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Japan Tax Update
2015 年度税制改正速報
Issue 108, January 2015
In brief
自由民主党・公明党両党は、2014年12月30日に、平成27年度税制改正大綱(以下「2015年度税制改正大
綱」)を決定しました。2015年4月1日以後に開始する事業年度よりの法人実効税率の引下げと、その代替財源
を確保するための、外形標準課税の強化・繰越欠損金制度の見直し・受取配当の課税強化の措置が手当さ
れています。また、OECD(経済協力開発機構)によるBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益
移転)プロジェクトを踏まえた国際課税の見直し等も踏まえた改正が盛り込まれています。今後は、改正法案
が2015年1月に開催が予定される国会に提出され、2015年度税制改正の内容が確定することになります。な
お、今後の審議等の状況によっては、内容に変更がある可能性がありますのでご留意ください。
In detail
自由民主党・公明党両党は、2014年12月30日に、
2015年度税制改正大綱を決定しました。2015年度税
制改正大綱は、2014年12月27日に閣議決定された
「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を踏
まえたものとなっています。
以下では、2015年度税制改正大綱のうち、法人関連
の改正項目を中心に解説します。
1. 2015年度税制改正大綱の概要
2. 法人税改革関連
(1) 法人税率の引下げ
(2) 課税ベースの拡大
(3) 欠損金の繰越控除制度の見直し
(4) 受取配当等の益金不算入制度の見直し
(5) 租税特別措置の見直し
(6) 外形標準課税制度の見直し
3. その他の法人税関連
(1) ヘッジの有効性判定
(2) 連結納税の承認
(3) 換地処分等に伴い資産を取得した場合の
課税の特例とグループ法人税制
4. 地方創生関連
(1) 地方拠点強化税制の創設
5. 国際課税関連
(1) 外国子会社益金不算入制度の見直し
(2) 非居住者に係る金融口座情報の自動的交
換のための報告制度の整備
(3) 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対
策税制)
(4) 帰属主義への変更の円滑な実施
(5) クロスボーダーの組織再編成に係る適格性
判定の特例の見直し
6. 消費税関連
(1) 消費税率の引上げ
(2) 軽減税率の導入
(3) 国境を越えた役務の提供に対する消費税
の課税の見直し
(4) 国外事業者による芸能・スポーツ等の役務
の提供に係る消費税の課税方式の見直し
7. その他の間接税
(1) 登録免許税
(2) 不動産取得税
8. 個人所得税関連
(1) 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例
の創設
9. 納税環境整備
(1) 調査手続
(2) 期限後申告書が提出された場合
www.pwc.com/jp/tax
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1. 2015年度税制改正大綱の概要
2015年度税制改正大綱では、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにしていく必要から、企業収益の拡大が速やかに賃金上
昇や雇用拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益に結び付くという、経済の好循環を着実に実現
することを一番の重要課題として位置づけています。その観点から、法人税改革に着手し、一部の黒字企業に税負担が偏って
いる状況を是正して、広く負担を分かち合う構造へと改革することを掲げています。デフレ脱却・経済再生に向けた税制措置の
中核となる法人税改革では、2段階での法人実効税率の段階的引下げと課税ベース拡大が進められます。今後数年間で実効
税率を20%台に引き下げることが明記され、第1段階に当たる2015年度税制改正では、欠損金繰越控除の見直し、受取配当等
益金不算入の見直し、法人事業税の外形標準課税の拡大、租税特別措置の見直し等の大法人を中心とする改革が盛り込ま
れています。中小法人課税、公益法人課税については、引き続き検討を行うとして改正が見送られました。
一方で東京への過度な集中を是正と地方創生のため、地方拠点強化税制の創設が盛り込まれています。
社会保障・税一体改革に関連して、経済再生と財政健全化を両立するため、消費税率10%への引上げ時期を2017年4月1日と
し、同時期の消費税の軽減税率制度導入を目指して具体的な検討を進めることとしています。
国境を越えた取引等に係る課税の国際的調和に向けた取組みとしては、BEPSプロジェクトの議論を踏まえ、国際的な租税回避
を防止し適正な課税を確保するため、損金算入配当の外国子会社配当益金不算入制度の不適用、出国時における株式等に
係る未実現のキャピタルゲインに対する譲渡所得課税の特例の創設、非居住者の金融口座情報の報告制度の導入等が措置
されています。国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税は、2015年10月1日以後の取引について適用されます。
2. 法人税改革関連
(1) 法人税率の引下げ
2015 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から、法人税率(表面税率)が普通法人(大法人)について、現行の 25.5%から
23.9%に引き下げられます。また、外形標準課税の現行の所得割 7.2%が 2015 年 4 月 1 日から 2016 年 3 月 31 日までに開始
する事業年度は 6.0%、2016 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度は 4.8%に引き下げられます。この結果、外形標準課税適用
法人について、法人実効税率は現行の 34.62%(東京都 35.64%)から 2015 年度は 2.51%、2016 年度は 3.29%引き下げられます。
なお、中小法人等については、現行の軽減税率の特例(所得の金額のうち年 800 万円以下の部分に対する税率 15%)が 2017
年 3 月 31 日まで延長されます。
2015 年度税制改正大綱では、「今後数年間で実効税率を 20%台に引き下げる」という目標は明記されましたが、具体的な実効
税率引下げのプロセスについては言及されていません。
現行
法人税率
改正後
実効税率
法人税率
特例による税率(注 3)
普通法人(大法人)
25.5%
-
中小法人等(注 2)
25.5%
15%, 19%, 22%,
特例による税率(注 4)
34.62%
35.64%(東京都)
法人税率×�1+地方法人税率+住民税率�+事業税率
(注 1) 実効税率算定式: (
1+事業税率
23.9%
-
23.9%
15%, 19%, 22%,
実効税率
2015 年度 32.11%
(東京都 33.10% 注 5)
2016 年度 31.33%
(東京都 32.34% 注 5)
) (事業税率には地方法人特別税が含まれる)
(注 2) 中小法人(普通法人のうち、期末の資本金の額等が1億円以下であるもの又は資本等を有しないもの(大法人の 100%子法人を除
く))、公益法人、協同組合、人格なき社団等をいう(以下同じ)
(注 3) 租税特別措置法により 2012 年 4 月 1 日から 2015 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度に適用される税率
(注 4) 租税特別措置法により 2015 年 4 月 1 日から 2017 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度に適用される税率
(注 5) 経済産業省資料
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(2) 課税ベースの拡大
課税ベースの拡大は大きく 2 段階に分けて実施されます。2015 年税制改正では、政府税制調査会が 2014 年 6 月に取りまと
めた「法人税の改革について」で提言された改革事項のうち、欠損金繰越控除の見直し、受取配当等益金不算入の見直し、法
人事業税の外形標準課税の拡大、租税特別措置の見直し等が盛り込まれました。一方で減価償却制度の定額法への一本化
や、中小法人等の課税制度、投資減税等の租税特別措置法については次年度以後の検討として、2015 年度での改正は見送
られました。
2015年度税制改正で対応
欠損金の繰越控除制度の見直し
2016年度以降に検討を見送り
中小法人、公益法人課税等の見直し
受取配当等の益金不算入制度の見直し
減価償却制度の見直し
地方法人課税の見直し
(法人事業税を中心に)
租税特別措置の見直し(研究開発税制等)
租税特別措置の見直し(生産性向上設備投資促進
税制、所得拡大促進税制等)
(3) 欠損金の繰越控除制度の見直し
2015 年度税制改正では、2 段階で欠損金の繰越控除期間の延長と、控除限度割合の引下げを実施することを明らかにしてい
ます。具体的には、2015 年度からの 2 年間は、法人実効税率の引下げに伴う代替財源確保のため、控除限度割合の引下げ
のみを実施し、控除上限額が「所得の 65%まで」引き下げられます。そして、2017 年度以降は、控除上限額が「所得の 50%まで」
に追加的に引下げられるとともに、繰越控除期間が 10 年に延長されます。なお、一定の要件を満たす新設法人や更生手続
中・再生手続中の法人には特例の適用が認められており、所得の金額の範囲で全額控除が認められます。
現行
改正案
2015 年度~2016 年度
65% (注1)
2017 年度以後
控除限度割合(中小法人等を除く)
80%
50% (注2)
繰越控除期間
9年
欠損年度の帳簿保存期間
9年
10 年 (注 3)
欠損金額の更正期限/更正の請求期間
(注 1) 2015 年 4 月 1 日から 2017 年 3 月 31 日までの間に開始する繰越控除をする事業年度又は連結事業年度
(注 2) 2017 年 4 月 1 日以後に開始する繰越控除をする事業年度又は連結事業年度
(注 3) 2017 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用
欠損金の控除制限の適用除外
新設法人
対象年度
法人の設立の日以後7年を経
過する日までの期間内の日の
属する各事業年度
適用除外とならない年度
金融商品取引所に上場された場合
等におけるその上場された日等以後
に終了する事業年度
更生手続中・再生手続中の法人
更正手続き開始の決定等の日
から更生計画認可の決定等の
日以後7年を経過する日まで
の期間内の日の属する各事業
年度
金融商品取引所に上場された場合
等におけるその上場された日等以後
に終了する事業年度
(4) 受取配当等の益金不算入制度の見直し
2015 年度税制改正では、会社法上の株主の権利に係る議決権保有割合や諸外国の制度を参考に、益金不算入割合を係る
持株割合を、「100%」「1/3 超 100%未満」「5%超 1/3 以下」「5%以下」の 4 区分に分類し、それぞれの区分に応じて益金不算入額
を計算することになります。持分割合が 1/3 以下の場合、益金不算入割合が縮小されるため、負債利子控除を廃止することで
課税強化を緩和しています。
証券投資信託の収益分配金は、これまでその運用形態に応じて、収入額の 1/2 の 50%、あるいは 1/4 の 50%の益金不算入が
認められてきましたが、2015 年度税制改正により、全額益金算入とされます。ただし、特定株式投資信託の収益の分配の額に
ついては、その受益権を株式等と同様に扱い、20%の益金不算入が認められています。
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株式等の分類
完全子法人等株式等
関係法人等株式等
上記以外の株式等
証券投資信託(注3)
特定株式投資信託
外貨建等投資信託
上記以外の投資信託
現行
持株割合
100%
25%以上
25%
益金不算入額
配当等の全額
配当等の額
(負債利子控除あり)
配当等の額 × 50%
(負債利子控除あり)
配当等の額 × 50%
(負債利子控除あり)
配当等の額= 収入額の100%
配当等の額= 収入額の25%
配当等の額= 収入額の50%
株式等の分類
完全子法人等株式等
関係法人等株式等
改正案
持株割合
100%
1/3 超 100%未満
その他の株式等
5%超 1/3 以下
配当等の額 × 50%
(負債利子控除なし)
非支配目的株式等
5%以下
配当等の額 × 20% (注2)
(負債利子控除なし)
収益の分配の額 × 20%
(負債利子控除なし)
特定株式投資信託
上記以外の証券投資信託
益金不算入額
配当等の全額
配当等の額
(負債利子控除あり)(注1)
配当等の額 × 0%
(全額益金算入)
(注 1)負債利子控除額の計算の簡便法の基準年度を 2015 年 4 月 1 日から 2017 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度とする
(注 2)青色申告書を提出する保険会社が受ける非支配目的株式等に係る配当等の額については 40% の特例の適用が設けられる
(注 3)公社債投資信託、外国投資信託及び特定外貨建等証券投資信託を除く
(5) 租税特別措置の見直し
(a) ゼロベースでの見直しの概要
「法人税の改革について」では、政策税制について、「経済社会環境の変化に応じて必要性と効果を検証し、真に必要なもの
に限定する必要がある」とし、「ゼロベースでの見直しを行う」ことが提言されていました。2015 年度税制改正でも、租税特別措
置については、毎年度、期限が到来するものを中心に、廃止を含めてゼロベースで見直しを行うこととされており、以下の制度
を含む政策税制について見直しが行われます。ただし、中小法人を対象とした政策税制の見直しは、2017 年度税制改正以降
に実施される予定です。
適用期限の定めのある政策税制について、期限到来により廃止されるもの(抜粋)
政策税制名
国内の設備投資額が増加した場合の機械等の特別償却又は税額
控除制度
認定研究開発事業法人等の課税の特例
会社分割に伴う不動産所有権の移転登記に係る登免税の軽減
適用期限等
2015 年 3 月 31 日までの取得・事業供用
2015 年 3 月 31 日までに認定を受けた事業者
2015 年 3 月 31 日までの取得(取得後 3 年以内に登記)
政策の重点化や対象の見直し等が行われるもの(抜粋)
政策税制名
特定の資産の買換えの場合等の課税の特例(長期所有の土地、建
物等から国内にある土地、建物、機械装置等への買換え)
特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又
は税額控除制度
改正案
対象資産の見直し、課税の繰延べ割合の引下げ、適用期
限の延長
対象者、対象設備の見直し、適用期限の延長
政策的重要性が高い措置の拡充・延長(抜粋)
政策税制名
研究開発税制
改正案
総額型の見直し、オープンイノベーション型の税額控
除制度の拡充
中小企業者等に係る法人税の軽減税率
適用期限の延長
(b) 研究開発税制の見直し
最大の政策税制であり、かつ重要度の高い研究開発税制については、法人実効税率の引下げに対応して、研究開発投資の
増加インセンティブとなるような仕組みへと転換するための見直しが検討されてきました。2015 年度税制改正では、試験研究費
の総額に係る税額控除制度については、繰越控除制度の廃止や控除税額上限の見直し等で優遇措置が縮小される一方で、
オープンイノベーション型の税額控除制度(特別試験研究に係る税額控除制度)は、税額控除率の大幅引上げ、控除上限の
(総額型との)別枠化、対象費用拡大等、制度の抜本的拡充が行われます。
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研究開発税制の区分
試験研究費の総額に
係る税額控除制度
特別試験研究
に係る税額控
除制度(オープ
ンイノベーション
型)
中小企業技術
基盤強化税制
試験研究費の額が増
加した場合等の税額
控除制度(「増加型」
または「高水準型」の
いずれか選択)
現行制度の概要
損金算入試験研究費の総額の一定割合の金額につい
て、法人税額から控除できる
【控除額】
試験研究費の総額 x 控除率(8~10%)
【控除上限】
法人税額の30% (特別試験研究費の税額控除も含む)
【繰越税額控除】
1年間の繰越が認められる
大学・公的研究機関との共同研究・委託研究(オープン
イノベーション型)の試験研究費(特別試験研究費)につ
いて、総額型よりも優遇された控除率(12%)を適用でき
る
損金算入試験研究費の総額の一定割合の金額につい
て、法人税額から控除できる
改正案
・控除上限が法人税額の25%に縮小される(特別試
験研究費の税額控除は含まない)
・繰越税額控除制度の廃止
・特別試験研究機関等・大学等との共同研究の場
合、優遇された控除率が30%に拡大される
・民間企業・技術研究組合との共同研究の場合、優
遇された控除率が20%に拡大される
・総額に係る税額控除制度と別枠で法人税額の5%
まで税額控除が認められる
・特定中小企業者の知的財産に支払う使用料も、特
別試験研究費として追加される
・中小企業者等については、税額控除制度は法人
住民税にも適用される
・控除上限が法人税額の25%に縮小される(特別試
験研究費の税額控除は含まない)
・繰越税額控除制度の廃止
【控除額】
試験研究費の総額 x 控除率(12%)
【控除上限】
法人税額の30% (特別試験研究費の税額控除も含む)
【繰越税額控除】
1年間の繰越が認められる
【地方税】
税額控除制度は法人住民税にも適用される
2017年3月31日までの時限措置として、その事業年度
の試験研究費を過去3年の試験研究費より5%以上増加
させた場合(以下、「増加型」)、または、試験研究費の
売上高に占める割合が10%を越えた場合(以下、「高水
準型」)には、上記の制度とは別枠で、それぞれ以下の
金額を法人税額から控除できる(繰越控除は不可)
【控除額】
・「増加型」の場合
増加試験研究費の額 x 控除率(5~30%)
・高水準型の場合
(試験研究費の額 - 平均売上金額 x 10%) x 控除率
((試験研究費割合 – 10%) × 0.2)
【控除上限】
法人税額の10%
(c) 所得拡大促進税制の見直し
所得拡大促進税制は 2014 年度税制改正により、適用要件の緩和と 2 年間の期限の延長の措置が手当されました。 2015 年
度税制改正において、延長期間における増加要件が下記の通り緩和されます。
現行
改正案(中小企業者、中小連結法人)
改正案(上記以外の法人)
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2013 年度
2%
2%
2%
2014 年度
2%
2%
2%
2015 年度
3%
3%
3%
2016 年度
5%
3%
4%
2017 年度
5%
3%
5%
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(6) 外形標準課税制度の見直し
2015 年度税制改正においては、2 段階で付加価値割と資本割の課税を現行の 2 倍に拡充する一方、所得割の税率を現行の
3 分の 2 に引き下げることとされています。法人実効税率の計算にあたっては、所得割の税率のみが計算式に反映されるため、
所得割の税率引下げにより、形式的に法人実効税率の引下げが実現します。
又、企業の賃上げへの取組みを阻害しないよう、一定以上の賃上げ分を付加価値割の報酬給与額から控除する措置や、地域
の経済・雇用を支える中堅企業について、外形拡充により税負担が増加する場合はこれを軽減する措置が手当されています。
外形標準課税の中小法人への適用拡大については、中小法人課税の見直しがすべて 2017 年度税制改正以降に見送りに
なったため、2015 年度税制改正には盛り込まれておりません。
(a) 法人事業税の税率及び地方法人特別税の税率の改正
改正前後の法人事業税の税率及び地方法人特別税の税率は以下のとおりです(超過課税が行われる場合には、それぞれに
超過税率が付加されます)。
現行
付加価値割
資本割
所 年 400 万円以下の所得
得 年 400 万円超 800 万円以下の所得
割 年 800 万円超の所得
地方法人特別税の税率
0.48%
0.2%
3.8% (2.2%)
5.5% (3.2%)
7.2% (4.3%)
改正案
2015 年度
2016 年度
0.72%
0.96%
0.3%
0.4%
3.1% (1.6%)
2.5% (0.9%)
4.6% (2.3%)
3.7% (1.4%)
6.0% (3.1%)
4.8% (1.9%)
67.4%
93.5%
152.6%
所得割の税率下段のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率
(b) 資本割の課税標準の見直し等
資本割の課税標準については、現在の「資本金等の額」から、「資本金等の額」と「資本金+資本準備金」のいずれか大きい額
として見直されます。これは、株価の上昇局面での自己株式を取得により、資本金等の額がマイナスとなっている法人があり、
資本割がゼロとなっていた問題に対処するものです。なお、法人住民税均等割の税率区分の基準である「資本金等の額」につ
いても、外形標準課税の資本割の計算と同様に、無償増減資等の金額を加減算する措置を講ずるとともに「資本金等の額」と
「資本金+資本準備金」のいずれか大きい額に見直されます。
(c) 付加価値割における所得拡大促進税制の導入
2015 年 4 月 1 日から 2018 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度において所得拡大促進税制の適用要件を満たす場合
には、雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることとされます。なお「雇用安定控除」(収益配分額
のうち報酬給与額の占める割合が 70%を超える場合に、報酬給与額から「収益配分額×70%」を控除する仕組み)との二重適用
を排除するため所要の措置が講ぜられます。
(d) 法人事業税の税率の改正に伴う負担変動の軽減措置
2015 年 4 月 1 日から 2017 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度に係る付加価値額が 40 億円未満の法人については、
前年度に比して事業税額の増加額に一定割合を乗じた金額を適用年度の事業税額から控除する措置が講ぜられます。
3.
その他の法人税関連
(1) ヘッジの有効性判定
法人税法上、ヘッジの有効性判定は、デリバティブ取引に係る利益額/損失額とヘッジ対象資産等の評価差額とを比較する方
法により判断を行うこととされており、会計上認められている、ヘッジ対象の資産等の評価差額とオプション取引に係る基礎商品
の時価変動額とを比較する方法は認められていません(金融商品会計に関する実務指針 156)。繰延ヘッジ処理又は時価
ヘッジ処理におけるオプション取引に係るヘッジの有効性判定を、ヘッジ対象の資産等の評価差額とオプション取引に係る基
礎商品の時価変動額とを比較する方法により行う場合には、税務署長に届出書を提出することにより認められることになります。
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(2) 連結納税の承認
連結納税の承認を受けている法人は、退職年金等積立金に対する法人税に係る申告書を青色申告書により提出できることとし、
法人が連結納税の承認を取り消された場合には、税務署長は必ずその法人の青色申告の承認も取り消すことが規定上明確化
されます。
(3) 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例とグループ法人税制
グループ法人税制により、完全支配関係がある法人間での譲渡損益調整資産の譲渡等による譲渡損益は繰延の対象とされま
すが、当該資産が完全支配関係がない者に移転された場合は、譲渡等を行った法人において(繰延計上された)譲渡損益が計
上されます。
完全支配関係がある法人の間で譲渡された土地(譲渡損益調整資産)についてその譲渡の後に土地区画整理法の換地処分
等があったことにより、「換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例」(圧縮記帳)の適用を受ける場合には、土地の繰
延損益を実現させない(譲渡損益として計上しない)こととされます。
4.
地方創生関連
(1) 地方拠点強化税制の創設
(a) 地方拠点建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の創設
青色申告書を提出する法人で地域再生法の改正法の施行の日から 2018 年 3 月 31 日までの間に地域再生法の地方拠点強
化実施計画(仮称)について承認を受けたものが、その承認の日から 2 年以内に、その地方拠点強化実施計画に記載された
建物及びその附属設備並びに構築物で、一定の規模以上(注)のものの取得等をして、その事業の用に供した場合には、その
取得価額の 15%(一定の要件を満たす場合には 25%)の特別償却とその取得価額の 2%(一定の要件を満たす場合には 4%
または 7%)の税額控除との選択適用ができる制度が創設されます(税額控除における控除税額は、当期の法人税額の 20%を
上限とする)。
(注)一の建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が 2,000 万円以上(中小企業者にあっては、1,000 万円
以上)のものをいう。
(b) 雇用促進税制の拡充
青色申告書を提出する法人で地域再生法の改正法の施行の日から 2018 年 3 月 31 日までの間に地方拠点強化実施計画に
ついて承認を受けたものが、その承認の日から 2 年以内の日を含む事業年度において、その地方拠点強化実施計画に従って
移転又は新増設をした特定施設である事業所において、雇用を増加させた場合には、増加雇用者数(法人全体の増加雇用者
数を上限とする)に最大で 50 万円を乗じた金額の税額控除ができるように、制度の拡充が行われます。
5.
国際課税関連
近年、グローバル企業が税制の隙間や抜け穴を利用した節税対策により法人税等の負担軽減を図っていることにつき、国際的
に批判が高まっています。こうした状況を是正し、実際に企業の経済活動が行われている場所での課税を十分に可能とするた
め、OECDは2012年6月より「BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクト」を開始し、2013年7月
に15項目からなる「BEPS行動計画」を公表しました。また、2014年9月にはBEPS行動計画のうち7項目について第一次提言が公
表されました。我が国はOECDの加盟国としてこれらの議論に参加しており、国際的な租税回避を防止し、適正な課税を確保す
るため、OECD租税委員会の議論を踏まえた国際課税の見直しを実施しています。
2015年度税制改正では、外国子会社益金不算入制度の見直し、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告
制度の整備、国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の創設が盛り込まれました。
(1) 外国子会社益金不算入制度の見直し
BEPS行動計画2「ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化」では、ハイブリッド金融商品(負債と資本の両方の性格を有する優先
株式等)の配当に対する課税上の取扱いが国によって異なることを利用して、配当の支払国・受取国のいずれでも課税されな
い状態(二重非課税)が生じることを問題としており、外国子会社配当益金不算入制度(以下「本制度」)を採用している国は、
支払国側で損金算入されている配当について、益金不算入の対象外とすることを提案しています。
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現行の法人税法上、外国子会社から受ける配当等の額については、所在地国における課税の可否を問わず本制度が適用さ
れることが、国税庁の質疑応答事例においても明らかにされています(国税庁ホームページ:「外国子会社配当益金不算入制
度の対象となる剰余金の配当等の額の範囲について」をご参照ください。 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeihokaishaku/shitsugi/hojin/25/02.htm)。BEPS行動計画2の勧告を踏まえて、2015年度税制改正では、本制度の対象から、外国
子会社居住地国における損金算入配当等が除外されることとされます(オーストラリア子会社からの償還優先株式(MRPS)やブ
ラジル子会社からの利子配当等)。
内国法人が外国子会社から受ける配当等の額で、その配当等の額の一部が外国子会社の所得の金額の計算上損金の額に
算入された場合には、配当等の額のうち、外国子会社の損金算入額を本制度の適用対象から除外することもできます。但し、
確定申告書等に、受取配当の一部について本制度の適用対象から除外する旨、適用除外とされる配当等の額及びその計算
に関する明細を記載した書類を添付するとともに、一定の書類の保存を要することが必要とされます。
本制度の適用対象から除外する配当等の額に対して課される外国源泉税等の額を、外国税額控除の対象とされます。
上記の改正は、2016年4月1日以後に開始する事業年度において内国法人が外国子会社から受ける配当等の額について適用
されます。尚、2016年4月1日において有する外国子会社の株式等に係るものについては、2018年4月1 日以後に開始する各
事業年度において受ける配当等の額について適用されます。
(2) 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の整備
国際的な脱税及び租税回避を防止するべく、「金融口座情報に関する自動的情報交換基準」のコメンタリー等が、2014 年 7 月
21 日に OECD 租税委員会から公表されました。同基準に沿った自動的情報交換については、2015 年末までに G20 諸国間
で開始されることが推奨されており、これを受けて 2015 年度の税制改正において報告制度の整備が盛り込まれました。
創設される報告制度では、2017 年1月1日以後に銀行等の一定の金融機関との間でその国内にある営業所等を通じて預金又
は貯金の受入れを内容とする契約の締結等の一定の取引(以下「特定取引」)を行う者は、その者に係る所定の事項(注)を記
載した届出書を、その特定取引を行う際、当該報告金融機関の営業所等の長に提出する義務を課せられます。
(注)その者の氏名又は名称、住所、生年月日、居住地国、居住地国が外国の場合にあっては当該居住地国における納税者
番号、その者の居住地国が住所に係る国又は地域と異なる場合にはその異なる事情の詳細、その他必要な事項
(3) 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)
日本企業の海外での健全な事業活動における税制面でのリスクやコストを低減し、海外展開の推進及び国際競争力の向上を
図るため、外国子会社合算税制におけるトリガー税率の見直しや統括会社に係る基準の見直し等を図ることの必要性が経済界
からも要請されてきたところです。 現行の外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)では、英国(2015 年 4 月から
20%)で事業を行っている外国子会社までが合算課税の対象となること等も踏まえて、2015 年度税制改正ではトリガー税率の引
下げ、適用除外基準のうち事業基準の判定に係る見直しや申告要件、更に損金算入配当等の取扱いの改正に伴う合算対象
金額の改正が盛り込まれています。
トリガー税率及び適用除外基準の改正については、特定外国子会社等の 2015 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から適
用されます。 合算対象金額の改正については、特定外国子会社等の 2016 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に係る合算
対象とされる金額について適用され、2016 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度において内国法人が特定外国子会社等から
受ける配当等の額について適用されます。尚、内国法人が特定外国子会社等から配当等を受ける場合の改正は、外国子会社
益金不算入制度の見直しと同様に、2016 年 4 月 1 日において内国法人が有する特定外国子会社の株式等に係るものについ
ては、2016 年 4 月 1 日から 2018 年 3 月 31 日までの間に開始する各事業年度は改正前の取扱いとされます。
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改正項目
トリガー税率
事業基準における被統括会社
適
用 事業基準における統括会社
除
外
事業基準における事業持株会社
基
準
申告要件
合
算
対
象
金
額
特定外国子会社等が子会社から配
当等を受ける場合
特定外国子会社等が他の特定外国
子会社等から配当等を受ける場合
内国法人が特定外国子会社等から
配当等を受ける場合
改正内容
現行の 20%以下から 20%未満に引下げ
特定外国子会社等が発行済株式等の 50%以上を有する等の要件を満たす内国法人も、被統
括会社の範囲に含める
二以上の外国法人である被統括会社を含む複数の被統括会社に対して統括業務を行ってい
ることに改正
統括会社の有する外国法人である被統括会社の株式等の帳簿価額の合計額の当該統括会
社の有する全ての被統括会社の株式等の帳簿価額の合計額に対する割合又は統括会社の
外国法人である被統括会社に対して行う統括業務に係る対価の額の合計額の当該統括会社
の全ての被統括会社に対して行う統括業務に係る対価の額の合計額に対する割合が 50%を
超えていることを加える
非関連者基準(卸売業など7業種)では、主として関連者(50%超出資)以外の者と取引を行っ
ていることが要件とされているが、卸売業を主たる事業として営む統括会社が内国法人である
被統括会社との間で行う取引については、関連者取引に該当する
適用除外基準の適用がある旨を記載した書面の添付がない確定申告書の提出があり、又は
その適用がある旨を明らかにする資料等を保存していない場合においても、税務署長がその
添付又は保存がなかったことにつきやむを得ない事情があると認めるときは、当該書面及び資
料等の提出があった場合に限り、適用除外基準を適用することができることとされる。
特定外国子会社等が子会社から受ける損金算入配当等の額は、当該特定外国子会社等の合
算対象とされる金額の計算上控除しない
特定外国子会社等が他の特定外国子会社等から受ける損金算入配当等の額のうち、当該他
の特定外国子会社等の合算対象とされた金額から充てられた部分の額は、当該特定外国子
会社等の合算対象とされる金額の計算上控除する
内国法人が特定外国子会社等から受ける損金算入配当等の額のうち、当該内国法人の配当
等を受ける日を含む事業年度及び当該事業年度開始の日前 10 年以内に開始した各事業年
度において当該特定外国子会社等につき合算対象とされた金額の合計額に達するまでの金
額は、当該内国法人の所得の金額の計算上益金の額に算入しない
(4) 帰属主義への変更の円滑な実施
2014 年度税制改正で国際課税原則の総合主義から帰属主義への変更が行われ、2016年4月1日以後開始事業年度より適用
されます。2015年度税制改正では、本制度について、新たに下記の改正が行われます。




外国法人が得る履行期間が6月未満の売掛債権等に係る利子は、法人税法に規定する国内源泉所得である「国内資産
の運用・保有所得」に該当しない旨の規定の明確化が行われます。
外国法人の恒久的施設と本店等との間で、国内不動産の譲渡所得や貸付対価等の国内源泉所得を生ずべき資産の当
該恒久的施設による譲渡又は取得に相当する内部取引があった場合には、当該内部取引は、その資産の内部取引の直
前の帳簿価額に相当する金額により行われたものとして、当該外国法人の恒久的施設帰属所得に係る所得の金額を計算
することとされます。
外国銀行等の資本に係る負債の利子の損金算入制度による損金算入額は、確定申告書等に記載された金額が限度とさ
れます。
内国法人の外国税額控除における国外所得金額について、国外事業所等帰属所得とそれ以外の国外源泉所得に区分
して計算方法を定め、国外事業所等帰属所得に係る所得の金額の計算について明確化のための所要の整備が行われま
す。
(5) クロスボーダーの組織再編成に係る適格性判定の特例の見直し

設立後間もないために、その外国法人の実際の租税負担割合を計算することができない場合には、その外国法人が所得
を得たとした場合に適用される本店所在地国の外国法人税の税率をもってその外国法人の租税負担割合とされます。

外国子会社合算税制におけるトリガー税率を20%未満(現行20%以下)に変更することに伴い、特定軽課税外国法人に
該当することとされる著しく低い租税負担割合の基準が20%未満(現行20%以下)に変更されます。
上記の改正は、2015年4月1日以後に行われる合併等について適用されます。
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6.
消費税関連
(1) 消費税率の引上げ
2012年8月10日に成立した「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正す
る等の法律」を改正し、消費税率(国・地方)の10%への引上げの施行日が2015年10月1日から2017年4月1日とされます。本件
改正に伴い、請負工事等に係る適用税率の経過措置の指定日、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転
嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(以下「転嫁対策法」)の期限も下記の通り見直されます。
10%への引上げの施行日
経過措置の指定日
転嫁対策法の期限
現行
2015年10月1日
2015年4月1日
2017年3月31日
改正案
2017年4月1日
2016年10月1日
2018年9月30日
(2) 軽減税率の導入
軽減税率制度については、2017年4月の消費税率10%引上げと同時の導入を目指し、対象品目・区分経理・安定財源などを早
急に具体的な検討を進めていくとしています。
(3) 国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し
2014 年度の税制改正大綱で、2015年度税制改正に向けて国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税について具体的
に検討することが謳われ、政府税制調査会(国際課税ディスカッショングループ)において検討が進められて来ました。以下の改
正は2015年10月1日以後の資産の譲渡等及び課税仕入れ(電気通信役務の提供を受けること)について適用されます。
(a) 電気通信役務の提供に係る内外判定基準の見直し
2015年度税制改正では、国境を越えて行われる役務の提供のうち、電気通信役務の提供(電子書籍・音楽・広告の配信等の
電気通信回線を介して行われる役務の提供)に係る内外判定基準を役務の提供に係る事務所等の所在地から、役務の提供を
受ける者の住所地等に見直し、消費税課税の対象に含めることとされます。電気通信役務の提供には電気通信役務の提供以
外の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供や、単に通信回線を利用させる役務の提供は含まれませんが、著作物の利
用の許諾に該当する取引は含まれます。
(b) リバースチャージ方式の導入
事業者向け電気通信役務の提供についてはリバースチャージ方式の導入により課税方式の見直しが行われます。「事業者向
け電気通信役務の提供」とは、国外事業者が行う電気通信役務の提供のうち、当該役務の性質又は当該役務の提供に係る契
約条件等により、当該役務の提供を受ける者が事業者であることが明らかなものとされ、役務の提供を受ける事業者が消費税
の納税義務者となります。これに対して「消費者向け電気通信役務の提供」ついては、役務提供者である国外事業者が納税義
務者となります。
リバースチャージ方式の導入により、事業者向け電気通信役務の提供は課税対象となる「資産の譲渡等」の範疇から除かれ、
「特定仕入れ」として課税対象に含まれ、「特定課税仕入れ」として納税義務の対象になります。
国内において事業者向け電気通信役務の提供を行う国外事業者は、あらかじめ、特定課税仕入れを行う事業者が消費税の納
税義務者となる旨を表示することとされます。
特定課税仕入れがある課税期間の課税売上割合が95%以上である場合には、当分の間、当該課税期間において行った当該
特定課税仕入れはなかったものとされます。 即ち、事業者の事務負担に配慮する観点から、課税売上割合が95%以上の事業
者等は、リバースチャージ方式による納税額とほぼ同額の仕入税額控除が計上されることも踏まえ、「リバースチャージ税額」と
「リバースチャージ税額に係る仕入控除税額」を同額と見做して、申告対象からは除外することができるというものです。
(c) 消費者向け電気通信役務の提供に係る仕入税額控除の制限
国外事業者から提供を受けた消費者向け電気通信役務の提供については、一定の場合を除き、当分の間、消費税の仕入税
額控除が認められないこととされています。消費者向け電気通信役務の提供については、国外事業者に申告・納税義務があり
ますが、国外に所在する事業者に対し、税務執行を通じた適正な申告・納税の履行を促すことには限界があり、(国外事業者か
らの)納税なき(国内事業者による)仕入税額控除という問題を制度的に回避するため、国内事業者が国外事業者から受ける消
費者向けの役務の提供については、仕入税額控除を認めないこととしたものです。但し、「登録国外事業者」から消費者向け電
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気通信役務の提供を受け、登録国外事業者の登録番号等が記載された請求書等の保存等がある場合には、課税仕入れに係
る消費税につき仕入税額控除が認められます。
(d) 登録国外事業者制度の創設
登録国外事業者とは、事業者免税点制度の適用を受けない国外事業者で、①国内において行う電気通信役務の提供に係る
事務所等の所在地が国内にあること、又は②消費税に関する税務代理人があること、等の要件を満たし、国税庁長官の登録を
受けた事業者です(登録申請は、2015 年7月1日以後にできます)。
対
象
取
引
課
税
方
式
事業者向け電気通信役務の提供
・電子書籍・音楽・広告の配信等の電気通信回線を
介して行われる役務の提供
・役務の性質又は当該役務の提供に係る契約条件
等により、当該役務の提供を受ける者が事業者で
あることが明らかなもの
・リバースチャージ方式(国内事業者に納税義務を
転換する)
・国外事業者(役務提供者) は役務提供を受ける国
内事業者に対して、リバースチャージの対象取引で
ある旨の通知義務を課される
・課税売上割合が 95%以上の事業者等において
は、リバースチャージ税額と仕入税額控除額と同額
とみなして、申告対象から除外する
消費者向け電気通信役務の提供
・電子書籍・音楽・広告の配信等の電気通信回線を
介して行われる役務の提供で「事業者向け電気通
信役務の提供」以外のもの
・国外事業者申告納税方式(納税管理人を指定)
・国外事業者から受ける消費者向け電気通信役務
の提供については、仕入税額控除を認めないことと
する
・登録国外事業者から消費者向け電気通信役務の
提供を受け、登録国外事業者の登録番号等が記載
された請求書等の保存等がある場合には仕入税額
控除が認められる
(4) 国外事業者による芸能・スポーツ等の役務の提供に係る消費税の課税方式の見直し
国外事業者が国内において行う芸能・スポーツ等の役務の提供について、役務の提供を受ける事業者がその取引に係る消費
税の納税義務を負うこととされます(リバースチャージ方式の導入)。
上記の改正は、2016年4月1日以後に行われる役務の提供について適用されます。
7.
その他の間接税
(1) 登録免許税
・土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限が2年延長されます。
・会社分割に伴う不動産の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置は、適用期限の到来をもって廃止され
ます。
(2) 不動産取得税
・住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限が3年延長されます。
8.
個人所得税関連
(1) 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の創設
BEPS行動計画6「租税条約濫用の防止」では、租税回避防止のための国内法が租税条約との関係で確実に適用できるよう適
切な措置を実施することを勧告し、居住者の国外転出時における金融商品の含み益に対する所得課税の特例の整備を提案し
ています。
この勧告を踏まえて、2015年度税制改正では、諸外国の例を参考に、国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなること、
以下同じ)をする居住者の有する有価証券等及び未決済デリバティブ取引等の含み益について、国外転出時に有価証券等の
譲渡ないし、未決済デリバティブ取引等の決済があったものとみなして、所得課税を行う(納税猶予の適用を受ける場合を除く)
特例制度が創設されます。
上記の特例は、2015 年7月1日以後に国外転出をする場合又は同日以後の非居住者への贈与、相続若しくは遺贈について
適用されます。
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対象者
対象資産
申告及び
申告額等
以下の要件をいずれも満たす居住者
① 申告対象資産の国外転出時等における評価額の合計額(下記の申告額等)が1億円
以上である者
② 国外転出の日前10年以内に、国内に住所又は居所を有していた期間(納税猶予を受
けている期間を含み、在留資格をもって在留していた期間を除く)の合計が5年超で
ある者
有価証券等(所得税法に規定する有価証券若しくは匿名組合契約の出資の持分)、及び
未決済デリバティブ取引等(未決済のデリバティブ取引、信用取引、発行日取引)
①
②
帰国による課
税の取り消し
非居住者へ
の有価証券
等の移転
9.
国外転出年度の確定申告までに納税管理人の届出を行った場合
⇒国外転出の時における当該有価証券等の価額に相当する金額又は当該未決済
デリバティブ取引等の決済に係る利益の額若しくは損失の額により、譲渡又は決済し
たものとして所得を計算
①以外の場合(他の所得とともに「準確定申告」)
⇒国外転出の予定日の3月前の日における当該有価証券等の価額に相当する金額
又は当該未決済デリバティブ取引等の決済に係る利益の額若しくは損失の額によ
り、譲渡又は決済したものとして所得を計算
国外転出後5年を経過する日までに帰国をした場合において、国外転出時から引き続き
有していた有価証券等又は未決済デリバティブ取引等については、更正の請求(帰国の
日から4月を経過する日までに行う)により課税の取り消しを受けることができる
贈与、相続又は遺贈により非居住者に有価証券等が移転する場合には、当該贈与、相続
又は遺贈の時の価額により譲渡又は決済したものとして所得を計算
納税環境整備
(1) 調査手続
調査が終了した後において「新たに得られた情報」に照らし非違があると認めるときは再調査を行うことができる規定が設けられ
ています。当該規定について、再調査の前提となる前回調査の範囲を「実地の調査」に限ることとし、前回調査が「実地の調査
以外の調査」である場合には、「新たに得られた情報」がない場合であっても再調査を行うことができることとされます。
上記の改正は、再調査の前提となる前回調査が2015年4月1 日以後に開始され、その前回調査後に行う再調査について適用
されます。
(2) 期限後申告書が提出された場合
期限後申告書が提出された場合において、期限内申告書を提出する意思があったと認められるものにつき無申告加算税を課
さないこととされています。現行では、当該制度について、適用対象となる期限後申告書の提出期限を、法定申告期限から2週
間以内としていますが、改正により、1月以内に延長されます。
上記の改正は、2015年4月1日以後に法定申告期限が到来する国税及び地方税について適用されます。
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