全地連「技術フォーラム2014」秋田 【40】 千葉県浦安市沖積粘土の液性限界の経時変化について 大阪市立大学大学院 基礎地盤コンサルタンツ㈱ 1. はじめに 大島 昭彦 ○粟津 和也 笹尾 憲一 久保田 耕司 深井 晴夫 実施したことから個人差ではなく試料の特性と推測し, 浦安市「高洲」の沖積粘土層で実施した液性・塑性限 界試験(以後,液・塑性試験と記述)において,採取直 サンプラーから抜出した直後にパラフィンシールをして 保管している試料を用いて経時変化試験を行った。 後と2ヶ月後に実施した液性試験結果に,特定の深度で経 時的な変化が見られた。この現象を確認するために経過 時間や保存環境を変えた経時変化試験を行った。また地 域性の比較のため,同地域で後日調査した「鉄鋼通り」 (約2km 離れている)および大阪市城東区「東中浜」の沖 積粘土についても同様の経時変化試験を実施した。 3. 経時変化試験の方法 経時変化試験に使う試料は,自然含水比状態において 425μm ふるいを通過させた試料を図-2のように5等分し た。試料の保管は,1.5ヶ月・3ヶ月の試料については乾 燥しないが採光の状態で,3ヶ月遮光(東中浜は4ヶ月遮 経時変化試験の結果,液性・塑性限界の変化や pH・電 光)は暗所で,3ヶ月気乾(鉄鋼通りは4ヶ月気乾)は酸 気伝導率の変化から,試料の酸化が影響していることが 化を促進さめるため塑性限界 wp 程度までゆっくり乾燥 推測されたので,その結果を報告する。 させた。5等分した試料は液・塑性試験の直前に pH・電 気伝導率試験用に再分配した。ただし高洲は試料不足の 2. 経時変化試験の実施の経緯 ため4等分しかできず,気乾状態の試験および一部深度に 高洲において GL-32mまでの沖積粘土層の試料採取を 行い,土粒子の密度,含水比,粒度,液・塑性試験,一 1) 軸,圧密の各試験を実施した 。試験の結果,同地域の 沖積粘土は,図-1(●)のように自然含水比 wn よりも液性 おいては pH・電気伝導率の測定もできなかった。 pH・電気伝導率の測定は同じ土懸濁液を使い,電気伝 導率・pH の順に測定した。 なお全ての作業と試験には精製水を使用した。 限界 wL が小さな値を示す(液性指数 IL>1)鋭敏な粘土 であることが分かった。ただ IL が1.5~2以上と大きな値 を示す試料もあったため,wL の結果を確認する目的で試 験に使った同一試料(乾燥はさせていないが多少の光は あたる環境で保管)を用い,約2ヵ月後に再試験を行った。 結果は図-1(■)のようにほぼ全深度において wL は増 加し,特に GL-20.5m~-25.5m の区間においては wL が 図-2 経時変化試験の試料分け 含水比 w (%) 40 60 80 100 120 細砂 20 0.5 16 16 貝 な し (1) wLの変化 初測定 18 (2011.12) 液性指数 IL (=wR) 1 1.5 2 2.5 3 細砂 (2) ILの変化 18 (GL-22m~-26m)で wL が wn を10%程度上回り,その他の wp wn 経時変化とは異なる傾向を示した。また同深度では他と 深度 (GL - m) 深度 (GL - m) 貝 混 入 比べ pH が下がり,電気伝導率は大きくなった。ただし, 22 3ヶ月遮光においては,0ヶ月とさほど変わらない結果と 24 24 26 経時変化結果の3ヶ月においては,ほぼ同じ深度 (2012.2) 20 20 貝 密集 ① 浦安市高洲試料の経時試験結果(図-3) (2011.12) 再測定 wR 再測定 (2012.2) 22 初測定 wR 4. 経時変化試験の結果 なった。wp については,全体に大きな変化は見られなか った。 26 ② 浦安市鉄鋼通りの経時試験結果(図-4) 貝 28 少 28 30 30 全経時変化結果において,GL-20m~-29m では wL が な い 硬質粘土 wn を10%程度上回る結果となった。経時変化結果につい 硬質粘土 wn を10~20%程度上回る想定外の結果を示した。 ては多少のバラツキはあるものの,4ヶ月気乾以外はほぼ 同様の結果を示した。4ヶ月気乾はほぼ全深度で wL・wp 図-1 浦安市高洲沖積粘土の液性・塑性試験結果 ともに増加した。最深部付近以外では他の経時変化結果 液・塑性試験は試験員の技量が結果に少なからず影響 に比べ pH は減少し電気伝導率は増加する変化を示した。 すると考えられるが,今回の試験はベテラン試験員1人が ③ 大阪市城東区東中浜の経時試験結果(図-5) 全地連「技術フォーラム2014」秋田 微小ではあるが時間が経過するにつれ wL が大きくな 確認できた。高洲・鉄鋼通りの試料については,pH・電 る傾向が見られたが,3ヶ月気乾では鉄鋼通りのように他 気伝導率の変化から酸化が原因であることが推測され の経時変化結果と比べ明らかな変化は見られなかった。 る。ただし東中浜の結果を見ると,酸化すれば全ての試 ただし pH は大きく低下し電気伝導率も明らかに増加す 料において wL が増加する訳ではないことも分かった。 今後については経時変化試験の継続的な実施によっ る結果になったことから,酸化は進んでいることが推測 される。 て,wL と酸化の関係を更に明確なものにしていきたい。 5. まとめ 《引用・参考文献》 高洲において明らかに時間経時による wL の変化を示 1) 鈴木達也・大島昭彦・久保田耕司・笹尾憲一:千葉県 す特定深度があることが確認できた。同地域の鉄鋼通り 浦安市沖積粘土層の土質特性の測定例,土木学会第68 については,気乾することによって wL が変化することが 回年次学術講演会,2013.9 18 wL 18 0 1.5 3 3 遮光 wn 22 24 pH 8.5 9 細砂 8 9.5 0 10 18 開封後 の月数 0 1.5 3 3 遮光 20 24 18 0 1.5 3 3 遮光 20 22 24 26 26 28 28 28 28 30 0 1.5 3 3 遮光 24 26 30 30 硬質粘土 開封後 の月数 22 26 30 150 (4) の変化 (3) pH の変化 開封後 の月数 20 22 電気伝導率 (mS/m) 50 100 細砂 16 16 (2) I L の変化 深度 (GL - m) 深度 (GL - m) 20 7.5 16 開封後 の月数 wp 3 深度 (GL - m) 16 0.5 液性指数 I L (= w R ) 1 1.5 2 2.5 細砂 深度 (GL - m) 20 含水比 w (%) 40 60 80 100 120 細砂 (1) w L , w p の変化 硬質粘土 硬質粘土 硬質粘土 図-3 浦安市高洲沖積粘土の経時変化試験の結果 含水比 w (%) 60 80 100 120 シルト質砂 (1) w L , w p の変化 0.5 15 20 0 1.5 3 3 遮光 4 気乾 wn 55 60 0 2 40 8 10 35 40 0 1.5 3 3 遮光 4 気乾 500 55 60 I L (= w R ) 1.5 2 2 2 砂質シルト 60 pH 6 4 8 10 0 2 砂質シルト (2) I L の変化 0 1.5 3 44 採光 遮光 3 気乾 wn 4 4 開封後 の月数 6 0 1.5 3 44 採光 遮光 3 気乾 8 10 14 14 16 開封後 の月数 0 1.5 3 4 遮光 4 採光 3 気乾 礫まじり砂 300 砂質シルト (4) の変化 8 開封後 の月数 10 0 1.5 3 44 採光 遮光 3 気乾 12 16 有機質粘土 18 電気伝導率 (mS/m) 50 100 150 200 250 14 16 有機質粘土 18 4 シルト質砂 6 8 14 有機質粘土 (3) pH の変化 6 10 0 1.5 3 3 遮光 4 気乾 55 シルト質砂 図-4 浦安市鉄鋼通り沖積粘土の経時変化試験の結果 液性指数 1 開封後 の月数 40 50 シルト質砂 (4) の変化 35 50 12 礫まじり砂 30 開封後 の月数 50 12 18 電気伝導率 (mS/m) 100 200 300 400 シルト質砂 25 45 12 16 0 20 45 0.5 2 深度 (GL - m) 深度 (GL - m) 6 15 45 の月数 wL 0 1.5 3 3 遮光 4 気乾 35 60 含水比 w (%) 20 40 60 80 100 (1) w L , w p の変化 開封後 wp 30 開封後 の月数 55 シルト質砂 4 10 深度 (GL - m) 深度 (GL - m) 深度 (GL - m) 開封後 の月数 50 9 25 30 45 pH 7 8 シルト質砂 6 20 25 30 40 5 (3) pH の変化 wL 35 15 (2) I L の変化 20 wp 2 深度 (GL - m) 25 液性指数 I L (= w R ) 1 1.5 シルト質砂 深度 (GL - m) 40 深度 (GL - m) 20 15 礫まじり砂 有機質粘土 18 礫まじり砂 全地連「技術フォーラム2014」秋田 図-5 大阪市城東区東中浜沖積粘土の経時変化試験の結果
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