視覚障がい者の方にも使いやすいスマートフォン向け文字入力ソフトを開発 ——手元を見ずに,メールや検索などでの文字入力操作が可能に NTTは,視覚障がい者向けのスマートフォン文字入力 ソフト(Move&Flick)を開発しました. ずれかにスライドさせて子音を選択,その後,同じように 指を 8 方向にスライドし母音を選択することで,ひらがな これまで,スマートフォンで文字入力する際には,画面 の入力が可能です.これにより,従来のような画面に配置 に表 示されるひらがな,アルファベットや 数 字など の されるキーの位置を正確にタッチして,文字入力をする操 「キー」を探して,指で正確にタッチしなければなりませ んでした.キーの位置を正確にとらえられない場合には, 作が不要となります(図) . また,画面の左右には,入力した文字を漢字変換する 正しいキーの位置を探して入力する必要があるため,視覚 機能や入力した文章を音声で読み上げる機能などを付加 障がい者のスマートフォンの文字入力は,困難な状況にあ しており,文字変換や文章の編集のしやすさを向上させ, ります. 文字や文章の入力が正確かどうかの確認が可能となります. 今回開発した文字入力インタフェースでは,スマート なお,開発の過程では,障がい者雇用を促進している フォンの画面中央部分を指でタッチすると,フリック入力 NTTグループの特例子会社NTTクラルティの社員など視 画面が表示され,指で触れた位置から,指を 8 方向のい 覚障がい者約30名の意見を反映し開発しました. ご利用イメージ(動画) : https://www.youtube.com/watch?v=uDLElApyPBI 図 今回開発した文字入力インタフェース 48 NTT技術ジャーナル 2014.12 ■今後の予定 今後,NTTでは,開発した視覚障がい者向けのスマー 覚障がい者が抱える課題解決への貢献を目指し開発した ものです. トフォン文字入力インタフェースのアプリ配信などの提供 なお,本研究の一部は,総務省委託研究「先進的ICT国 形態を検討していきます.また,NTTクラルティやソフト 際標準化推進事業(次世代ブラウザ技術を利用した災害 開発会社などのプレイヤの協力を得て,視覚障がい者の 時における情報伝達のための端末間情報連携技術) 」によ 方にも利用しやすい文字入力のインタフェース開発を進め るものです. ていきます. ■開発の経緯 NTTで は,お 客 さま へ 新 た なUX(User Experience) の提供や,サービスを使っていただくお客さまの拡大に向 けて,新たなユーザインタフェースの創造とユーザビリ ティ評価を通じたユーザインタフェースの向上に取り組ん できました.今回の技術は,これまでの知見を活かして視 ◆問い合わせ先 NTTサービスイノベーション総合研究所 企画部広報担当 TEL 046-859-2032 E-mail randd lab.ntt.co.jp URL http://www.ntt.co.jp/news2014/1408/140821a.html 利用者が使いたくなるサービスの実現を目指して 青木 良輔 NTTサービスエボリューション研究所 研究者 研究者 紹介 紹介 サービスハーモナイズプロジェクト 研究員 私が入社した2007年ごろから,加速度センサ,深度センサ,方位センサといった,安価 で入手可能なさまざまなセンサが登場し,研究者 ・ 開発者が非常に多くの操作方法を提案し ています.しかし,学会やメディアで発表された操作方法の中で利用者が使っているものは 少ないのが現状です.導入コストやビジネス性なども原因と考えられますが,利用者が使い たくなり,かつ受け入れたくなるようなところまで操作方法のデザインが十分に練られてい なかったことが原因と考えています. 今回提案したMove&Flickは,NTTサービスエボリューション研究所の橋本遼 ・ 渡辺昌洋 氏が実施していた視覚障がい者のスマートフォンのアクセシビリティに関する調査の結果か ら対象者の抱えている本質的な問題を見極め,そしてテーマ企画から行っている私自身の研 究テーマ「複数動作の組み合わせによる操作インタフェース」で得られた知見を活用してつ くり出されました.その後,早急にプロトタイプを製作し,何度もNTTクラルティで働いている視覚障がい者の方々に利用してもらい ながらアドバイスをいただき,デザインの詳細をつめていきました.現在の試作品は,実際にNTTクラルティの社員にも設計から一緒 に携わっていただきながら製作したものです.このように,利用者の目線でデザインをつめていったからこそ,利用者に受けいれられ る操作方法になったと思います. 今後は,Move&Flickを多くの利用者に使っていただけるように進めていく一方で,新しい操作方法を創出するだけでなく,操作に 必要な動きを利用者自身が自然と身につけられるようなインタラクションのデザインについても探求していきたいと考えています. NTT技術ジャーナル 2014.12 49
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