伊 23.9であった. 〔甑〕,〔Salton〕, 〔協和〕の3系統 豆S〕〉〔甑〕となった.最大甲巾に対する最小甲巾 は高温で高い値を示し,特に〔協和〕と〔Salton〕と の割合は〔浜名〕≒・〔伊豆L〕÷〔大矢野〕÷〔長崎〕 は共に350C,37。Cの高温でも高い値が得られた. 〉〔McKay〕÷〔協和〕〉〔Salton〕〉〔伊豆S〕〉 Fig.6より各系統の内的自然増加率の最高値は, 〔甑〕となり,L型5系統ではほとんど差がなく高い 〔長崎〕では27QCのとき0.91/日,〔伊豆L〕では 値を示し,S型5系統では系統間の差は見られるもの 280Cのとき1.60/日, 〔甑〕では35。Cのとき2.16 の,L型に比べると明らかに低い値を示している. /日, 〔協和〕では35。Cのとき2.98/日,〔Salton〕 甲長に対する最大甲巾の割合は,値の小さなものか では33。Cのとき3.00/日が得られた. ら配列すると〔伊豆L〕<〔浜名〕÷〔長崎〕<〔玉 Fig.7より,〔伊豆L〕, 〔甑〕, 〔協和〕,〔Sal− 野〕<〔伊豆S〕<〔大矢野〕<〔Salton〕<〔Mc− ton〕の4系統について純繁殖率の最高値はそれぞれ Kay〕<〔協和〕<〔甑〕となり,甲長の小さいもの 22。7∼25.0の値であったが,そのときの内的自然増加 ほど値が大きくなる傾向が見られた. 率の値は著しく異なり, 〔伊豆L〕では0.77/日, 増殖と温度との関係 〔甑〕では1.43/日,〔協和〕では2.16/日,〔Salton〕 生残率と1個体当り産卵数:とから算出された各系統 では2.72/日であった.一方,〔長崎〕は純繁殖率の の純繁殖率および内的自然増加率と温度との関係は 最高値16.4のとき内的自然増加率は0.40/日であった. Fig,5, Fig.6にそれぞれ示し,さらに個々の系統に 14 伊藤・坂本・堀・平山:シオミズツボワムシの形態と増殖適温 25 ii>一一一e IzuL一 20 姻》Ky。wa オ e e Salton ig e e 15 堰p’ ノ︶2匹仁£りコ℃9Ω三冠Z (。 nKoshi .x Nagasaki 10 e 5 e ● 0 10 15 20 25 30 35. 40 τセmp¢rature PC) Fig.5. Relation betWeen net reproduction rate(Ro)and water temperature in 5 strains of the rotifer. 0 sattonft)/1 4 Kyowa e e e e Koshiki o ズ IzuL e ハ Mgasaki e 占10 旧い ε﹂↑5 E8b仁≡£﹄&oα︸0り2 歪 j。 3 2 1 (」 ”M 15 20 25 30 35 Te mpe rature (PC ) Fig. 6. Relation between intrinsic rate o f population increase (r) and water temperature in 5 strains o f the roti fer 40 15 長崎大学水産学部研究報告 第51号(1981) Nagasaki 20e Kyowa Salton Koshiki lzu L 3st 31: 2se 330”310 3 1ぴ 2so 1〔デ 2se 2プ 5 23 22e 25t 2。 ぎ 3 0 6〆37 2ttev 33e 才 ソ︶2歪⊂£りコBヒΦち ﹂Z (。 20 5 0 25 23e 330 2d 2s1 2損 3se 5 37e 31e 3so 2 3T 1 ◎。 Rぴ 17Te e40e 20e koe O 1 2 3 0 1 2 30 12 30 12 30 1 2 3 1ntrinsic rate of poputation increase(r) Fig. 7. Relation between net reproduction rate (Ro) and intrinsic rate of population increase (r) in 5 strains o f the rotier. 考察及び結論 ークに達するまでの日数等,一生を通じての産卵の経 本実験に用いたワムシの各系統は大上(1976)の報 殖率でも内的自然増加率の大きい系統は艀化後すみや 告に基づいて,後頭棘の形状,大きさ,体型から大き かに産卵に参加し,一生の早い時期に集中的に産卵す く2つ(L型,S型)に分けることができた・しか る傾向のあることを示している. し,同型と思われるものでも,後頭棘の形状,被告の 謝辞:終りに,本研究を行なうにあたり本文に記載し 過が系統によって異なっていることを示し,同じ純繁 大きさ,体型には明らかに違いがあり,特にS型の体 たワムシを提供していただいた各研究機関,研究者の 型についてはL型とS型の中間型に近いと考えられる 皆様に感謝致します. 系統が存在するこ.とがわかった. 引 用 文 献 ワムシの増殖に好適な水温を内的自然増加率と純繁 殖率の値とから判断すると,全般的にS型と考えられ る系統では両指標値の最高値が28。C以上の高温でえ Birch, L. C. (1948). The intrinsic rate of natural られることから,この系統は30。C付近に増殖に好適 increase of an insect population. 」. Animal Ecol. な温度があり,35。Cでも十分増殖が可能であろうと 17, 15−26. 考えられる.しかし,20。C以下では両指標値が著し 福川邦彦・岩本浩(1980).シオミズツボワムシの く低くなることから20。C以下の低温はその増殖に適 大きさの季節変化.養殖研究所研究報告,1,29− していないと考えられる.一方L型と考えられる系統 37. は,S型押高温に適応しえず,20。C∼25 QC付近が増 日野明徳・平野礼次郎(1973).シオミズツボワムシ 殖適温と考えられる.しかし,S型と比べより低温で の大きさの変異について.昭和48年度日水会春季大 も増殖することが可能で,i6。C以下でも産卵をする 会講演要旨集.p.73. ことができる.このように,大上(1977)がS型が高 Hirayama, K. and Kusano, T. (1972). Funda− 温に適応しており,L型は低温に適応しているとした mental studies on physiology of roti fer for its 事実をうらづける結果がえられたが,同型のワムシで mass culture一 ll . lnfluence o f water temparature も,その系統によって,増殖の好適温度が幾分異なる on population growth o f rotifer. Bull. Japn. Soc. こともわかった. Sci. Fish., 38(12). 1357−1363. Fig.7に示すように,各系統によって両指標値の関 大上皓久(1976).シオミズツボワムシの形態につい 係は異なり,同じ純繁殖率を示す場合でもその内的自 て.伊豆分場だより,184,2−5. 然増加率は系統によって大きく異なっている.このこ 大上皓久(1977):シオミズボワムシの摂餌量および とは,艀化後,産卵を開始するまでの日数,産卵のピ 増殖率と培養温度との関係.伊豆分場だより,187, 16 伊藤・坂本・堀・平山:シオミズツボワムシの形態と増殖適温 2−5. Verlagsbuchhandlung, Stuttgart, 63−64. Rylov, W. M. (1935). tCBinnengewasser” (ed. by 代田昭彦(1970).魚類稚仔期の口径に関する研究 A. Thienemapn), 15, E. Schweizerbart’sche 日水誌,36(4).353−368.
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